造られた4本腕   作:habanero

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怒り

管制室は静まり返っていた。

 

真吾が最後に見せた瞬時加速中に軌道を変える業に。

 

 

 

戻るとリーナとレーナ、それと楯無が出迎えてくれた。

 

「「パパー!おかえりー!」」

 

「うん、ただいま」

 

「お疲れ様」

 

「あぁ、ありがとう」

 

二人を撫でながらお礼を言う

 

「それじゃあ戻りましょうか」

 

その後は、復活したオルコットが一夏と戦い、当然だがオルコットが勝った。

 

 

 

土曜の夜

 

コンコンッ

 

「俺が出るからお皿並べといてくれないか?」

 

「「はーい!」」

 

ガチャ

 

「こんばんわ、ご馳走になりにきたわ♪」

 

「こんばんわ、どうぞ上がってください」

 

「ええ♪」

 

「「あ!こんばんわ!」」

 

「こんばんわ♪お手伝いしてるの?」

 

「「うん!」」

 

「偉いわねぇ…本音も見習って欲しいわ」

 

楯無は苦笑いしながら二人の頭を撫でる

 

「それで何を作ったのかしら?」

 

「ああ、これだ」

 

真吾はテーブルに次々と料理を置く

 

トマトのクリームパスタ

野菜スープ

 

「いい匂いだわ…」

 

「じゃあもう食べようか。では」

 

「「「「いただきます」」」」

 

「このパスタおいしいわ!」

 

「それはよかった。リーナとレーナはどうだ?」

 

「「うん!おいしい!」」

 

「そうか、よかったな。…リーナ、ソース付いてるぞ」

 

リーナの口周りをティッシュで拭く

 

「ありがと、パパ」

 

「パパあーんして!」

 

「あ!ずるい私もして!」

 

「しょうがないな・・・」

 

レーナ、リーナの順にパスタをフォークで絡め取り、口に運ぶ

 

「リーナちゃんとレーナちゃんは甘えん坊さんなのね」

 

「ああ、可愛いだろ?」

 

「もう親バカね…確かに可愛いけど」

 

コンコンッ

 

「ちょっと出てくる」

 

そう言いドアに向かい、開ける

 

そこには少し恐怖が混じった目をしているオルコットが立っていた。

そのはずだ、今まで隠されていた目、身体を初めて見たのだから。

 

「…っ!や、夜分遅くに申し訳ありません」

 

少し動揺したようだが、持ち直した。流石貴族

 

「…何のようだ」

 

「先日での非礼の謝罪を…。理由無く侮辱した事申し訳ありませんでした。」

 

謝罪しに来たらしい。

 

「…別にいい」

 

「…え?」

 

「…別にいいと言っている」

 

オルコットは深々と頭を下げた。

 

「…ありがとうございます」

 

「…用はそれだけか?」

 

「ええ、それでは失礼します」

 

そのままドアを閉める。

 

オルコットの事については別に気にしていない。

どうでも良かったからだ。

だが、真吾の身体を見ても何も言わなかったのは、恐怖して何も言えなかったのか、察してくれたのかは、分からない。

 

席に戻り再び料理を食べる。

 

 

 

 

HR―――

 

「では、クラス代表は織斑一夏で決定だ」

 

織斑先生が告げると周りの女子達が歓声や拍手をし始めた。

 

「え、なんで俺!?俺は負けたし、やるなら真吾かオルコットさんだろ!?」

 

「…」

 

「山田は別の用件があるから無理だ、オルコットは…」

 

「わたくしは辞退しましたわ。これから伸びるであろう一夏さんにクラス代表を任せたいと思います」

 

すると、席を立ち上がり

 

「先週は無礼な発言をしてしまい、申し訳ありませんでした」

 

「そこまで気にしないで!」

 

「謝ってくれるだけ十分だよ!」

 

打ち解けあう女子

リーナとレーナが算数を始めた。

 

「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、オルコット、山田。試しに飛んでみろ」

 

オルコットと俺はすぐにISを展開させるが織斑一夏は少しもたつきながら展開させる。

 

俺に恐怖と拒絶の視線が飛ぶ。

やはりと言うべきか、まだクラスのほとんどが拒絶している。

 

「よし、飛べ!」

 

一斉に飛ぶ

 

『織斑!遅いぞ!スペック上の出力では山田はともかく、オルコットの機体より上だぞ』

 

織斑先生曰く、ヴィヒターは人間が扱える代物ではないらしい。

 

オルコットは織斑一夏に教えていると

 

『織斑、オルコット、山田、急降下と完全停止をやって見せろ。』

 

「了解です!」

 

「…わかりました」

 

俺とオルコットは難なく成功。

 

『織斑、早く降りて来い!』

 

「は、はい!」

 

急降下を行う。だが

 

ドオオオオォォォンン!!

