カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼ 作:サバ缶みそ味
ロンドンのタワーブリッジがロンドン橋かと今日まで思ってました(オイ
カズキ達がタクトを追っていった数時間後、メヌエットは精油パイプを咥えたまま自分の部屋の窓から外の景色をずっと眺めていた。この日はいつもよりも一段と霧が濃くなっていた。何かを考えているのか、メヌエットは外を眺めながら時たま「Hum」と呟いている。
「お嬢様、皆様がご心配ですか?」
そこへリサが紅茶と焼き菓子を持ってやってきた。リサが来たとわかるとメヌエットはすぐに振り向いて微笑む。
「まあね。あの喧しい連中のことだからまた何かやらかすんじゃないかって」
「うふふ、カズキ様達なら大丈夫ですよ。今回もきっと賑やかに騒ぎながら帰って来ます」
メヌエットはその通りねと苦笑いして紅茶を飲む。彼らの事だから普通では考えられない事をやらかして、意表をついてくるだろう。かちゃりとティーカップを置いたメヌエットは真剣な表情でリサを見つめた。
「リサ、少しお使いを頼んでもいいかしら?」
「お使いですか?」
キョトンと首を傾げるリサにメヌエットは机の上に置いてある手紙を渡した。
「これを今すぐ時計塔の凛さんに渡してくれないかしら?」
「遠坂様へですか?あ、それでしたら何かお茶菓子のご用意を…」
「いいえ、その必要はないわ。それとメイドのサシェとエンドラを連れて行きなさい」
その事を聞いたリサは目を丸くした。自分ならまだしもこの屋敷のメイドの二人まで出てしまうとこの屋敷にいるのはメヌエットだけになってしまう。
「で、ですがお嬢様、それだとお嬢様一人になってしまいます…」
「いいのよ。時には一人で考えたい事もあるの…さあ時間がないわ、今すぐ行きなさい。じゃないとあの騒がしいおバカ4人を路頭に迷わせるわよ?」
そうなってしまってはいけないとリサは頷いて焦りながら部屋を後にした。しばらくして、メヌエットは窓からリサがメイドを二人連れて外へ出て時計塔へと向かって行ったのを確認すると大きく息を吐いた。
「ふう…これでやっとお話ができまわすわね。ずっとこちらをのぞき見しているなんて悪趣味ですわ」
メヌエットはそう毒舌で語って後ろを振り向いた。閉まっていたはずのドアが開いており、そこにはMI5のDが立っていた。Dはメヌエットを見つめにんまりとする。
「いやはや…こちらに気付いておりましたか、メヌエット女史」
「率直に聞くわ。ハワード王子の誘拐を指示したのは貴方でしょ?」
「さあて、何のことやら」
肩を竦めてわざとらしい笑みを見せるDにメヌエットはどうでもいいかのようにジト目で睨んだ。
「ですが本当の狙いは王子ではありません…王子の傍にいたジャックが狙いなのでは?」
「‥‥私にはなんの見当もつきませんなぁ」
へつらいの込めた笑みを見せるが声は笑っていなかった。それでも構わずメヌエットはさらに話を進めていく。
「ジャックは貴方方にとってあまり良くないことを知っている。王子を攫えば彼女は間違いなく追いかけてくる、そしてのこのことやってきた彼女を始末する予定だった。ですが貴方は王子と間違えてタクトを攫ってしまった…とても素敵な誤算ね」
「ははは…貴女の妄想話はとても面白いですな」
「そうかしら?こちらとしては貴方の三文芝居のほうがとってもつまらないわ。ここには私だけしかいませんし、正体を明かしたらどうです?D…いやブラックウッド卿」
その言葉を聞いたDは笑うのをやめ、真顔になった。ジロリと細く鋭い目でメヌエットを睨んだ。
「…本当に面白い事を言いますなぁ。何故、そう思うのです?」
「簡単な事ですわ。私、以前に貴方にお会いしたことがありますの。その時の貴方はブラウンの瞳、ですが今の貴方はダークグリーンの瞳。カラーコンタクトかと最初は思っていましたが…ジャックを睨むあなたの殺意を込めた眼差しで確信致しましたわ。Dに変装し、今すぐ彼女を始末しなければならない人物はたった一人しかいません」
それが貴方、ブラックウッド卿であるとメヌエットは指をさす。ずっと真顔で見つめていたDはくくくと低く笑い、軽く拍手をした。
「‥‥やはりあの名探偵の血筋というわけか」
するとDは黒い霧に包まれると、黒いローブを羽織った黒スーツの男、ブラックウッドへと変貌した。
