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夘月さん Fe_Philosopherさん ありがとうございます!
編入したアラシたちはどうなるのか?テスト回前編です!どうぞ!
「新たなライダー…それがどうした?」
「いや、少し気になって自分で考えてみたんだ」
研究所にて。組織の幹部である黒服の男、コードネーム”ゼロ”
そして、未だ片腕を失ったままの最高科学者、天金狼。
この二人が話すことは珍しくない。しかし、そこには今までにないような緊迫した雰囲気が漂っていた。
さらに珍しいのは、その緊迫を天金が放っているということだ。
「彼が使うあのシステム。あんな見事なものは誰にでも作れるものじゃない。
僕が知る限り、それを作れるのは僕を除いて一人だけ。でも、そいつは死んでいる、いや…
君が殺したはずだ」
その言葉に無言のまま頷くゼロ。
「それが生きているとなれば…まぁ、君に限ってあり得ないと思うけどね。
ただ、忠告はしておく。裏切りは死に直結するよ。君はただでさえ組織内の信用が薄いんだから」
「あり得んな。アイツが死ぬ前に作ったものを、誰かが持ち出しただけだ。
それに、俺は信用を得ようとはしてない。疑いたければ勝手にしろ」
「ふーん…一匹狼は君んとこのの専売特許だったね。
でも、これでアッチのメモリは合計5本。これは由々しき事態なんじゃないの?」
「それについては、既にウチの4番手と5番手を向かわせている。
今のアイツ等にあの2人を攻略できるか…見物だな」
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ーアラシsideー
「入学&正式入部おめでとう!!」
穂乃果の掛け声で一斉にクラッカーが鳴らされ、
俺と永斗は大量の紙テープをかぶる。
今、部室には俺たちとμ’sのメンバー(にこ以外)が揃っている。
いつもなら、バイトの合間に参加し、永斗は事務所で留守番しているはずだ。
だが、今日からは違う。俺たちは音ノ木坂学院に編入したのだ。
今は、その記念ということで部室でちょっとしたパーティーを開いている。
机にはフライドチキンだとか色々。花陽だけどんぶりを抱えているが…
当然、費用は部費で落とした。
「それにしても、まさか永斗君までね~」
穂乃果がチキンをくわえながらそう言う。
永斗は一年生クラスに編入。
一年生は一クラスしかないから、花陽、真姫、凛、瞬樹と同じクラスのはずだが。
「本当だよ…なんで僕まで…」
「仕方ねぇだろ。そういう条件なんだから」
先日、理事長から思ってもいない提案が出された。
それは、理事長からの、功績に応じた報酬の支払い。これによって、今までのようにタダ働きでドーパントを始末する。みたいなことはなくなるわけだ。
だが、それには条件があって、それが音ノ木坂学院への転入だ。
元々、このことは計画していたらしく、俺たちも誘うつもりだったらしい。
そういえば、新聞部の部長が言ってたのはこのことだったのか…後から経緯を聞いておこう。
もちろん、教科書や制服などの必需品は支給され、事件の捜査、戦闘のための欠席及び早退は認められている。ただ、俺も永斗も学校に通った経験はない。それに、事務所のことも悩みどころだ。
その上、周りは全員女子ときたもんだから。肩身が狭いってもんじゃない。
ちなみに、もう一人のライダーである津島瞬樹も編入してきたが、他にも後ほど何人か編入生は増える予定らしい。
「にしても、学生ってのは疲れるな…授業には慣れてないし、何より他の奴等からの質問攻めがキツイ…人の恋愛事情に何の興味があるんだよ……」
「確かに、アラシは凄く人に集まられてましたね。清掃員で多少顔が知られているからでしょうか?」
”恋愛事情”という単語に真姫が多少反応した気もしたが、きっと気のせいだろう。
あと、あんなに人がたかってきたのは、新聞部の連中が作ったあのフザけた記事のせいだ。
「僕も大変だったよ…いや、女の子に寄って来られるのは嫌じゃないんだよ?いや、むしろいい。すごくいい。でも、一々質問に答えるのが面倒だし…僕の場合どうやっても
女の子とイチャイチャしたい<サボりたい だからさ」
「お前のとこは瞬樹がいるから分散されるだろ?」
俺がそう言うと、答えたのは一年組の三人。
「えっと…瞬樹くんは…」
「なんか、教室に入ったら”俺の名は竜騎士シュバルツ!この俺と盟約を結び、共に剣を取ろう!終焉に抗えるのは我々だけだ!”とか言って、みんなをドン引きさせてたにゃ!」