 

織斑一夏は完全停止ができずに地面に直撃した。

 

 

 

 

 

 

「「「「織斑くん!クラス代表決定おめでとう!」」」」

 

放課後、食堂を貸し切って織斑一夏のクラス代表就任を祝うパーティーが行われていた。

 

その頃、真吾達は生徒会室に向かっていた。

 

コンコンッ

 

「山田だ」

 

ガチャ

 

「どうぞ」

 

真面目そうな女性が出てきた

 

「失礼する」

 

「「お邪魔します」」

 

「はい、いらっしゃい♪」

 

目の前のイスに楯無が座っていた

 

「で、何の用だ?」

 

「生徒会メンバーの顔合わせを含めた親睦会をやろうと思ってね。」

 

「なるほどな、他のメンバーは?」

 

「もうすぐ来ると思うから、座ってていいわよ」

 

「そうか」

 

二人を先に座らせるとお菓子と紅茶が出てきた。

 

「どうぞ」

 

「「ありがとーうーちゃん!」」

 

「どうも…ん?うーちゃん?」

 

「そういえばまだ言ってなかったわね、会計の布仏虚ちゃんよ」

 

「生徒会会計をしています、布仏虚です。よろしくお願いします」

 

(布仏?布仏本音は姉妹なのか?)

 

「リーナとレーナがお世話になっているようで、ありがとうございます」

 

「いいえ、リーナちゃんとレーナちゃんが来てから会長がちゃんと仕事をするので助かってますよ」

 

「ちょ、ちょっと虚ちゃん!?」

 

 

ガチャ

 

「かんちゃん連れて来たよー」

 

「本音ちゃんとノックしなさい」

 

「細かいことは気にしないよーお姉ちゃんー」

 

「まったく…」

 

「ほら、かんちゃん!」

 

「ど、どうも…」

 

「そろったわね、それじゃあ自己紹介しましょうか」

 

「生徒会書記の布仏本音だよー」

 

「わ、私は違うけど一応…更識簪です」

 

「一応もう一度紹介します。会計を担当しています、布仏虚です」

 

「それじゃあ私も、生徒会会長をやってる更識楯無よ」

 

「山田真吾だ、こんな身体だがよろしく頼む」

 

「リーナです」

 

「レーナです」

 

「「よろしくお願いします」」

 

「うん♪自己紹介も終わったし、食事にしましょうか」

 

その後、リーナ、レーナ、楯無、本音、簪は仲良くカードゲームをしていた。

その様子を真吾、虚は微笑ましく見ていた。

 

 

教室内――――

 

 

騒がしいクラス内では2組に転入生が来るとの話題で持ちきりだった。

 

「でもまあ、専用機持ちは1組と4組だけだし大丈夫ね!」

 

するとドアが開き

 

「その情報古いよ!2組も専用機のクラス代表になったのよ!」

 

ドアの前に立っている髪をツインテールにした背の低い少女がいた。

 

織斑一夏はその少女を見て

 

「お前鈴か!?」

 

「そうよ!久しぶりね一夏」

 

どうやら二人は知り合いらしいが

 

バシイィン!

 

「っい!だ、だれy…ち、千冬さん!」

 

「もう、HRの時間だ、自分のクラスに戻れ」

 

戻る前に織斑一夏に

 

「一夏!また後で来るからね!逃げないでよね!」

 

そして、戻っていった。

 

(これまた面倒な予感が…)

 

そして授業が始まった。

 

 

授業中オルコットと篠ノ之箒は何度も織斑先生の出席簿で叩かれていた。

 

 

二人を連れ食堂に来ていた。

二人に席を取って貰い、俺は自分を含め3人分の食事を取って来る事にした。

 

「ちょっとあなた!」

 

今朝の少女が話しかけてきた。

確か名前は…

 

(鳳鈴音…だったかな)

 

「…なんだ」

 

「一夏以上にニュースで取り上げられる男性操縦者が気になっただけよ…間近で見るとすごいわね」

 

「…そうか、他には?」

 

