BLEACH外伝 〜千年後、史上最強と称された集団〜   作:二毛目大庄

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現世調査

上野国(こうずけのくに)某所。

死覇装に身を包んだ男2人が、ある一点を囲み話をしていた。

 

「確かこの辺りだったよな」

「そう聞いている」

 

先日発生した、七番隊の隊士が虚と男に襲撃された事件。

死覇装の男2人は、その調査の為にここを訪れていた。

 

「しかし、虚が再発生するとは…」

「全くだ。 虚は"()"が突然変異して発生するもの… そうならぬよう現世派遣の者達が魂葬していたはずだが」

「原因は何なんだろうな」

「それは分からんが、今はともかく消えた七番隊士と虚の行方をー」

 

「それが良いね」

 

死覇装の男達は、突如会話に割り込まれた事もさることながら、この場では決して聞こえようの無い、聞き覚えのある声に身体を強張らせた。

2人が振り向くと、そこには髪の毛に癖のある、長身の男が立っていた。

 

「ししし、志波隊長!?」

 

志波隊長と呼ばれたその男は、2人の直属の上司であり、護廷十三隊十番隊隊長を務める志波本家・志波(しば)陸鷹(りくおう)であった。

 

「やぁ」

「なぜこちらに…?」

「んー、(かわや)?」

 

護廷十三隊に儼乎(げんこ)として君臨する13人の(かしら)の1人が隊舎を空けてまで現世に来た理由。

それは聞き返さずとも理解した。

20年前絶滅させた虚の再発生とその消失、そして七番隊士の蒸発。

今回の件はただの消失事件ではない、上はそう判断したという事だろう。

死覇装の男の1人はそこまで考えると、上司がついたあからさまな嘘を流し、話を進めた。

 

「しかし隊長、限定霊印も無しに現世に来て大丈夫だったんですか?」

「俺ぐらいになると、自分の鎖結(さけつ)魄睡(はくすい)を限定封印するぐらい、訳無いさ」

 

陸鷹はそう答えながら自らの身体をさすると「さて」と言葉を紡いだ。

 

「調査続行しますか」

 

この人はそういう人だ。

口調こそ軽いものの、的確な指示・人心を掌握する人柄・自ら率先する態度。

他の隊長のような威厳さは無いが、それが十番隊の特徴と言えよう。

隊士2人は絶大な安心感と共に、陸鷹と調査を再開した。

 

 

「何も無いねえ」

「報告の通り、確かに虚と七番隊士と思われる死神1名分の霊圧しか残ってません」

「という事は、虚に殺害された、或いはー」

 

陸鷹はそこで一旦言葉を区切った。

陸鷹が立てた仮説、それは自分で立てた仮説にも関わらず、俄かに信じ難いものであったからだ。

 

「虚が連れ去ったのかも知れない」

「虚が!?」

 

隊士2人は驚いた。

虚が死神を連れ去る事。

その出来事自体衝撃的な出来事だが、虚はただ闇雲に破壊と殺戮を行う、感情も思考も無い化け物と隊士達は周知していたからだ。

何らかの目的が有って連れ去ったのだとしたら、それは虚が知能を持っている事を指す。

 

「虚は一体どういう目的で…」

「それは分からない」

 

陸鷹はきっぱりと言い切った。

 

「可能性があるとすればその2つしか考えられない。 席官とはいえ、虚を倒す事は出来ないと思う。 伊座屋(いざや)七番隊第四席が、虫の息とは言え生きて発見されたのは奇跡と言えるね」

「それ程までに虚は…」

「強いよ。 ここに残ってる霊圧から読み取るにね」

 

一般隊士では読み取る事の出来ない情報を、陸鷹は霊圧の残滓(ざんし)から次々と読み取った。

しかし依然として、消失した七番隊士・斎賀(さいが)栄八(えいはち)の行方は分からなかった。

 

「しょうがない。 こうなったら…」

 

陸鷹は地面から手を離し立ち上がると、2人の部下に向き直った。

 

「"魂魄(こんぱく)番人(ばんにん)に伺おうか」

「魂魄の、番人…?」

「ただ、ちょっと厄介なんだよねえ」

 

陸鷹と隊士2人の3人はその場を後にし、尸魂界へと帰還した。


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