BLEACH外伝 〜千年後、史上最強と称された集団〜   作:二毛目大庄

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元字塾筆頭塾生・大六野厳蔵の『名案』により、人の言葉を話す獣を探しに来た元字塾生一行。

噂通り人の言葉を話す獣を竹やぶの中に発見した一行は、獣捕獲に向けて動くが、真衣野泰三始め、斧ノ木総二郎までその毒牙にかかっていった。

発案した大六野は、元字塾一行は、この事態をどう打開するのか。


怨嗟晴らさでおくべきか

「はうぁ!?」

「おう、気が付いたか」

「ここは…」

 

斧ノ木は周りを見渡した。

だだっ広い部屋。

暖かな布団。

そこには先程まで戦っていた竹やぶや砂地はなく、獣の姿も無かった。

 

「儂は…」

 

身体を起こし、攻撃を受けた辺りを手探るが傷は無い。

すっかり塞がったようだった。

 

「誇りに思えよ、俺は滅多に人を屋敷に上げねぇからな」

「そ、そなたは…雷迅の天示郎!?」

「けっ、十字斎の頼みでなけりゃ上げねぇんだがな」

「この傷はそなたが治してくれたのか…?」

「あぁ。ただの傷じゃなかったからな」

「ただの傷ではなかった…?」

「霊圧が混じってんだ、ただの切り傷じゃねぇだろう」

「霊圧!?」

 

斧ノ木は驚いた。

傷口に霊圧が残ってるとなると、やはりただの獣では無いという事か。

 

「あの獣は悪霊だったという事か…」

「いや、どちらかと言えばもっと高度な霊圧だ。例えば死神のような、な」

「死神…?」

「霊圧の感触から言うとな」

 

斧ノ木は再度驚いた。

獣の姿をした死神などいるのか。

しかし天示郎の話を聞けば聞くほど、疑問が浮かんできた。

仮に死神から受けた傷なら、薬草や傷薬を使ってもこんなに綺麗に治らない。

それが物の見事に塞がっている。

一体どんな手を使って…

 

「『回道』ってぇんだ」

 

天示郎は斧ノ木の考えている事を見透かしたように言った。

 

「回道ですと?」

「あぁ。お前を治した術だろ? まぁまだハッキリと名前は決めちゃいねぇがよ。 鬼道をちょっと応用したもんだ」

「すごい技術ですな」

「まぁ、な。お前の仲間を治した時も同じ事を言われたぜ」

「仲間…そうだ天示郎殿!仲間は、大六野は、獣は!?先程まで儂は戦っていたんだ!」

 

仲間と言われ斧ノ木は、つい先程まで仲間と共に獣と戦っていた事を再度思い出し、天示郎に詰め寄った。

 

「落ち着け、全部説明してやる。 まずその出来事は『先程』じゃねぇ」

「な…」

「3日前だ」

「バカな…儂は3日も寝ていたというのか…」

 

 

3日前ー

 

 

「斧ノ木ぃ!」

 

倒れゆく斧ノ木の身体を大六野はしっかと受け止めた。

そのまま地面にゆっくり寝かすと、キッと獣を睨んだ。

 

「貴様…!」

 

大六野は握っていた刀をギュッと握りしめそのままゆっくりと正眼の構えをとった。

怒りなのか恐怖なのか、鋒が僅かに震えている。

今にも自分に斬りかかりそうな男に対し獣は、嘲笑うかのように言った。

 

「ぬしらでは儂を倒すのは無理じゃ」

「なに!?」

「その証拠にほれ、鋒が震えておる」

「貴様…侮辱する気か!」

「ふん、儂を倒したいならノ字斎でも連れてこんかい」

 

大六野は考えを巡らせた。

獣は『ノ字斎』と発言した。

という事は、総師範の昔の知り合いか。

さらに、我々が関係者だという事を見抜いている。

相当高度な知能を持つ獣…

 

両者は対峙したまま動かなかった。

獣が指摘した通り、恐怖心が無いかと言えば嘘になる。

奴の間合いに入れば確実にやられる。

負傷者が2名、その他は戦意喪失。

数の利は最早無かった。

 

大六野は後悔していた。

あの時自分が提案しなければ。

あの時すぐに逃げていれば。

せめて沖牙師範に声を掛けていれば…

そこまで考えた時、

 

「助けが欲しいか?」

 

緊張感の中に凛と澄み渡る声が響いた。

その声は、絶望と後悔の曇天に覆われた大六野の心を澄み渡らせた。

その場に居た全員が声のした方向を見た。

 

「あなた様は…!」

 

真っ白な白髪、白い口髭。

死覇装に手甲をはめた少し細身の身体。

 

「夜影様!」

 

大六野は思わず、歓声にも似た声をあげた。

その声に元字塾の塾生が反応した。

 

「あれが噂の…!」

「あの方が『夜摩天』!?」

「しかし、横に居るのは誰だ…?」

 

夜影は獣と対峙すると、獣に挨拶した。

 

「久しぶりじゃのう『怨嗟人狼』」

「その名で呼ぶでない化け猫よ」

「今日は儂は散々じゃ。 瀞霊廷の化け物と呼ばれたり化け猫と呼ばれたり」

 

夜影はそう言うと、倒れている真衣野を見た。

 

「儂の陰口を言うだけ言って倒されよって…まぁよい。 人狼、お前の相手は儂では無い。 こいつじゃ」

 

そう言って夜影が身を翻すと、そこには五大貴族のあの男が立っていた。


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