Deathberry and Deathgame Re:turns   作:目の熊

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お読みいただきありがとうございます。

第八話です。

後半部にキリト視点を含みます。
苦手な方はご注意ください。

よろしくお願い致します。



Episode 8. Encounter with the Absurdity

「――おらああああああぁぁぁぁァッ!!]

 

 騎士の大群を突破した俺は剣を構え、勢いそのままに天蓋目掛けて突っ込んだ。

 

 けたたましい金属音と共に太刀の切っ先がゲートに刻まれた十字の溝にぶっ刺さり、十センチめりこんだところで止まった。が、開く気配は一向にない。テコの要領で太刀を捻じり、力で開こうにもビクともしない。

 

「下がってくれ一護! ユイ、頼む!!」

 

 キリトの言葉に俺はその場から飛び退き、入れ替わるようにユイがゲートに飛びつく。小さな手をあててじっとすること数秒、

 

「パパ! 一護さん! この扉はクエストフラグによりロックされているのではありません! 単なるシステム管理者権限によるもの、つまり、プレイヤーには絶対に開けられない仕様になっています!!」

「な……!」

 

 ユイの言葉に絶句するキリト。その横にいる俺の脳内は、驚愕よりも怒りで席巻された。

 

 フザけんじゃねえ。最初に辿り着いた種族しか報酬が手に入らねえってのに、三種族合同の軍勢とバグ並の熟練度持ち二人が組んでやっと入り口までたどり着けて、しかもその先は絶対開かねえとか、ナメてんのも大概に……、

 

「……チッ!!」

 

 背後で耳障りな音がして、太刀を構えて振り向く。そこには、さっき追い抜いた騎士の群れが、大挙してこっちに襲い掛かってくる最悪の光景が広がってた。こっちは《剡月》を撃ち尽くして支援もねえ。けどここで諦めておっ死ぬなんざ絶対にゴメンだ。

 

「おいキリト! 背後はどうにかすっから扉を何とかしろ!! お前、こーゆーの得意だろ!!」

「ムチャクチャ言うな!! いくらなんでも一般プレイヤーのスキルでシステム権限を解除することなんで出来……いや、待てよ」

 

 何か思いついたらしいキリトの方を振り返ると、胸ポケットをまさぐって何やら銀色のカードを引っ張り出したところだった。何だか知らねえが、騎士の剣の間合いまでもう三十秒もねえ。やるならさっさとしろ!

 

 俺の内心の叫びが届いた……ワケじゃねえだろうが、キリトは躊躇うことなくカードをユイに付き出した。

 

「ユイ、これを使え!」

「はい……コードを転写します!!」

 

 カードから光の筋みたいなものをいくつも取り込んだユイは、その両手を再びゲートにかざす。と、一瞬ゲートが激しく発光、次の瞬間重苦しい音を立てて開き始めた。

 

「転送されます! 二人とも、手を!!」

「分かった!!」

「転送って、このまま中に突っ込んじまえばいいじゃねーかよ!!」

「いいからユイに掴まれ単細胞!!」

「ンだとテメエ!!」

「ケンカしないで、早く!!」

 

 ギャーギャー騒ぎながらキリトと俺がユイに触れた瞬間、光の筋が俺たちの身体に流れ込んできた。その光の奔流はどんどん激しさを増していき、そして騎士たちが俺らに斬りかかる寸前、視界が真っ白になり、そこで俺の意識が真っ白に塗りつぶされる。

 

「――ッ!!」

 

 ハッと我に返り、危うく倒れそうになっていたのを、太刀を床に突き立てて堪える。横では片膝をついた姿勢のキリトがユイに起こされていた。ユイはさっきまでの小妖精の姿じゃなく、何故か白いワンピースを纏った十歳程度の少女の姿をしている。この状態でパパ呼びは、さっきまでのピクシー形態の時以上に犯罪臭がするような気がした。

 

 ……天蓋を突破して気が緩みでもしたのか、浮かんできた余計な思考を振り払う。屹立した太刀を引き抜き肩に担いで、俺は辺りを見渡した。

 

 意識を奪われていたのは、体感時間でほんの二、三秒。その間に、俺たちの周囲の光景は一変していた。

 

