ラブダブル!〜女神と運命のガイアメモリ〜   作:壱肆陸

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津島瞬樹(つしましゅんき)
仮面ライダーエデンに変身する少年。高校1年生。静岡出身。
騎士、中でも竜騎士に憧れており、自信を「竜騎士シュバルツ」と称している。
超がつくほどの不幸体質で、超絶バカ。学力なら凛や穂乃果をも下回る。
前述の通り中二病気質であり、常に右手に包帯を巻き、セリフもいちいち痛い。しかし、何かあるとすぐに素が出る。だがバカというだけでなく、身体能力は非常に高く、精神面に関しては頼り甲斐のある人物でもある。超辛党。前の学校ではボッチだったらしい。
名前の由来は、仮面ライダーウィザードの「操真晴人」の「晴」を読み方そのままに漢字を変えて「春」。さらに音読みにして漢字を変え、「瞬」。ウィザードのテーマである「希望」の「希」を漢字を変えて「樹」。

特技:運動全般、手品、神話に登場する悪魔や神の暗唱
好きなもの:妹、花陽、辛い物、騎士道
嫌いなもの:勉強、パイナップル


今回で書く予定だった戦闘シーンを次回以降に回したため、予想よりかなり短くなりました。
有限不実行に定評がある146です。

瞬樹の名前の由来が回りくどいのには理由があります。
最初は「春希」だったんですが、僕が尊敬する先生のとある作品の主人公と名前もかぶり、漢字も若干かぶってしまうので、試行錯誤し、この名前に落ち着きました。

今回は前述の通り、予定よりだいぶ短いです。
幹部との闘いから始まるテスト回後半戦、どうぞ!



第22話 Tが来た/兼業探偵はつらいよ

 

 

「全く…!何をしているのです穂乃果たちは…!!」

 

 

息を荒くし、いかにも怒っている様子で校門に歩いていく海未。

海未を知らない奴でも、この姿を見れば怖がること請け合いだろう。

 

スクールアイドルの祭典、ラブライブが開催されることになり、当然μ’sも参加の意思を見せた。しかし、メンバー全員が赤点を回避することが条件で。

メンバーの約半数がバカで占められたμ’sにとって、これは由々しき事態。

赤点回避のため、放課後の勉強会を行うことになったのだが…

 

やはりというか、穂乃果たち5人はアラシも含めて全員脱走した。

 

怒りを抑えきれない様子で、校門のそばまで行くと…

 

 

「この曲は……」

 

海未の耳に聞き覚えがあるメロディが入ってくる。

忘れるはずもない、初期メンバーの3人で初めて踊った曲。”START:DASH‼︎”だ。

その曲は、校門に立っている少女のIPodから、鼻歌を交えて聞こえてくる。

少女の来ている制服からして、中学生。それも、音ノ木坂中学の学生のようだ。

 

海未は少女のIPodをのぞき込む。

映っていたのはファーストライブの映像。それも、ネットでは配信されていない場所まで映っていた。

 

 

「……うわぁっ!!」

 

「ッ!ごめんなさい!」

 

のぞき込んでいた海未に気付き、驚く少女。

だが、その表情はすぐに喜びのものへと変わった。

 

 

「園田海未さんですよね!μ’sの!」

 

「えっ!?いえ、人違いです」

 

見知らぬ少女に名前を当てられ、驚いた海未は、何がしたいのか咄嗟に嘘をつく。

すると、少女の表情は喜びから落胆のものへと変わっていき、最後には申し訳なさそうな顔で立ち去ろうと…

 

 

「いえ、本物です……」

 

「ですよね!」

 

海未が根性負けしたようだ。

 

「それより、その映像…」

 

「はい!ライブの映像です。亜里沙は行けなかったんですけど、お姉ちゃんが撮影してきてくれて!」

 

「お姉ちゃん…?」

 

あのライブに来ていたのは、ほんのわずかな人数。あの時この映像を撮影できた人物は、そう多くはないはずなのだが…

そんなことを考えていると、後ろから少女を呼ぶ声が。

 

 

