BLEACH外伝 〜千年後、史上最強と称された集団〜   作:二毛目大庄

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鸞翔鳳集

握菱鉄裁は現場に到着するなり、思わず言葉が漏れ出た。

 

「遅かったか…」

 

そこには、見慣れた顔が幾つもの死体となって転がっており、完全に戦場と化していた。

死体が血の海を成し、少し時間が経過したのだろうか、鴉に啄ばみ始められている死体もあった。

死体の中には辛うじて生きている者も居たが、最早呼吸しているだけの状態だった。

その戦場の真ん中辺りに、血まみれの女と、死覇装を来た複数の男達が対峙していた。

 

「重國殿!!」

「鉄裁か…」

 

鉄裁は瞬歩で男達に近づいた。

男の一人、山本重國は額の大きな傷から血を流し、立っているのが精一杯といった様子だった。

 

「これは一体…?」

「見てのとおりじゃ。 この女に八剣聖も他の皆もやられてしもうた」

「八剣聖まで…!?」

 

鉄裁は血まみれの女に目をやった。

女は血まみれだったが、大きな傷は受けていないようだった。

 

「すべて返り血、という事か」

「おや? 新たなお客様ですか?」

「姿形は女なれど、中身は悪鬼そのもの。 八剣聖の仇、皆の恨み、晴らしてくれよう」

 

鉄裁はそう言うと、手に持った錫杖を地面に突き立てた。

錫杖がシャン、と音を立てる。

 

「いま八剣聖、と言いましたか?」

「知っているのか」

「噂には」

 

女はそう言うなり、初めは噛み殺していた笑いを堪えきれず、やがて大きな声で笑いだした。

ひとしきり笑った後に言った。

 

「八剣聖?先程の弱いのが!? そこに転がって虫の息になっているのが私の棲む世界で一番強い八人ですって? 笑わせてくれる!」

「なっ…」

「八剣聖が総出で私一人に敵わないのなら、私はこう名乗りましょう…『剣八』、と」

「傲りが過ぎるぞ」

 

鉄裁は怒りで打ち震えていた。

この女は必ずやここで仕留めねばならぬ。

そして永遠に封じねばならぬ。

 

「重國殿…しばしの間、目を閉じていて下され。 禁術を使います」

 

鉄裁は両手に霊力を込め始めた。

 

 

 

「おう、もう着くぜ」

「む…」

 

鉄裁は天示郎の声により現実に引き戻された。

中央四十六室より禁じられた縛道を使い、あの日あの時重國殿と共に封じたあの女、卯ノ花烈。

数多くの悪人を見てきたが、あの女だけは別格だった。

もう二度と会う事は無いと思っていたが、何者かに解放されたいま、200年前と同じように封じれるのだろうか。

 

「心配する事はねぇよ」

 

鉄裁の思考を読み取ったように天示郎は言った。

 

「いくら卯ノ花烈が強ぇからって、奴は200年も地下監獄に居たんだぜ。 そんな奴に俺らが負けるはずはねぇ」

「…そうですな」

 

鉄裁は天示郎の言葉でも胸騒ぎを消しきれなかった。

一体誰が、何の為に卯ノ花烈の封印を解いたのか。

 

やがて、真央地下大監獄周辺に着いた時、見えてきた光景に天示郎は思わず声を上げた。

 

「何じゃこりゃあ…!」

 

そこには山本十字斎重國と対峙する卯ノ花烈は勿論、五大貴族の現当主五人に加え、上級貴族の浮竹と京楽、山本の流派である元字塾の面々と狛村陣右衛門と雀部長次郎までいた。

およそ考え得る、今現在の尸魂界の戦力の最高峰を集めたような顔ぶれがそこに集まっていた。

 

「何じゃ、おんしらも来とったんか」

 

この男達を抜きには最高峰は語れない。

天示郎が振り返った先には兵主部一兵衛と二枚屋王悦がいた。

 

「何じゃ何じゃこの面子は」

 

一兵衛は嬉しそうにそう言った。


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