カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼ 作:サバ缶みそ味
7周年…とても短いようで長いですね!
9話
タクトはリビングにて愛用の青いギターを弾いていた。タトクの奏でる音は激しくもリズミカルでもあり、とても気分が高揚するような演奏だった。タクトの演奏が終わると終始傍で見ていたリサは目を輝かせて拍手をする。
「
『モーイ』の上位版も出すほどリサは嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねる。タクトは普段のタクトから見ることのないギター捌きに驚くリサにドヤ顔でガッツポーズを決めた。
「どうよ?俺のスーパージェネラルレボリューションは!」
「タクト様はギターの演奏が上手なのですね!」
褒められたタクトはでへへへと照れるように笑った。リサと同様にタクトの演奏を終わるまで見ていたケイスケがコーヒーを飲みながらリサにパンフレットを渡した。
「もうすぐ武偵高校で『アドシアード』が開催されるからな。タクトはそのオープニングセレモニーの演奏を担当するんだ」
「アドシアードですか?」
「そうだぜ、チアシードォー‼」
それは食い物だとケイスケはタクトにツッコミを入れて首を傾げるリサに説明をした。5月の末ごろに武偵高校で行われる国際競技大会である。いわばインターハイのようなスポーツ大会。スポーツとは言っても銃を使った競技をメインに行われている。タクトはその大会の開会式で演奏を行うのであった。
「去年でタクトが生徒会に提案し演奏したんだが、それが好評だったみたいでな。今年もやってくれと頼まれたんだ」
「武偵校ではそのような大会が行われているんですね…‼リサも見てみたいです!」
「リサちゃんが応援に来てくれるのならもっと頑張っちゃうぞー‼」
タクトは張り切ってもう一度ギターを手に取り演奏し始めた。そろそろ近所迷惑だからやめておけとケイスケに注意されるが演奏に没頭して話を聞いていないタクトにケイスケは苦笑いする。
「ケイスケ様は『アドシアード』には出るのですか?」
「いや、俺は救護担当だから出場はしない。その代り、カズキとナオトは出場する」
大会のほとんどは強襲科と狙撃科が行う競技が多いといわれている。強襲科の種目からはナオトが、狙撃科の種目からカズキが出場することになっていた。ケイスケの説明を聞いてリサは納得する様に頷く。
「なるほど…それでカズキ様とナオト様は学校で自主練してから帰ると言っていたのですね」
「注目される競技が多いからな。ポイント稼ぎ、アピールにはもってこいだからほとんどの生徒は腕を磨くのに必死さ」
今後の進路にも関わる可能性もあり、生徒たちは腕の見せ所だと自主練に没頭していく。中には授業をさぼってでも訓練する輩もいるという。ピリピリしている中でそんなことは気にしないというくらいにタクトは楽しそうにギターを弾いていた。
「まあ、たっくんにとってはどうでもいいことなのかもな」
「???」
色々と難しい事は考えないのだろうとタクトを眺めながらコーヒーを飲むケイスケにリサは頭にハテナを浮かばせながら首を傾げた。演奏が終わったタクトはハッとしたような顔をして慌て始めた。
「しまった‼衣装のことを考えてなかった!」
「たっくん、衣装はいらねえだろ」
ばっさりと否定するケイスケに対しタクトはプンスカと反論した。
「うるせ‼今年は衣装を着たいんだよ‼」
本人曰く、今年もやるのならばオープニングセレモニーで派手な衣装を着たいというのだ。去年は普通の武偵高校の制服で演奏し、終了後拍手喝采を聞いたタクトは『衣装を着ればよかった』と愚痴をこぼしていた。
「衣装を着られるのですか?リサも衣装を着て演奏するタクト様を見てみたいです‼」