「亜里沙」

 

「あっ!お姉ちゃん!」

 

 

海未が振り向くとそこにいたのは…

 

 

「生徒会長……」

 

 

 

それと、そのほぼ同タイミングで来た人物がもう一人。

木の陰に隠れた士門永斗だ。

 

 

 

_____________________________

 

 

ー永斗side-

 

 

気まずい雰囲気でどこかへ向かう、海未ちゃんと生徒会長と、その妹さん。

そして、僕はそのあとを尾行している。ストーカーじゃないです、探偵です。

 

本当は帰るつもりだったんだけど、ついつい後をつけてしまった。

まぁでも、あの3人が何を話すのかは少し気になるし、いいとしよう。

 

しかし、さっきから何かを話しているようだけど、遠くてほとんど聞こえない。

 

 

「仕方ない、ちょっと近づくか…」

 

電柱に身を隠していたのを、それよりも前にあるゴミバケツの裏に場所を変える。

こういうスキルはサバイバルゲームで培ったもので、決して僕にはストーカー趣味はありませんので、あしからず。

 

でも、この距離だと結構聞こえるな。えっと…妹さんがこっち指さしてなんか言ってる。

 

「お姉ちゃん、変な人がいるよ」…って……

 

 

どうやらバレたっぽい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぜ尾行なんてしたんですか?普通についてくればいいものを…」

 

「僕もそう思う」

 

僕たちは近くの公園に到着し、生徒会長と一緒に座っている。

そこに、缶ジュースを持って妹さん。亜里沙ちゃんと言うらしいから、略してありちゃんが走ってきた。

 

 

「お待たせしました!」

 

そう言って笑顔で缶を渡してくるありちゃん。

でも、これおでんです。

 

そこに、会長さんがすかさずフォローを入れる。

 

「ごめんなさい。向こうでの暮らしが長かったから、まだ日本に慣れてないところがあって」

 

「向こう?」

 

「なるほどね…なんとなく感じてたけど、生徒会長さんハーフか何か?」

 

「クオーターよ。祖母がロシア人なの。

亜里沙、それは飲み物じゃないの。別のを買ってきてくれる?」

 

ありちゃんは、それを聞いて少し驚いたような顔を浮かべるが、すぐに自販機のほうに駆けていった。

僕、おでんでもよかったんだけどな。

 

 

「それにしても、貴方に見つかってしまうとはね」

 

「前から穂乃果たちと話してたんです。誰が撮影してネットにあげてくれたんだろうって。でも、生徒会長だったなんて…」

 

話の流れがイマイチ掴めないけど、結論は大体わかった。

あの映像はmade by 生徒会長だったってことか。

 

 

「あの映像があったから、今の私たちがあると思うんです。

あれがあったから、見てくれる人も増えたし、だから…」

「やめて」

 

海未ちゃんがお礼を言いそうだった雰囲気を、冷たい言葉が遮る。

 

 

「別に、貴方達の為にやったわけじゃないから。寧ろ逆…貴方達のダンスが、如何に人を引き付けられないものか、活動続けても意味がないか知ってもらおうと思って。

だから、今のこの状況が想定外。無くなるどころか人数が増えるなんて…」

 

思った以上に散々な言いよう。

気にはいらないけど、僕が一々口を出すことでもないかな。

 

 

「でも、私は認めない。

人に見せられるものになっているとは思えない。そんな状態で、学校の名前を背負って活動してほしくないの。話はそれだけ」

 

それだけ言うと、会長さんは立ち上がって立ち去ろうとする。

それを、海未ちゃんの言葉が引き留めた。

 

 

「待ってください!じゃあ、もし私たちが上手くいったら…

人を引き付けられるようになったら…認めてくれますか?」

 

「無理よ。私にとっては、スクールアイドル全部が素人にしか見えない。

一番実力があると言われるA-RISEでさえも、素人にしか見えない…」

 

 

 

次の瞬間、僕は会長さんの前に立っていた。

 

