造られた4本腕   作:habanero

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学年別トーナメント-下-

大歓声の中、ボーデヴィッヒと真吾は秘密回線で会話をしていた。

 

「…前半と後半で分けるぞ」

 

「いいぞ、私が先にやる」

 

「…ああ、だがその間に倒せなかったらお前の負けだ」

 

「誰があんな奴に負けるか!」

 

「…まあがんばれ」

 

ボーデヴィッヒは秘密回線を切り、目の前にいる白式を纏った織斑一夏を睨む。

 

すると、織斑一夏から秘密回線が来た。

 

「真吾…あの時シャルを助けてくれてありがとうな…それと殴ってすまなかった!」

 

「…娘に感謝する事だな」

 

そのまま秘密回線を切る。すると、次はデュノアから来た。

 

(次から次へと…)

 

「…なんだ」

 

「あ…まだお礼を言ってなかったから…助けてくれてありがとう」

 

「…織斑一夏にも言ったが娘に感謝する事だな」

 

秘密回線を切り、ボーデヴィッヒの後ろに下がる。

 

同時に両者が構える。

 

試合開始のブザーが鳴る。

 

それと共に織斑一夏は織斑先生から教えて貰った瞬時加速を使い、ボーデヴィッヒに斬りかかるが、ボーデヴィッヒはAICを展開し、動きを止める。

 

「試合開始と共に先制攻撃…そんなので私に勝てると思ったか!」

 

「引っかかったな!」

 

「僕もいる事を忘れちゃ困るよ!」

 

デュノアは織斑一夏の後ろからライフルで撃つ。

 

「うぐっ!」

 

ボーデヴィッヒはライフルを防ぎきれずに被弾してしまう。

 

それを見かねた真吾はデュノアの後ろに瞬時に移動し別方向に掴み投げる

 

「うわっ!」

 

「…ちゃんとやれ、残り10分だ」

 

そうボーデヴィッヒに伝えるとボーデヴィッヒは焦りと怒りが混じった声で

 

「黙れ!お前はそいつの相手をしてろ!」

 

「…早くしないと負けだぞ」

 

「ック!」

 

そしてボーデヴィッヒは織斑一夏にプラズマ手刀で斬りかかるが、刀と脚を上手く使い互角に戦っていく。

 

刻々と迫る時間、ボーデヴィッヒは焦っていた。

 

(なぜ!なぜだ!こいつは私より弱いはずだ!)

 

その焦りのせいで攻撃が一瞬遅れる。その隙を織斑一夏は見逃さなかった。

 

「隙ありだ!」

 

普段ならAICを使って止めれていたが、焦りのせいでAICの事を忘れていた。

 

「ぐあっ!」

 

攻撃が入り、後ろに吹き飛ぶボーデヴィッヒ

 

すぐに体勢を立て直すが…

 

「…時間切れだ」

 

真吾が目の前に入り、織斑一夏を殴り飛ばす。

 

「まだだ!まだ私は!」

 

「…お前の負けだ」

 

「…え?」

 

「…その慢心さがお前が負けた理由だ」

 

(負け?私が?そんな・・・!ヤダ!ヤダヤダヤダ!あんな奴に負けるなんて!)

 

すると謎の声が聞こえた

 

『願うカ…?汝…絶大ナる力がホしいカ…?』

 

(よこせ!私に力をよこせえええええ!)

 

するとボーデヴィッヒの専用機であるシュヴァルツェア・レーゲンは黒い何かに飲み込まれていく。

 

「…試合中止だな」

 

「な…!?」

 

「なに…あれ!?」

 

織斑一夏とデュノアは驚きの声でボーデヴィッヒを見る

 

VTS(ヴァルキリー・トレース・システム)か…)

 

束の護衛をしていた時に全て破壊したと思われていたが、まだあったらしい。

 

シュヴァルツェア・レーゲンは完全に飲み込まれ別の何かに変わっていた。

その変わっていた正体はボーデヴィッヒの全てであった人物

 

「…織斑先生か」

 

すると、織斑一夏が飛び出しそうになるがデュノアに止められる

 