 お墓正しい数の騎士やら天蓋のゲートは見る影もなく、見渡す限り、白一色。何の装飾もない殺風景な廊下が俺の前後に伸びているだけだった。あの天蓋から転送されたっつうことは、ここが世界樹の最上部ってヤツなんだろうが、グランドクエストの到達点にしてはズイブン殺風景っつーか、ショボイ。絶対に開かない仕様になってたってことは、そもそもプレイヤーを入れる気が最初(ハナ)から無かったってコトなのかよ。

 

 俺が舌打ちをする一方で、キリトはユイの支えを借りて立ち上がった。

 

「大丈夫ですか、パパ?」

「ああ。ここは一体……?」

「……判りません。ナビゲート用のマップデータが存在しないようです」

「そうか……」

「キリト、さっきのカードみてえなのは何だよ。何かのアイテムか?」

 

 突破できたから文句を言うワケじゃねえが、システム権限をサクッと破ったアレの正体が気になった。ユイの幼女→少女変換の理屈は興味ねえけど、こっちの方はスルーできない。

 

「ああ、アスナの反応を追って世界樹の枝目掛けて飛んでみたときに、上空から落ちてきたんだ。位置情報が観測できた場所の真下でキャッチしたから、多分アスナが落としてくれたんだと思う」

「アイツがわざわざそんなモンを落としたっつーことは、やっぱ幽閉された連中はココにいるのか。それも、グランドクエストとかいうのがパチモンだったってことを合わせて、事故じゃなくてどっかの誰かの故意ってことかよ」

「だろうな……けど、今は犯人究明より救出だ。ユイ、アスナの場所は判るか?」

「はい。かなり――かなり近いです。こっち!」

 

 ワンピースから伸びた素足でユイが駆出し、キリトが続く。けど、俺はその場から数歩進み、そこで立ち止まった。それに気づき、二人が立ち止まって振り返った。

 

「ちょっと待て。おいユイ、そっちに行く前に一つ訊く」

「はい、何ですか一護さん?」

「お前らが今から向かう先には、他の連中の反応もあんのか?」

「……え?」

 

 俺の問いにユイは一瞬固まり、しかしすぐに目を閉じてしばし黙考。数秒経ってから再び目を開いた。

 

「いいえ。この先に確認できるのはママ、いえ、アスナさんの反応一つだけです」

「んじゃあ、連中は何処にいる。アスナが近くにいんなら、他の奴らもこの辺にいるんじゃねえか?」

「えと……あ、この通路の一つ上の階層に、多数のプレイヤーデータが集積されたセクターがあるようです。通路を後方へ進んだ先にあるエレベータを使用すれば到着できるかと思います」

「そうかよ。んじゃキリト、テメエはこのまま行け。俺は他の連中を助ける」

 

 そう言って俺は太刀を担ぎ直し、キリトに背を向ける。アスナ一人の救出なら、コイツらに任せられる。元から俺は全員を助けるつもりで来てんだ。本来プレイヤーが入れないハズの場所に侵入してきた以上、なんかしらの妨害があってもおかしくねえ。面倒くせえのが来る前に、分担してさっさと助けてバックレるしかねえだろ。

 

 俺の言葉を受け、キリトは少しの間沈黙していた。が、すぐに向こうも踵を返したらしく、ブーツの鋲の音が響いた。続いて静かな声が聞こえる。

 

「……分かった。他の皆のことは、頼むぞ」

「今更頼まれなくても、こっちは元からその積りだっつの。その代わり、アスナを助けんのはテメエの仕事だ。死んでもトチるなよ」

「ああ分かってる。こっちは任せてくれ。アスナを助けたらすぐに駆けつける……すまない」

 

 最後に一言、キリトは申し訳なさそうにして謝った。肩越しに振り返ると、心配そうな表情のユイの隣で、少し俯いたままのキリトが立ち尽くしていた。なにをそんなに沈んでんのか知らねえけど、アスナを他の連中より優先することの罪悪感とかなら、トンだ見当違いだ。

 

