カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼ 作:サバ缶みそ味
ブラックウッドの登場する映画『シャーロックホームズ』は好き嫌いが分かれるような感じがします。武闘派のホームズもいいと思います(コナミ感
その次の『シャドーゲームズ』もなかなか。特にモリアーティー教授の声が渋い
黒木から伝えられたのは伊藤マキリを追ってイギリスへ行け、という依頼だった。またもや世界デビューだとカズキとタクトは喜んでいるが、ケイスケは半ば困惑していた。
「た、たしか今のイギリスは異常気象が起きて空港が麻痺しているって聞いているんけど…」
数日前からニュースではイギリスで異常気象が起きており、空港はどこも出ておらずどうやってイギリスへ行くのか、今から行けと言われもどうすることができない。しかしそんな心配をしているケイスケに対して黒木はニッコリとする。
「問題はありません。
「それに、イギリスの方でも少々問題が起きているようで、是非とも君達の力を借りたいとおしゃっていました」
これを聞いて間違いなくイギリスにいるジョージ神父の事だとケイスケは確信する。いつも自分達にこんな面倒なことを押し付けてくるのはあの愉悦の笑顔を見せる神父だけだ。
「明日、羽田空港でその方の使いの人が迎えに来ます。牡鹿については後程お伝えしますのでそれまでに支度をしてくださいね」
「おっけーい‼てめえら40べようで支度しな!」
「そこは噛むなよ…」
すでに3人はやる気満々のようで、明日の遠足を楽しみにしてはしゃいでいる小学生のようにウキウキしていた。この先大丈夫かケイスケは心配していたところ、黒木が真剣な眼差しでカズキ達を見つめた。
「それとあと一つ…伊藤マキリや『N』には気を付けてください。連中はテロ組織、あなた達を脅威と見れば本気で殺しにかかってきますので」
「そこは任せてくださいよ‼この漆黒のパーフェクトヒューマンと呼ばれたかった男、菊池タクトの手にかかればチョチョイノチョイだぜ‼」
「伊藤だか佐藤だかわかんないけどやってみせるぜ‼」
たぶん話していた大半の事は理解していないだろうと黒木も思わずこれには無言で苦笑いをした。
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伝えられた時間は早朝4時には羽田空港に着くようにと意外と早く、張り切っていたカズキとタクトは寝坊しかけ、ケイスケが二人を叩き起こして無理やりにでも連れてきた。
「昨日早く寝ろって言ってただろうが‼遠足じゃねえんだぞ!?」
「ケイスケ、好きな事に興奮すると思わず眠気が無くなっちゃうでしょ?それと同じ」
全然違うと寝ぼけているタクトを小突く。まだ眠たそうにしているカズキは後ろからゆっくりとついて来ているナオトにニヤニヤとする。
「ナオト、お前ついてくるの遅そいじゃん。もうちょっと早くしないと遅刻するぞー?」
「じゃあ早く荷物を持てよ」
ナオトは今自分の荷物に加えてカズキとタクトの荷物を持っている。寝ぼける二人にもう既にやる気をなくしかけているナオト、真面目について来ているのはリサだけで、こんな調子で大丈夫なのかとケイスケは頭を抱えた。早朝4時には来るように言われているのだが果たしてこんな早い時間に行けるのかと気になった。
「…やっぱり来るの遅すぎ」
「ほんとお前等ってマイペースだよなー」
入り口前に立って待っていたのはセーラとカツェだった。二人ともやる気が伺えないカズキ達を見てセーラはジト目で睨み、カツェは苦笑いをしている。久々にセーラを見れてタクトは喜んで抱き着いてきた。
「やっほーセーラちゃん‼お久しブリーフ」
「いちいち抱き着いてくるな!」
セーラはプンスカと抱き着いてくるタクトを押し離す。いつもならジョージ神父が愉悦な笑みを見せて自分達を迎えるのだが、今回は違う事にケイスケは思わず面食らった。
「意外だな…てっきりあのクソ神父が待ってるのかと思ったけど、まさかカツェまで来るとはな」
