Deathberry and Deathgame Re:turns   作:目の熊

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番外編一話目です。

アルゴ視点です。
地の文ほとんど無し、インタビュー形式です。

苦手な方はご注意を。


Extra Chapter 『幕の合間』
No.1 What do you think of D.B.?


<Argo>

 

「……一護がALOに来てたかどうか?」

「そうダ。なんかウチの領主サマから小耳に挟んだんだヨ、やたら強いオレンジ髪のサラマンダーがいたとか何トカ」

「ああ、来てたぞ。三ヶ月くらい前に、ちょっとワケありでな」

「フーン、羽の生えたトンガリ耳のベリっち、見たかったナー」

 

 四月のある日。

 

 ALOの街中を歩いていて偶々会ったキー坊と話していたとき、ベリっちの話になった。

 

「今はALOには来てないけど、アカウントは残してあるみたいだし、受験が終わったらなんだかんだで戻ってくるんじゃないか? 気長に待ってればいいさ」

「……ヨシ、だったらベリっちが戻ってくる前にオレっちが取材しまくって、帰還と同時に情報ペーパーで特集組んでやるゼ。あのしかめっ面が慌てふためく様子を想像すると、笑えてくるナ、ニシシ」

「…………いいけど、リーナに殺されないようにな。アイツ、一護のことになると本気で見境なくすから」

「分かってるサ。オネーサンはそんなヘマはしナイ。ベリっちを貶めるような内容にはしないサ。アイツの素顔と魅力満載で書ききって見せル。それに、最高の記事のためナラ、多少の障害なんて気にしてられるカ!!」

「……まあ、程々に頑張ってくれ」

 

 というわけで、ベリっちについて情報を集めることにした。どうやらここALOには、SAOから引き継ぎで参入してる人も多いらしい。コネとツテを総動員して、ベリっちの振る舞いと評価を丸裸にしてみせるぜ。

 

 さァ、レッツ取材!!

 

 

 

Case 1 キー坊/Kirito

 

「トゆーわけで、まずはキー坊からダ。ベリっちがどんな奴なのか、オマエの視点で語ってみてくれヨ」

「お、俺からなのか……まあ、頼りになる奴だと思うよ。

 とにかく強いし、ブレないし、鍛錬も欠かさない。ぶっきらぼうだけど優しいせいか、リーナには組んだ初期の頃から懐かれてたし、オマケによく見ればけっこうなイケメンだ。アイツとのつきあいも大概長くなるけど、ほんと、いい奴さ」

「……むー、超高評価ダナ。それはそれでいいんだケド、なんかもっとこう、弱点とかねーノカ? 褒め殺し記事は味気ねーんだヨ」

「弱点かあ。正直、他人の悪いところを並び立てるような真似はしたくないんだが……」

「嘘つけ、よくギルさんとかをからかって酒の肴にしてたじゃネーカ」

「昔は昔、今は今さ。まあとにかく、思いつく弱点は一つあるな」

「オ? それハ?」

「心理戦が超弱い」

「それはリッちゃん限定で、ダロ? あの子のベリっち専用心眼があるカラ賭事惨敗なだけデ……」

「いや、そんなことはない。以前一護と賭けババ抜きをしたことがあるんだが、アイツ、ポーカーフェイスが絶望的なまでに下手くそなんだ。ババ以外を抜こうとするとあからさまに顔をしかめる。分かりやす過ぎて十連勝しちまったよ。しかも、居合わせたエギルとクラインにも十戦全敗」

「……ウワー、ザコい」

「まあでも、完璧超人じゃなくて、こういう分かりやすい弱点があった方が親しみやすいよな」

「マ、いい方に考えれば、そうなるナ」

「ちなみにこの欠点、アスナにはすごい好評だったぞ」

「ナゼ? 心理戦とかギャンブルは、弱いより強い方がカッコイイじゃねーカ」

「……ポーカーフェイスが下手だと、浮気したらすぐ分かるから、絶対に浮気できないよね、だってさ」

「…………アー、そういうアレカ」

「勘の鋭いリーナの前じゃ、あの欠点は致命的だぜ」

 

 

 

Case 2 アーちゃん/Asuna

 

