カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼   作:サバ缶みそ味

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007シリーズではロシアより愛をこめてや黄金銃とかが好きですね
 スカイフォールは…うん…

 ゴールデンアイはよく友達と遊んではしゃぎまくった


75話

「で?じゃないんだよ!?相手は英国王子なんだぞ!?」

 

 ワトソンは王子相手に頭も下げることなく平然としている4人組に注意をするが、4人はそれでも尚詫びる様子もなく寧ろ逆効果だった。

 

「これが英国の王子ねえ…王子っぽくねえし」

「うーん、どこか小物臭がする」

「国際問題発言!?」

 

 メディアに聞かれたら大炎上間違いなしの発言をしだすケイスケとカズキにワトソンはギョッとするが、ハワード王子は気にもせずにふんと鼻で笑う。

 

「よいよいワトソン卿、余は気にはしておらん。というよりもこの異国の者はサル並みようだな」

「何言ってんだ。人類の先祖はサルだぜ?」

「哺乳綱、霊長目、真猿亜目、狭鼻下目、ヒト上科、ヒト科、ヒト属、ヒト種だから人もサルなもんだぞ?というかチンパンジーの方が凶暴だし」

 

 ああ言えばこう言う。皮肉を込めて言ってへでもない彼らの態度にハワード王子は笑顔で額に青筋を浮かべていた。そんな様子を見ていたワトソンは青ざめる。

 

「お、面白いこと言う…本当に王族や貴族すら見たこともないのであろう」

「そっちがイギリス国の王子なら俺はアボカド王国の王子にして古に伝わりしレバガチャ王だ!」

 

 対抗して言っているのか、タクトは胸を張って自慢をしだす。聞いたこともないしそれで張り合うつもりなのかとシェイクハンドをしようとしているタクトをハワード王子は睨む。

 

「恐れを知らないとは…蛮勇かただのバカか。貴様らの態度、余は少し気に入ったぞ…今日だけは大目に見てやろう」

 

「いやー、なんか褒められちゃった?」

「褒められてないよ!?次はないんだから気を付けて‼」

 

 カズキは理解をしてないようで照れており、そんなカズキにワトソンは注意をする。恐らくこう言っても彼らは直さないので、いつハワード王子が本当に怒るか、ワトソン焦っていた。これ以上、ハワード王子の機嫌を損ねないように話を変えようとした。

 

「そ、それでハワード王子。今日はどのようなご用件でメヌエットのところへ…?」

「ふむ、そうだ。イギリス政府がいくら協力を要請しても頑なに断るメヌエットに余が直々に説得しようとわざわざこの霧の中で来てやったのだが‥‥そこのニホンザル共に阻まれてしまってな」

 

 ハワード王子はしかめっ面で入り口の前で立ちはだかっている4人組を指さす。メヌエットを説得してもらおうと頼んだカズキ達が逆にメヌエットの門番になっていて英国王子に絡むという国際問題になりかけることをしている。余計な事をしてしまったのかもしれないとワトソンは項垂れる。

 

「どうしてこうなった‥‥」

「兎に角、余はメヌエットに用事がある!お前達下々の者はそこをどいてもらうか」

「それは無理。メヌエットはアリアやイギリス政府の人達には会いたくないみたいだし」

「そうさ、俺達は古に伝わりしグレートガーディアンだぜ!」

 

 ナオトもタクトも誰も入れさせないようにしており、中々通してもらうことができなかった。しびれを切らしたハワード王子はぐぬぬと睨む。

 

「この、こっちが紳士として振る舞っているというのに何という傲慢な態度か・・・!というよりも‥‥サイオン!何故余が絡まれているのに手を出さない‼」

 

 ハワード王子は後ろに視線を向けて苛立ちながら怒鳴った。後ろに誰かいるのかとカズキ達は首を傾げてその先の方を見るが、ハワード王子の後ろには誰もおらずただ無人となったベントレー・アルナージしかなかった。

 

「王子、お戯れを」

 

 ふと声が聞こえると思えば、カズキ達の隣にベストのある三つ揃いのダークグレーのスーツを着た、五厘狩りのグレーの髪、青と緑の中間色の瞳をした同い年位のイギリス男子が立っていた。

 

「いつの間に…!?」

 

 ワトソンは驚愕した。気配もなくカズキ達の隣に立っていた男の存在に気付けかなった。同じようにカズキ達も驚いているようで、ケイスケは咄嗟に身構えた。

 