「ジョージ神父は今イギリスで起きている事でちょっと忙しいようでさ、代わりにあたし達が迎えに来たってわけだ。それに今のあたしは一時魔女連隊を抜けてジョージ神父に雇われている」
どうりでカツェがハーケンクロイツの腕章や眼帯をしておらず、普通の黒い眼帯をしているわけだと納得した。セーラは「神父に雇われても碌な事がないのに」と不満そうに呟いていた。それに対してカツェは満足そうに胸を張る。
「神父は来るもの拒まずというお心の持ち主だからな!それに…か、カズキとまた一仕事できるのならあたしは構わねえさ」
「ぬーん、ところで飛行機とか飛ばせるの?」
カズキはもじもじしているカツェの話の意味を理解していないようで、セーラは無言でカズキをチョップしてから話を進めた。
「その事なら神父がすでに用意してくれている。こっちに来て」
「ねえリサ、なんで俺叩かれたの?」
「カズキ様は乙女のお心を理解していないからです」
「そりゃあカズキは男だもんね」
「たっくん、そういう意味じゃないと思う」
この喧しい連中と絡むといつも調子が崩れる。セーラはため息をつきながら案内をした。何事もなく中を通り、そのまま滑走路へと辿り着いた。
「すでにジョージ神父がこの空港には伝えているから問題なく飛ばせる。私達はあれに乗って行くよ」
セーラはこれから乗る飛行機に指をさす。その先にあるのはガルフストリームG650ER。セレブとかがよく使うと言われているビジネスジェットであった。目の前に見えるビジネスジェットにカズキ達は思わず興奮した。
「たっくん‼すげえよ俺達あれに乗っていくんだぜ‼」
「ついに俺達も古に伝わりしセレブの仲間入りってやつか!俺はシャンパンを注文するぜ!」
「快適な空の旅…!」
「こんな豪華な奴に乗っていいのか…?」
あれほど遠足じゃないとカズキとタクトを叱りつけていたケイスケも驚いていた。神父はこう大判振る舞いすると見せかけえげつない事を頼んでくるかもしれない。そう身構えているケイスケにカツェはニシシと笑う。
「そう心配すんなって。あたし達もこれに乗って来たし、居心地は悪くないぜ?」
「すっごーい!これでイギリスまでひとっとびなんだね!」
「いや、イギリスまで行かない」
はしゃいでいるタクトのテンションを一気に叩き落すかのようにセーラはきっぱりと告げた。カズキとタクトは何故なのかと物凄く悲しそうな視線をセーラに向ける。
「今は飛行機さえも飛ばしたり着陸できない程の状況になってる。一先ずベルギーまで飛んで、そこから神父の船で行く」
「あれ?何で行けないんだっけ?」
首を傾げるカズキにセーラはジト目で睨んでため息をついき肩を竦めた。
「新聞やニュースを見てないの?まあ…行ってみればわかる」
ここで話しても時間を費やすだけ、現地に着いてから詳しい内容を話すことにした。というよりもビジネスジェットに乗れることで大はしゃぎしている連中に話してもすぐに忘れてしまうだろうとセーラは心配になった。
早速カズキ達を乗せたガルフストリームG650ERは滑走路を駆けて離陸していった。機内は快適で、想像以上の広さにカズキとタクトははしゃぎながら騒ぎ、ナオトは持参のアイマスクで眠りにつきだした。
「ホントこれから大変な仕事をするというのにお前達ときたらなんでこうも緊張感がないんだ?」
ケイスケは本を読みだしてしまい、緊張感が全くない連中にセーラは呆れ果てた。こうやる気が見えないのにこれまで難関を乗り越えて戦ってきた。この4人組は今もなおよく分からない。
「今ここで言っても実感が無いしな。早くあのクソ神父に会って文句を言ってやる」
「ところで英語とか大丈夫なのか?お前等外国語には疎い様に見えるんだけどもさ」
カツェのさりげない一言にケイスケは「あ」と思わず口をこぼした。流石に英語くらいは勉強してきただろうかとケイスケは不安一杯でタクトに視線を向ける。
「たっくん、カズキ、ナオト。英語とか大丈夫か?」
「ケイスケ任せとけ?This is アッポーペン!」
「I can not speaking Englishだぜ‼」