やれやれ、僕も性に合わないことをするようになったもんだ。こんな自分が嫌になる。

でも、彼女は”スクールアイドル”をバカにした。だったら、僕が黙っている筋合いもない。

 

 

「ずいぶんと偉そうですね。会長さんのおかげでμ’sが人気になったと勘違いしてるんだったら、これだけはハッキリ言っておきますよ。

別に会長さんが何もしなくても、あのくらいの映像なら僕が投稿してた。μ’sの人気は、彼女たち自身が勝ち取ったものです」

 

「…何が言いたいの」

 

「スクールアイドルは馴れ合いじゃない。人前に晒すことを前提にして努力し、人気を勝ち取る、女の子たちの真剣勝負だ。でも、そうなると貴方のようなお高くまとったアンチが湧いてくるのも必然。でも、考えの自由とか言って放っておくほど、僕は人権主義者じゃない」

 

 

僕は口元に笑みを浮かべ、こう宣言した。

 

 

「一アイドルファンとして宣言しますよ。

高みから偉そうに見下ろす貴方を、必ず僕たちのところまで引きずり下ろす」

 

会長さんの目つきが一瞬鋭くなったように見えたが、すぐに視線を変え、公園から去っていった。

すると、入れ替わるように、今度はありちゃんが僕たちによって来る。

さっきの会話を聞いていなかったのか、ピリピリした雰囲気に不思議そうな表情を浮かべながら。

 

 

「あの…亜里沙…μ’s、海未さんたちのこと、大好きです!」

 

そう言って、ありちゃんは買ってきた缶を僕たちに渡し、会長さんを追いかけていった。

おしるこも飲み物ではないけど、かわいいからまぁいいや。

 

アンチがいる反面、こういった純粋に応援してくれる人もいる。

だからスクールアイドルは成り立っているんだ。

 

 

「甘いな…」

 

僕はおしるこを口に含み、海未ちゃんの横で呟くのだった。

 

 

 

__________________________________

 

 

ーアラシside-

 

 

テスト勉強から逃れるため、ファストフード店に逃げてきた俺たちだったが、そこで不運にも組織のエージェント2人に遭遇。

 

そのうちの女の方、コードネーム”ルーズレス”がティラコスミルス・ドーパントに変身し、今にも戦闘になろうとしていた。

 

 

「どっちにしようかな~…じゃあ、アタシはこっちで!」

 

 

ティラコスミルスは地面を蹴ると、一瞬で距離を詰める。

そしてその勢いのまま瞬樹に激突。瞬樹は持ち歩いていたエデンドライバーで防御するが勢いは止まらず、壁に衝突し、ティラコスミルスと共に外へ放り出された。

 

なんつースピードと瞬発力…こんなの相手にするなら、まずは穂乃果たちを逃がさねぇと…

 

 

「どこを見ている」

 

 

今度は男の方、”ラピッド”の声が聞こえたかと思うと、片脚を構えていて…

 

次の瞬間、ラピッドの蹴りが俺の腹部に叩き込まれ、俺の体は数メートル先まで、机などの障害物を蹴散らしながら吹っ飛んでいった。

 

重い…!叩き込まれたっていうか、”突き刺さった”って言った方が妥当だろうか。

それほどに鋭く、強い蹴り。人間とは思えない程の…

だが、コイツが穂乃果たちから離れた。図らずも絶好の状況だ。

 

 

「お前ら!他の人たちを逃がして、お前らも大至急ここから逃げろ!!」

 

3人は少し戸惑ったようだが、すぐに一般客の誘導を始めた。

瞬く間に店から人はいなくなっていく。こういう時は本当に頼りになる奴らだ。

だが、ラピッドは他の奴らに見向きもせず、もう一撃を食らわせようと接近。

俺は痛む体で奴の攻撃を回避。俺がいた場所にあったコンクリ製の柱は、ガンという音と共に粉々に粉砕された。

 

 

「今の音は…なるほどな…!」

 

 

俺は攻撃を避けながら考える。

今、アイツの攻撃の時に鳴った金属音。アイツの靴は金属製だ。

どうりで、あんな固いもの蹴って足が壊れないはずだ。

それにしても、コンクリートを蹴り壊すだの、金属靴でピョンピョン動き回るだの、一体どんな脚力してんだよ!