「お前、一体何者だ?」

「…ボンド、サイオン・ボンドだ」

 

 イギリス男子はサイオンと名乗り、ワトソンは『ボンド』という言葉を聞いてまさかと口をこぼした。

 

「まさか…MI6!?」

「いかにも、00セクションのナンバー7」

 

 イギリスの諜報機関の中でも最強と言われている外事諜報組織、MI6。その中でも悪党がイギリスに悪い事をしようとするものならば裁判抜きで殺しても構わないマーダー・ライセンスを持った特戦隊が00セクションである。それを聞いたワトソンは目を見開く。

 

「そんな…その役職のミスター・ボンドはキミのような少年じゃなかったはずだ…‼」

「少し外遊している間にアンテナが緩くなったようだな、ワトソン卿。父は引退し、私が跡を継いだ。会った事は無いが、私は書類上、彼の養子だ」

 

 いつの間に役職を交代し、歴代00セクションの中でも最年少となったのかワトソンは更に驚かされる。しかし、ワトソンとは反対にカズキとタクトは目を輝かせていた。

 

「も、もしかして…007?」

「その通り。私が君達のよく知っている007だ。まあ、映画のあれは先代の007達の活躍を少しオーバーに着飾っているがね」

「すっげえええっ‼握手してもいい?サインもらってもいい?」

「たっくんずるいぞ。俺もサイン欲しい」

 

 タクトは大はしゃぎし、ナオトもカズキもサイオンと握手しサインを貰って嬉しそうにしていた。握手をしてもらったタクトは更に目を輝かせる。

 

「すげえ‼本物の007と握手したぜ!サイオン、実は俺も007とかになってみたくて全シリーズの映画を見たんだぜ‼」

「君達は『007』というよりも『特攻野郎Aチーム』の方が似合っていると思うな」

 

 サイオンは大はしゃぎしているタクトに軽く苦笑いしながらも冷静に対処していく。かのイギリス諜報機関を相手に平然とやってのける彼らに対し、ハワード王子は苛立ちながら怒鳴った。

 

「サイオン‼何をしている!そこの者たちは無礼を働いたのだぞ!」

 

 王子の一言でいつでも007を動かすことができる。下手をすればここで殺されるかもしれない。ワトソンはすぐにでもカズキ達を助けようと武器の用意をするが、サイオンは殺気を放たずに冷静に首を横に振った。

 

「殿下。お言葉ながら、私は彼らに手を出すことは許されておりません」

「む…なぜだ?余の命令も従わぬのか?」

「生憎、事前にマイクロフト卿から彼らの事を聞いており、『MI6も彼らと共に事件解決に協力するように』と言われております。殿下、彼らがマイクロフト卿の言っていたあの4人です」

 

「ぬう…‼おのれ、あの隠居め…余計な事をしてくれたな‼」

 

 ハワード王子は悔しそうに歯ぎしりをする。ジョージ神父ことマイクロフト・ホームズがあらかじめ00セクションに彼らの事を話し、手を出さずに協力するようにと言っていたようで、MI6の矛先がこちらに向くことは無いとケイスケはほっとした。

 

「あのクソ神父…やるときはほんと頼れるんだけどな…」

 

「え?ま、マイクロフト…?」

 

 一方のワトソンは一体どういうことかキョトンとしていた。カズキ達と一緒にいたジョージ神父がかのシャーロックの兄でイギリス政府の重鎮であるマイクロフト・ホームズであるとはまだ知らないようだ。

 

「殿下。彼らは何を考えているのか分からないような底辺の武偵に見えますが…かのマイクロフト卿の生徒でもあり、モラン大佐によるリバティーメイソンの内乱、イタリアでのシディアス卿によるクーデターを阻止した、とそれなりの実力の持ち主です。彼らがメヌエット女史の下にいるのはマイクロフト卿の考えがあってのことでしょう」

 

 彼らをうまく使えばメヌエットは捜査に協力してくれるかもしれない。王子をもつためにサイオンは静かにフォローしていく。ハワード王子はしばらく考え、未だに納得できないようで不満そうに頷いた。

 

「ふん、それならばよい。気が変わった。お前達が余の代わりに働いているのなら問題は無いだろう。せいぜい余の為に尽くすのだな」

 