「休憩時間には、半径一メートル内に誰もよらなかったわね」
なんだろう。すごく想像できる。アイツは本当にぶれないな。
そんなことを話しつつ、皆でご馳走をつまんでいると、誰かの携帯から通知が入った音が鳴った。
「あ、私です。えっと…」
携帯を取り出したのは花陽。しかし、画面を見ているとその表情は見る見るうちに変わっていく。
「た…大変です!!」
突然の大声に、永斗が口に含んでいたオレンジジュースを俺の顔にスパーキングさせた。
「あ、ゴメン」
俺が、ことりから渡されたタオルで顔を拭いていると、花陽はさらに続ける。
「ラブライブです!ラブライブが開催されることになりました!!」
永斗は、今度はコーラをまたも俺の顔面にスパーキングさせた。
「で、何?ラブライブって」
穂乃果が尋ねると、花陽はみんなに見えるようにパソコンでサイトを立ち上げる。
ちなみに、永斗は俺の制裁を受け、床で伸びている。
「スクールアイドルの甲子園。それがラブライブです!エントリーしたグループの中から、上位20位までがライブに出場。ナンバー1を決める大会です!噂には聞いていましたけど、ついに始まるなんて…今のアイドルランキングから上位20名となると、1位のA‐RISEは当然出場として、2位、3位は…まさに夢のイベント…チケット発売日はいつでしょうか…初日特典は…」
初めて会った頃の花陽はどこえやら。饒舌に話し続ける花陽。
人ってのは、好きなもののために、ここまで変われるもんなのか。
「って、花陽、見に行くつもりか?」
「当たり前です!」
その瞬間、花陽が形相を変えて振り返った。
うっわ、怖!さすがの俺でも、一瞬ガチでビビったぞ。
「何言ってんの、僕だってバッチリ予約するつもりだからね」
「お前はいい加減、やる気のベクトルがおかしいことに気づけ。ていうか、俺はてっきりμ’sが出場するのかと…」
そう言うと、花陽は腰が抜けたように、部屋の隅まで後ずさりし…
「そそそそそそんなっ!?私たちが、しゅ…出場なんて…お…恐れ多いです…!」
さっきの熱弁してたやつはどこ行った。
「でも、せっかくスクールアイドルやってるんだもん♪
目指してみるのも悪くないかも♪」
ことりは乗り気のようだ。他の奴らも表情の感じ、やりたそうな顔をしている。
当然、俺も例外ではない。これまでのμ’sがどこまで通用するか…正直、楽しみだ。
「決まりだな。ラブライブってのは、いわば全国大会なんだろ?高校で部活やってる以上、それは目指すべき目標だ」
「わーアラシが高校生ぶってるー。今まで学校通ったことないのにー」
「そろそろ一回埋めるぞ、クソニート」
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屋上にて。練習がある程度終わり、皆が柵によっかかったりして休憩している。
にこの奴は、どういうわけかまだ来てない。
あの野郎…相応の理由がなかったらぶん殴る。あってもぶん殴る。
それはいいとして、目標が決まったこともあってか、今日の練習は全員がいきいきしていたように見えた。俺と永斗も、正式なマネージャーとしての初仕事だ。
ラブライブは全国大会。μ’sは出来立てホヤホヤもいいとこの新人グループだ。望みは薄いと思われがちだが、そんなことは決してなかった。
先ほど、アイドルランクをチェックしたところ、順位は78位。遂に2桁に突入したのだ。
ライブは2回。結成して数か月。この成長の早さは異常といえるだろう。
こないだのPVのコメントを少し抜粋すると、こんな感じ。
『7人になったんですね!いつも応援してます!』
『衣装かわいい!これ本当に手作り!?』
『歌うますぎwwwこれで高校生かよwww』
『海未ちゃんバニーガールキタァァァァァ!!!』
『編集の神現るΣ(・□・;)』
と、なかなかの高評価。PVと同時にメイキング映像も投稿したところ、評価がうなぎ上りだ。
永斗のアイデアだったが、アイツもたまにはいい働きをする。
とにかく、今のμ’sは乗りに乗っている。ラブライブも夢ではないと思うが……
「皆!聞きなさい!大ニュースよ!!って痛い痛い!なにすんの!!」
休憩していると、ポーズを決めてにこが現れたので、とりあえずアイアンクローをかます。
「テメェこそ何してんだ。大遅刻だ。いっとくが、学生になったからと言って俺に先輩権限は通用しないぞ。俺が敬意を示すのは、尊敬するに値する人だけだ」
「今、サラッと失礼なこと言ったわね!