 

 

「相手にしてられるかよ、こんな化け物!」

 

俺は近くにあった、燃えるごみの大きいゴミ箱をラピッドに向けて放り投げる。

ラピッドは俺に向けていた脚で、飛んできたゴミ箱を蹴り上げた。

ゴミ箱はそのまま天井に突き刺さり、間もなく落下した。

 

 

「…どこにいった?」

 

さっきの場所に、俺の姿はもうない。ラピッドは俺を探しているようだ。

ゴミ箱投げたくらいで奴にダメージを与えられるとは思ってない。むしろ、あれは奴の視界を奪うための攻撃。一瞬姿を隠せさえすれば、いくらでも隠れようはある。

 

ちなみに、俺は店のカウンターの裏に隠れている。見つかるのは時間の問題だが…

 

 

 

 

「言ったはずだ。所詮は子供と」

 

 

 

俺が隠れてから物の数秒。カウンターを蹴りで粉砕され、俺は調理場の奥へと逃げ込む。

逃げた先は行き止まり。ラピッドはもうそこまで来ている。逃げ場はない……!

 

 

「注意散漫、経験不足、稚拙な技術。

年にしては修羅場をくぐっているようだが、俺から見ればアマチュアもいいとこだ」

 

 

ポケットに手を突っ込み、殺意を放ちながらラピッドが歩いてくる。

 

 

A little knowledge is a dangerous thing(生兵法は怪我の基).終わりだ」

 

 

 

計算通りだ。

人が一番油断するとき、それは”勝利を確信したとき”。

俺は待っていたとばかりに口を開く。

 

 

「お前、戦闘中でも眼鏡をはずさないな」

 

 

その言葉に、ラピッドの顔が少しだけ引きつる。

普通は邪魔になるため、伊達眼鏡なら戦闘の際は外すことが多い。

 

 

「てことは、それは視力矯正の眼鏡。

それじゃ、さぞかし”強い光”に気を付けてんだろうな?」

 

俺は発光出力最大にしたバットショットを右手に持ち、ラピッドの前に突き出した。

ラピッドはその瞬間、思わず目を手で覆い…

 

背後に準備させておいたスパイダーショックが、ロープでラピッドの足を巻き付け、引っ張る。

注意がひきつけられていたラピッドは、それを察知することができず、体勢が崩れる。

 

「なっ…!」

 

 

この瞬間、俺はラピッドの腹に渾身の拳を叩き込んだ。

 

ラピッドは腹を片手で抑え、それでも立ったままコッチを睨んでいる。

さっき俺がやられたように、ぶっ飛ばすとまではいかなかったが、確実に深手は負わせたはずだ。

 

 

「さっき俺のことを”経験不足”だとか”アマチュア”だとか言ってたよな?

でもよ、命張った戦いにそんなもんは関係ねぇ」

 

 

俺はガキの頃は、人を信じることを知らなかった。

そんな俺が一つだけ信じていた、唯一の信条をラピッドにぶつける。

 

 

「”死んだら負け”それだけだ」

 

 

俺たちの間の空気が一気に緊張する。

カッコつけてはいるが、勝負はついていない。ダメージだってどっこいどっこいといったところだ。

 

何より、コイツはまだメモリを使っていない。俺も変身していないため、お互いに手の内を隠している状態。

双方が深手を負った今、必然的にお互いの力を警戒し合うことになる。

 

互いに一歩も動かないままで一分ほどたった頃。

 

 

 

「ぐわぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

叫び声をあげながら、エデンに変身した瞬樹が天井を突き破って落下してくる。

更に、ティラコスミルスも天井に空いた大穴から、軽快に飛び降りて着地。

 

瞬樹はアホだが、実力だけはある奴だ。そんな奴がここまでやられている。

だが、一方的にやられているというわけでもなさそうだ。ティラコスミルスの体には多くの傷がついていた。

 

 