 また来るぞ、とハワード王子は言い残して車に乗った。サイオンも続いて乗ろうとするが、その前にカズキ達の方へ振り向いた。

 

「噂通り怖いもの知らずのようだな…次会う時はそれなりの礼儀を持っていてくれ」

 

 サイオンは軽い苦笑いをして車に乗り、その場を去っていった。取りあえず大問題にならなくて済んだとワトソンはほっと胸をなでおろしたが、カズキ達はドヤ顔で満足していた。

 

「はっ、次来るときはあの王子にカレーうどんを用意して食わしてやる」

「塩でもまいとく?」

「やったねたっくん、007のサイン貰っちゃったぜ!」

「サイオンかっこよかったなー!俺もいつか00セレクションになりてー‼」

 

 下手したらその場で流血沙汰になっていたかもしれないというのに、まったく動じていないカズキ達にワトソンはずっこける。

 

「なんてことをしてたんだ‼相手は英国王子だったんだぞ!?次はもうちょっと理解してくれ‼」

「そうかっかするなってワトソン。ほらスタンダードフィッシュな感じでいこうぜ?」

「何言ってんの!?」

 

 言っている意味が分からないのにしてやったりという顔をしているカズキにツッコミを入れる。またハワード王子に出くわしたらどうしようかとワトソンは心配になる。彼らの態度次第で大問題になりかねない。心なしか遠山が胃を痛める気持ちが何となくわかってきた。

 

「全く、外でも騒がしいわね‥‥」

 

 すると入り口のドアが開き、メヌエットがムスッとして出てきた。玄関ではメヌエットが自ら外へ出ようとしたことにサシェとエンドラの双子のメイドが目を丸くして驚いていた。

 

「貴方達をいくら呼んでも来ないし、外が騒がしいし気になって来たけどもなにがあったのよ?」

「メヌエットちゃん!俺達ちゃんと門番の務めをしてたんだぜ!」

「ちゃんと職務を果たしている」

「アリアだって英国王子だって追い払りまくるぜ!」

 

「そう、ちゃんと真面目にやって…ん?英国王子?」

 

 メヌエットはピクリと反応した。姉のアリアを追い払ってくれたのは有難がったが、イギリス政府ならまだしも『英国王子』という言葉には初耳で、嫌な予感がした。メヌエットは恐る恐るカズキ達に尋ねた。

 

「あの…さっきまで誰が来てたの?」

 

「ハワード王子」

「あの白スーツの生意気そうな奴、今度こそカレーうどんを食わしてやるつもりだ」

「あとサイオンもきてたぜ!」

「すっげーよなー。007も来るなんて、メヌエットちゃんは人気者なんだな‼」

 

「」

 

 確かに人払いを頼んだのだが、まさか英国王子までも追い返すとは思いもせずしかもMI6までも喧嘩腰で相手にしていたことは予想外だった。メヌエットは思わず白目をなり車椅子からずり落ちそうになった。見たこともないメヌエットのリアクションに双子のメイドもギョッとした。

 

「貴方達…本当に色んな意味で凄いわね…」

 

 写真からして大したことがないと思っていたのに、彼らの情報をもっと探って知るべきだった。メヌエットは胃がキリキリとなりそうでお腹をさする。また王子が来たら絶対に首を垂れる事すらせずに平然とするだろう。

 

「こ、今度ハワード王子が来たときは先に私に伝えてちょうだい…」

 

「どうした?調子が悪そうなら看てやろうか?」

「よし勝利を祝って歌ってやるぜ!あぁ~メヌエットが輝くー♪」

 

 誰のせいで調子が悪くなっているのかとメヌエットは心の中でツッコミを入れてジト目で睨んだ。彼らに暫く門番を任せるのはよそうか考える。知らない間にまた何かやらかすかもしれない。

 

「う、歌わなくていいわ。それよりもワトソン卿、色々と言いたいことがあるからあなたは入って来てもいいですわ」

 

___

 

「…話はあなたがしてきたのだけども…なんなのあのバカ4人は」

 

 客間にてメヌエットは紅茶を飲みながら物凄く疲れたようにため息をついて愚痴をこぼした。しばらくの間、彼らはメヌエットの執事として務めていたようだが、かなり手を焼いているようだと感じたワトソンは苦笑いをする。

 

「あ、あはは…ナオト達は誰の言いなりにもならず、彼ら自身で突き進むからね。僕達の考えている遥か斜め上へ行くんだ」

「ほんと、何を考えているのか…今までに相手にしたことのないタイプで困ってますわ」

 