「任せておけ!スター錦〇みたいなビラビラを付けた派手な衣装を着て決めるぜ‼」
そう言ってさっそく衣装選びをしようと出かける準備をしているタクトにケイスケはため息をついてリサと共にタクトと同行することにした。このままタクトを放っておくと小〇幸子のような大掛かりな衣装を着てやらかすかもしれない。そういうわけで監視役としてついていくことにした。
__
「ウラー!今年こそは絶対に負けんぞー‼」
「‥‥」
自主練を終えて帰路についているカズキは気合いを入れながら叫び、その隣でうるさそうにナオトは耳を塞いでいた。
「ナオト‼俺は決めたぞ。今年の狙撃科の競技は1位を取るぜ‼」
学園島にある公園で売られているリーフパイを買って荒々しく食べるカズキは海に向かって吠えた。ナオトは黙々とリーフパイを食べてちらっと横目でカズキを見る。
「…1位は無理だろ」
「なん…だと…」
ナオトに即否定されたカズキはしょんぼりとした。ナオトの言うことも一理ある。カズキと同じ狙撃科に所属しているレキという生徒がいる。彼女の狙撃の腕は神業と言っても過言ではないほど凄腕であり、去年のアドシアードでは見事狙撃科で1位という好成績を残した。ちなみにカズキは2位であった。2位というのも凄かったのだがレキとの差はとても大きかった。
「今年もレキは狙撃科の種目に出場するみたいだし、カズキが1位になるのは無理だな」
「きょ、去年は油断をしたんだ。今年こそ勝ってみせるぞ‼というかナオトも今年は真面目にやれよな!」
強襲科の競技で出場していたナオトは前半はよく動いて上位に上がるほどの活躍を見せていたのだが、後半ははやく御飯を食べたいという理由でやる気をなくし結果6位という成績を残した。もっと真面目にやっていれば1位をとれただろうにと担任の綴先生も嘆いていた。
「…お腹が減らないよう頑張る」
「今年はリサが応援してくれるんだからな!張り切れよ‼」
そう言って気合いを入れて張り切るカズキは眠たそうにしているナオトにも喝を入れようとしたが、ナオトは別の方向を見いた。何かを見て驚いている様子だったので何を見て驚いているのかカズキもナオトの視線の先を見た。
視線の先には大きな黒のキャリーバッグをひいてこちらに手を振っている男性の姿が見えた。目を凝らして視ると黒の祭服を着て愉悦に満たされた笑顔で手を振っているジョージ神父の姿だった。
「やあナオト、カズキくん。元気だったかい?」
タヒチのバカンスを満喫していたジョージ神父はにこにことしながらカズキ達の下にやって来た。久々に会うのでカズキもナオトも驚きの顔を隠せなかった。
「ジョージ神父!?久しぶりですね!」
「…『イ・ウー』には襲われなかった?」
驚きと再会に喜んでいるカズキとナオトにジョージ神父はにこやかに頷いた。
「ああ、あの後は無事に日本に戻れたよ。そうだ、リサの一件は本当にありがとう」
「いえいえ‼もうお茶の子さいさいですよー!」
一回詰みかけたけどなとナオトは口をこぼす。カズキは無事にリサを『始末屋』の魔の手から守ることができ、リサは今も自分達と一緒に暮らしていることを話した。
「やはり、君たちに頼んで正解だったよ」
ジョージ神父はタヒチで買ったお土産を渡しながら満足そうに頷いた。その後はジョージ神父と一緒に話ながら歩いて移動した。リサが日本に来て驚いたこと、リサのおかげでより楽しくなったと話した。ナオトはジョージ神父に気になっていたことを聞いた。
「…リサはこれ以降も狙われることはない?」
「ああ、そのことなら心配ない。『始末屋』が逮捕され、どうやら連中もリサを追うことは諦めたみたいだよ」