「ハハ…結構やるじゃん。こっからが本番だよ」

 

「…あぁ」

 

 

ラピッドがメモリを取り出そうと上着のポケットに手を入れようとする。

その時だった。

 

 

パトカーの音が、徐々にこちらへ近づいて来ている。

それもそうだ、ここまで盛大に暴れれば、騒ぎをかぎつけた警察が来るに決まっている。

 

 

「警察か…面倒だ。退くぞルーズレス」

 

「えぇ~…でも、戦いにザコが入ってくるのもつまんないし、いいか」

 

 

予想外の展開だが、このまま戦うのは分が悪い。どっか行ってもらえると本望だ。

ルーズレスは変身を解除しないまま、ラピッド共々俺たちに背を向ける。

 

 

「貴様の心意気だけは認めてやろう。だからこそ…

次は本気だ」

 

 

ラピッドはそう言い残し、ティラコスミルスがおこした土煙の中に消えていった。

 

あの2人、とんでもない強さだった。それに、ファーストがこの近くにいる。

組織との闘いは確実に激化する。気を引き締めなおす必要があるな。てか、その前に…

 

 

「どうするか、この始末…」

 

 

俺はズタボロになった店内と建物を見て、ため息交じりに呟いた。

 

 

 

__________________________________________

 

 

6/27 

 

 

「今日のノルマはこれね!」

 

「「「鬼……」」」

 

 

机に大量の参考書を積み上げた希に、穂乃果、凛、にこの3人が同時に呟く。

 

とか言いつつも素直に取り組むのは、なんでも”お仕置き”を受けたらしい。

なんとなく察したので、具体的には聞かなかったが。

 

一方俺はというと、中々勉強に手がつかない。

理由は当然、昨日の戦闘。建物と一緒に監視カメラも使い物にならなくなっていたので、バレないうちにずらがったのだが、そんなことは問題ではない。

あの2人、特にラピッドは能力が計り知れない。奴らは近いうちに必ずやって来る。

次は負けられない。でも、能力がわからない相手を、どう対策すれば…

 

 

「なにボーっとしてるんですか、アラシ先輩」

 

「あぁ…悪い、真姫」

 

真姫に声をかけられ、我に返る俺。

 

「ほかの2人も今日はおかしいけど、どうしたんですか?」

 

ほかの2人というのは、ひょっとしなくとも…

 

 

「アイドルの魅力を…いや、無理だ……じゃあまずは……」

 

「あの猫女…次は必ず…!」

 

 

何かぶつぶつ呟いてる永斗と、シャーペンを折りそうな勢いで拳を固める瞬樹のことだろう。

永斗は事務所に帰ったらこんな感じだったし、瞬樹も戦いが終わってからずっとこの調子。

永斗のことはよく分からんが、瞬樹の方は負けたのがよほど悔しかったのだろう。

 

というか、集中できない理由はもう一つ。

 

それはこの場所、西木野邸である。

 

 

 

 

 

 

数時間前

 

 

 

「勉強合宿!?」

 

「はい、瞬樹や穂乃果が思った以上に重症なので、テストまで泊まり込みで勉強の面倒を見ることになりました。既に各自の親に許可をとってあります」

 

昨日の怪我が響き、少し遅れて登校してきた俺に告げられる提案。

テストまであと一週間といったところ。俺も含め、かなり厳しい状況だ。

ていうか、穂乃果たちは普通に学校来てたんだな。アイツ等も段々肝が据わってきている気がする。

 

 

「まぁ、やむを得んか…で、場所はどこだ?