まぁいいわ。これを聞けば、全員私に感謝することになるから!!」
にこは俺の手をほどき、再びポーズを決め、もったいぶるように体をモジモジさせる。
なるほど…大体のオチは読めた。
「ふっふっふ…今年の夏、遂に開かれることになったのよ!
スクールアイドルの祭t」
「ラブライブですか?♪」
「ラブライブだよね?」
「ラブライブね」
「ラブライブにゃ」
「ラブライブですね」
「ラブライブだな」
花陽と永斗以外の全員から同時ツッコミを受け、あからさまにテンションが下がるにこ。
「知ってるの?」
「情報おそいにゃ」
「オイ、まさかそれで遅れたとか言わねぇよな?」
にこは固まったまま、顔だけを俺からそらす。
「よし、ちょっと来い。折檻してやる」
「放しなさいよ!あんた、このスーパーアイドルにこにーに何する気よ!」
俺がにこの手を掴み、連行しようとすると、今度は扉から瞬樹が。
「竜騎士、降臨」
「あ、ボッチの人にゃ」
「やかましいわっ!!」
…凛は本当に人の心を的確にえぐってくる。
「ボッチではない、孤高と言え!今日は貴様らに天報を運んできてやったのだ!」
天報?天気予報の略称か?それに、この先の展開は見えている。
「そう、遂に始まるのだ…スクールアイドルの聖戦…いや、ラグナロクがッ!」
それもうさっきやった。
他の奴らも予想していたのか、台詞が終わる前に無言で瞬樹を通り過ぎ、階段に向かっている。
最後に花陽が残り、瞬樹に一言。
「なんか…ごめんなさい…」
その後、屋上には涙目の瞬樹だけが残されたのだった。
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ラブライブに出場する。そのためには毎日の練習、それ相応の覚悟が必要となる。
だが、それともう一つ必要なもの。それは…
あの堅物生徒会長の許可である。
まぁ、普通に考えて無理だろう。どうせ、認められないって一蹴するに決まってる。
そこで俺たちが考えた案が…
「さらに入りにくい緊張感が…」
理事長に直接話をつけるということだ。
というわけで、全員が理事長室の前に。瞬樹もいつの間にか来ている。
海未曰く、部の要望は原則生徒会を通す必要があるらしいが、直接理事長のところに行くことは禁止されていないらしい。物は言いようだ。
それに、こっちのは親族であることりもいるし、理事長は何かと俺たちに目をかけてくれている。ワンチャンあるとしたらここしかない。
理事長室を前に、しばらく固まっていた穂乃果が意を決して扉をノックしようと…
「おぉ、お揃いでどうしたん?」
しようとしたところに、中から希が。
生徒副会長の希がいるということは当然、奥には生徒会長の絢瀬絵里が。
「……ちょっと急用が」
逃げ出そうとする永斗だったが、ことりがバッチリ制服の襟を掴んでいた。グッジョブ。
「何の用ですか?」
生徒会長の冷たい視線に、一同が固まってしまう。
そんな中、真姫が声を上げる。
「各部の申請は、生徒会を通す決まりよ」
「申請とは言ってないわ!ただ話があるの」
「まぁまぁ落ち着いて。ここは僕が」
珍しくも、永斗が真姫をなだめ、前に出る。
逃げ出せないから、せめてことを面倒にしたくないのだろうか。
「貴方は編入生の…」
「士門永斗です。うちのツンデレちゃんが失礼しました」
真姫が何か言いたそうだったが、永斗がどうするかを見てみたいので、俺が真姫を抑える。
「まぁ、僕自身は編入後の手続きで少し相談があったんですが、理事長に相談しに行こうとすると、そこのアラシが”廃校を打破する妙案”を思いついたとか言うもので、それなら直接お話ししたほうがよいかと」
「お前を信じた俺がバカだった。なに一人だけ責任逃れようとしてんだコラ」
俺と永斗が揉め合っていると、中から理事長が。
「どうしたの?」
一年組を置いて、俺たちは理事長室へ。
「へぇ…ラブライブねぇ…」
とりあえず一通りの説明をしたが、割と好印象なようだ。これなら…
「私は反対です」
「ですよね…」
俺は思わず声を漏らす。他の3人は少々驚いていたようだが、俺としてはこの反応は予想通りだ。
「理事長は学校の為に、学校生活を犠牲にするような事はすべきではないと仰いました。であれば…」