「Yes.We can」
「よーし、リサ。このバカ共に英会話を教えてやってくれ!」
こればかりは本当にリサがいてくれて助かる。飛行時間の間に簡単にできるリサのイギリス英会話教室が開かれた。やっぱりこうなるとセーラと肩を竦め、カツェは大笑いをした。
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快適な空の旅を11時間。ベルギーがブリュッセル空港に到着し、ベルギーと言ったらチョコが有名なのでチョコを買いたいとお土産屋に行こうとしたタクトとナオトを抑えつつ、車でオーストエンデの港まで車で移動した。飛行機ではしゃぎ、車の中ではしゃいでいたカズキとタクトは船に乗るや否やすでに疲れ気味になっていた。
「だからあれほどペース配分を考えろといったじゃねえか」
ぐったりしている二人にケイスケは呆れ気味にため息を漏らす。
「そう言えばケイスケ、船の時刻表を見たけどもイギリス行きの便が物凄く少なかったな」
カズキはふと思い出した。イギリス行きの船の便はとても少なく、3時間に片道の一本とその少なさに驚いてた。その事にセーラとカツェは少し深刻そうな表情を見せる。
「まあ理由はすぐにわかるさ…もうそろそろ見えるしな」
カツェの言葉の意味に首を傾げる。そうしているうちにドンドンと霧がかかってきたのに気付く。最初はほんのわずかの薄さで気づかなかったが、次第に霧が濃くなってきていた。
「もうイギリスに入っているぜ」
「ええっ!?さ、さっきまでこんなに晴れてたのにいきなり霧が濃くなってきた!?」
突然の濃霧にカズキとタクトは慌てだした。ここに来るまでは快晴で、霧なんてかかるはずのない気候だった。イギリスだけ天気が悪いのかと思っていたがセーラは首を横に振った。
「衛星の天気予報じゃイギリスは晴れている。でも、イギリスだけ濃霧に包まれている」
そうしているうちに陸地が見えてきた。船から見える景色も建物も、港も濃霧に包まれて視界が悪い。やっと理解したかとケイスケはため息をついてから話した。
「ニュースでも話題になっている。何故かイギリスだけが濃霧で飛行機や船、交通が麻痺している。学者たちも最初はロンドンスモッグかと思っていたが、この霧のことはよく分かっていないんだとさ」
「まさに『霧の街ロンドン』…」
ナオトが呟いたようにまるで何世紀前かの霧に包まれた街のようだ。船から降りればより一層霧に包まれた街が幻想的に見える。しかし飛行機も飛べない、船も本数が少ない、車も渋滞が起きるとなれば本当に厄介である。荷物を担いで一息ついたナオトは不思議そうに尋ねた。
「なあ、これとジョージ神父が忙しいってのとどう関係あるんだ?」
「それについては僕から話すよ」
ふと聞き覚えのある声がかかり後ろを振り向くと、ダークブルーのスーツの上にトレンチコートを羽織り、黒のつば付きニット帽を被ったワトソンがいた。
「ワトソン‼ワトソンも来てんたんだね!」
「うん、僕はリバティーメイソンから緊急の要請と、イギリスに来る予定になっているアリアから頼まれてね。数日前からイギリスに来てたんだ」
「セーラにカツェ、そんでワトソン…これも結構ヤバイ一件なのか?」
いつものメンバーが集合したことで、ケイスケは自分達が追いかけている伊藤マキリの一件の他に別に何か起きていることに嫌な予感がしていた。
「そうだね…詳しい事は移動しながら説明しよう」
ワトソンは辺りをキョロキョロしながら警戒しつつ、カズキ達を案内した。8人乗りのブルーのセレナに乗って移動することになった。車の移動でも、道行く道は先が見えない濃霧でライトを付けてスピードを上げずに進んで行く。
「霧がイギリスを包みだしたのは2週間前に遡るんだ。事件の始まりは女王陛下が庭園でお茶会を開いた時に起きたんだ」
ワトソンが言うには霧が発生する2週間前、イギリスの女王陛下が皇族や貴族や議員の方々を招いて王室御用達庭園でお茶会をしていたことから始まったという。
