ラブダブル!〜女神と運命のガイアメモリ〜   作:壱肆陸

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スパイス・ドーパント
「香辛料の記憶」を内包するガイアメモリを、とある大学院の学生が首に挿入することで生まれるドーパント。特殊な能力を持つ7つのスパイスを操ることができ、それらを調合することで新たなスパイスを作ることもできる。体を覆う鎧は未知の金属で形成されており、いかなる攻撃も跳ね返す。ただ、鎧のない腹部が弱点。

一言コーナー

アラシ「そういえば、7つのスパイスの中にはなんか変な奴もあったよな」
永斗 「あ~、”テイストスパイス”とか?」
アラシ「そうそう、あれって料理人とかに高く売れるんじゃないか!?
    倒す前にぶんどっとけばよかった!!」
永斗 「アラシが守銭奴キャラになったのは僕の責任だ
    だが僕は謝らない!(キリッ)」
アラシ「何言ってんだお前」


テストが終わってもなかなか時間が取れず、遅れてしまいました!

結構急いで書いたので、今回は短めになっております。
新たにお気に入り登録していただいた、彷徨さん スケリオンさん ありがとうございます!!


第10話 Oの一矢/死を呼ぶ怪人

「ハァ…ハァ…」

 

 

トンネルの中、何かから逃げるように走る1人の男。

その顔は恐怖で歪んでいるが、時折、時計を見ては喜んでいるようにも見える。

 

そんな男の前に、トンネルの向こう側から何者かが現れる。

そいつは、盆踊りなんかで見かけるお面、所謂”ひょっとこ”の面をつけている。

一見ひょうきんな面相が余計に不気味だ。

 

 

「そ…そんな……」

 

 

男の表情がみるみるうちに変わっていく。

その表情を表すには、”恐怖”という言葉では生ぬるい。まさに、純粋な”絶望”。

 

 

「残念、あとちょっとだったけど…」

 

 

機械によって加工された声が、トンネルに不気味に響き渡る。

 

男はさっきとは比べ物にならないような形相と剣幕で、反対方向へ逃げ出した。

 

そんな男を見据えるひょっとこ面の手の中には、一本の紫のガイアメモリ。

 

 

 

 

 

 

 

「ゲームオーバー」

 

 

 

 

 

 

 

数日後、トンネルから死体となった男が発見された……

 

 

 

 

 

 

 

__________________________________

 

 

 

 

「アラシく~ん!いませんか~?」

 

 

ある休日の昼頃、切風探偵事務所のドアをたたく穂乃果。

そして、その様子を見ている海未とことり。おなじみのμ’sの3人だ。

 

「ここがアラシ達の事務所ですか…」

 

「思っていたより…ボロボロ?」

 

ことりの言う通り、以前に穂乃果と海未(偽物)が来た時よりもなんだか廃れて見える。

 

「確かに…って、アラシ君いるんでしょ?勝手に入っちゃうよ!」

 

「ちょ…穂乃果!?」

 

返事が来ないことにしびれを切らした穂乃果は、事務所のドアを開く。

 

だが、その先にあった光景は…

 

 

 

床に突っ伏して倒れる、アラシと永斗の姿だった。

 

 

「「「アラシ(君)!?」」」

 

 

急いでアラシのもとに駆け寄る3人。

 

 

「死んでる…」

 

「そんな…」

 

 

「アラシ君ーーーーーーー!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うるせぇぞ…空腹に響く」

 

穂乃果が叫び終わると、アラシがゆっくり目を開けて毒づいた。

 

「あ、生きてた」

 

「生きてるよ!勝手に殺すな!!」

 

 

「ちょっと…誰も来てくれないの軽くショックなんだけど」

 

誰も見ていないところで、永斗も目を開けた。

 

「ゴメン、忘れてた♪」

 

言いたいことは山ほどあるが、相手がことりなので、永斗は出てきそうな文句をそっと飲み込んだ。

 

 

「でも、なんで倒れてたの?」

 

「こないだの壁騒動で、俺たちの借金は倍近くにまで膨れ上がった。

食べ物買う金はほとんどないから、エネルギーを無駄遣いしないようにしてたんだよ」

 

「ま、普通に空腹すぎて倒れてたってのもあるけどね」

 

「た…大変だね…」

 

その時、アラシの鼻がピクピクと動いた。

 

「ん?なんか食べ物の匂いしねぇか?」

「そういえば」

 

