BLEACH外伝 〜千年後、史上最強と称された集団〜   作:二毛目大庄

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異界の地

ー何年ぶりであろうか、ここを訪れるのは。

 

山本十字斎重國は、そう心に自問し巨大な地下への入り口に立った。

 

ー簡単には行くまい。

 

山本は決心したように地下へ一歩踏み出した。

真っ暗な道をひたすら歩いて行く。

目指すは、ここ真央地下大監獄の中でも2番目に深い、第七監獄『大炎熱』。

気の遠くなるような時間をかけ、ようやく目的の場所へ辿り着いた。

いかにも分厚そうな重厚な鉄扉に刻まれた『大炎熱』の文字。

山本は鉄扉の前に立った。

 

勿論四十六室に許可は得ていない。

却下されるのは目に見えていた。

尸魂界史上空前絶後の大悪人を今から解き放つ。

かつて自らの手でこの場所に封印した、あの大罪人を。

 

山本は一歩前に進み出て、扉に手を付けて力を込めようとした。

 

「なりませんぞ」

 

その、重く身に響くような声が山本の行動を制止した。

 

「…断十郎か」

「奴を解き放つなど言語道断。 四十六室が許してもこの『 髪愧烏の断十郎』が許しませぬ」

「四十六室にも話は通しておらん」

「ならば尚のこと。 200年前、重國様を含めた八剣聖が、全く通用しなかったのをお忘れか!」

 

断十郎は語気を強めた。

何としても奴を解き放ってはならぬ。

重國様をお止めする。

その気概に満ち満ちていた。

 

「通してくれ」

「なりません。 尸魂界を混乱の坩堝に落とすおつもりか」

「…御免」

 

一瞬だった。

山本は瞬歩で断十郎の背後に廻ると、首にトンッと手刀を当てた。

断十郎の巨体が地面に沈む。

 

「重國…様」

 

断十郎は途絶えいく意識の中で、山本に言葉を掛けた。

 

「奴は破界の者…くれぐれもその力、使い間違えぬよう…」

 

山本の真意を見抜いた言葉を背中に受け、再び鉄扉に手を付け、開け放った。

扉一枚隔てたそこは、世界が異なっていた。

深い深い穴を見ているような漆黒。

死臭・腐臭が漂う、呼吸するだけでむせ返る臭い。

山本は改めて思う。

ここは真央地下大監獄 第七監獄『大炎熱』。

果てぬ贖罪を続ける場所。

これから解き放つ者は、稀代の大罪人。

 

山本は奥に進んで行く。

頼りは点在する霊圧のみ。

その時、声がした。

霊圧に比例したような、野太い声だった。

 

「やっと来よったか、待ちわびたぞ」

「貴様…」

「儂か?儂は…」

 

山本は男の名も聞かず奥に進んだ。

男の引き止める声を背中に受け進み続けた。

 

山本は霊圧も何も無い所で止まった。

そして声を掛けた。

 

「なぜ霊圧を消している?」

「なぜ?貴方に会いたくないからに決まっているでしょう?」

「…儂と一緒に来い、烈」

 

山本の頬を汗が伝った。


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