ジョージ神父が聞いた情報では『イ・ウー』の中には『始末屋』にいつ殺されるのかビクビクしていた者がいたという。その『始末屋』がいなくなったことでほっとし、『イ・ウー』の体制も少しは変わるだろうとのことだった。もうリサを追いかける者はいない、そう聞いたカズキとナオトは安心した。
「そうだ、また一つナオト達にやってもらいたいことがあるんだ」
「おお?さっそく依頼ですな?」
「…待って。その話はケイスケ達がいる時のほうがいい」
ナオトは詳しく聞こうとしているカズキを止めた。知らないうちにジョージ神父の新たな依頼を受けてしまったらケイスケが激怒するのは間違いない。ナオトはそう確信していた。
「…家に帰る所だし、詳しい話は家で話して」
「そうだね。ケイスケくん達にもお土産があるしそこで詳しく話そうか」
ジョージ神父も笑顔で頷き、カズキ達と共に家に向かっていった。
__
「目指せ!幸子マスター‼」
「だろうと思った。予算の事考えろやバカ」
やはりタクトの着たい衣装はビラビラのついたスターの衣装よりも絶対予算オーバーしそうな大掛かりな衣装だと予想が的中したケイスケは毒づいて却下した。タクト達はメンズの服屋ではなくコスプレショップにいた。その店ではアニメのキャラの衣装だけではなく、女性が着るようなヒラヒラのフリルがついたドレスから可愛らしいキラキラのラメのついた服まで色々と売っていた。勿論、リサも興味津々に目を輝かせて服を見て、値札に書かれている高額な値段に驚いていた。
「とても可愛らしい服がいっぱいですね。でもほとんどがレディースのようですが…」
リサは疑問に思っていた。この店に売られているのは女性が着るものが多く男性用の衣装は少なかった。もしかして女性の服を着るのか気になっていた。ケイスケはそんなリサの疑問に察したのかタクトを呆れるように見ながら答えた。
「売られている衣装を参考にして、購買部に自分の着たい衣装を作ってもらうようだぞ」
「そうでしたか。どんな衣装になるか楽しみですね!」
「ま、まぁな。でも生徒会に聞いた方が一番いいんだけどさ…」
完成を待ち遠しくわくわくしてるリサにケイスケは苦笑いした。タクトが今まで作ったものは見るに堪えないひどいセンスなものばかりで、武偵の生徒や教師からも『腐った匠』と称されている。だからこそタクトが考える衣装はたぶんひどいものになるだろう。だからといって楽しみにしているリサにあまり期待しない方がいいと言うべきかケイスケは悩んでいた。
そんなケイスケの憂鬱にはお構いなくタクトはずんずんと進んで参考になる衣装選びをしていた。ケイスケには買うなと怒られたのでとりあえず見て参考にすることにした。
「うーん…匠的にはやっぱり派手なものがいいなぁ」
自称匠のタクトは製作する衣装のテーマを考えていた。幸子にするかそれともスターにするか、やはりここは間を取ってジャクソンマイケルみたいなかっこいいものしようと決めた。参考になる衣装はないかと探していると近くに参考になりそうな衣装がちらりと見えた。これはよさそうだと手を伸ばして取ろうとした時、これを取ろうとしていた別のお客の手とぶつかった。
「おとと…すみませーん」
隣にいたお客に謝ったタクトは息を飲んで驚いた。隣にいたお客は2本の三つ編みにしつむじの辺りで結ったストレートロングヘアな銀髪をしたサファイアのような青い瞳の少女だった。肌も白くてきれいでまるで上品なフランス人形のように凛として美しかった。何処かの国からきた観光客かなとタクトは首を傾げた。
「いや、こちらこそすまない」
流暢な日本語でぺこりと頭を下げて謝った。日本語も上手で日本が大好きなんだろうなとタクトは感心して頷いていた。そんな様子に少女は首を傾げる。
「?どうかしたのか?」
「いやー、日本語が上手いなーって思ってて‥」
タクトの答えに少女はなるほどと口をこぼした。
