BLEACH外伝 〜千年後、史上最強と称された集団〜   作:二毛目大庄

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圧倒的な力で元字塾生達を圧倒する化け物『怨嗟人狼』。
元字塾筆頭塾生・大六野厳蔵すらも刃が立たない中、四楓院夜影と五大貴族のあの男が助けに現れた。

この勝負の行方は。
そして怨狼の意外な正体とは。


師弟の絆

「怨狼、貴様もこやつに会いたかったじゃろ」

 

夜影がそう告げて身を翻すと、そこには五大貴族の一人、朽木彩之丞(さいのじょう)が立っていた。

 

「さ、彩之丞…!!」

「久しいな、怨狼」

 

彩之丞の姿を見るなり怨狼は動揺した。

しかし、それを自分で掻き消すように大きく口を開け笑いだした。

 

「ふはははは! 貴様、生きておったか!」

「あの程度の傷を与えただけで、死んだと思う貴様の浅慮ぶりには反吐が出る」

「首でも刈っておくべきじゃったか」

「貴様如きに出来ると思うか?」

「なら今やって見せようか」

 

両者はそう会話を交わしながら、お互いの間合いギリギリまで歩みを進めた。

怨狼の間合いに彩之丞が入った途端、怨狼が飛び掛かった。

彩之丞はそれを瞬歩で躱すと、すぐに背後に廻った。

背後に廻ったのが分かっていた怨狼は、地面に着地するなりすぐに横に飛び退いた。

 

「鈍い!」

 

そう言って怨狼は爪を剥き出しにし、地面を蹴って斬り裂きに掛かった。

その爪は彩之丞を斬り裂いたかに見えたが、それは残像だった。

 

「鈍いのはどちらだ」

 

彩之丞はすでに怨狼の背後に廻っていた。

 

「な…に…!」

 

怨狼の身体に刀の刃が滑り込んで行く。

怨狼は瞬時に身を反転させると、彩之丞と向き合った。

そのまま彩之丞を蹴り上げると間合いを取った。

 

「ぐふっ…」

 

彩之丞は上空に身を投げ出されたが、すぐに受身を取り、怨狼に対峙した。

 

「やるのう」

「前の時とは同じように行かぬぞ」

「確かに、この姿のままの儂がここまで追い詰められたのは久しぶりじゃわい」

 

両者は再び間合いを探りあった。

次に間合いに踏み込んだのは怨狼だった。

 

「尸魂界の土となれい!」

 

そう言いながら渾身の力を込め地面を蹴って一気に間合いを詰めた。

その早さに合わせるように彩之丞は後ろに飛んだ。

怨狼の攻撃は地面をえぐるのみで、空振りに終わった。

彩之丞は着地するのと同時に地面を蹴り、今度は前に飛んだ。

怨狼はそのスピードについて行けず動けない。

「ちっ」と一言だけ言うとその場に立ち竦んだ。

 

彩之丞の刀をもろに受けた怨狼。

傷が深いのか、身体から血が止めどなく流れる。

怨狼はすでに肩で息をしていた。

 

「勝負あり、じゃな」

 

夜影がそう言ったのと同時に、怨狼は倒れ込んだ。

その姿を認めるなり彩之丞もその場に片膝をついてしゃがみ込んだ。

 

「怨狼を運べ」

 

元字塾生に短くそう指示すると、夜影はその場を離れようとした。

 

「お待ち下さい、夜影様!」

 

大六野が呼び止めた。

 

「これは一体…お二人はこの獣を捕まえに来られたのですか?」

「なんじゃお主達、十字斎の指示でこやつを捕まえに来たのではないのか?」

「いえ、我々は総師範の役に立とうと勝手に…」

 

そこまで聞くと夜影は声に出して笑った。

 

「これが師弟の絆というやつか…まさに阿吽の呼吸じゃな。 よいか、この化け物の名は人狼・狛村陣右衛門。 十字斎が隊長の一人にと見込んだ人物じゃ」

「この獣が、隊長…!?」

「あぁ。それで儂らはこやつを誘いにきた」

 

大六野は驚きを隠せなかった。

新たな組織の隊長陣は曲者・強者・色物揃いと聞いていたが、まさか獣まで隊長だとは…

さすが総師範、我々にはとても考え及ばぬ。

 

「まぁ詳しい話は帰って十字斎に聞けい。 儂は彩之丞を抱えて帰らねばならぬから失礼するぞ」

 

そう言って彩之丞を肩に担いだ夜影はその場を離れた。

大六野を始めとする元字塾生達も、怨狼と負傷者を担ぎ、その場に後にした。

 

 

 


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