「アーちゃんってサ、ベリっちのこと『一護』って呼ぶヨナ」

「そうだけど……それが?」

「イヤ、アーちゃんって年上の人の名前は基本的に敬称付きで呼ぶじゃネーカ。ギルさんとかサ」

「そういえばそうね」

「なのにベリっちのことは会ってからズット呼び捨て。どう見ても年上なのに、なんでさん付けにしなかったンダ?」

「うーん……なんていうか、呼び捨ての方がしっくりきたのよ」

「それは『こんなチンピラに敬称なんて付けたら違和感マックスだわ』的な感じカ?」

「……まあ、会ったばかりのころは、そう思わなくもなかったんだけど、月日を重ねるにつれて、理由は変わっていったわ」

「それハ?」

「なんかね、お兄ちゃんみたいだなあって、思ったの」

「そういえばアーちゃん、リアルじゃ妹なんだっけカ」

「うん。けど、うちのお兄ちゃんは一護には全然似てなくて、本当に真面目な優等生タイプ。あんな風に乱暴な言葉遣いをしたり、声を荒げたりしたことなんて一度もない、物腰柔らかな人なのよ」

「ケド、真逆とも言えるタイプのベリっちに、兄貴っぽさを感じたんだナ」

「そうね。むしろ真逆だからこそ、一護のなんだかんだ言いつつ面倒見がいいところとか、一度決めたら絶対に自分で押し通す責任感とか、そういうお兄ちゃんっぽい部分がはっきり伝わってきたんだ。だから、何となく自分との距離が近いような気がして、自然と呼び捨てになっちゃった」

「ベリっちも、リアルで妹が二人いる兄貴らしいからナ。お互い、赤の他人って気はしねーんダロ」

「今度、からかって『一護お兄ちゃん』って呼んでみようかな」

「いいナそれ。その時はオレっちもその場に呼んでくれヨ……どうせ、『ンだよいきなり、気持ちわりーな』とか言いそうだけド」

「あ、あはは……言えてるかも」

 

 

 

Case 3 リズリズ/Liesbet

 

「リズリズはSAOの中じゃ、よくベリっちの刀を鍛えてたんだヨナ。最初に手に入れた刀も、リズリズの露店から見つけたって聞いてるゼ」

「うわー、懐かしいわね。あのボロ刀、失敗作だーって言いながらも何となく死蔵してたのをアイツが買ってったんだっけ。あの頃はあたしも若かったなあ」

「今は若くネーような言い方ダナ、十七歳女子高生……デ、そっからちょくちょく付き合いがあったと思うんだケド、ベリっちの印象とか、よく覚えてるエピソードとかあるカ?」

「んー、そうね……あっ、あたしの誕生日のとき! あれが一番印象に残ってるわ」

「ホウホウ、どんな話ダ?」

「アインクラッドで迎えた初めての誕生日の時、リーナ経由でアロマ入りのモイスチャーマシンをプレゼントしてくれたのよ。当時は下心満載の男共しか周囲にいなくて、ちょっと男性不信になりかけてた時期だったから、リーナを間に挟むっていうさりげない気遣いがすっごい嬉しかったのをよく覚えてるわね」

「プレゼントのチョイスが加湿器ってトコもポイント高いナ。女の子の必需品で、そう滅多には買えない物で、いくらあっても困らない上にアクセサリみたいに重たくナイ。絶妙な選択ダ」

「でしょ? しかも次の日に会っても、恩着せがましく『俺のあげたプレゼントどうだった?』とか言わないで、普段通りにしてるのよ。全然特別なことしたって自覚がないっぽくて、あたしがお礼言っても『そりゃ良かった』って自然な一言だけ。いやー、隣にリーナがいなかったら、正直惚れてたかもねー」

「でも結局、惚れたのはベリっちじゃなくてキー坊だったわけだけどナ」

「……ま、今じゃどっちも独占欲の強い正妻がくっついてるから、あたしの入り込む隙間はないかなあ」

「……あの間に今から入り込むのは、難易度インフェルノ、ダナ」

 

 

 

Case 4 ギルさん/Agil

 