 いつもなら推理をして毒舌で相手を言いくるめるのだが、それすらも全く効かないし何を考えているのか推理すらできない。英国王子にカレーうどんを食わせるような予想外の行動もするので胃が痛くなってきた。

 

「彼らは身分や地位とか気にせず、フレンドリーにしてくるんだ」

「おかげで恐れ知らずと思われるし…なぜなの?」

「うーん…カズキ達なりに言えば『ソウルメイト』だからじゃないかな?」

 

 また『ソウルメイト』という言葉が出てきてメヌエットは眉をひそめた。リサといい、ワトソンといい、なぜ嬉しそうに語って来るのかメヌエットには分からなかった。

 

「リサから聞きましたわ。サイキョーの絆で結ばれた宇宙ヤバイくらいの友、と…よく分からないのだけども」

「最初は僕も分からなかったよ…でも、今ならわかる。カズキ達は君と友達になろうとしている」

 

 友達と聞いてメヌエットは嫌そうな顔をした。両手でひざ掛けをキュッと握り絞め、少し震えてワトソンを睨んだ。

 

「友達…?私には友達なんていりませんわ。友達なんて…まやかしよ…!」

 

 腰掛の布をさらに強く握りしめる。自分には友達と呼べるものなんていない。かつて通っていた学校では自分の知性に嫉妬して生徒から執拗にいじめを受けた。車椅子から落とされ、服に火をつけられ、泥水を掛けられ、そんな所業をしてきた相手をいくら追い払っても次から次へと現れる。仕舞には学校から追い出され、ずっとこの家に引きこもってきた。そんな自分と仲良くなろうとする人なんているわけがない。

 

「メヌエット…カズキ達は本気だよ。彼らは君を蔑まないし、君の名も地位も関係ない。手を差し伸べてくれる…彼らと一緒にいるとわかるんだ」

 

 ワトソンは首を横に振る。自分も女だとカズキ達にバレた時、彼らは誰にも言いふらさず、秘密を守ってくれ、そして自分の命を助けてくれた。そしてイ・ウーのセーラや魔女連隊のカツェ、どんな相手にも友の為に身を投げ助けら彼らの戦いを見て来たからわかる。

 

「だからメヌエットとも仲良くなろうとしているし、君を励まそうとしている。賭けてもいい。彼らは君を必ず助けてくれる」

「賭ける…?いいでしょう。その話、本当かどうか試してもいいわ」

 

 メヌエットは少しやっけになって頷いた。彼女が話に乗ったことにワトソンはヨシと心の中でしてやったりとこぶしを握る。少しでもカズキ達の力になろうとワトソンなりに彼らの手伝いをしようと決めていた。

 

「それで、あなたは何を賭けるのです?」

「じゃあ‥‥僕の『秘密』を。僕は転装生、本当は女の子だ。この賭けに負けたのならアリアにも、リバティーメイソンにもホームズ家に関連する連中にも、色んなところでバラシていい」

 

 ワトソンは女の子である、それを聞いたメヌエットは目を丸くした。このことを知っているのはキンジやカズキ達だけであり、アリアやリバティーメイソン、その他の貴族にバレれば驚くだろうし、ワトソン家は崖っぷちにもなるし、自分は勘当され追い出されるだろう。

 

「貴女の仕草を見て、本当は女の子ではないのかと推理をしていたけども、やはりそうだったのね。その賭けに応じて、貴女の話に乗ってあげましょう…後は彼ら次第ですけどね」

 

 何とかしてメヌエットに興味を持たせることができた。彼女の言う通り、後はカズキ達に任せるしかない。ワトソンは彼らならきっとメヌエットの力にもなり、大事な友になってくれるだろうと信じていた。

 

「この事件に関わろうとしても…どうしようもならないのに…」

 

 メヌエットはこそっと呟いた。それは一体どういう意味なのかとワトソンは不思議に思って訪ねようとした。しかし、どこからか焦げ臭いにおいがしてきた。

 

「うん?何か焦げ臭くないかい…?」

「む…台所から臭ってきてるようですね」

 

 不思議に思った二人は匂いのする下へと向かうと、台所ではカズキとタクトが狼狽し、ケイスケが怒鳴りながら消火器を持ってきて、ナオトは彼らを静かに傍観していた。よく見るとオーブンから炎が出ていた。

