BLEACH外伝 〜千年後、史上最強と称された集団〜   作:二毛目大庄

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歪な絆

尸魂界某所。

翅鳥(しちょう)流』と書かれた看板が掛かる道場の座敷に、男が4人集まっていた。

夜も更けており、座敷内を照らすのは、点在する蝋燭台の揺らめく炎のみであった。

 

「これで全員かね」

 

座敷の上座(かみざ)に座る、小柄で黒髪短髪の男が誰に問うでもなく言った。

その言葉に、座敷の末席に座る大柄な男が反応した。

 

(せん)だって除名になった2名を除けば、あとは副総代殿と玉輝(たまき)殿がおりませぬ」

「遅刻か…。 この大事な時に」.

 

小柄な男は苛立ちを隠さずにそう言うと、今度は上段の男が口を開いた。

皆が座る座敷より一段高い上段に座るその男は、肘掛けに肘をつき、頬杖をついていた。

 

葛貫(つづらぬき)・玉輝両名は、私の別命で動いておる。 気にせず続けてくれ」

「別命…? 東元坂(とうげんざか)殿、私は聞いておりませぬぞ」

「いずれ分かる事だ。 生熊(いくま)殿、今回の議題は何かね」

 

上段に座る東元坂と呼ばれた男は、半ば無理矢理に話を議題に戻した。

先程から場を取り仕切っている生熊と呼ばれた小柄な男は、自分の質問に答えられない事に不満そうな顔をしながらも、会合を続けた。

 

「…4日前、玉輝殿と虚『大帝』による現地調査が行われ、その場で護廷十三隊隊士2名と接触・戦闘した事は諸君らも承知の事とは思うが、その2名の内1名は重傷、1名は玉輝殿同行の虚によって連れ去られ、行方不明となった」

 

生熊は淡々と事実のみを報告する。

その報告を聞き、末席の大柄な男は率直な疑問を口にした。

 

「虚が連れ去った…?」

「その辺りについては玉輝殿がこの場に居ない為何とも言えぬが、通常()()()()()()()()()()()()()と言える。 よって連れ去ったにしても、今頃隊士は」

「殺害されている、か」

 

生熊の報告を締めくくるように、東元坂は最も考え得る結論を述べた。

自分が言うはずだった言葉を東元坂に言われた生熊は、東元坂を一瞬睨みつつも、報告を続ける。

 

「内通者によると、護廷十三隊はすでに我々の関与を疑っており、元八剣聖・武市(たけち)五十雨(いさめ)を謹慎処分にし、行方不明になった隊士の捜索と我々への捜査を開始しているとの事だ」

「報告御苦労。 議題は以上かね?」

 

報告を終えた生熊に東元坂が尋ねた。

 

「…あとは八剣聖の穴埋め、ですな」

「それなら心配に及ばん。 欠けた穴2名の内1名は調整に入っており、もう1名も中央四十六室より推薦を受けておる」

「さすが仕事がお早い」

「諸君らにも直にお目見え出来よう」

 

「…暫しよろしいか」

 

議題が落ち着き掛けた時、今まで一言も発さず黙って会合に参加していた男が、挙手と共に声をあげた。

その眼光は冷静な声とは裏腹に、熱を帯びていた。

 

龍堂寺(りゅうどうじ)殿、いかがなされた」

 

東元坂に龍堂寺と呼ばれた男は、死覇装の上に特別な(あつら)えものを羽織る、一見(いっけん)しただけで貴族と分かる出で立ちの男だった。

 

「お主ら、一体何を企んでおる」

「はて、何のことですかな?」

「とぼけるな。 五十雨が抜け、山本が抜けてからの初めての会合に、葛貫殿と玉輝殿が不在というは(いささ)か不審ではないか」

 

龍堂寺の鋭い視線が、蝋燭台に灯る炎を揺らがせ、東元坂を射抜く。

東元坂は決して目線をそらす事なく、その視線を悠々と受け止めている。

 

「お主らの目的は、本当に20年前の再現だけか?」

「それ以外に何が有ると?」

「そうだな、例えば」

「私のやり方に不満かね」

 

龍堂寺が例を出そうとした瞬間、東元坂がそれを遮った。

 

「…不満だとすれば如何(いかん)とする」

「龍堂寺、20年前の真実を皆が知れば、名門貴族・龍堂寺家はどうなるだろうな。 五大貴族との差を埋めるどころの騒ぎではないぞ?」

「なっ…! まさか…」

 

東元坂は頬を醜く歪ませた。

異論の1つも挟ませるつもりのない、そんな表情だった。

 

「安心せい。 お前が裏切らん限り、私の口からは言わんよ。あれは我らの()()()()だ」

「貴様…」

「今は深くは知らんでも良い。 ただ動け。 八剣聖の名誉と復権の為にな。 諸君らの各門人(もんと)にも伝えおいてくれ。 決戦は近いと」


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