極度の空腹により、2人の五感は食べ物を探すことに特化していた。

これが、生物としての人間の本来の姿なのかもしれない。

 

「もしかしてこれかな?みんなで食べようと思ってケーキ持ってきたんだ♪」

 

そう言って、ことりは袋からケーキの箱を取り出した。

 

「マジか!よっしゃ、皿とフォーク持ってこい。あと包丁も!」

 

「え~…」

 

 

文句を言いながらも、永斗はしぶしぶ食器と包丁を持ってきた。

 

 

ケーキを切るため、アラシは包丁を手に取る。

袖をまくると、鍛え抜かれたアラシの腕があらわになる。その腕には大きな傷が一つついていた。

 

「アラシ、その傷は…?」

 

海未は、アラシの痛々しい傷を指さした。

 

「あぁ、前にいろいろあってな」

 

特に気にしていない口ぶりだが、その表情はどこか苦々しい。

永斗も、不自然に視線をそらしている。

 

「前から気になってたんですが…アラシはなぜ戦っているのですか?

年齢は私たちと変わらないのに…」

 

穂乃果とことりも、真剣な眼差しをアラシに向ける。

 

「それは……」

 

 

その時、突然扉が開いて中年の男性が駆け込んできた。

焦点のあってない目、ふらついた足取り、荒い息遣い。どう見ても普通ではない。

 

男はその焦点のあってない目でケーキを見つけると、わき目もふらずに飛びついた。

 

「オイ!何してんだよ!?」

 

貪るようにケーキを食べる男性。だが…

 

 

「うっ…うぁ…あぁ…」

 

 

 

男性は突然苦しみだし、そのまま倒れこんでしまう。

 

目の前の光景に恐怖する穂乃果たち。

そんな中、アラシと永斗は冷静だった。

 

 

「永斗、救急車呼べ。早く!!」

 

 

 

__________________________________

 

 

 

 

ーアラシsideー

 

 

 

数分後、男性は病院に搬送されたが、間もなく死亡が確認された。

 

死因は毒死。男性が死ぬ直前に食べたケーキを持ってきたことりは、警察で取り調べを受けている。

 

とは言っても、動機や状況から考えてことりが犯人でないのは明らか。

すぐに帰ってくるだろう。

 

今は俺と海未が警察署の前で待っている。

 

海未はしばらく一言も言葉を発していない。目の前で人が死んだんだ。無理もないか…

 

 

「悪いな、海未。巻き込んじまって…」

 

 

「アラシ……」

 

 

「これが俺たちのいる世界だ。俺たちはもう逃げられなくても、お前らは首を突っ込まずに済む。だから、できればお前らを巻き込みたくはなかった…」

 

 

だから俺は事件のことを言わないようにしていた。

 

こいつらはまだ普通に生きられる。それならいっそ…

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁああぁ!!」

 

 

 

 

その時だった。

突然、俺たちの前に大柄な男が現れ、大声を出してこっちに突っ込んでくる。

 

男は俺の前まで来たかと思うと、いきなり拳を振り上げ、俺に殴りかかってきた。

 

 

「くっ…!」

 

 

俺は男の攻撃をかわし、殴りかかってきた腕をつかむ。

 

「いきなりなにすんだよ!!」

 

「うるせぇ!!」

 

 

男は腕を振りほどき、さらに攻撃をしようとする。

 

そっちがその気なら仕方ねぇ…

 

 

「警察の前で喧嘩したくはねぇんだけどな!!」

 

 

俺は男がこぶしを振り下ろす前に、懐に入り込む。

そして、男の腹に強烈な膝蹴りを食らわせた。

 

「ガハッ…!」

 

腹を抑え、悶絶する男。

その背後に回り込み、俺は首元に手刀を叩き込む。

 

その瞬間、男は白目をむきその場に倒れ、気絶した。

 

 

「正当防衛だ。悪く思うなよ」

 

さて、警察に見つかると面倒くさいな。どこかに隠しに行くか。

別に証拠隠滅とかそういうのじゃねぇからな!

 

 

 

 

「いやいや、見事だったよ。どこのだれかは知らないけど」

 

 

さっきまで誰もいなかった場所に、いつの間にか誰かが立っていた。

そいつは変なお面をかぶり、機械で声を加工している。

 

常識的にも、本能的にも言っている。

 

コイツは普通じゃねぇ…!