「最初は何事もなかったんだけど、突然、庭園が霧に包まれたんだ。ガードマンや衛生兵達が女王陛下を守ろうと辺りを警戒しようとした時…女王陛下の目の間に、ブラックウッドが現れたんだ」
ブラックウッドという言葉を聞いてカツェは眉を顰めるが、タクト達は首を傾げていた。
「「「「誰?」」」」
興味なさそうに声を揃えて尋ねる4人に思わずワトソン達はズコッとこけそうになった。
「もう忘れたのかよ!?ほら、ドイツでゾンビを召喚したあの魔術師だよ‼」
「あー、回れタイミングってやつな」
「それはブラックビスケッツ‼ほんと興味ない事はなんですぐに忘れるんだい!?」
ワトソンはツッコミをいれて話を続けた。このぶれない4人はちゃんと話を聞いてくれるのかセーラとカツェは心配になった。ブラックウッドはレリックを使い、ゾンビを召喚させドイツ中をゾンビだらけにしようとした魔術師。そのブラックウッドが再びイギリスに現れたのであった。
「ブラックウッドは女王陛下に『これまで犯した私の罪を帳消しにし、名誉の回復と共に王位を私に授けてほしい』と脅迫し、更には『これを拒めばイギリスは崩壊への道を辿る』とも言ってきたんだ」
ブラックウッドの要請に女王陛下は恐れることもなくそれを拒み、ガードマンや衛生兵達はすぐにブラックウッドを捕えようとした。しかしブラックウッドは低く笑いながら霧となって消えていったという。それがこの濃霧の始まりであった。
「最初はロンドンだけに薄く霧がかかっただけで誰もどうも思わなかったんだ。けれども次第に霧は濃くなっていき、かなりの濃霧になると航空はストップし交通にも影響が出始めたんだ」
深刻になった所でようやくこの霧はブラックウッドの仕業だと気づき、ロンドン警察や武偵、更にはリバティーメイソンやイギリスの諜報機関もブラックウッドの捜索に乗り出したという。しかしイギリス各地を探ってもブラックウッドの姿は見当たらず、しかもこの濃霧により困難になっているのであった。
「ジョージ神父はブラックウッドがイギリス全土に霧をかける何かを使ったと考え、たっくん達の力を借りようとした。今も神父は手掛りを探ってるみたい」
「俺らってやっぱり頼りにされてるんだな!」
「余計な迷惑だけどな」
カズキはてへへと照れ笑いをし、ケイスケはぶっきらぼうに渋る。
「でも、霧だけじゃなさそうだな…」
ナオトはこれまでの話を聞いて考えた。この霧とブラックウッドの一件に自分達が探している伊藤マキリの一件とどう関係するのか、まだ事情があると見ていた。
「うん、ナオトの言う通り問題はそれだけじゃない。2つほど深刻な事件が起きているんだ。一つは霧に乗じて所属不明の武装勢力による襲撃事件が起きている」
ワトソンが言うには黒づくめの強盗なのか、それともテロリストなのか、銀行やら警察署、貴族のお屋敷を襲撃してきたという。いつ、どこで起こるのか今は厳重に警戒されているが、詳しいことは今だに分かっていないという。
「諜報機関が調べてやっと分かったのが、そのテロリストの中に『伊藤マキリ』がいるというくらいなんだ。まだブラックウッドと関係しているのかは分かっていない」
ワトソンの話を聞いてナオトとケイスケは察した。そのテロリスト集団は間違いなく『N』とやらの連中だろう。これで自分達が呼ばれた理由もなんとなくわかった。
「それからもう一つは?」
タクトはさりげなく尋ねるとワトソンは深刻そうな表情をする。
「もう一つは霧が深い夜に起こるんだ…まるで過去にイギリスが捜査しても解決ができなかった事件の再現かのようにね」
一体どういうことかタクト達は不思議そうに首を傾げた。
「イギリスで起きた未解決の連続通り魔事件‥‥切り裂きジャックが再び現れたんだ」
切り裂きジャックと聞いてケイスケは思わず驚くが、他の3人は興味なさそうに首を傾げていた。
「ジャックが犯人じゃないか。これで事件解決じゃん?」
「‥‥なんでジャック?」
「トムの勝ちデース」
「ほんと興味ない事は知らないんだな…」
きょとんとしている3人にセーラは頭を抱えた。
ロンドン…霧…切り裂きジャック…うっ、頭が…か、課金しなくちゃ…!
ガチャは悪い文明