 

「ちょっと、何をしてるの!?」

 

「あ、メヌエットちゃん!ケーキを作ろうと思ってたんだけど…紅蓮の炎を抱いた真紅のケーキになっちゃった!」

「お前等油を入れすぎなんだよ!?バカか!」

「いかん、レシピなしで作るもんじゃなかった!誰かリサを呼んでー‼」

「…リサの偉大さがよく分かるな。作り直すか」

 

 そんな事よりも先に消火をしてくれとメヌエットは頭を抱えた。本当に彼らに任せて大丈夫なのだろうか、少しとんでもない賭けをしてしまったとワトソンは心配と後悔に胸に抱いて肩を竦めた。

 

__

 

「ほんと、リサは良しとして貴方達は何やらかすか…困った連中ですわね」

 

 メヌエットはやつれ気味にカズキ達を見てため息をついた。これまでの間、騒がしい彼らと一緒にチェリーパイを作ったり、途中でタクトが「デビルピッコロプリンを作りたい」と言い出して皆でそれを止めたり、カズキに自分が勝つまで賭けナシポーカーをやらされたりとどたばたとした。今までこんなに振り回されることは無かった。

 

「メヌエット、ポーカー超強い…次こそは負けねえからな!」

「カズキじゃ無理だ。お前、こういったかけ引き弱いしな」

 

 ケイスケにズバリと言われてカズキはしょんぼりとする。タクトもナオトもカズキをフォローすることなく納得したように頷いていた。

 

「貴方達のことはよく分かりました。だから、貴方達を試します」

「試す?これまでずっと試していたように見えたが?」

「印象だけではつかめない事もある…今度は行動で示してもらうわ」

「よーし、何だってやってのけて見せるぜ‼」

 

 張りきるタクトと反対に執事の次は何をやらされるのかとケイスケは面倒くさそうに溜息をつく。その時、玄関の方で呼び鈴が鳴った。誰かが来たのかとカズキ達が向かおうとしたが、メヌエットは止めた。

 

「私が呼んだのよ。サシェ、エンドラ、お迎えしてあげなさい」

 

 メヌエットは双子のメイドに命じてサシェとエンドラは一礼して玄関へと向かった。しばらくすると双子のメイドが戻って来て、彼女たちに続いて部屋に入ってきた人物にカズキ達は目を丸くした。

 

「やあ皆、しばらくぶりだね」

「よっ、カズキ。頑張ってるかー?」

 

 入って来たのはいつものようににこやかな笑顔を振りまくジョージ神父と神父の護衛をしているカツェだった。メヌエットはジョージ神父にぺこりと頭を下げる。

 

「おじ様、お久しぶりです。これまでおじ様をここへお呼びしなくて申し訳ありません」

「なに、気にしなくていいさ。でもメヌから私を呼んできてくれたのは嬉しかったね」

 

 ジョージ神父はにこやかにメヌエットを撫でる。メヌエットはまんざらでもないようで嬉しそうに微笑む。

 

「なあ…ジョージ神父を呼んだのは?」

「貴方達のことに興味がわきました。ですので、貴方達がどう事件を解決するのか見たくなりましたの」

「それってつまり、捜査に協力してくれるんだな!」

 

 カズキは嬉しそうに聞くがメヌエットはしかめっ面で首を横に振る。

 

「いいえ、協力するつもりはありませんわ。私なりに貴方達使って、私なりに解決していこうと思いましたの。私の為に働いてもらいますわ」

 

 イギリス政府の体たらくに見ていられなくなり、ここは自分なりに解決しようと乗り出した。その為なら伯父の力も借り、カズキ達を使ってやろうとしていたのだった。

 

「なんだよ、結局使いッパシリか」

「うん?じゃあなんでジョージ神父を呼んだの?」

「調査の為、これから貴方達に向かってもらう場所へ案内してもらうの」

 

 メヌエットは愉悦な笑みを見せて微笑む。一体何処へ向かわされるのか、カズキ達はごくりと生唾を飲む。そんな彼らにジョージ神父は愉悦な笑みを見せて答えた。

 

「これから私と一緒に魔術協会の本部で魔術師の学校、『時計塔』へ来てもらう」





 序章がすんでやっと次の話の展開へと…

 型月のようなかなり凝った設定は無しで、超シンプルでマイルドにしていきます。

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