 

 

「リアル百人組手、16人目で終了か。

もうちょっとは楽しめると思ったけど…」

 

そう言って、そいつはポケットの中をゴソゴソと探り出した。

ポケットの中から出てきたのは、俺たちが悪い意味で見慣れた、あの装置。

 

 

「ガイアメモリ…!」

 

「それでは…あの方も怪物…」

 

 

「へぇ、コレを知ってるんだ。君たちもコッチ側?それとも…」

 

 

《コーヌス!》

 

 

メモリを掌に挿入し、姿を変えていくお面男。

顔にはストローのような口がついているだけで、顔の口以外の部分は甲羅で覆われている。目や鼻のようなものは見当たらない。

手や足に指はなく、まるでウミウシのような形状になっている。見た感じ生物系のメモリのようだ。

 

 

「まぁどうでもいいや。僕は負けたプレイヤーを殺すだけだから」

 

「させるかよ!」

 

 

俺はダブルドライバーを腰に装着。そして、ジョーカーメモリを取り出し、ボタンを押した。

 

 

《ジョーカー!》

 

 

 

_____________________________________

 

 

 

ー永斗sideー

 

 

 

「永斗君!この本ここ置いとくね!」

 

「そういうのいらないから。しまってきて」

 

僕はほのちゃんと一緒に図書館なう。

 

要件は犯人調べ。地球の本棚を使えばスグなんだけど、今はお巡りさんの捜査で事務所に入れなくて”白い本”を取りに行けないから、こんなアナログな方法で調べてるってわけ。

 

「え~なんで~?ドラマとかだと本いっぱい読んで調べたりするじゃん!」

 

「今の時代にはコンピューターという便利アイテムがあるの知らないの?

ていうか、ほのちゃんが持ってきた本”今すぐにできる!簡単ダイエット!”とかばっかりじゃん。コレをどうやって使えっていうの?」

 

「でもホラ!動物図鑑とかあるよ!」

 

「それ、シートン動物記」

 

ほのちゃんは頭のほうがちょっと残念なんだよね…ま、かわいいからいいけど。

 

とりあえず、ちゃっちゃと終わらせようか。

キーワードを入力して、ググればホラ簡単♪このシステム作った人は天才だね~って…

 

 

「これって…」

 

 

その時、僕の腰にドライバーが現れる。

アラシが犯人に出くわしたか、それとも別のやつか…

 

後者がいいな…犯人だとしたら、相当面倒な相手になりそうだし…

 

「ほのちゃん、ちゃんとキャッチしてね」

 

「任せて!!」

 

 

《サイクロン!》

 

 

 

「変身」

 

 

______________________________________

 

 

 

 

《サイクロンジョーカー!!》

 

 

「『さぁ、お前の罪を数えろ!』」

 

 

ダブルへと変身したアラシは、コーヌスに殴り掛かる。

 

どう見たって、甲羅の部分は防御力が高い。狙うのは甲羅がない胴体。

 

 

「おらぁ!」

 

だが、コーヌスの胴体は非常に柔らかく、攻撃のダメージを受け流されてしまう。

 

 

「そんな攻撃じゃ、僕は倒せないよ?」

 

「うるせぇ!!」

 

 

それならと、ダブルは甲羅のある頭部を攻撃する。

直接的なダメージは与えられないにせよ、頭部に衝撃を与えることができるはずだ。

 

コーヌスの頭部に攻撃を加えるため、接近したその時。

 

 

「かかったね」

 

 

コーヌスのストローのような長い口から、一本の針のようなものが発射された。

 

ダブルは直感的に、その攻撃をすんでのところで回避。

 

 

「よくわかったね。さっきの当たってたら死んでたよ?」

 

 

『やっぱり毒だね』

 

アラシは訳も分からず針をよけたが、永斗はさっきの針の正体を知ってるようだ。

 

 

『男の死体から検出された”コノトキシン”という毒は、フグ毒に匹敵する猛毒。

全身に回ると即座に筋肉が麻痺し、数分で死に至る。

そして、その毒を自力で作り出せる生物が一種類だけいる。それは…

 

 

 

 

 

 

海の殺人鬼・イモガイ。君のメモリはソレでしょ?』

 

 

「コイツが…って、そういうことは先に言えよ!もう少しで死ぬとこだったんだぞ!?」

 

『アラシならダイジョブかな~って。ほら、アラシたまに毒吐くじゃん。言葉的な意味で』

 