「一護について、か。雑貨屋を営む身として見りゃ、上客だ。持ってくるのは最前線の激レアアイテムが多くて、腕が立つから素材調達も頼みやすい。

 人として見るなら、敬語がなってねえのと短気なのが玉にキズだが、最近の二十そこそこの若者にしちゃあ根性があるし義理堅い。良い奴の部類に入ると思うぞ」

「オー、年上っぽい意見ダナ」

「ぽいじゃなくて、実際に年上なんだよ俺は」

「ハイハイ。ンじゃ、年上のギルさんは、ベリっちのどんなトコが一番印象に残ってル?」

「そうだなあ。良い話と悪い話が一つずつある。セオリー通りに、まず良い話からいこうか」

「頼むゼ」

「一護がウチのカフェで勉強してる時に、俺の姉とその娘、つまり俺から見たら姪っ子が遊びに来たんだ。まだ四歳になったばっかの遊びたい盛りで、まあ店内で騒ぎまくっててな。大人向けの俺の店には子供の機嫌をとれるモンもなくて、俺も姉も辟易してたんだ。

 そん時な、一護が『コンビニで金おろしてくる』って言って外に出てって、五分くらいで帰ってきたんだ。その金でコーヒー一杯注文してから、ポケットに入れてた新品のチャチな知恵の輪を取り出して『コレやるから、ママとそこのおっさんの言うこと聞いてやれ。な?』って言って姪っ子に渡した。昔っからガキ連中に人気のおもちゃをもらった姪っ子はそれですっかり静かになって、俺も姉も大助かりよ。

 帰り際に姉が礼を言いに行ったら『別に礼言われることじゃないっすよ。俺が勉強に集中したいから、勝手にやっただけなんで』だとさ。イヤホンしてっから、姪っ子の声なんて禄に聞こえてないくせにな」

「困ってる人を見過ごせないってカ。子供の扱いに慣れてるトコは、やっぱ兄貴ダナ。で、悪い方はナンダ?」

「……その姪っ子が、一護に懐いちまった」

「ン? 悪いことカ?」

「当たり前だ! ウチの麻衣ちゃんは一護なんぞに渡さねえ!!」

「ウチのって……ギルさんの娘じゃねーんダロ、麻衣チャン」

 

 

 

Case 5 ベルせんせー/Diabel

 

「僕から一護君に対する評価、かい?」

「ソ。今みんなに訊いて回ってんダ。ベルせんせーはSAO時代、プレイヤー支援ギルド『SSTA』に所属して、ベリっちとはよく公私で連絡を取り合ってたそうじゃないカ。そんな中でベリっちに対して、どんな印象を受けたか、訊かせてくれヨ」

「成る程ね。彼に対して長所と短所、という二つの観点で見るならば、長所はとにかく責任感と意志の強さだね。

 自分が成すべきこと、やりたいことにはとにかく全力で取り組み、また諦めることをしない。何度か初心者ギルドの仮想敵役や引率を頼んだことがあるけれど、口では仕方ないようなことを言いながら、誰よりも真剣に引率対象の面倒を見て、稽古をつける相手にも本気でぶつかる。

 手を抜かない、常に全力。言うのは簡単だけど、それを実行するのは容易なことじゃない。それは生徒たちにもちゃんと伝わってるし、ぶっきらぼうな態度が表面だけだと知れてからは、他の皆からの信頼も随分厚くなったよ」

「スゲー、先生からの通信簿を読んでるみたいな評価ダ」

「あはは、一応、リアルでも教職課程を受講しているからね。

 で、短所の方は、やや天才肌なところがあるせいか、自分にできることは相手も頑張ればできるだろう、と思ってしまっていることがある点かな。

 例えば、今まで片手武器をメインに扱ってきた一般生徒と一護君が同時に槍術を覚え始めたとする。一般生徒は基本の型を学び、攻防の仕組みを体験し、段階を踏んで上達していく。それに対して、一護君はたった数度の実戦練習で『だいたい分かってきた』って感じになってしまう。この感覚のズレがあるせいで、初心者と一護君の相性はそんなに良くはないものになってしまっている。

 誰しも自分を基準に考えてしまうのは当然のことなんだろうけど、彼がもう少し、自分の才能の大きさというものを自覚してくれさえすれば、教えられる生徒だけじゃなく一護君自身も、大きく成長できるんじゃないかな」

「長イ、超マジメ。マジで通信簿かヨ。いっそ、文書化してベリっちに渡してやればいいノニ」

「いやあ、そんなことしたら不良生徒よろしく、その場でグシャグシャポイされそうな気がするけどね」

「分っかんねーゼ? 意外と真に受けて考え込むかもナ、アイツ」

 