「本当ならば王子が攫われあの喧しい連中が追いかける予定だったが…どちらにしろこちらの都合に転んだのは変わりない。さて、メヌエット女史よ。あの忌々しい探偵を誘き寄せる為、私とご同行お願いする」
手をこちらに向けてきたブラックウッドにメヌエットは車椅子につけていた古い軍用銃、リー・エンフィールドを構えてブラックウッドに銃口を向けた。
「…そんな空気銃で退けれるとお思いかね?」
「無駄な事はわかっています…ですが、そう簡単に貴方とご一緒するつもりはありませんわ。それにはっきりと言っておきましょう。この私を攫ったとしても、お姉様もそして曾お爺様も、シャーロック家は貴方なんか相手にしませんよ。ペテン師である貴方には全く興味ありませんので」
ブラックウッドはペテン師と聞いてピクリと反応した。額にはかすかに青筋を浮かべており、必死に怒りを堪えているようだ。
「どちらにしろ、私の復讐には変わりない」
ブラックウッドは右手に持っている水晶玉をかざす。黒い霧が勢いよく現れメヌエットに向かって包み込むように襲い掛かる。メヌエットは臆せずにリー・エンフィールドの引き金を引いた。
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「復讐だと…!」
カツェはキッとブラックウッドを睨むが彼はそんな事には構わず話を進めた。
「かつて私を追い詰め、この私をペテン師と言い放ったあの忌々しい探偵を葬らせ、この私をペテン師と嘲笑うこの国を消すことで証明させるのさ。モリアーティーではなく私こそがこの闇を支配する者であり、このイギリスを支配する者だと」
「所謂リベンジofデスってことか!」
「たっくん、デスしたら意味ない」
「二人とも、そんなことしてる場合じゃない」
そう呑気にコントをしている場合かとセーラはタクトとナオトにツッコミを入れた。シャーロックを誘き寄せる為に、殺すためにイギリスを霧に包ませ、そしてメヌエットを攫ったのかとセーラとカツェはブラックウッドを睨み付ける。
「…はっ、どういった目的か聞いて見れば随分と小せえじゃねえか」
ブラックウッドの目的を聞いたケイスケは軽く貶す様に笑い、ブラックウッドはピクリと反応した。
「小さい野郎だな。そんなことしてもてめえなんか相手にならねえよ」
「そうだそうだ!予習復習なんてしても俺達で十分だぜ!」
恐れを知らずに挑発するケイスケとカズキに対してぷるぷると震えるブラックウッドにマキリはため息をついて肩を竦める。
「ブラックウッド卿、わざわざ自分の機嫌を損ねに戻って来たのではないのでしょう?」
「‥‥その通りだったな。これから最終段階に入る」
「てめえ、何をするつもりだ…!」
ブラックウッドは【極限宝貝・エクリプス】を掲げると、水晶玉は再び黒い光を放って照らし出す。何をするのかカツェ達は身構えたが、一向に何も起こらない。
「霧の腐食を更に早めた。いずれイギリス中の建造物が崩壊するだろう。だが、ある場所を除いてだ。我々はその場所へ向かう」
「その場所って‥‥まさか!」
ワトソンは何かを察したようで、ブラックウッドは深く頷いて口を開いた。
「まずはウェストミンスター宮殿、国会議事堂。そしてバッキンガム宮殿、女王陛下のいる場所へと向かう」
「貴様…議員達や女王陛下を始末するつもりか…!」
サイオンは怒りに満ちた眼差しでブラックウッドを睨んだ。議事堂では今でもこの霧の対策について会議をしている議員達、宮殿にはイギリス王室の者たちが避難している。
「いかにも、そこにはお前の長官であるMもいるものな。議事堂には私も向かう」
ブロフェルドはニヤリとサイオンをあざ笑う。
「スペクター…そして我々Nの目的の為、向かうとしよう」
「そのまま行かせるかよ!」
カツェはワルサーP90をブラックウッドに向けて撃つが、マキリの手が動くとその弾丸は軌道が逸れてた。ブラックウッドは不敵に笑い、水晶玉をかざした。
「その通りだな…私が何もせずにここから去るわけがない」
ブラックウッドの足下から大きな赤い魔法陣が発現したかと思いきや、そこから這い出るかのように骸骨や体が腐りかけ、臓物や骨を剥き出しにした白目のゾンビの群れが現れてきた。ゾンビを見てカズキ達は焦りだす。
「げえっ!?またゾンビかよ!?」
「うえええっ!?レリックとかないから無限沸きか!?」
「チェーンソーとか持ってきてなーい!」
「学ばせてもらった。ドイツでただ単にレリックを使ったわけじゃない。ゾンビ…グールの召喚なぞこの【極限宝貝・エクリプス】を持った私に造作もない」
