BLEACH外伝 〜千年後、史上最強と称された集団〜   作:二毛目大庄

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皆様いつもありがとうございます、ニケモクです。

お気に入り登録や御感想なども頂き、遅筆で文才も無いのに大変に恐縮しております…

同じくBLEACHを愛する方、流れて辿り着いた方、もし宜しければ最後までご覧くださいませm(__)m


斧は空を斬り

よく渇いた砂地の上を、5〜6人の男が歩いて行く。

足並みは決して揃わない。

しかし歩調は崩れる事なく、ひたすら歩いて行く。

 

「とにかく西へ」

 

この言葉が一行をひたすら歩かせていた。

朝から出発して、時々休憩をし、そして日暮れに差し掛かった頃であろうか。

我慢の限界だったのか、1人の男が口を割った。

 

「どこまで行くのだ?」

 

一行はその言葉を聞いて、皆そう思っていたのだろう、一斉に立ち止まった。

 

「とにかく西へ…」

「大六野殿、本当に西に居るのだろうな、その化け物というのは」

「あぁ!その昔聞いた事がある。西へ西へ行った所に、人の言葉を話す化け物が居ると」

「総師範の力になる名案が、まさかその化け物を飼い慣らして新しい組織の力にするということだとは」

「人の言葉を話す化け物だぞ?必ずや十字斎殿のお力になってくれるはずだ!」

 

大六野と呼ばれた青年風の男は、問いただされ身振り手振りで説明した。

それを横目で見ていた大柄な丁髷の男がぽつりと言った。

 

「人の言葉を話す化け物… まぁ瀞霊廷にも居るけどなぁ。『夜摩天』と呼ばれる人猫が…」

 

『夜摩天』と聞いた途端、その場に居た者達はビクッと肩を震わせた。

 

「お、お主、もし聞かれていれば生きては帰れぬぞ」

「ははっ、まさか居るでなし聞かれてはいまい」

 

冗談を諌められた男は、そう一笑にふすと、話しを戻そうとした。

しかし戻せなかった。

皆の方へ振り向こうとした途端、竹やぶの方から感じる異様な気配に目が釘付けになったからだった。

 

「静かにしろ。 何か居る」

 

そう皆に注意を促すと、にじり、にじりとその気配に近寄った。

腰に携えた刀に手を掛けた瞬間、その気配が男に飛び付いた。

 

「真衣野(まさきの)!!」

 

周りの男達がそう叫ぶのと同時に、その影は再び竹やぶへと姿を消した。

その隙を見て男達は、倒れた真衣野の救出に向かおうとした。

しかし大六野がそれを制止した。

 

「待て、いま迂闊に動けば全員やられる…。誰かが囮になってあいつの気を引いてる間、一気に奴を叩く」

 

そう短く皆に指示すると、大六野は腰の刀を抜いて竹やぶへと向かって行った。

言葉は無かったが、大六野自らが囮になった事を瞬時に悟った男達は、このチャンスを無駄にしまいと、竹やぶを中心に扇状に広がった。

大六野は大きく息を吸い込むと、

 

「やぁやぁ我こそは『元流』開祖・山本重國が門下『元字塾』筆頭塾生、大六野厳蔵治朗衛門である!我と勝負いたせい!」

 

と名乗った。

草木だけでなく、大地すら震える程の名乗りだった。

それは、味方であるはずの元字塾一行すらも威圧した。

しかし、竹やぶからは一向に反応が無い。

しばしの沈黙が流れる。

 

その沈黙に耐えかねた扇の一角が、竹やぶにジリッと一歩踏み出した。

 

「馬鹿野郎!!」

 

踏み出した瞬間、動いた男に向けて影が襲い掛かった。

竹やぶから影が飛び出るのと同時に、大六野も動いた。

しかし間に合わず、影は男を鋭利な何かで切り裂くと、一行と一定の間合いを取り、対峙した。

対峙した姿を見るなり、大六野は声をあげた。

 

「こいつは…!」

 

尖った牙、鋭い爪、巨大な身体、太い尻尾。

姿を見せたのは、大きな獣だった。

 

「大六野殿」

「あぁ、間違いない。こいつが件の化け物だ」

 

それを聞いた獣は、口を開いた。

 

「ほう。儂は死神共の噂になっとるのか」

「!!」

 

一行は驚愕した。

大六野から聞いてはいたが、俄かに信じ難かった人の言葉を話す化け物。

それが目の前に現れた。

驚いたのと同時に恐怖した。

段々と事態を飲み込んできたのだ。

直面する程逃げ出したくなる現実。

それが目の前にあった。

緊張感からくる沈黙。

獣との間合いは保たれたままだった。

 

その沈黙を破った男がいた。

 

「斧ノ木総二郎、参る!!」

 

そう叫び、斧ノ木は刀を上段に構えたまま獣に斬りかかった。

袈裟斬りに振り下ろした刀は空を斬った。

すぐに気配を右に感じ、右に水平に刀を振ったが、そこに獣は居なかった。

 

「ここじゃ」

 

上から声が聞こえた斧ノ木は上を見た。

 

「斧ノ木、左だ!」

 

大六野が言うのと同時に、獣は息が掛かる程の距離に顔を寄せた。

 

「全く、人間は遅いのう」

 

その言葉を最後に、斧ノ木は気を失った。

 

 


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