BLEACH外伝 〜千年後、史上最強と称された集団〜   作:二毛目大庄

30 / 43
こんにちはニケモクです。
この話から新章突入になります。
新章では、原作の久保帯人先生が構築されて来た設定・世界観を大事にしつつ、自分なりの物語を展開させていきたいと思います。
勿論素人ですので、設定上の矛盾点など出て来るかとは思いますが、優しくお見守り下さい。


虚侵軍篇
別種再生


日本武蔵国播羅(はら)

黒装束に身を包み、腰に刀を差す男が2人、闇夜を駆け抜けていた。

 

魂葬(こんそう)は今ので最後か?」

「今ので最後なら、何で僕らは走ってるんです?」

「…それもそうだな」

「まったく、ちょっと考えたら分かるでしょ。 そんなんだから隊長にも怒られるんですよ?」

 

坊主頭の部下風の男が呆れたように吐き捨てた。

と同時に、上司の男が拳骨を飛ばす。

 

「っ痛!」

「隊長にどやされてる事は言うんじゃねぇ…」

「へーい。 しかし、何でまた"正"まで魂葬しに行くんです? "()"になってからでも良いんじゃ?」

「てめぇは統学院で何も聞いてねぇんだな、てめぇこそ怒られろ。 …今までは"(せい)"から"負"になってからでも魂葬は遅くなかったんだが、ここ数年で"負"の魂が突然変異するようになっちまったんだ」

「突然変異…?霊体が?」

「あぁ。 仮面を被り、胸に孔の空いた化け物…虚にな」

 

虚の名前を聞いて、坊主頭の死神は立ち止まった。

 

「ちょっと待って下さい仁峰さん… 僕、あんなの相手出来ないですよ。 学院の教科書でしか見た事ない化け物なんて…」

 

仁峰と呼ばれた上司風の男・伊座屋(いざや)仁峰(じんほう)は、さっきとは打って変わって穏やかな顔つきになり、坊主頭の男・斎賀(さいが)栄八(えいはち)を諭した。

 

「安心しろ。 突然変異は兆しだけだ。 それに、虚は20年前に尸魂界に攻め込んできて以来、その姿をただの1度も現わしちゃいない。 全世界にいる死神が"負"の速やかな魂葬を続けているからだ」

「ただの1度も…」

「そうだ。 お前もここの担当死神になったからには、"負"の魂は速やかに魂葬するんだぞ?」

 

再び走り出した2人の死神は、程なくして"正"から"負"になりかけている魂のもとに到着した。

魂は人型ではあるものの、霊圧の感触は濁りつつあり、自我を失いかけている様子だった。

仁峰は栄八に手本を見せるように、斬魄刀の柄尻の部分・(かしら)を霊体の額に当てがい、魂葬を完了した。

 

「危ねぇ危ねぇ。 もうすぐで"負"になるところだったぜ」

「仁峰さん、もし"負"になったら魂葬はどうしたら良いですか?」

「やり方は変わらねぇよ。 ただし、虚の場合は…」

 

仁峰はその先の言葉を紡がず、途中で止めた。

口に出した事が起こり得る。 仁峰はそう考える男だった。

 

「虚が出た時の事は気にすんな。 出る事はまず無いだろうよ」

「はい! じゃあ今日はこんな所で… っ!?」

 

栄八が帰り仕度を始めようとしたその時、突如近くで巨大な霊圧の高まりを感じた。

しかし、すぐに消えたその霊圧の感触は濁っていた。

 

「こいつぁ…」

「仁峰さん、今のは一体?」

「霊圧そのものは"負"だ。 しかし」

 

「いい線行ってるねぇ」

 

仁峰が状況の分析をしていると、突然2人の背後から声が聞こえた。

振り向くと、そこには陣羽織を着た1人の男が立っていた。

 

「誰だてめぇ!」

 

2人は咄嗟に退き、間合いを取った。

仁峰は刀に手を掛け、抜刀の構えをとっている。

 

「誰だとはご挨拶だね」

「仁峰さん、こいつの霊圧…」

「あぁ。 霊圧知覚に疎い俺にも分かる。 こいつは各隊長に匹敵する霊圧だ。 しかし、こんな隊長知らねぇ」

「そりゃそうだ。 俺は隊長じゃないからね。 しかし、そこらの隊長より強いよ」

 

陣羽織の男は自分の実力を掛け値なしにそう告げる。

その口調は非常に軽いものだった。

 

「隊長達より強い、だと? そんな死神居るなんて知らねぇぞ」

「おっと、おしゃべりはそこまで、時間だ。 して、君達は何故ここに来た?」

「何故って… 突然"負"の霊圧の高まりを感じてここに…」

 

栄八が戸惑いつつ答える。

 

「そうだねぇ。では "負"の魂はどこにいった?」

「何をさっきからおかしな事を言ってやがる! 消えたって事はてめぇが魂葬したんじゃねぇのか、死神だろてめぇ」

 

仁峰は男の問いの意味が分からなかった。

魂の霊圧を消す方法は、魂葬以外に知らなかった。

厳密に言うと知らなかったわけではない。

知ってはいたが、その方法はあまりにも非現実的で非人道的だった。

 

「覚えておくと良い。 魂の霊圧が消える形は今の時点では2つ。 1つは魂葬。 そしてもう1つは」

 

陣羽織の男は親指で自分の胸を2回突いた。

 

「まさかてめぇっ…!!」

「そして魂が爆散した後再び形成される、こいつが」

 

3人の前にみるみる霊子が集まり、巨大な霊圧を伴った、仮面を付け胸に孔の空いた巨大な化け物を構築した。

その霊圧は"正"でも"負"でもない、まったく別種の霊圧だった。

 

「虚だ」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。