造られた4本腕   作:habanero

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オリジナル展開って難しいですね


現実

超高密度圧縮熱線を放った真吾の周りにいた無人機達は次々と海に墜ちていく。

 

だが、相手の数はまだ圧倒的に多い。

 

「アレで…も…か…」

 

福音は先程まで防御姿勢をとっていたが、それを解き戦闘態勢に再び戻った。

 

真吾もシュヴァルツェア・キリングをもう一度展開し、福音に接近し斬りかかる。

 

福音はそれを避け、エネルギー弾を飛ばす。

 

真吾もギリギリのところで避ける。

 

斬っては避け、撃っては避けての攻防戦

 

その間にも無人機は襲ってくる。

 

次々と無人機の攻撃が真吾のIS、ヴィヒターを襲う。

 

「ぐっ!」

 

ヴィヒターはその名の通り番人、装甲の堅さは現行機を超える紅椿より上だ。

 

だが、その堅さで耐えられるのも時間の問題だ。

 

既にシールドエネルギーは半分を切っている。真吾自身も限界に近い

 

だが、福音のシールドエネルギーも半分を切っているはず。

 

真吾は周りにいる無人機を斬り払い、福音に向けてエネルギー刃を放つと共に接近し攻撃を仕掛ける。

 

福音は避けきれず攻撃が直撃し、シールドエネルギーが0になる。

 

その時、真吾の頭の中に少女らしき幼い声が響く

 

『――ナターシャ――ナカ――タス―ケ――テ――――』

 

その声が途切れると同時に福音が解除され一人の女性が海に向かって墜ちる。

 

真吾はすぐに理解した。

 

福音は無人ではなく有人、つまり何者かによって暴走させられたと

 

落下していく女性を追い、抱える。そしてすぐ傍の無人島に移動し、寝かせる

 

(俺が他人を助けるなんてな…だが、あの声はなんだ…?)

 

先程の声の正体を考えていると、無人機が追ってきた。

 

狙いは真吾のみ

 

ヴィヒターのシールドエネルギーはもう0に近い

 

だが、それでも立ち向かう。

 

 

 

帰るために

 

 

 

 

その頃、バスは既にIS学園に着いていた。

 

「織斑を至急に医療カプセルに!他の生徒は自室に待機!」

 

織斑先生はバスから降りた者に指示を出していた。

 

そこに

 

「織斑先生!」

 

「っ!…更識」

 

「真吾君は!?」

 

「…連絡した通り、恐らくまだ海上だ」

 

「っ…そうですか」

 

楯無はグッと拳を握りしめた。

 

「更識、すまなかった…」

 

「…大丈夫です…それで山田先生は……」

 

織斑先生はバスの方向を見て

 

「…アレからあの状態だ…すまないが、真耶とラウラ、真吾の娘達を連れてきてくれ、伝える事がある」

 

楯無はその指示に従い、4人を織斑先生の元に呼んだ。

 

「揃ったな…今から言う事はあの時最後にあいつが言った事だ」

 

「…真吾…ちゃんが?」

 

「あの時、秘密回線で伝言を頼まれた」

 

その事に3人は驚く。

 

「…真吾君はなんと?」

 

「お兄ちゃんは何て言っていたんですか!?」

 

「…帰ったら皆で出かけよう…と」

 

その言葉に

 

真耶は笑みを浮かべながら泣き

 

ラウラも笑みを浮かべ、静かに泣く

 

楯無はリーナとレーナを抱きしめながら泣く

 

その言葉は彼女らにとって希望でもあった。

 

「リーナちゃん、レーナちゃん…パパが帰ってきたら行きたい場所ある?」

 

泣きながら聞くと

 

「パパと動物園に行きたい!」

 

「私もパパと動物園に行きたい!」

 

真耶、楯無、ラウラは目を合わせ

 

「うん…絶対に行こうね」

 

「真吾ちゃんが喜ぶお弁当一緒に作ろうね」

 

「お兄ちゃんと一緒に沢山写真を撮るぞ!」

 

さっきの暗い雰囲気から明るい雰囲気に戻った。

 

織斑先生は真吾が彼女達にどれだけ信頼されているかそこで初めて知った。

 

そして

 

「織斑先生!!織斑君が意識を取り戻しました!」

 

「っ!わかった!すぐ行く!」

 

 

 

 

 

 

 

ゴォォォオオオオオオオオオ!!!!