「一夏!そんなシールドエネルギーで戦うなんて無理だよ!」

 

「退いてくれ!あれは千冬姉の雪片だ!頼むから退いてくれ!」

 

そんな事をしている内にVTSは織斑一夏達に襲いかかって来る。

 

「うわぁ!」

 

「きゃっ!」

 

デュノアと織斑一夏はシールドエネルギーが残っていないらしくISが解除された。

 

だが、織斑一夏は生身のままで飛び出した。

 

「なに千冬姉の真似してやがるんだ!」

 

またしてもデュノアに止められる。

 

「一夏!死ぬ気!?」

 

「放せ!あいつふざけやがって!ぶっ飛ばしてやる!」

 

そこで管制室の回線から連絡が入った。

 

『織斑だ』

 

『なんですか』

 

『…頼めるか?』

 

『はい、生徒会としての仕事をしますので』

 

『そうか…すまないな』

 

そこで回線が切れる

 

「…うるせえ、黙れ」

 

真吾は織斑一夏の前に立つ。

 

「真吾!お前も邪魔する気か!?」

 

「…俺の仕事だ」

 

そう、生徒を守る生徒会としての仕事だ。

 

「俺がやる!俺がやらなくちゃいけないんだ!」

 

まるで駄々をこねる子供だ。

 

「…そんな事を言っているから弱いんだ」

 

「っ!」

 

「…少しは考えて動け」

 

そう言い放ちVTSの前に立つ。

 

直後、VTSは真吾に斬りかかるが避けられる、何度も斬りかかるが結果は同じだ。

 

真吾は攻撃を避けながらVTSの隙を探し当てていた。

 

(振り終わりが長い)

 

隙を探し当て、攻撃されるのを待つ。

 

VTSは真吾の頭目掛けて剣を振り下ろす。が、また避けられる。その隙を突いて真吾はVTSの胸にブルーティッヒ・ファオストを殴りつける。

 

4本の腕から繰り出される攻撃にVTSは何も出来ない。

 

すると

 

パキィン!

 

割れる音がした、その音の正体を見てみると。

VTSの胸がひび割れていた。そこからは気絶をしているボーデヴィッヒが顔を覗かしていた。

 

真吾はすぐさま、ひび割れた場所に手を入れ、まるで閉ざされた門をこじ開けるかのように引き裂く。

 

引き裂かれた場所からボーデヴィッヒは前のめりに倒れ掛かるが、それを真吾が優しく受け止める。

 

それと同時にVTSは消滅した。

 

 

 

 

「ぅ…」

 

「お目覚めか」

 

夕日が照らす部屋の中、ラウラは声がした方に目を向ける。そこに居たのは、自分の全てであった織斑千冬だった。

 

「何が…あったのですか?」

 

ラウラはあの謎の声に答えた瞬間から気絶していた。だから、何があったのかわからない様だ。

 

「VTSは知っているな?」

 

「VTS…」

 

「あぁ…それがお前のISに巧妙に仕組まれていた。どうやらお前の精神状態や機体の状態に応じて発動する様になっていたらしい」

 

「私が…弱かったからですね…」

 

ラウラは自分を責めた。

 

弱いのは自分だ…昔と同じだと。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ!」

 

織斑先生の声にビクッと思わず跳ね上がる

 

「お前は誰だ?」

 

「私は…誰なんでしょう…」

 

震える声、自分を考えれば考えるほどわからなくなる。

 

「そうか、ならこれから考えろ」

 

「…え?」

 

「山田を知っているな?」

 

「…はい」

 

「お前とは少し違うが、同じ造られた存在だ。…だが強い男だぞ。身体よりも心が」

 

「心が強い…」

 

「奴を見て、自分を見つけろ」

 

そう言い残し、部屋を出た。

 

ラウラは暫く呆然とするが、次第に笑いがこみ上げてくる。

 

「心…か……ふふっ」

 

(山田…山田真吾…今彼を思い出すと何故だか安心する…)

 

 

後日クラリッサに聞いてみよう。

そう思いながらゆっくりと目を閉じるのであった。

 