 

 

「……フゥ。SAO時代の面子はこんな感じカ。今度はALO時代からベリっちに面識がある人を探して、取材しに行ってみるカナ」

 

 

 

Case 6 リンリン/Leafa

 

「えっと、あたしから見た一護さんの印象、ですか?」

「イエス。これまでの取材で出てきたベリっちを構成する重要なファクターは『兄貴』『ぶっきらぼう』『強い』『意外とマメ』この四つダ。リンリンにはこの中のどれが印象に強く残ってるかを教えてもらいタイ。勿論、ベリっちの意外な一面ってコトで五つ目の因子を挙げるもの可、だゼ」

「うーん、この中だったら、やっぱり『強い』ですね。お兄ちゃんが『全力で挑んでも正面戦闘じゃ十中八九負ける』って言い切る相手だもん。サクヤとユージーン将軍を打ち破ってるし、私が会った中で間違いなく最強の人って感じかな」

「確かに、アイツの戦闘能力は人間止めてるレベルだしナ。なんせ『死神代行』ダ。人間や妖精じゃ、死神サマの相手は荷が重過ぎるってナ」

「死神、代行?」

「あァ、ベリっちのSAO時代の二つ名サ。いつかのボス戦で啖呵を切った時に自分でそう名乗ったのが、そのまま定着したンダ。その時のボス部屋まで導いてくれたNPCが死神を名乗ってテ、ベリっちはソイツにボス討伐を託されタ。だから、自分が死神の代行としてボスを叩き斬ル。そういう意味があったとかなかったトカ」

「へぇー、なんかカッコイイなあ。ちょっと憧れるかも」

「リンリンはそんなベリっちと、普段どんなことを話してるンダ?」

「えーっと、たまにお兄ちゃんとのチャットに混ぜてもらった時は、もっぱら戦闘の話をしてます。こういう相手が来たらどう戦うかーとか、こんな武器が相手ならあんな感じで攻めたら勝てるんじゃないかーとか。

 一護さんって、お兄ちゃんでも戦ったことのないような相手を例に出しても、あっさり勝利方法を返してくるんですよ」

「へー、例えばどんな感じデ?」

「えっと、この前マンガで見た蛇腹剣を使ってくる相手はどうやったら倒せるかなって訊いたら『武器には必ず攻撃回数の制限ってのがある。その上限、つまり伸ばした状態から剣を縮めるまでの最大攻撃回数さえ見極めちまえば、縮める瞬間に攻撃して勝てるんじゃね』って。頑張って追いつめれば、相手は最大回数でしか攻撃して来なくなるから、そこが狙い目だって」

「なんか、戦ったことのあるような口振りダナ」

「でしょ? けどALOにそんな武器を持ったモンスターいないし、お兄ちゃん曰く、SAOにも蛇腹剣はなかったらしいんですよ」

「じゃ、他のVRか、SAOの奥地に湧く希少な剣士型モンスターとでもやり合ったってトコカ」

「この前訊いてみた返事的には、そんな感じでした。なんか赤いパイナップル? みたいな頭だったって」

「ウーン、オレっちは知らないナ、そんなモンスター」

「一回戦ってみたいなあ、蛇腹赤パイン」

 

 

 

Case 7 サク姉/Sakuya

 

「一護君に対する印象、と言われてもな……彼と話した時間は、全部ひっくるめてもほんの数十分しかないのだが」

「そこを何トカ。知性溢れる美人領主と名高いサク姉なら、短い時間の中でもベリっちから読みとれる何かがあったダロ? それを教えてくれヨ」

「あからさまにおだてられても、分からないものは分からないのだが……まあ、感じた・読みとれた範囲でなら話せる。それでいいか?」

「全然おっけーダ! さあ、来イ!」

「よし。では……リーファも言っていたようだが、やはり彼に対する最も強い印象は『強い』だな。

 私自身、現実世界で剣術を修めている身である以上、ステータスは高くなくても戦闘にはそれなりに自信がある。だが実際、私は彼に完敗した。おそらく『現実世界で』『竹刀を使用した』『試合形式による』決闘という条件付けをすれば善戦できると思うが、それでも強敵には違いない」