 

静かな無人島に鳴り響く轟音

 

真吾はシールドエネルギーが切れた状態のISでヴィヒターを無人機に向かい撃っていた。

 

撃墜しては次々と現れる無人機

 

真吾の後ろにはシュヴァルツェ・キリングが女性を守る様に4本並んで地面に刺さっている。

 

「っ!」

 

ヴィヒターの弾が全て無くなった。

 

その瞬間を無人機達は見逃さず、手に持っている大型の剣を真吾に向かって勢い良く投げた。

 

大量に投げ出された剣

 

そして

 

真吾をISごと貫く

 

だが、それでも真吾は立っている。

 

 

意識が遠く中、喋り出す真吾。

 

「…俺は…帰…る……場…所が…ある…」

 

だが、その傷口からは大量の血が流れ出てくる。

 

「お…ねえ…ちゃ…ん……ら……う…ら」

 

 

身体の力が抜けていく

 

 

 

「……か……た…な………リ……ナ……レ…ナ」

 

 

 

 

次第に意識が遠くなる

 

 

 

 

「ま…って………ろ」

 

 

 

 

 

 

もう視界が見えない

 

 

 

 

 

 

 

「…み……ん……な…で…………ど………う…ぶ…つ……え………ん……に…………い…――-―――」

 

 

 

最後の言葉を言いきる前に、無人機は真吾に近づき胴体を突き刺さっている剣ごと刎ねた。

 

 

無人機はその様子を映像として残し各国のテレビ局をハッキングする形で流した。

 

それから無人機達はいなくなった。

 

 

 

 

まだ、生きていると知らずに

 

 

 

 

 

 

 

その映像はIS学園の食堂、寮のテレビにも流しだされていた。

 

 

 

 

 

その頃、ある夢を見て織斑は目を覚ましていた。

 

 

 

「織斑、気分はどうだ」

 

「こ、ここは…」

 

「IS学園だ」

 

「っ!福音は!?福音はどうなったんですか!」

 

「…」

 

「まさか…!」

 

「失敗だ、命令無視しよって…処罰は治ってからだ。そしてだ…今は山田が一人で戦っている…大量の無人機も加えて」

 

「無人機!?な、なんで!」

 

「…山田を殺すためだ」

 

「っ!?」

 

「…何故って顔をしているな…簡単だ、男だからだ」

 

「な、なんで男ってだけで殺されなきゃならないんだよ!」

 

「邪魔だからだ、今の世の中に、女性しか扱えないISの時代にな」

 

「…!」

 

「そして、お前が生きているのは未だ不明だ。だが、そのお陰で奴らは勘違いしているだろう」

 

「それだと狙った犯人が分かってるみたいじゃん」

 

「ああ…これは誰にも言うなよ。知ってる奴は限られてるからな…」

 

「わ、わかった」

 

「…これは女権とIS委員会の一部だ」

 

「!?」

 

「…あと、お前は世界を知れ」

 

 

そう言い残し、そのまま部屋を出る。

 

 

すると、一人の教員が走ってきた。

 

「織斑先生!!大変です!!」

 

「なんだ?ここでは静かに―――」

 

「テレビに山田君が!」

 

「なに!?」

 

「とにかく来て下さい!!」

 

織斑先生は教員に連れられ沢山のテレビがある食堂に来ていた。

 

食堂には真耶、楯無、リーナ、レーナ、ラウラ、他の専用機持ちもいた。

 

「お前ら、自室で待機してろ…と……!」

 

ゆっくりとテレビに視線をずらすと、剣で貫かれた状態の真吾が映っていた。

 

リーナとレーナは楯無、ラウラによって目を塞がれて見えてはいない。

 

だが、真耶、楯無、ラウラはただただ呆然としていた。

 

専用機持ち達は震えながら見ていた

 

 

そして

 

 

『ま…って………ろ………み……ん……な…で…………ど………う…ぶ…つ……え………ん……に…………い…――-―――』

 

 

最後の言葉と共に胴体が刎ねられた映像が流れた。

 

 

そこで映像は終わる。

 

 

 

 

 

 

「真吾…君?……う…そよ……嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ!!!!!!!!!!」

 

「いやぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

「お兄……ちゃ…ん…なんで…なんでだぁぁぁぁあああああああああああああああ!!!!!!!!!!」

 

3人の泣き叫ぶ声が鳴り響く

 

 

 

音声しか聞こえなかったはずのリーナとレーナが呟く

 

「「パパの声…?」」

 

それに気付いた楯無

 

 

「パパ……は…ね…もう…ね……帰っ……て…こ……ない……の」

 

「なんで?一緒に動物園行くんだよね?」

 

「パパと皆で行くよね?」

 

 

「ごめんね…ごめんね……」

 

泣く事しか出来ない。

 

「やだ…パパと行くもん……」

 

「パパ言って…た…もん……」

 

二人は我慢をしてた涙を零した。

 

「「い゛や゛だ゛ぁ゛あ゛!パ゛パ゛と゛い゛く゛も゛ん゛!」」

 

楯無は泣き叫ぶ二人を強く抱き寄せる。

 

それしか出来なかった。

 

 

 

 

 

僅かに残された光は闇に飲まれた




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