ブラックウッドはドイツでゾンビを使って国を襲おうとしたのではなく、復讐の為だけにこの術を習得し、もののついでということでドイツ中をゾンビに溢れ返させようとした。それを理解したカツェは怒り心頭にブラックウッドを睨んだ。
「てめえ…その為だけに同志を、そして先人達を貶しやがって‼許さねえ!」
「ふっ…せいぜいそう喚いているがいい。ならばこの国を潰したらそのついでにお前の祖国を次の標的にしよう。まあお前達はそれを目の当たりにすることなく、餌となるのだがな」
ブラックウッドは水晶玉をかざし、マキリやブロフェルド、黒スーツの男達とともに霧に包まれて消えていった。この場に残るのはカズキ達と沸き続ける蠢く屍の群れ。
「なんとしてでもここを切り抜けるぞ‼」
「ゾンビパーティーの再開だぜーっ‼」
カズキの掛け声ともにカズキ達は撃ちまくりながらゾンビの群れを倒していく。カズキ達に襲い掛かるゾンビを片付けなければならないが、倒壊するかもしれないこの屋敷からも抜け出さなければならない。ケイスケはその事を気に掛けながら、もう一方の事も気にかけていた。サイオンとジャックは只管縮こまって襲い掛かるゾンビに震えているハワード王子を守りながら戦わなければならないし、カツェはブラックウッドに対して怒りを募らせて冷静ではない。
「ちくしょう…ちくしょう…‼」
「まずい。あいつ怒って周りが見えてねえ!カズキ、カツェを頼む!」
「おう!カツェ、落ち着けって‼」
「イエーイ!ゾンビパー…って囲まれたー!?」
「たっくん!無暗に突撃しないで…!」
カツェは冷静でいないわ、その間にタクトが勝手に突撃して囲まれるわ、王子は動けないわで収拾がつかない。発言している魔法陣から限りなく沸きだすゾンビや骸骨の群れに弾が追い付かない。ケイスケは次第に焦りを募る。
そんな時、遠くからエンジン音が響いてきたのが聞こえた。最初に聞いたセーラは誰かがまた装甲車で突っ込んでくるのではと身構えるが、いつも装甲車でダイレクトアタックするタクトは自分の隣にいるし、やり兼ねないカズキ達もこの場にいる。では、いったい誰なのか思い当たる人物がいない。そんな事を考えている間に激しいエンジン音はもう間近に近づいて来ていた。
大きな扉が激突する音とともに吹っ飛び、そこからFV603サラセンが猛スピードで突っ込んできた。ゾンビや骸骨達を撥ね飛ばしながらカズキ達の近くで止まる。サラセンの円形のハッチが開くと凛が身を乗り出して出てきた。
「みんな、待たせたわね!クソ神父御用達よ‼」
「凛先輩!すっげええ‼」
「さっすがは俺達の先輩だぜー‼」
カズキとタクトは目を輝かせているが、セーラはやっぱりあの神父の生徒だけあると遠い目をしていた。サラセンの車体後面の扉が開くと、そこから2丁のガバメントを構えたアリアが飛び出してゾンビに向けて銃弾を撃ち、サラセンの扉からリサがひょっこりと顔を覗かせた。
「全く、あんた達に関わると厄介な事ばかりね!」
「皆様‼お助けに来ました!」
「リサ、助かった!」
「というかなんでアリアまで来てんだ?」
アリアはむすっとしてポケットから手紙を取り出し、カズキに押し付けた。
「リサがメヌの手紙を届けにきてくれたのよ。内容は私にあんた達を助けに行ってほしいって頼み。それからブラックウッドとかいう奴の囮に自らなることが書いてあったわ」
手紙にはアリアにカズキ達の助けになってほしいと頼み事とブラックウッドの目的、そしてその標的になり兼ねないアリアの代わりに自分が囮になると書かれてあった。
「メヌは私がメヌやこの事件に関わることで、私がブラックウッドの標的になると焦っていたのね…私がそいつの毒牙にかからないように身代わりになった…だからあんた達!こんな所で油売ってる暇はないわよ‼」
「その通りだね!急いでメヌエットちゃんを助けに行こう!」
「ホントにさ!妹を攫った事でお姉ちゃんがプンスカプンだぜ‼」
「さっきまでゾンビパーティーとか言って騒いでただろ」
「兎に角早急にロンドンに戻らなくちゃね」
ケイスケのツッコミにカズキとタクトはテヘペロする。アリアはやる気を見せる4人組に笑って頷いた。
「そうね…大事な妹を手にかけようとする輩に風穴開けてやるわ‼」
「話はすんだ?そうと決まればさっさとここから出るから早く乗りなさい!」