「いや無いわ、ちょっと上の人間があなたに接触しろとうるさくてね。これで終りよ、それじゃあ」

 

(ニュースで取り上げられるとはな…悪い意味でだろうな)

 

「はいよ、お待ちどーさん。それにしてもあんたも大変ね、がんばりなさいよ」

 

食堂のおばちゃんは良い人で、よく励ましてくれる。

 

「特に気にしてませんので大丈夫です」

 

そのまま3人分の食事を持ち2人がいる席に向かう。

 

「はい、持って来たよ」

 

「「あり…がと…う」」

 

やはりまだ沢山いる状況では普通に喋れないか。

 

「ほら、冷めないうちに食べなさい」

 

「あら?どうしてこんな所に化け物が居るのかしら?」

 

俺達のテーブルの前に10人位の女子が立つ。

色の違うリボンをしているので上級生という事がわかる。

 

(はぁ…面倒くさい)

 

リーナとレーナに無視して食べなさいと目で合図する。

二人は小さく頷き食べ始める。

 

「ちょっと、聞いてるの?もしかして言葉が通じないの?」

 

「はぁ…ここは化け物育成所じゃないのよ?」

 

それでも無視する。

すると、別の上級生が

 

「ふーん…そんな態度取るんだ。ならっ!」

 

グサッ!

 

遠くから悲鳴が聞こえる。

 

後ろに隠し持っていたフォークでテーブルの上に置いていた真吾の手を刺したのだ。

 

「「パ、パパ!」」

 

リーナとレーナは立ち上がり心配そうに近づいてくる。

 

「大丈夫、大丈夫だよ」

 

実際、痛みは無い。

 

小さな声で二人を落ち着かせる

 

「自分の心配はしないの、じゃあもう一本行こうか?」

 

にやっと笑うと他の上級生も笑う。

 

(…この位ならすぐに治るだろ)

 

そう思っていると

 

「パパに手を出すな!」

「パパに近づくな!」

 

リーナとレーナは近づいてきた上級生を小さな身体で体当たりした。

 

「キャッ!」

 

体当たりされた上級生は尻餅をつく。

 

まさかこの二人がこんな行動をするとは思っていなかった。

 

「護ってくれてありがとうな、二人とも」

 

後ろの手で頭を撫でる。

 

「痛いわね!」

 

さっきまで尻餅をついていた上級生が立ち上がり、二人に近づき殴ろうとした。

 

(流石に我慢ならん)

 

近づいてきた上級生の腕を掴み他の上級生に投げつける。

 

「「きゃあ!」」

 

そのまま睨み付ける。

 

「…いい加減に…しろ!」

 

そのまま殴ろうと思った瞬間

 

「真吾!何やってるんだ!」

 

目の前に割り込むように入って来た織斑一夏

 

「…邪魔だ!」

 

「女子に殴ろうとしてるんだぞ!」

 

「だからなんだ?」

 

「お前最低だぞ!」

 

「…俺が最低なら、そいつらはそれ以下だな」

 

フォークが刺さっている手を見せる。

 

「そいつは俺を刺した挙句、この子達を殴ろうとした。どうだ、それでも俺は最低か?」

 

「それでも殴ろうとするのはダメだろ!」

 

「…ならそいつは俺にした事と同じ事をしてやる」

 

織斑一夏を退かし、上級生の手を引っ張りテーブルの上に乗せる

 

「ぐっ!?や、やめろ!」

 

「っ!?い、いやぁああ!」

 

そして置いてあるフォークを手に取る。

それと同時に織斑一夏が殴りかかってくる。

 

「やめろって言ってんだろ!この野郎!」

 

その場でそのまま殴られる。

 

「…攻撃するって事は、攻撃される覚悟があるって事だな」

 

「当たり前だ!」

 

「…そうか」

 

そのまま、織斑一夏の頭を掴み上げる。

 

(束さんには悪いが、こいつの護衛は無理だ。後で連絡しよう)

 

「ぐあっ!」

 

「…少しは貴様は自分の実力を知れ、雑魚が」

 

そのまま誰も居ない通路に投げる。

 

「っが!うるせぇ!」

 

それでも殴りかかる。

 

その時

 

「やめなさい!」

 

怒鳴り声が聞こえた

 

その声で食堂に居た生徒は声がした方向に振り向く。

 

普段は温厚で優しい性格の持ち主で知られるお姉ちゃんが別人のように怒り、立っていた。




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