「現実世界の方がいいのカ? 体格とか運動能力とか、性別差が元になるハンデが付いて逆に勝てないんじゃネーノ?」

「いや、彼の運動能力が人間の枠内に収まっていてくれさえすれば、先読みで防げる。ALOのように羽根による超加速や飛翔といった技を使われない分、むしろ読む未来の選択肢は減る。膂力で劣っても受け流しという一点に限れば彼に十分対抗し得るというのは、先の決闘で証明されたからな」

「ホウホウ、でも師範代クラスのサク姉にそこまで言わせるカ。やっぱベリっちも何か剣術とか古武術みてーなのをやってンのかネ」

「いや、それはないな。太刀筋で我流と分かる。それに、彼は強さの根元は体捌きのセンスと感覚の鋭さ、戦況に対する順応力の三つだ。小手先の技に頼らない剛の戦い、と言えば聞こえはいいが、内実はスペックのゴリ押し。流派を修める者の振る舞いではないよ。

 ……とはいえ、戦い好きの素人の本能と経験で片づけるにしては出来過ぎだ。明確な師とまでは行かなくても、最低限、最初に彼が戦いを学んだ、あるいは教え込んだ人物がいると思うのだが」

「ベリっちに戦いを仕込める人、カ。想像もつかねーナ」

「だな。彼が素直に他者の言うことを聞く姿は、ちょっとイメージしにくい。相当の手練れで、かつ彼の短気を何かしらの方法で押さえ込めること。これが最低条件だろう。そんなことを成し遂げた御仁がいるのなら、一度お会いしてみたいものだ」

 

 

 

Case 8 ウチの領主サマ/Alicia

 

「ナァナァ領主サマ、ベリっちと会ったことあるんダロ? アイツに対してどんな印象が強イ?」

「そんなの決まってるヨ! 『ぶっきらぼう』、コレに尽きるネ!!」

「……サク姉の予想、大当たりダナ」

「当ったり前でしョ!! 会って数分なのにネコミミ女とかチビネコ呼ばわりしてきて、いちいちワタシをバカにしてきて、しかも領主相手にあの態度! 強いから許せるトコもあるけど、もうちょっと愛想良くしてくれてもバチ当たんないってば!!」

「ケド、名前を呼ばれて嬉しそうにしてたり、なんやかんやでベリっちの帰還を心待ちにしてルって情報があるゼ? そこんトコどうなんダ?」

「な、名前呼ばれたのは、ちょっとビックリしただけダヨ。今まで勝手に付けたあだ名で呼んでたのに、最後の瞬間だけ素直になって名前で呼ぶとか、ドコのマンガの主人公って感じ。

 それに、帰ってくるのを待ってるのは、ちゃんと明確かつ論理的な理由があるの」

「具体的にハ?」

「あのデュエルの一部始終、実は部下に頼んでコッソリ録画してたんダヨね。それをALO内で有料公開してもいいカナっていう打ち合わせ。あれだけハイレベルな戦いをノーカットで見られるなら、相応のお値段を徴収してもいいはずだシ、ウチの新しい収入源として期待できるカナって。

 サクヤちゃんからはもう了承を取ってあるし、ユージーン将軍についても、発生した純利益の二割を譲渡するなら可って、領主サマ経由でメッセージもらっらしネ。ウチの経理担当のコがリアルで映像編集の仕事してるから、そのコネでがっちり修正加工して売り出せば、大ヒット間違いなし!」

「スゲーいいアイデアだとは思うけどヨ、それ、ベリっちが了承するとは思えねーゾ? 見せ物になるなんざ真っ平ゴメンだ! トカ言ってナ」

「あ、それは大丈夫。イエスと言わざるを得ない取引内容にするからネー」

「つまり、脅迫材料があるってコトカ」

「そう! あの人、私たちと別れた後に世界樹めがけて飛んでいったんだけど、その後速度調節間違えたみたいで、顔面から思いっきり幹に突っ込んだんだって。その激突の瞬間の映像が手元にあるから、これで脅すヨ」

「……よくそんなモノが手に入ったナ」

「一応、彼がアルンを目指してるって知った直後に、アルン中の密偵に人相を流して弱みを握るよう指示したからネ。必然ってヤツだヨ」

「…………おっかねー人ダゼ」

 

 

 

