BLEACH外伝 〜千年後、史上最強と称された集団〜 作:二毛目大庄
「なぜ私を解放するのですか?」
卯ノ花烈は山本十字斎重國に尋ねた。
しかし、答えが返ってくる事はなかった。
数刻前もそうだった。
ー付いてくれば解る。
そう言って地上を目指す間も、山本と烈の間に一切会話は無かった。
ただただ黙々と歩いていた。
烈は感じていた。
ようやく自分に訪れた解放の時。
しかし何かがおかしい。
山本は何を考えているのだろう。
なぜ自分を解放するのか。
身体に科せられたままの封印はまだ解かれてはいなかった。
「そろそろだ」
烈の思考は山本の声によって中断された。
目の前の重厚そうな鉄扉が開く。
瞬間、目に飛び込んでくる光。
それは、200年間闇に閉ざされた烈の眼球を大いに刺激した。
瞬間、鼻に香る地上の風。
それは、地上に出て来た事を否応無しに感じさせてくれた。
第七監獄ではひたすらの闇だった。
聞こえてくる音も、うめき声や水のしたたる音ぐらいで、他の囚人と話しをする事もほとんど無かった。
もう慣れたとは言え、腐臭・死臭・黴の臭いなどひどいものだった。
もう二度と感じる事の出来なかったであろう環境に、烈は思わず目を閉じた。
「どうじゃ、久しぶりの地上は」
「えぇ、気持ちの良いものですね」
「お主のような者でも、感傷的になるのだな」
「あら、草木を愛でる心まで捨てた覚えはありませんよ。 そろそろ聞かせてもらいましょうか。 なぜ私を地上に連れてきたのか、その理由を」
烈は山本に相対した。
本当に解放するのか。
200年前に山本自らの手で地下監獄に封印した自分をなぜ再び地上に戻したのか。
その答えを聞くために。
「理由か」
山本はぽつりと言った。
「決まっとるじゃろう。 お主と、そして200年前の儂に決着をつける為じゃよ」
「な…」
「
「なんと…!」
「おう、どうしたい」
「俄かに信じがたいことですが、封印が解かれました」
「おめぇが掛けた縛道の封印が…?」
「えぇ。 これは厄介な事になりそうですぞ」
「解かれたってのは誰なんだ」
「卯ノ花、烈…!」
天示郎は烈の名を聞くなり立ち上がった。
「あぁ!? あいつは今捕らわれてるはずじゃねぇのか?」
「まさか…自力で」
「いや、そいつはあり得ねぇ。 おめぇの縛道が自力で解けるハズがねぇ。 裏で手を引いてる奴が居るはずだ」
鉄裁は錫杖を手に取り、同様に立ち上がった。
「ならば」
「あぁ。 行くぜ、真央地下大監獄によ」