BLEACH外伝 〜千年後、史上最強と称された集団〜   作:二毛目大庄

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恐るべき一振り

金属を叩く、甲高い音が潮風に乗って辺りに響く。

甲高い音だが、軽くはない。

重く、魂のこもった音。

その音を聞きながら、兵主部一兵衛はその音のする屋敷へと入って行った。

屋敷の中には髪を後ろで結わえた男が、柄の長い細身の金槌で金属を打ち続けていた。

 

一兵衛はその男を邪魔しないように、作業が見える座敷に座った。

屋敷の外から聞くのと内で聞くのとでは、音の迫力が全く違った。

 

あぁ、この男は魂を削ってこの作業に打ち込んでいるのだ。

 

そう思ったところで、男は大きく振りかぶり、渾身の力を込めて金槌を叩き込んだ。

作業が終わったのか、金属を並々水の張った樽に入れる。

水は激しく音を立てて蒸発していった。

 

「そろそろ来る頃だと思ったよ、和尚」

 

男は一兵衛に背を向けたまま話掛けた。

金槌を作業台に置き、一兵衛の座っている座敷へ座った。

 

「分かっていたなら話が早い。王悦、おんしの力が必要だ」

「十字斎の創る新たな組織の隊長…か」

「そうだ」

 

王悦と呼ばれた男、二枚屋王悦は、使用人にお茶を2つ入れるよう頼むと、額の汗を拭ってから言った。

 

「和尚には悪いけど、断るよ」

「…」

「十字斎のアレには、錚々たる面子が揃っているそうじゃないか。 僕の力は必要ないだろう? それに群れるのが嫌いで、一人で刀を鍛っているのに」

「そう言うと思ったが、今は状況が全く変わっている」

「というと?」

 

一兵衛は淹れて貰ったお茶を一口飲むと続けた。

 

「十字斎が組織を創ったのは、虚も勿論だが、それ以上の危険に備えている」

「それ以上の危険…?」

「あぁ。 尸魂界を取り巻く危険は、虚だけでは無いという事だ。 その危険に対して、おんしの力が必要だ。その強大な霊力は、斬魄刀の職人で終わらすのは余りにも惜しい」

「僕には何の力も無いよ」

「儂らにその言葉が通じると思うか?」

 

王悦は一兵衛の話を聞き終えると、スッと立ち上がった。

 

「分かった。 但し条件が有る」

 

一兵衛は承諾して貰った安堵と、王悦が何を言い出すのかという不安とで、顔が曇った。

 

「条件?」

「僕は今まで自分が鍛った斬魄刀は、全てその持ち主と在り処を把握している。その中で、恐ろしい程の霊力を付け始めている刀が一振り有る」

「『刀神』が恐れる一振りか…」

「あぁ。その刀を探して欲しい。 持ち主と刀の名はー」

 

一兵衛はその名を聞くと、その目をひん剥いた。

その後に笑いが込み上げた。

 

「はっはっは、そこには今、十字斎が向かっている」

「十字斎が?」

「奴は、新たな組織の隊長候補だよ」

「そんな…!十字斎の奴、何を考えているんだ…」

「色物・強者・変わり者揃いの隊。 奴がどう纏めるか見ものだのう」

 

一兵衛はそう言うと、残っていたお茶を飲み干した。


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