BLEACH外伝 〜千年後、史上最強と称された集団〜   作:二毛目大庄

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尸魂界に存在する全死神の中で、特に剣術が優れた者8人に与えられる称号『八剣聖』。
その八剣聖の一角・賽河原康秀に強襲された京楽源之佐と浮竹禅郎。
辛くも凌いだ2人は、山本十字斎重國に相談するべく元字塾を訪れた。




元字塾道場にて

「なに、賽河原(さいがわら)殿が?」

「えぇ。先生と元字塾の皆様なら何かご存知かと」

 

先ほど起きた出来事を一通り浮竹から聞いた斧ノ木は、驚きを隠せなかった。

賽河原は元字塾総師範・山本十字斎重國と並び称される八剣聖の一人であり、元字塾の客員師範でもあった。

 

「その一緒にいた小柄な男…同じ八剣聖の生熊(いくま)(しん)かも知れんな」

「生熊…真」

「生熊流開祖『違天(いてん)の真』と呼ばれた生熊が敵方とするなら、相当厄介だな」

「もしかすると、二人だけじゃあないかもしれないよ」

 

浮竹と共に元字塾道場に来ていた京楽が口を開いた。

 

「どういう事だ?」

「…先生は八剣聖に護廷隊の話はしていたのかい?」

「うん? 確か、八剣聖の総代に話をしたと言っておられたが」

「やっぱりね」

「京楽、どういう事だ?」

 

京楽は浮竹の質問には答えず、顎髭に手を当て、考え込んでいた。

 

「先生はどこに?」

「廷内を散歩に行くと言っておられたが…」

「瀞霊廷内を? 流刃若火(りゅうじんじゃっか)を持って?」

 

京楽の指摘で初めて斧ノ木は、床の間に山本の斬魄刀がない事に気付いた。

 

「一体先生はどこに…」

 

斧ノ木が不安に駆られていく中、ドタドタと廊下を走る音が聞こえた。

 

「丿字斎殿ぉぉぉぉ!」

「な、何だ?」

「こ、この声は…!」

 

その声と足音は、真っ直ぐ斧ノ木達の居る部屋に向かってきた。

勢いよく障子の戸が開く。

 

「丿字斎殿ぉ!」

「ええい、静かにせんか長次郎!!」

「も、申し訳ございませぬ!」

 

長次郎と呼ばれた男は、地面に手を付きすぐさま謝った。

全ての視線が長次郎に注がれる。

『長次郎』の名に浮竹が反応した。

 

「こ、この男が長次郎…?雀部長次郎忠息(ささきべちょうじろうただおき)!?」

「おや浮竹殿、ご存知で?」

「存じるも何も、雀部長次郎殿の名を知らぬ者は居ないでしょう」

「恐れ多きお言葉…」

 

長次郎は座りが悪そうにした。

浮竹は続ける。

 

「その剣の腕前もさる事ながら、『十字斎』の生みの親。 そして何より…卍解修得者」

 

修得した者は例外なく尸魂界の歴史に名を刻まれるという卍解。

その困難さはその場に居た誰もが嫌という程解っていた。

その卍解をこの目の前に居る優男はとうの昔にやってのけた。

その事に同じ死神として、憧れと少しの嫉妬を男達は持っていた。

 

「それで、丿字斎殿はどちらへ?」

 

長次郎の問いで話は本題へ戻った。

 

「いや、それが分からんのだ」

「先生は斬魄刀を持って『散歩』に行ったらしい」

「斬魄刀を持って…?」

「あぁ。 四十六室に見つかると厄介だ。 常時帯刀は許可されていない」

「丿字斎殿が斬魄刀を所持し向かうところ… 心当たりがあります」

「なんと…!」

 

場がざわつく。

 

「それは、」

 

その行き先を聞いて、驚きを隠せた者はいなかった。

一体先生は何を考えているのか。

なぜそんな所に斬魄刀を持って向かっているのか。

山本の意思を汲み取れた者は居なかった。

 

「とにかく我々もその場へ向かおう」

 

斧ノ木の提案で、浮竹・京楽・雀部・斧ノ木・大六野がその場へ向かった。


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