「そうね…でも、いいんじゃないかしら。エントリーするくらいなら」
「本当ですか!」
理事長のまさかのアッサリOK。
後ろの3人は声を上げて喜ぶが、生徒会長は納得してないようだ。
「ッ…!ちょっと待ってください!なんで彼女たちの肩を持つんですか!!」
「別に、そんなつもりはないけど…」
「だったら、生徒会にも学校存続のための活動を…」
「それはダメよ」
「…意味が分かりません」
俺は理事長に同意だ。生徒会長は完全に一人走りしている。
生徒会という集団に属しながらも、廃校を自分で何とかしようとしている感じ…
自分の力を過信し、散らばっている可能性を見向きもしない、無駄なプライド。
その愚かさは、俺が一番よくわかっている。
そんなことしなくたって、お前についていくやつなんか、いくらでもいるだろうに…
生徒会長はそのまま黙って理事長室を出ていき、希もそれに続く。
「フン、ざまぁみろってんのよ」
にこは去っていく2人を一瞥し、吐き捨てるように言う。
「ただし、条件があります」
理事長の言葉に、にこも顔を向け、一年組も扉を開けて身を乗り出す。
そして、その衝撃の条件が告げられた。
「勉強が疎かになってはいけません。今度の期末試験で一人でも赤点を取るようなことがあったら、ラブライブへのエントリーは認めませんよ」
「なんだ~さすがに赤点はないから、大丈夫か…と……」
周りを見て、ことりの言葉が止まる。
穂乃果が棚に手をついて、飲みすぎた会社員のような体勢でうなだれ、
にこは床に座り込み、涙目に。
凛は四つん這いの状態で落ち込んでおり、瞬樹にいたっては立ったまま白目をむいている。
かく言う俺は、土下座で条件の取り下げを要求しました。
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ー永斗sideー
「大変申し訳ございません」
「ません」
部室。机に土下座のような体勢で謝る凛ちゃんとほのちゃん。
美少女2人に謝られたら、普通なら即行で許すところだが、今回はそうはいかない。
うすうす感じていたけど、この子たち勉強もダメだったっぽい。
「小学校の頃から知ってはいましたが…」
「数学だけだよ!他は大丈夫だから!!」
「ほのちゃん、七四?」
「にじゅう…ろく?」
それもう数学じゃないです。算数です。
「凛ちゃんは?」
「英語!凛は英語だけはどうも肌に合わなくて…
いや、数学は大丈夫だよ!数学は!!」
かよちゃんの質問に、凛ちゃんは数学はできると激しく主張。よほど、九九もできないほのちゃんと一緒にしてほしくないのか。
「凛たちは日本人なんだよ!どうして外国語勉強しなきゃいけないの!?
永斗くんはわかってくれるよね!?」
「いや、僕は英語できるよ。地球の本棚の本は全部英語だし」
「永斗くんのバカーーーー!!」
正真正銘のバカは凛ちゃんたちだと思う。
「とにかく、これで赤点とって出場できませんでしたじゃ、恥ずかしすぎるわよ」
カオスになりかけていた状況をまとめてくれたのは、真姫ちゃん。いつもならこういう時、アラシがまとめるのだが…
「学校なんて…嫌いだ……」
そう呟きながら、アラシは体育座りで機能しなくなっている。
「アラシ先輩って、勉強できなかったの?」
「違うよかよちゃん。アラシは頭の回転は速いし、物覚えもいいんだけど…いろいろ訳ありで小学校にも通ったことがないから…」
そう、今回のテストでアラシが結果を出すというのは困難を極める。
数週間で小中学校+高校一年の内容、合計10年分を学習する必要があるのだ。
僕も条件的には同じだけど、一応天才で通ってるんで(キリッ)
「ま、まったくその通りよ!あんた達、赤点なんてとっちゃダメよ!?」
にこ先輩、声から動揺を隠せてませんが。ていうか数学の教科書反対ですが。
さらに言えば、その教科書2年生のやつなんですが。
その様子を見て、皆がこの人もダメだと察したようだ。
「で、問題は…」
僕はそう呟き、ポーズをとったままの竜騎士(笑)のほうへ振り向く。
一同、もう聞きたくないだろうが、代表して花陽が瞬樹に尋ねた。
「瞬樹くん、成績は…」
「我が天使のご所望とあらば、答えよう!