大勢が寝泊まりできる場所なんて、そうそうないんじゃ…」

 

「真姫の家です」

 

西木野邸か……確か真姫の家は病院をやっている。それなりに金持ちで家も大きいのだろう。

だが、真姫の家ということは、当然あの変態、兄である西木野一輝がいるということだ。

以前あのシスコンに絡まれたときは、本当に大変だった。できれば絶対かかわりたくない。

勉強なら事務所でも集中できるし、仕方ない。今回は不参加で…

 

 

「そういえば、ことりがチーズケーキを買ってきて、みんなで食べるそうですが…」

「超行く」

 

 

 

 

 

 

てなことがあり、俺も参加することになった。

今回の勉強合宿、教える側が多い方がいいということで助っ人が2人呼ばれた。

 

1人は、

 

 

「ブツブツうるさいですよ。手を動かしてください」

 

「…しかし、竜騎士の誇りが……」

 

「誇りだか埃だか、そんなもんはどうでもいいんです。

あと20分以内に二次関数のところを全部終わらせてください。できなければ今日のノルマは2倍、制限時間を10分越える度に竜騎士グッズを一つ売却。終わったとしても、間違いが一つでもあれば夕食抜きで、間違い一つにつきボクが瞬樹の目の前で一品をたいらげます」

 

「オイ、ちょっと待て。流石にそれは…」

「はいスタート」

「えぇ!?いや…ちょ…クソがぁぁぁぁ!!」

 

 

瞬樹の相棒らしい、黒音烈。声や見た目は女だが、名前は男。

そして所業は鬼畜の不思議な奴。ただ、瞬樹と烈は俺と永斗のような関係だというのは見て取れる。

血も涙もないスパルタで瞬樹に勉強を叩き込んでるところを見ると、少しかわいそうにも見えてくる。

 

2人目は…

 

「おい貴様、何を真姫に話しかけられて嬉しがっている。

それで恋愛感情でも抱こうものなら、今すぐ殺してやろうか?」

 

「嬉しがってもないし、恋愛感情も無い」

 

「なぜこんなにも可愛い真姫に恋愛感情を抱かない!?

頭おかしいんじゃないか貴様!!」

 

「本当に頭おかしい奴に言われたくねぇんだよ!!お前は俺にどうしてほしいんだ?!」

 

 

俺が危惧していた変態兄、一輝だ。

さっきから何かある度にこの調子で、全く勉強に集中できない。

一輝もその度に真姫から制裁を受けているのだが、懲りる様子もない。あ、追い出されてる。

 

それぞれ勉強に気持ちを入れきれてないようだが、永斗はちゃんと勉強のアシストもしている。例えば、

 

「ねーねー永斗君、漢文の”けいおうききてこれをいいてさゆう…」

「”荊王之を聞きて、左右に謂ひて曰く、「晏子は賢人なり。今方に来たらんとす。之を辱めんと欲す。何を以てせんや」”だね。王様が部下的な人たちに、『アイツめっちゃ賢くてムカつくから恥ずかしい思いさせてやりたいんだけど、どうする?』って聞いたって意味だよ。てかほのちゃん、返り点ぐらい読もうよ」

 

かなり適当だが、流石は自他共に認める天才。

昨日その漢文は読んだが、大筋の意味はあっていた気がする。

 

しかし、瞬樹はご存知、正真正銘今世紀最大のバカ。

烈にしごかれているとはいえ、このままでは確実に赤点だ。どうしたもんか…

 

 

「そういえば、海未も元気ないな。永斗、なんか知ってるか?」

 

「ちょっと昨日、生徒会長といろいろあってね」

 

あの堅物に何をやらかしたんだ…

永斗は極稀に趣味以外でやる気スイッチが押されることがあるからな…変なことになってなければいいが…

 

いろいろと悩みは多い、テストのこともだし、あの幹部2人。

そして、この街にいるというファースト…どうすれば…

 

 

「悩んでるみたいだな」

「どっから湧いてきたテメェは」

 

俺の横には、さっき追い出されたはずの一輝が。不屈かコイツ。

 

 

「可愛い女の子たちと、もっと可愛い真姫はともかく、お前ら野郎どもがどうなろうが知ったことではないが、そのラブライブとやらが上手くいかなかったら真姫が悲しむからな。仕方なくアドバイスをしてやるよ。

A man cannot serve two masters.最近、知り合いに教えてもらった。両立しないような二つの仕事をひとりで兼ねることはむずかしいという意味らしい。まずは自分のするべきことを整理する必要があるんじゃないのか?そしてそれはもちろん、超絶可愛い俺の妹に尽くすこt」

 

言い終わる前に一輝は真姫に連行され、追い出される。今度は鍵もかけられた。

 

だが、言ってることはもっともだ。

そうだった。俺は今や探偵にして仮面ライダーであると同時に学生。さらにμ’sのマネージャーだ。

俺たちを信じてくれてるコイツ等のためにも、俺が期待を裏切るわけにはいかないよな!

