BLEACH外伝 〜千年後、史上最強と称された集団〜   作:二毛目大庄

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自分の眼の前で山本元柳斎重國が連行された。
その危機的状況を伝えるべく麒麟寺天示郎は、柳の間に関係者を集め、今後の対策を協議した。


柳の間にて

元字塾本部の一角「柳の間(やなぎのま)」。

そこに大勢の男達が集まり、数人は立っているものの、車座(くるまざ)になり、深刻そうに話をしていた。

その中の1人、髪の毛を頭頂部で括った男が、向かいに位置する場所に座っている、髪の毛をカチカチに固めて腹巻をした男に尋ねた。

 

「麒麟寺殿、いまの話は本当か!?」

「あぁ。 四十六室の奴ら、本気で元柳斎を潰すつもりだぜ、ありゃあ」

「やはり、護廷隊結成の動きが奴らの癇に障ったのか…」

 

麒麟寺と呼ばれた男・麒麟寺天示郎は、先日自分の身に起きた出来事を事細かに話した。

その話を聞いた他の男達から漏れ出る声に、車座の一員・雀部長次郎が即座に反応した。

 

「いえ、中央四十六室の者達は、自分達に力が無いのは分かっているはず」

「では何故…?」

「恐らく、八剣聖(はちけんせい)の者達が圧力を掛けたのではないかと」

 

八剣聖が関わっている。

その場に居た何名かの者は心当たりが有った。

八剣聖とは、山本元柳斎重國もその名を連ねる、尸魂界全土から選び抜かれた8人の剣豪の事を指し、先の虚侵攻戦でも、強大かつ巨大な虚から尸魂界を守り抜き、その存在感を大いに示した。

車座に加わっていた京楽源之佐(きょうらくげんのすけ)浮竹禅郎(うきたけぜんろう)は以前、八剣聖である賽河原(さいがわら)康秀(やすひで)生熊真(いくましん)と戦闘・接触しており、その事実を知っている元字塾の面々の記憶にも新しかった。

 

「八剣聖が…」

 

柳の間に集まっていた一部の者達からは、驚きにも似た声があがった。

それに対し、壁に凭れ(もたれ)掛かっていた四楓院夜影(しほういんよるかげ)は、全てを見透かしたような口調で言った。

 

「まぁ確かに、先日の戦いにも奴ら勢揃いじゃったしのう」

「やはり奴らも気になっとったのか。 護廷隊と、尸魂界の未来を掛けたあの大一番を」

「みたいじゃの」

 

夜影が『先日の戦い』と言い、狛村陣右衛門(こまむらじんえもん)が『大一番』と表現した戦いとは、大衆が見守る中、山本と卯ノ花烈が繰り広げた死闘の事だった。

 

八剣聖が絡んでいるとなると、今回の件は一筋縄ではいかない…

そんな雰囲気が柳の間に充満しつつあったが、まるでそんな空気を薙ぎ払うように天示郎が声を上げた。

 

「八剣聖だか何だか知らねぇがよ、俺ァ行くぜ」

「天示郎殿!?」

「待て天示郎、元柳斎が捕らえられてる所は中央四十六室。 あそこは…」

 

その場に居た者達が、口々に驚きと反対の声をあげる。

 

「あそこが何だってんだ」

「あそこは…」

 

完全禁踏区域(かんぜんきんとうくいき)じゃ」

 

柳の間に居た者達は驚いた。

外から突如声が聞こえた。

そして何よりこの声はー。

元字塾の斧ノ木総二郎(おののきそうじろう)が障子を開ける。

 

「なっ…」

「先生!」

「元柳斎!」

「元柳斎殿ォ!?」

 

座っていた者は立ち上がり、立っていた者は山本の元に駆け寄った。

 

「何じゃ、死人が生き返ったみたいな顔をしよって」

「先生が四十六室に連行されたと、天示郎殿から聞き及びまして…」

 

山本が冗談交じりに言った言葉も、その場に居た者達にとってはあながち冗談などではなく、中央四十六室から戻って来れた事自体、奇跡に近い事だった。

それほど中央四十六室の権力と執行力というのは、尸魂界では絶対的であった。

 

「よくぞご無事で」

「中央四十六室と言えども同じ死神。 尸魂界を想う気持ちは同じじゃ。 話せば分かってくれるわい」

「元柳斎が戻ってきたとなると…」

「あぁ。 あと2人だけ、仲間に引き入れたい奴がおる。 和尚、付いてきてくれるか」

「無論じゃ」

 

声を掛けられた兵主部一兵衛は立ち上がると、柳の間に集まった面々に「任せておけ」とだけ言い、山本とその場を後にした。

 


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