「勘違いしてんなよ、テメエに先にアスナを助けに行かせんのは、俺が合流した時に小っ恥ずかしい感動の再会シーンに付き合わされんのがイヤなだけだ。先にテメエ引きつれて他の連中助けに行ったところで、アスナの事が気が気じゃねえお前なんか足手まとい未満なんだよ。とっとと終わらせて戻って来いっつってるだけだろーが。彼女を優先したってだけで、らしくもなくヘコむんじゃねえよ気持ち悪ぃ」

「……まったく。人が真剣に悩んでたっていうのに、ひどい言われようだな」

 

 そう言って顔を上げたキリトの表情は、元の真剣そのものの真顔に戻っていた。ったく、手間かけさせやがって。そう胸中で呟きながら、今度こそ互いに背を向ける。

 

「んじゃあ、後でな」

「ああ。必ず」

「お気を付けて、一護さん!」

 

 背中越しに言葉を交わし、俺たちはそれぞれ反対方向に駆け出した。キリトたちの足音が急速に小さくなっていき、やがて聞こえなくなる。構わず足を速め、突きあたりにあったエレベータに飛び込んだ。

 

 もうさっきまでのファンタジーさの欠片も見当たらない無機質な白い直方体の中で、一つ上の階層のボタンを押す。すぐにエレベータが上昇を開始し、十秒と経たずに扉が開いた。

 

「――待ってろ、今助ける」

 

 自分に誓うようにつぶやき、俺は太刀を構えて飛び出していった。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

<Kirito>

 

 一護と別れてから十数分後。俺とユイは無事アスナの救出に成功していた。

 

 再会の喜びを分かち合うのもそこそこに、ひとまずアスナをログアウトさせるためにコンソールを探そうとしていた俺たちだったのだが、そこに突如凄まじい重圧がのしかかってきた。

 

 深海の底に叩き込まれたかのような目に見えない圧力によって地に伏した俺たちの目の前で、ユイが「よくないモノ」の襲来を告げて消え去り、愕然とする間もなく現れたのが、

 

「――須郷、貴様ァ……!」

 

 この男、株式会社レクトの技術研究部門主任・須郷伸之だった。

 

 目の前でニタニタと嗤う男に、怨嗟の籠った眼差しを向ける。

 

 システム的造形に従って形成された、奴の、妖精王オベイロンの、いや須郷の端正な顔が愉悦に歪むのが見える。今すぐにでも剣で叩き斬ってやりたいのだが、全身にかかる重力で立つことはおろか上半身すら起こせない。あと数メートルで最も憎む男に刃が届くのに、その数メートルが果てしなく遠く感じた。

 

 奴は俺を見下しながら、自分のしてきた所業を英雄譚のように話した。サーバーに細工することでこのALOにSAO生還者を三百人も拉致したこと。その脳を使って思考・記憶制御技術の研究を行ってきたこと。そして、その実験がすでに八割以上完了しているということを。

 

「……須郷! 貴方のしたことは、絶対に許されないわよ……!!」

 

 現実世界にて、昏睡状態を利用され強引に須郷と婚姻を結ばされようとしているアスナは、重力に苛まれながらも気丈に奴を睨みつける。が、この男はそんなものを全く意に介していないようで、

 

「へえ? 誰が許さないのかな? 残念ながら、この世界に神はいないんだよ、僕以外にはね!!」

 

 芝居がかった態度で大股歩きをしつつ、最低の科学者は朗々と叫び、

 

「――さて! 君たちの記憶を改ざんする前に!! 愉しいパーティーといこうか!!」

 

 そう言って指を鳴らす。と、頭上から鎖が二本伸びて来て、アスナの下に落下した。須郷はその先についたリングを彼女の両手首にはめ、指をついっと上に向ける。それに従うように鎖が巻き戻り、アスナは両手を上にした状態で吊り下げられた。

 

 許さない。必ず斬る。その二つが俺の脳内を埋め尽くす。動かせない腕を、脚を、胴を全力で持ち上げようと、ありったけの力と殺意を原動力にして重力に抗う。今この瞬間に奴を斬る力が手に入るというのなら、たとえ死神に魂を売り渡したって構わな……死神?

 

 そうだ、まだ希望はある。

 

 この世界に舞い降りた、本当の死神が。

 

 あいつの救助が成功すれば、まだ希望は……!