俺は中学の頃から、全教科のテストで2桁以上をとったことはほとんど無い!!」
本当に聞きたくなかった。
何が厄介かって、この男、既にアイドル研究部への入部申請を勝手に出したのだ。
校則上、入部から3か月は退部が認められない。追い出そうにも追い出せない。
さて、ここで話をまとめると
英語:凛
数学:にこ、穂乃果
全教科:アラシ、瞬樹
…マネージャーが足引っ張るってどういうことなんだろうか。
僕自身、アイドルは見る専だし、ラブライブにそこまで積極的ではないのだが、
この火のついたテンションが一気に冷め、気まずい空気の中過ごすのも面倒くさい。
かといって、僕が勉強教えるのも面倒だし……あ~帰ってゲームしたい。
「では、私とことりは穂乃果を。花陽と真姫は凛の勉強を見て、弱点教科を何とか底上げしていくことにします。後の3人は…」
「だから、私は大丈夫だって…」
「それはウチが担当するわ」
にこ先輩が謎の意地を張っていると、希ちゃんが扉を開けて現れた。
生徒副会長というだけあって、成績はいいのだろう。多分。
「だから言ってるでしょ、スーパーアイドルにこにーが赤点なんてとるわけ…」
にこ先輩がそう言ってると、希ちゃんは両腕を構える。まるで必殺技を放つ前のように。
僕は直感的にバットショットを取り出し、録画ボタンを押す。すると…
希ちゃんはにこ先輩に飛び掛かり、その平らな胸を鷲掴み。ごちそうさまです!
「嘘つくとわしわしするよ~?」
「わ、分かりました…教えてください…」
「はい、よろしい」
希ちゃんがにこ先輩から離れると、僕はバットショットをしまった。
おっと、皆さんゴミを見る目でこっちを見てますね。
「…永斗には後で話があります。ですが、後の問題はこの2人…永斗だけでは流石に…」
「先生とかはダメなの?」
「ダメだと思います。正式な補習ならともかく、部活の顧問などで忙しいでしょうから」
後で何言われるかは気になるが、それは置いておこう。
ほのちゃんの言う通り、だれか助っ人を呼ぶのがいいと思う。僕一人で二人とか絶対ヤだし。
「今は妥当な人物も見つかりませんし、とりあえずは2人は永斗が教えるということで…」
マジか…といっても、ここで反論したところでどうしようもない。
仕方ない。一辺従っとこう。
「よーし!それじゃあ、明日から頑張ろう!」
「今日からです」
海未ちゃんの容赦ない一言に、バカ5人はノックアウトされるのだった。
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放課後。鬼のような形相で海未ちゃんが部室に飛び込んできた。
「穂乃果たちはどこにいるのですか!!」
今日から放課後に補習を行う予定だったが、肝心の5人がどこにもいない。
まさかアラシまでいなくなるとは。
そんな中、おずおずとことり先輩が口を開く。
「えーっと…なんか、本屋で参考書を買ってくるとか…」
「逃げたに決まってるじゃないですか!!あーもう!なぜ穂乃果はいつもこうなのです!?」
そう言って海未ちゃんは外へと駆け出した。
「あ、僕も」
これに乗じて、探しに行くふりして帰ろう。どうせ見つかんないだろうし。
明日から頑張るんで、今日はゲームということで。
のはずだったんだけど…
校舎から出ると、校門には海未ちゃんと、黄色に近いベージュの髪をした少女。
そして、生徒会長さんも一緒に……
どうやら面倒な状況に直面したようです。
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ーアラシsideー
「参考書買いに行くんじゃなかったのか?」
俺は今、穂乃果、凛、にこ、瞬樹と一緒にファストフード店に。
きっかけはというと、穂乃果が参考書を買いに行くと言いだし、ほかの奴らもそれに賛同。