 

朝―――

 

いつも通り教室に入り席に着き、膝に二人を座らせる。

 

織斑一夏も入ってくる。だがその後ろにはデュノアはいなかった。

 

チャイムが鳴り、会話を楽しんでいた女子はそれぞれの席に戻っていく。

 

教室のドアが開き、お姉ちゃんが入ってくる、疲れた様子で。

 

「皆さんおはようございます…。今日は転校生を紹介します」

 

「シャルロット・デュノアです。皆さん改めてよろしくお願いします!」

 

「デュノア君は、デュノアさんという事でした…」

 

ざわめく教室

 

「え!?デュノア君って女!?」

 

「だからあんなに綺麗だったのね!」

 

「あれ?同室の織斑君は知らないってことわ…」

 

「昨日って確か男子が大浴場使ってたわよね?」

 

(ああ、そういえばお姉ちゃんがそんな事いってたな)

 

「てことは…」

 

女子全員がこちらを見てきた

 

(…これなんか言わないとめんどくさい事になるやつだ)

 

そこで入っていない事を言おうとしたら

 

「昨日やっしーと一緒にいたからそれは無いよー」

 

本音が助けてくれた。

こちらを見てグッとサムズアップする。

 

(後でお菓子を買ってやろう)

 

膝に座っている二人は何が起きているかわからず?マークを浮かべている。

 

「…織斑君は?」

 

織斑一夏は固まったまま動かない。

 

ドゴォン!

 

いきなり扉が破壊された。

 

そこに立っていたのは…鳳だ。

 

「一夏ぁ!!!」

 

「え!?ちょっと待て!死ぬ死ぬ!」

 

「死ねばいいのよ!」

 

鳳の龍砲が一夏に直撃…しなかった。

 

ボーデヴィッヒがISを纏いAICで止めていた。

 

「ら、ラウラ…助かったぜ」

 

「そうか、それは良かった」

 

「織斑一夏、鳳鈴音、セシリア・オルコット…それと皆、これまですまなかった…」

 

深々と頭を下げるボーデヴィッヒ

 

「え…あ、い、いいわよ…」

 

「え、ええ…いいですわよ、これからはよろしくお願いしますね」

 

クラスの皆も受け入れてくれたらしい。

 

リーナとレーナは絵を描いている。またあの絵か?

 

ボーデヴィッヒはこちらを見て近づいて来た。

 

「…なんだ」

 

「貴方の事を教官から聞きました」

 

(織斑先生が?)

 

「そ、それでですが…」

 

もじもじしているボーデヴィッヒ

 

(え、え、何、何?)

 

「お兄…ちゃんと…呼んでもいい…でしょうか?」

 

(…待て待て、ちょっと待て)

 

「…な、何故」

 

「我がシュヴァルツェ・ハーゼの副隊長から聞いたのですが、信頼でき、傍にいると安心する存在を兄、またはお兄ちゃんと言うと聞いたので」

 

「…それで俺が?」

 

「はい!」

 

キラキラした目でこちらを見てくるボーデヴィッヒ…いや、ラウラ

 

「…いいのか?俺で?」

 

別に断る理由も無かった、それにラウラは少し違うが同じ造られた存在だ。

 

「お兄ちゃんじゃなきゃダメです!」

 

「…わかった」

 

ラウラの頭を撫でながら言った。

ラウラは気持よさそうに目を細める。

 

すると、周りが

 

「山田君ってパパみたいだね?」

 

「パパじゃなくてパパなんだよ」

 

「山田君…意外とありかも…」

 

ラウラのおかげ?でクラスから温かい目で見られるようになった。

 

「「パパ私も撫でてー」」

 

「…わ、わかったから落ち着いてくれ」

 

ラウラ、リーナ、レーナを撫でる。

 

(凄い事になったな…)

 

そこで、お姉ちゃん、ラウラ、リーナ、レーナに加え楯無が居る食事風景を想像していた。

 

(ッ!!な、なぜ楯無が!?)

 

この後、夢にまで楯無が出てくるのであった。




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