BLEACH外伝 〜千年後、史上最強と称された集団〜 作:二毛目大庄
「そろそろですね」
死覇装を来て走る男達の集団。
その先頭を行く、髪を茶筅に結った男、雀部長次郎が言った。
その言葉を聞いて男達に緊張の表情が浮かぶ。
男達が目指す目的地は真央地下大監獄。
師と仰ぎ、先生と慕う男がいま、尸魂界空前絶後の大悪人を解き放とうとしている。
雀部長次郎曰く、隊長に引き入れる為だという。
思うに護廷隊とは、卯ノ花烈のような巨悪から尸魂界を護る為にあるべきであり、逆に解き放つとはどういう事なのか。
その真意を聞く為、男達は師の元へと走っていた。
真央地下大監獄に到着した男達の目に飛び込んできた光景は、状況が特殊な事をありありと物語っていた。
そこには、山本十字斎重國と卯ノ花烈が対峙していただけでなく、滅多にお目にかかれない五大貴族の現当主が全員揃っていた。
「な、なぜあの方達が…!」
「どうやら、ただの隊長勧誘という訳じゃなさそうだねぇ」
真っ先に声を上げたのは浮竹禅郎だった。
尸魂界に居を構える同じ貴族といえども、五大貴族は別格だった。
貴族として名を連ねている京楽源之佐も冷汗を浮かべていた。
「おぬしらも来たのか」
「!!」
「よ、夜影様!?」
先程まで遠くに見えていた五大貴族の1人・四楓院夜影が、音も無く一瞬で男達の元へ現れた。
「あの距離を一瞬で…」
「そこまで驚く事はなかろう」
「夜影様、これは一体?」
「さあのう、儂らが聞きたいわい。 裏廷隊より、十字斎が地下大監獄に向かっとると聞いて来てみたらこの有様じゃ」
「裏廷隊が…」
裏廷隊が動いているということは、中央四十六室は総師範の動きを把握しているという事だろう。
同行していた元字塾筆頭塾生の大六野厳蔵は、そう考えを巡らせた。
しかし、その考えは何某があげた驚きの声によって中断された。
「なっ、あれは…」
何某、斧ノ木総二郎がら驚きの表情で指差した方向には、麒麟寺天示郎と握菱鉄裁、兵主部一兵衛と二枚屋王悦がいた。
天示郎はいま到着したのか、驚きの表情を浮かべている。
「雷迅に刀神… 一体今から何が起きるのだ」
「どうやら役者は揃ったようじゃの。 ゆくぞ」
そう言い残し、夜影は再び驚異的な瞬歩で、今度は山本と烈の近くに行った。
それが合図かのように、一堂に会す機会など二度とないような面子が、山本と烈の周りに参集した。
「…やはり来たか」
山本が口を開く。
「おうおう、随分な口の聞き方じゃねぇか。 十字斎、どういう事か説明してもらおうか」
「決着をつける為じゃよ」
「決着…?」
「200年前、儂らはこやつの強大な力の前に"負け"た」
「何を言ってやがる。 おめぇと鉄裁で監獄にぶち込んだろうよ」
「確かに尸魂界としては勝利かも知れん。 しかし、儂の勝利ではない」
「なっ…」
天示郎は思い出した。
十字斎とはこのような男だったのだと。
勝ち負けにこだわり、負けず嫌い。
自分が最強の死神だという自負心。
そうでなければ気が済まない自尊心。
しかし、それが十字斎らしさ。
天示郎はニヤリと笑った。
「そうだな。 おめぇがそこまで言うならやれ。 存分に」
天示郎は山本から離れた。
それを確認すると山本は、一呼吸置いて大きな声をあげた。
「皆の者、これより先は手出し無用! 『元流』山本十字斎重國、推して参る!」