凛はカズキ達がサラセンに乗り込んだのを確認するや否やポーチからエメラルドやルビー、ガーネットやらいくつもの宝石をゾンビの群れや赤い魔法陣に向けて投げた。
「爆破‼」
力を込め、手をかざして叫んだと同時に宝石が光り出して爆発を巻き起こした。宝石を捨てるなんて勿体無いと見ていたカズキとナオトは目が点になり、タクトは目を輝かせた。
「宝石って爆発するんやな…」
「すっげえええ!よーし、俺も援護するぜ‼SUGOKUTUKA…」
「それはいいからさっさと出るわよ‼」
タクトの新魔法は凛に止められ出る幕が無くなった。先ほどの強い爆発のせいなのか、タクトがUNKO VURASUTOを使いすぎたせいか屋敷は揺らぎ、崩れ始めた。サラセンは勢いよくバックをして倒壊する寸前に屋敷を脱出。ハンドル捌きで方向転換し猛スピードで走り出す。凛の荒いドライブテクで車内はガタガタと揺れる。
「ほんっとあのクソ神父のせいで余計なスキルがついてしまったわ…!」
凛はやけくそ気味に愚痴るが満更でもなさそうだった。先ほどまでブラックウッドへの怒りで熱くなっていたカツェはようやく冷静に保った。
「はあ…ようやく頭が冷えたぜ…カズキ、心配かけて悪かったな」
「OKOK、気にするなって。俺はいつでもOKだぜ」
言ってる意味は分からないが、カツェを励ましているのは確かだというのは分かった。カツェは少し照れながら笑ってそっぽ向く。全員落ち着いてきたところでこれからどこへどうするか、ケイスケはサイオンとアリアに尋ねる。
「それで、まずはスペクターかブラックウッド、どっちから行くんだ?」
「連中はまず最初に国会議事堂をジャックするつもりだ。そこにはMI6の局長、Mや議員達もいる。奴等が彼らを始末する前に止めるぞ」
「そうしたいのは分かるわ‥‥でも、間に合うの?」
アリアの言う通り、ここからロンドンの国会議事堂まではかなりの距離がある。そこに辿り着く前にすでに乗っ取られており、間に合わない。
「その事ならたぶん大丈夫よ」
凛は運転しながら後ろへちらりとアリアに視線を向ける。
「私達にはまだ頼れる人がまだいるわ…まああの愉悦の笑顔はむかつくけど」
「凛先輩、それってもしや…」
「って、ぶつかるー‼ちゃんと前を見てくださいよ!?」
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いつもより深い濃霧の中をブロフェルドを先頭に部下である黒スーツの戦闘集団を引き連れて進み、ウェストミンスター宮殿へと近づいていた。濃霧警報という異例の事態で誰もが外へ出ず、国会では議員達が今も尚話が進まない長ったらしい会議をしている。
ブロフェルドは密かに企んでいた。スペクターを再興させ、今はNとかいう突然現れた国際犯罪組織の一員となっているが、ずっと下のままいるつもりは無い。このロンドンの大規模なテロを済ましたあかつきには逆に利用してこの組織を乗っ取ってやろうとほくそ笑む。
だが国会議事堂の入り口が見えてくると、ブロフェルドの笑みは消えた。うっすらとしている霧の中で議事堂の入り口手前に立っている男が見えた。黒い祭服を着た人物、ジョージ神父が愉悦の笑みを見せて立っていた。
「お前には見覚えがあるぞ。確か…イギリス政府の重鎮、マイクロフト・ホームズだな?」
「その通りだが…今の私は旅行好きのジョージ神父だ」
ブロフェルドもジョージ神父もお互い愉悦の笑みをするが、ブロフェルドはワルサーPPKを引き抜いて銃口を向ける。
「ではジョージ神父、何のつもりだ?我々の前に立って行く手を阻んでいるようだが、まさかこの数を相手に一人で守り抜くつもりかね?」
「ふふふ、どうやらメヌエットも人使いが荒いな…久しぶりに運動ができそうだ」
ジョージ神父はにこやかに笑いながら、細い剣を3本ずつ両手で掴んで刃先をブロフェルドへと向ける。
「私はただの時間稼ぎだ」
「時間稼ぎか…面白い、できるものならやってみろ」
ブロフェルドが引き金を引いて撃ったと同時に黒のスーツの男たちが一斉にジョージ神父に向けて掃射した。ジョージ神父はこちらに向かってくる弾丸の雨を細い剣で全て弾かせる。剣は折れてしまったが、ジョージ神父は敵に向かって投げつけ、新しい剣を取り出す。
「やってみせよう…だが君達を懲らしめるのは彼らだがね」
緋弾の最新刊もそうだけど、最近リサやカツェやセーラの活躍が多くてマンモスうれぴー…メインヒロインのアリアはまだしも、どんどん新ヒロインが出てくるからリコリンや白雪ちゃんの出番がががが