Special Case  リっちゃん/Lina

 

「…………一護について嗅ぎ回ってる輩がいるって情報が入ったから、まさかとは思ったけど……さあ、被告アルゴ。弁明を」

「やっぱバレたカ……だが、悔いはないゼ。ジャーナリズムの世界は危険と隣り合わせ。こうやって現実世界で黒服のお兄サンたちに囲まれてリムジンに連れ込まれるのも、覚悟の上サ」

「そう、なら大人しく吐いた方がいい。さもないと、犬カフェの椅子に縛り付けて半日放置の刑にかけることになる」

「それだけはやめてクレ!! い、犬だけはマジでダメなんダ!!」

「だったら大人しくゲロって。なにが目的? また誇張満載の記事を書く気なら……」

「違うってバ! ベリっちがいつかALOに戻ってきたときに特集を組もうと思って、アイツの話を集めてたんだヨ」

「だとしたら、何故わたしのところに来なかったの? ALO内に関しては知らないけど、SAO内の二年間はほぼ毎日一緒に暮らしてたんだし、情報源としては私が筆頭に来てもおかしくないと思うんだけど」

「そ、それは、その……リっちゃんにベリっちの印象とか聞いても、答えが分かり切ってるからツマラネーナ、とか思って、他の人の視点で見た方が新しい発見があるカナって考えてサ」

「失礼な」

「だって百パーベリっちの惚気話になるじゃネーカ。SAOで散々恋愛相談乗ったこと、忘れてねーだろうナ?」

「…………う」

「事実、ベリっちに対して一番強く印象に残ってるエピソードや要素が完全に被るってコトはなかったシ。アイツとの関係が違えば強く記憶される印象が変わってタ。当たり前のコトなんだろーガ、こうやって実際に聞いて回って、色んな面を色んな人から聞かせてもらうってのは、いい体験になったって思うナ」

「……むぅ」

「でもマ、せっかくダ。リっちゃんからも何か一つ、ベリっちの人柄を知れるようなエピソードとか聞かせてくれヨ。出来れば、他と被らないヤツで」

「……取材記録が完成したら、一番最初に見せて。それが条件」

「ほいサ」

「ん。それじゃ……これ」

「ベリっちの写真、カ? 私服ってことは現実世界のベリっちダナ」

「そう。これはツテを使って入手した一枚。匿名希望の真っ黒ジゴロ二刀流剣士から買い取った」

「匿名になってネーヨ」

「場所は都心のデパ地下。情報提供者が自分のハーレm……もとい、正妻とガールフレンドたちに渡すホワイトデーのお返しを選ぶのに協力してほしいと一護に頼んで出かけたらしい」

「成る程。デ、ベリっちもなんか買ってるっぽいナ」

「いえす。家族用だって言って三人分買ってたって。けど、一護の家族で、女の人は妹さんが二人だけ。お父さんは話に聞く限りじゃ、そういうのを欲しがる人じゃないみたい」 

「じゃあ、あと一人はおふくろサン? けど、今のリっちゃんの言い方的には、ベリっちのおふくろサンは……」

「……ん。もう亡くなってる。だから、お墓に供えるために買ったんだと思う」

「……そっカ」

「…………ごめん、アルゴ。言っておいてなんだけど、これは記事にはしないでほしい。いくら良い話でも、公表したらダメな気がする」

「あァ、分かってるサ。オレっちもそれくらいは分かる。この話は口外しねーヨ」

「……ん。じゃあ、代わりに口外できる話を一つ。アルゴ、この写真に写ってるのは誰?」

「誰って、お菓子を抱えたベリっち……と、レジの店員さんダナ。しかもけっこう美人サン。黒髪がきれいで、スタイル抜群。営業スマイルのえくぼがチャーミングだナ」

「そう。さてそこで問題。一護はこの店員さんの、どこを見ているでしょうか?」

「……マサカ」

「……そう。つまり、そういうこと」

「……記事のオチ用のネタに最適だゼ。ナイス、リっちゃん」

「まあね」

 

 

 




複数の方のリクエストをくっつけて書いてみました。

番外編なので、正直勢いだけで書きました。
コレ、アルゴの情報リテラシー的にどうなの? とか、細かいことはあんまし考えてないです。

次回はキリト視点で一話書いてみようかなと企画中です。

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