 

「……んー? なにをにやにや笑っているんだいキリト君? まさか愛しのアスナ君を憎む男の手で吊られたことが嬉しいなどという、頓狂なことを言い出すんじゃないだろうね。だとしたらとんだ変態性癖の持ち主と言わざるを得ないが」

 

 須郷の嘲るような調子の言葉に、俺は黙秘を貫く。代わりにアスナと視線を合わせ、わずかに頷いてみせる。アスナも詳細は分からずともまだ希望が潰えていないことを察してくれたのか、少しだけ微笑み、すぐに俯いてきつく瞼を閉じた。これで大丈夫、あとはこの場を切り抜けることさえできれば……。

 

 そう思いかけた瞬間、ああそういえば、と須郷が思い出したように口を開いた。

 

「さっき僕の研究材料の保管庫で、なにやらもう一匹ゴキブリが這いまわっていたようだね。先のアスナ君脱走の件でセキュリティを強化していたのだが、見事に引っかかってくれたようだ。対侵入者用で最も高度な自爆型迎撃ゴーレムと地龍型護衛ゴーレムの集団に囲まれて、最後は爆発に巻き込まれてあっけなくロストさ。いやあ、新作セキュリティの実地試運転もできて、本当に今日は良い日だ。アレ、あの害虫君の名前はなんといったかな、ええと……」

「……一、護」

 

 かすれた声で、俺はあの死神代行の名を呼んだ。アスナもそれに反応し、驚愕の表情を浮かべた後、悲痛な面持ちへと変化していった。

 

「そうそう! それだ一護君だよ。SAOをクリアした最強の剣士だとかいう噂は聞いていたんだが、あんなにあっけなく死ぬとはね。所詮ただゲームでちょっと腕が良かっただけの男、高度なシステムで統括された完全自動制御プログラムの敵ではなかったようだ。全く、拍子抜けだよ。

 ……しかし、たとえあっけなく死んでいようとも、僕は彼に感謝しなければならない。彼がこのALOに被験者として拘束されてくれたことで、私はもう一つの玩具を手に入れたのだから!」

「どういう、意味……貴方、一護になにをしたの!?」

「何を? 彼自身には何も細工はしていない。彼に何故かくっついてきた付属品をちょっといじくりまわしただけさ。今だって僕の便利な道具として活用させてもらってるよ。なんせアレは――」

 

 得意げな表情の須郷がさらに饒舌に言葉を重ねようとした、まさにその瞬間だった。

 

 突然、須郷の背後の暗闇が砕けた(・・・)

 

 ガラスのような甲高い破砕音が木霊し、そこから黒い人影が突っ込んできた。一切の減速をしないまま須郷に跳びかかり、手にした巨大な銀色のナニカで斬りつける。だが、それは須郷の体表から十数センチのところで出現した純白のホログラム盾に止められ、奴自身に届くことは無かった。数秒遅れて須郷が振り返ったことから、どうやら奴自身の意志での防御ではなく、何らかの防御システムが働いているのか。

 

 人影はそのまま身を翻し、俺の前に降り立った。黒い着物の裾が、巻き起こった風になびく。オレンジの頭はこの真っ黒の世界の中で鮮烈な鮮やかさを見せ、手に握られた大太刀は獰猛な銀色に輝いている。

 

「――よお、テメエ自分の仕事はどうしたよ。アスナ吊るしたまま寝っ転がりやがって、ずいぶんとダルそうじゃねーか」

 

 大太刀を肩に担ぎ、俺を見下ろしたその顔は、

 

 

「仕方ねえから、手伝いに来てやったぜ。キリト」

 

 

 ロストしたはずの、一護だった。

 

 一瞬呆けた俺だったが、するに再起動して目の前のヤンキー侍に問いを投げる。

 

「一護……お前なんで、爆発に巻き込まれたんじゃ……っていうかどうやってここに……?」

「ああ、爆発には確かに巻き込まれた。ったく、斬った端から爆発するとか、マジで鬱陶しいなアレ。最後の一発で保守室とかいう場所の壁に穴ブチ開けてくんなかったら、流石にヤバかったかもしんねーな」