 

 

「……よし!」

 

 

吹っ切れた。能力がわからない相手だとか、ファーストだとか、結論が出ないことを考えていてもしかたない。今は勉強だ。奴らが襲ってきたら、それはその時だ。

そうなるとまずは、コイツ等も奮い立たせないとな…!

 

 

「永斗、ちょっといいか?」

 

「何?あの会長さんをどう落とそうか考えてるんだけど…」

 

「何の話か知らないが、お前には俺たちの先生になってもらわなくちゃ困る。

そうだな…俺たちが70点を超えた数だけ、2000円分ほしいものを買ってやるってのは…」

「わからないことは何でも聞いて。この天才高校生永斗くんが完璧に答えてあげよう!」

 

よし、変わり身の早さに少し引くが、永斗がやる気になった。

 

 

「それなら私は遊園地行きたい!いいでしょ、アラシ君!」

 

「凛もジェットコースター乗りたいにゃ!」

 

「あんた等子供ね~やっぱりここは、観覧車で夜景を優雅に眺めるの一択よ!」

 

なぜか知らんが、3バカも話に食いついてきた。まぁでも、好都合だ。

 

 

「あ~もうわかった!連れてってやるからそれでいいだろ!」

 

俺がそう言うと、手を取り合って喜ぶ3人。単純で助かる。

よし、最後は…

 

 

「花陽、ちょっと来てくれ」

 

 

俺は小声で花陽を呼び、耳打ちする。

俺の指示を聞いた花陽は、頭から煙を出しながら問題とにらめっこしている瞬樹に近づき…

 

 

「えっと…一緒にテスト頑張ろうね!」

 

 

そんな感じで花陽は瞬樹に笑いかけた。

瞬樹はしばらくフリーズし、何かに感謝するように天を仰ぐ。そして、

 

 

「しゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

瞬樹は叫びながら、さっきとは比べ物にならないスピードで問題を解いていく。

コイツは花陽に好感情を抱いているようだったからけしかけてみたが、効果は予想以上だった。

 

さて、これでやれることはやった。あとは俺が努力するのみ。

 

やってやる。μ’sの未来のため、夢のため、

10年のブランクなんか、ぶっ壊してやる!!

 

 

こうして、俺たちの勉強合宿が始まった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一週間後、テスト当日。

 

この一週間、幸運にも組織の2人もファーストも現れなかった。お陰で、勉強に集中できた。

 

手は尽くした。俺が10年の壁を壊せたかどうか、そしてμ’sの命運は今日で決まる。

 

静寂に包まれた教室。チャイムが鳴る。勝負の時だ。

 

 

俺は意を決して、答案をめくった……!

 

 

 

 

 

 

_______________________________________

 

 

 

 

東京某所、建物の壁によりかかるラピッドとルーズレス。

 

 

「任務の追加か…了解した」

 

 

それだけ言って、ラピッドは電話を切った。

そんな彼に、ルーズレスは無邪気な様子で尋ねる。

 

 

「で、どんな任務なの?」

 

「新たな標的の追加だ。つい先日、新たな”オリジンメモリ”のドーパントが確認された。

適合者は不明、メモリは………”L”」

 

 

 

 

 

 

 

 




今回の話はダブルに変身しませんでしたね。その分、次の話では活躍させるんで…
勉強合宿の風景も、気が向いたら投稿するかもです。楽しみにしていただけたら幸いです。
さて、テストを終えたアラシ達の行方は!そして生徒会長は!エージェントの2人は!
いろいろと詰め込む予定のエピソード、頑張りたいと思います!

感想、評価、アドバイス、オリジナルドーパント案ありましたらお願いします!

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