BLEACH外伝 〜千年後、史上最強と称された集団〜 作:二毛目大庄
この話から新章突入になります。
新章では、原作の久保帯人先生が構築されて来た設定・世界観を大事にしつつ、自分なりの物語を展開させていきたいと思います。
勿論素人ですので、設定上の矛盾点など出て来るかとは思いますが、優しくお見守り下さい。
別種再生
日本武蔵国
黒装束に身を包み、腰に刀を差す男が2人、闇夜を駆け抜けていた。
「
「今ので最後なら、何で僕らは走ってるんです?」
「…それもそうだな」
「まったく、ちょっと考えたら分かるでしょ。 そんなんだから隊長にも怒られるんですよ?」
坊主頭の部下風の男が呆れたように吐き捨てた。
と同時に、上司の男が拳骨を飛ばす。
「っ痛!」
「隊長にどやされてる事は言うんじゃねぇ…」
「へーい。 しかし、何でまた"正"まで魂葬しに行くんです? "
「てめぇは統学院で何も聞いてねぇんだな、てめぇこそ怒られろ。 …今までは"
「突然変異…?霊体が?」
「あぁ。 仮面を被り、胸に孔の空いた化け物…虚にな」
虚の名前を聞いて、坊主頭の死神は立ち止まった。
「ちょっと待って下さい仁峰さん… 僕、あんなの相手出来ないですよ。 学院の教科書でしか見た事ない化け物なんて…」
仁峰と呼ばれた上司風の男・
「安心しろ。 突然変異は兆しだけだ。 それに、虚は20年前に尸魂界に攻め込んできて以来、その姿をただの1度も現わしちゃいない。 全世界にいる死神が"負"の速やかな魂葬を続けているからだ」
「ただの1度も…」
「そうだ。 お前もここの担当死神になったからには、"負"の魂は速やかに魂葬するんだぞ?」
再び走り出した2人の死神は、程なくして"正"から"負"になりかけている魂のもとに到着した。
魂は人型ではあるものの、霊圧の感触は濁りつつあり、自我を失いかけている様子だった。
仁峰は栄八に手本を見せるように、斬魄刀の柄尻の部分・
「危ねぇ危ねぇ。 もうすぐで"負"になるところだったぜ」
「仁峰さん、もし"負"になったら魂葬はどうしたら良いですか?」
「やり方は変わらねぇよ。 ただし、虚の場合は…」
仁峰はその先の言葉を紡がず、途中で止めた。
口に出した事が起こり得る。 仁峰はそう考える男だった。
「虚が出た時の事は気にすんな。 出る事はまず無いだろうよ」
「はい! じゃあ今日はこんな所で… っ!?」
栄八が帰り仕度を始めようとしたその時、突如近くで巨大な霊圧の高まりを感じた。
しかし、すぐに消えたその霊圧の感触は濁っていた。
「こいつぁ…」
「仁峰さん、今のは一体?」
「霊圧そのものは"負"だ。 しかし」
「いい線行ってるねぇ」
仁峰が状況の分析をしていると、突然2人の背後から声が聞こえた。
振り向くと、そこには陣羽織を着た1人の男が立っていた。
「誰だてめぇ!」
2人は咄嗟に退き、間合いを取った。
仁峰は刀に手を掛け、抜刀の構えをとっている。
「誰だとはご挨拶だね」
「仁峰さん、こいつの霊圧…」
「あぁ。 霊圧知覚に疎い俺にも分かる。 こいつは各隊長に匹敵する霊圧だ。 しかし、こんな隊長知らねぇ」
「そりゃそうだ。 俺は隊長じゃないからね。 しかし、そこらの隊長より強いよ」
陣羽織の男は自分の実力を掛け値なしにそう告げる。
その口調は非常に軽いものだった。
「隊長達より強い、だと? そんな死神居るなんて知らねぇぞ」
「おっと、おしゃべりはそこまで、時間だ。 して、君達は何故ここに来た?」
「何故って… 突然"負"の霊圧の高まりを感じてここに…」
栄八が戸惑いつつ答える。
「そうだねぇ。では "負"の魂はどこにいった?」
「何をさっきからおかしな事を言ってやがる! 消えたって事はてめぇが魂葬したんじゃねぇのか、死神だろてめぇ」
仁峰は男の問いの意味が分からなかった。
魂の霊圧を消す方法は、魂葬以外に知らなかった。
厳密に言うと知らなかったわけではない。
知ってはいたが、その方法はあまりにも非現実的で非人道的だった。
「覚えておくと良い。 魂の霊圧が消える形は今の時点では2つ。 1つは魂葬。 そしてもう1つは」
陣羽織の男は親指で自分の胸を2回突いた。
「まさかてめぇっ…!!」
「そして魂が爆散した後再び形成される、こいつが」
3人の前にみるみる霊子が集まり、巨大な霊圧を伴った、仮面を付け胸に孔の空いた巨大な化け物を構築した。
その霊圧は"正"でも"負"でもない、まったく別種の霊圧だった。
「虚だ」