「人を危険生物扱いすんな!!」

 

 

アラシと永斗がギャーギャー言ってるうちにも、コーヌスは毒針を発射する。

 

 

「うおっと!ヤベぇな、一発でも当たったらアウトなんだろ?」

 

『メモリを変えて対抗するよ』

 

ダブルはメモリを入れ替え、ドライバーを展開。

 

 

《ルナメタル!!》

 

 

向かってくる毒針を、鞭のようなシャフトで叩き落す。

 

さらに、シャフトを伸ばし隙のできたコーヌスを捕らえ…

 

 

「はぁぁぁぁl!」

 

 

一度上空に浮かび上がらせた後、地面へとたたきつけた。

 

 

「痛いなぁ、さすがは仮面ライダーだ。だったら…

 

 

()()()()()()()は、どうかな?」

 

 

コーヌスは体の向きを変える。その方向には、逃げ遅れた海未が!

 

 

「『海未(ちゃん)!!』」

 

 

コーヌスは毒針を発射。シャフトを伸ばすが、届かない。

 

毒針は無情にも、海未の首へ突き刺さった。

 

 

「ッ……テメェ!!」

 

 

激情したアラシはドライバーからメタルメモリを引き抜き、メタルシャフトに装填しようとする。

 

 

『アラシストップ!』

 

「なんだよ永斗!」

 

『コノトキシンには抗毒血清がない。血清を作れるとしたら…』

 

 

「そ、僕だけ」

 

コーヌスはそう素っ気なく答える。

それはコーヌスを倒せないことを意味していた。海未の命が握られている以上、主導権は相手にある。

 

 

 

「その毒は改良を加えてある。打ってからしばらくは無害だが、24時間を過ぎると猛威を振るう代物だ。

血清が欲しければ明日の正午、僕の指定した住所に1人で来なよ。そこで取引だ」

 

 

コーヌスはそう言うと、悠々と背中を向けて去っていった。

 

 

 

「クソが……!」

 

 

 

___________________________________________

 

 

 

ーアラシsideー

 

 

 

それから数十分後、海未は目を覚ました。

 

 

「アラシ…私は一体…?」

 

 

海未は針を打たれた瞬間、気を失ったから毒のことを知らない。

だが、奴の毒はそんなことお構いなしに海未の命を奪っていくだろう。それも、わずか24時間で…

 

 

 

 

俺のせいだ…

 

 

俺がこいつらを巻き込んだ、こいつらを危険にさらした…

 

 

最初から関わらなければ、こんな目に合わせずに済んだんだ…

 

 

 

 

 

「海未、俺は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

μ’sを抜ける」

 

 

 

 

 

「ッ……どういうことですか!?」

 

 

 

「これ以上お前らを巻きこむわけにはいかない。

 

じゃあな、あとの2人にもそう伝えといてくれ」

 

 

 

「待ってください!アラシ!!」

 

 

 

後ろから俺を呼び止める声が聞こえる。

 

 

だが俺は振り向かない…これ以上、もう誰も失いたくないんだ……

 

 




はい、海未ちゃんが大変なことになりました。
またしてもスイマセンでしたぁぁぁぁ!!

さて、μ’sを抜けたアラシは、毒に侵された海未ちゃんはどうなるのか…

ひとまず予告していたクイズの答えを発表したいと思います!

第1話 楽曲「ラブストーリーは突然に」とバラエティ番組の「笑神様は突然に」から
前者はともかく、後者は知ってる人多いんじゃないでしょうか?

第3話 「仮面ライダーオーズ」のサブタイトル〇〇と〇〇と〇〇の形
ライダーファンでは常識ですね。僕はこのサブタイ形式お気に入りです。

第4話 小節「女には向かない職業」から
名探偵コーデリア・グレイの初出作品です。W本編にも同じようなサブタイがあったと思います。

第7話 アニメ サーヴァンプ第3話「訪れなかった未来について」から
はい、完全に個人的趣味です。スイマセン。

第8話 金色のガッシュ 第169話「風を語る少年」から
アニメだと101話ですね。わかるかそんなもん!っておもったあなた、正解です。

今回のサブタイトルの「死を招く怪人」も「怪人」と「貝人」をかけてみました。
これからもこんな感じで続けていくつもりです!

感想、評価、アドバイス、オリドーパントのアイデア等ありましたらお願いします!

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