「私の学校では日本語が必須科目なんだ。時折仕事で日本に来る事があるからな」
「なるほどなるほど、ほどなる~」
納得するタクトに少女はクスリと笑った。タクトの滑ったギャグがよほどツボだったのかしばらく笑うのが止まらなかった。
「ふふふ…変わった奴だな。ところで、この服に手を伸ばしていたようだが買うのか?」
「いや、偉大なる衣装作りでちょっと参考になるかなっと思って見てただけだよー。うちの連れが金銭に喧しくてさ~」
タクトはやや不満そうに口をへの字に曲げて愚痴をこぼした。それは大変だなと少女はタクトの話を聞いて頷いていた。
「たっくん、あいつらが帰って来たみたいだから帰るぞ!早く帰らないとあのバカ共は腹減ったと文句言ってくるからな」
長話になっているうちにケイスケが早く来いと怒っていた。タクトはもうすこし話をしたかったと別れを惜しんでいたが早くしないとケイスケの怒りの鉄拳がくるかもしれないので急いだ。
「もう行かなきゃ…日本の観光楽しんでね!じゃあねー」
少女は何も言わなかったがニッコリと笑って手を振っていた。タクトの姿が見えなくなった頃合いを見て少女はきりっと目つきを変えた。
「…あれが菊池タクトか。SSRの生徒と聞くが…いや、今は巫女を狙うことにしよう」
しばらく考えて少女は首を横に振った。今は彼らのことを考えるのはやめて自分がやらなければならない仕事に集中しようと少女はそう決めた。それでは計画を実行しようと動こうとした時だった。
「…?」
少女は一瞬誰かに見られている気配を感じた。警戒して後ろを振り向くがそこには誰もいなかった。先ほどのタクト達かと疑問に思ったがそれはありえない、やはり気のせいだと考えた少女は早めに店を出た。そんな少女の後ろ姿を人混みの中にまぎれてじっと見ている者がいた。
『見つけましたぞ…やっと見つけましたぞ…我らの姫よ…!』
___
「…で、なんでクソ神父がいるんだよ‼」
帰宅して早々、ケイスケはリビングのソファーで寛いでいるジョージ神父を見て怒声を飛ばした。激怒しているケイスケとは反対にタクトとリサは大喜びしていた。
「やあ、リサ。元気そうで何よりだ」
「神父様…‼よくご無事で!」
「ジョージィ‼俺達のジョージの帰還だー‼」
ケイスケはジロリとカズキとナオトに睨み付けた。ケイスケの怒りの視線に二人はそそくさと目線を逸らした。言いたいことは山ほどあるが、リサがジョージ神父に会えてうれしそうにしていたので今日はやめておいた。
「ジョージ神父!リサの作る料理はすごくうまいんだ。食べてみてよ!」
「それは是非とも食べてみたいな。リサ、お願いしてもいいかな?」
「はいっ!神父様や皆様の為に頑張りますね!」
そう言ってリサはキッチンへ向かい、楽しそうに鼻歌を歌いながら夕食を作り始めた。リサが料理を作っている間、ジョージ神父はカズキ達の方にニッコリと笑う。ケイスケは察した、神父がニッコリと笑った後は何か頼み事をしてくるからだ。
「さて、ナオト達には申し訳ないが…また新たにやってもらいたいことがあるんだ」
「このクソ神父!またあるのかよ!?」
やっぱりと予感的中したケイスケは怒りと呆れが混ざった気分で項垂れた。『イ・ウー』に関わったからこの後も何かあるだろうと思っていたがまさかこうはやく来るとは思ってもいなかった。
「新たなミッションだー‼なになにー?」
「たっくん落ち着けって。ここはインポッピプルみたいに落ち着いて聞くんだ」
「…インポッシブルな。それで今度は何?」
わくわくとしているタクト達にジョージ神父は口を開く
「『
「「「「‥‥なにそれ?」」」」
聞いたこともない言葉を聞いて4人は声を揃えて首を傾げた。
アドシアード・聖剣編に入りました。アドシアードの試合の内容が気になりますね。(コナミ感)