俺は残って勉強する予定だったのだが、半ば強引に連れてこられた。
「腹が減っては戦はできぬって言うでしょ?まずはハンバーガー食べて、そこから考えようよ」
机には既に、注文された大量のポテトとハンバーガーとドリンク。
まぁ、俺もちゃっかりパンケーキを買ってるんだが…帰ったら海未にどやされるだろうなぁ…
かと言って、さっきから何回も帰ろうとしているが、コイツ等はなかなか帰してくれない。
ここまで来たら、俺も道連れにする気だ。
俺は諦め、席の背もたれに寄りかかる。
すると、後ろの席から女性と男性一人ずつの声でこんな会話が聞こえてきた。
「ん~これ美味しいね!でも折角Japanに来たんだし、和食がよかったな」
「食べながらしゃべるな、素手で食べ物を掴むな、食べこぼしが過ぎる。年相応に、もう少しマナーというものを考えたらどうなんだ」
「え~アタシまだ20歳だから、そんな難しいこと分かんな~い」
「…日本に来たからと言って、少し浮かれすぎだ。
また仕事を忘れたら、今度は承知しないからな」
こんな会話を聞いていると、ウチの普段使えない相棒と重ねてしまう。この人も苦労してるんだろうな…
すると、更にこんな会話が。
「わかってるって~。で、今回は何だっけ?」
「忘れているじゃないか…今回の仕事は
仮面ライダーの討伐、メモリの回収、ファーストの近況報告だ」
おい待て。今なんて言った?
仮面ライダーの討伐?てことはコイツら、組織の刺客か?
瞬樹もこちらに鋭い視線を送ってきている。瞬樹もアイツ等に気付いたようだ。
今すぐ逃げるべきか…いや、あっちも俺達には気付いていない。組織の内情を探るまたとないチャンスだ。
「あーはいはい、そうだったね。ファーストもこの街にいるんだっけ?」
ファースト…スラッシュ・ドーパントの変身者…奴がこの街に?
「そうだ。レベル2の件以降、奴には行動を自粛させている。仮面ライダーの始末のついでに、奴の様子を見てこいとのことだ」
「そーゆー地味なことはソッチに任せるよ。とりあえずさ、勝負しない?
仮面ライダーが持ってるメモリは、C、J、O、R。あとDも増えたんだっけ?どっちが多くのメモリを奪えるか勝負しようよ!」
「軽率、不真面目、雑な見通し。そういう事が任務の失敗を招くんだ。
だが、まぁいいだろう。
ッ!?気付かれた!?
「お前ら逃げ……」
その瞬間、2つの席を隔てていた背の低い壁が、轟音と共に粉砕される。
俺と瞬樹は咄嗟に回避。瓦礫から穂乃果たちを守った。
土煙から出てきたのは、さっきの会話の主たち。
一人は茶髪の若い女。口には鋭い八重歯が。
もう一人は眼鏡をかけた長身の男。片足を構えた姿勢をとっている。
この男が蹴って壁を壊したのか?だとしたらふざけた脚力にも程がある。
「俺たちが会話を始めた途端、背後から2つ気配が消えた。居場所を教えているようなものだ。
所詮は子供…といったところか。いくぞ”ルーズレス”」
「OK”ラピッド”。任務開始だね。そんじゃ、アタシから先にいってみようか!」
《ティラコスミルス!》
女はメモリを首に挿し、姿が変化していく。
その姿は茶色い毛皮に覆われ、両腕には鋭い爪、口には大きな赤い牙と。それを収めるための鞘のような袋。言うならば虎のようなジャガーのような…ネコ科であることには間違いない。
全く…編入と同時に雲行きは最悪で、おまけに組織のエージェントに遭遇?
学生ってのは、楽な仕事ではないらしいな…!
事務所のこととを詳しく今回で書くと言っていたな。あれは嘘だ。スイマセン。
今回は最後にチラッとだけ、名もなきAさん考案の「ティラコスミルス・ドーパント」を登場させていただきました!
さて。次回はテスト後半になる予定です。戦闘シーン多めで長くなるかも?
感想、評価、アドバイス、オリジナルドーパント案などございましたら、よろしくお願いします!