造られた4本腕   作:habanero

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贈り物-下-

あれから真耶は部屋に閉じ篭ったまま、出てこない。

 

あの映像が未だに頭から離れない。

 

「…大丈夫って言ったのに」

 

コンコンッ

 

ドアを叩く音が鳴る

 

静かにドアを開ける

 

「山田先生…」

 

「「お姉ちゃん…」」

 

「お姉ちゃん…」

 

楯無・リーナとレーナ・ラウラが立っていた

 

「…入って」

 

真耶は4人を部屋に入れる

 

「…どうしたの?」

 

「実はこれを…」

 

楯無は真耶に小さな箱を渡した。

 

「これは…?」

 

「真吾君のクローゼットに入ってた私達へのプレゼントです…はい、ラウラちゃんのもあるのよ」

 

「私にも…」

 

真耶とラウラは静かに小さな箱を開ける

 

 

「これは…懐中時計?」

 

「…ネックレス」

 

ラウラの箱には小さな手巻き式懐中時計

 

真耶の箱にはネックレス

 

「山田先生、着けますよ」

 

「ありがとう…」

 

楯無は真耶の首にネックレスを着けた。

 

真耶は鏡の前に立ち首元を見る。

 

「似合ってるかな?」

 

「もちろんです、真吾君が選んだのですから」

 

「うん…そうだよね」

 

 

ラウラは懐中時計をギュっと握り締めた。

 

「お兄ちゃん…」

 

あの日から自分を妹のように、家族のように接してくれた。

 

それから毎日が楽しかった。お兄ちゃんが居たからこそ、今の自分は居る。

 

それなのに、それなのに…

 

「逢いたいよぉ…一緒に居たいたいよぉ…」

 

涙が零れ落ちる。

 

「お兄ちゃんは…生きてる……絶対生きてるもん…」

 

止まらない涙

 

真耶は優しく、ラウラを抱き締める。

 

「…そうだよね、真吾ちゃんだもんね」

 

真吾はあの地獄のような施設から生き延びた。

 

だから、今回もきっと…

 

「…私達が諦めちゃダメですよね。まだ正式に死んだと決まったわけではないですし」

 

実はあの後アメリカ軍は福音の操縦士の救助を行い、あの無人島に向かったのだが真吾の死体は無かったらしい。

残っていたのは、大量に地面に突き刺さった大型の剣と血溜まり。

そして、何かが突き刺さっていた4個の細長い穴。

その後ろに福音の操縦士が倒れていた。

 

福音の操縦士のナターシャ・ファイルスは奇跡的に軽傷で済んでいた。

 

 

「…帰りを待ちましょうか」

 

「そうですね」

 

時間は夜、真耶は提案する

 

「夕飯ここで食べませんか?」

 

「いいんですか?」

 

「ええ、真吾ちゃんに教えて貰ったトマト料理作るよ!」

 

「それじゃあ、ご馳走になります」

 

この日の夕食は楽しかった。

 

真耶、楯無、ラウラ、リーナ、レーナ

 

全員が笑顔になった。

 

嬉しかった。

 

真吾が教えた料理が皆を笑顔にした。

 

(今度は、皆で食べたいな…)

 

 

 

 

(待ってるよ真吾ちゃん)

 

 

 

 

彼女達は帰りを待つ。




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