 

 おかげで手持ちもポーションが一気になくなっちまった。そう言って、一護軽くため息を吐く。

 

「んで、その保守室にいやがった変なナメクジ共を斬って脅して、連中を解放する方法を吐かせたんだ。したら、今コッチにいる須郷とかいう奴のアバターの消滅がトリガーになってるらしいじゃねえか。だから、速攻で龍とか爆弾とか全部斬ってこっちに来た。そんだけだ」

 

 そこで言葉を切り、一護は太刀へとさらに力を籠める。ホログラム盾は破れこそしないものの火花を上げて軋み、須郷が苛立ったように表情を歪めた。

 

「……っつーワケだ。ウダウダやんのは性に合わねえ。とっととテメエを斬って、決着(ケリ)を付けさせてもらう」

「やれやれ、いきなり斬りかかってきて勝手に終結宣言かい? この配役が見えないかな。今日の舞台の主役は僕、ヒロインはアスナ君、観客はキリト君なんだ。部外者は大人しく――すっ込んでいろッ!!」

 

 須郷は右手を突き出すと、身体にかかる重力がさらに増した。苦痛にうめきそうになるのを何とか堪え、一護を見る。けど、奴は数歩たたらを踏んで後退しただけで持ち直し、再び何事もなかったかのように剣を構えた。

 

「おいキリト、テメエいつまで寝てんだよ。さっさと起きてソコにぶら下がってるアスナ連れてけよ。仕事サボってんじゃねえ」

「い、いや……お前、どうやって、動いて……?」

「あ? 多少は動きづれーだろうけど、別にフツーにしてろよ。腹筋(ハラ)に力入れて、脚踏ん張って背筋伸ばす。そんだけだろ」

「む、無茶言いやがって……」

 

 現在進行形で身体の上に鉄塊が乗っかっているみたいな重圧なのに、平然と突っ立ってるのはすごいと通り越しておかしいレベルの領域だろ。そう言ってやりたくなるが、正直心強い。言われたように仮想筋力と根性を騒動して何とか立ち上がろうと四肢で踏ん張っていると、

 

「……全く、これだからチンピラは嫌いなんだよ。何事も力で、暴力で解決できると思っている。同じ知的生物(にんげん)とは思いたくないねえ」

「テメエの方こそ同じ人間とは思いたくねえよ。事情はさっきのナメクジに粗方吐かせた。ワガママで三百人拉致って人体実験するような身勝手なゴミ野郎が」

「技術の進歩には犠牲が付き物なのだよ……まあしかし、この魔法が効かないのは、まだ想定の範囲内だ。なんせ君の記憶から引っ張り出したものだからね。対抗されてもおかしくはない」

「そうかよ。んじゃさっさと諦めて死ね。一撃で斬り飛ばしてやる」

 

 問答に苛立ってきたのか、一護の語気が荒くなっていく。並の人間なら怯んでしまいそうな眼光を受けて、しかし須郷は再びニタニタ笑い出した。

 

「まあそう急くなよ。言っただろう? 出現させたものは記憶の保持者には効果が薄いんだよ。だったら……コレはどうだい?」

「――ッ!? 一護、上だ!!」

 

 頭上を見上げ、俺は叫んだ。

 

 そこに現れたのは、篭手に包まれた大きな手。全長一メートルはあろうかという巨大なそれが五指を開くと、その中に炎が生まれ、火焔に包まれた一振りの大剣が出現した。巨大な手と大剣のセットは次々に生み出され、腕だけの騎士団を創り上げていく。

 

 だが、問題はそこじゃない。

 

「う、嘘、だろ……アレは、あの剣は……!」

 

 絶句する俺。

 

 視線の先で群れる剣。その形状は紛れもなく、かつてユイが振るい、ボスモンスターを一撃で消し去ったシステム的絶対即死効果を持つ《オブジェクトイレイザー》そのものだった。




感想やご指摘等頂けますと、筆者が欣喜雀躍狂喜乱舞致します。
非ログインユーザー様も大歓迎です。

一護視点で押し通そうと思ったのですが、違和感アリアリの描写になってしまったのでキリト視点でお送りします。




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