カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼ 作:サバ缶みそ味
少し長く空いてしまったのでジャブ程度に‥‥と思ったらまさかの9000!?シカタナイネ
今回はプロローグな感じに…
71話
「わっはっはっはぁ!私はバレンタインデーに限ってもてない魔王だ‼」
武偵校の探偵科棟にある家庭科室にて、なぜか電動泡立て器をもっているカズキがただ1人高笑いしていた。
「バレンタインデーに限ってもてないっていうのは不思議な事だけど…基本的にもてない私はこの世からチョコを消すことでこの世からバレンタインデーを無くしてしまおうという悪い考えの持ち主だー!」
カズキは何言っているのか分からないのを自覚しているようで半ば半笑いしていた。そんなカズキの様子を家庭科室の隅でケイスケ達はクスクスと大声で笑うのを我慢していて見ていた。
「この俺を止めるものは誰かいるのかな!」
「まてーい‼」
そんなカズキのもとへスプレータイプ消臭元を持ったタクト、設置するタイプの消臭元を持ったケイスケ、そしてウォークマンを面倒臭そうに持ったナオトがやって来た。
「な、何だお前達は!」
「そろそろあいつを止めてあげないと大変なことになるぞ」
「俺達は、バレンタインデーに限ってる男達だー‼」
オーバーに驚くカズキにケイスケは薄ら笑いし、タクトはノリノリで名乗り上げる。
「ぐぬぬ、現れたか宿敵ぃ‼」
「俺達はー…なんかバレンタインに限ってもてないというよくわかんない魔王を倒す勇者一行だぜ‼」
「そんな魔王が入るのか…」
ついにナオトまでも笑い始めよく分からない人形劇はなかなか進まないでいた。そんな4人のところへひょっこりと毛糸で編んだキンジ人形を持ったかなめがひょっこりとやってきた。
「でもカズキ先輩、一年に一回しか持てないならすごいリア充じゃないですか?」
「そうだー‼そんな魔王は俺達は許せないのだー!」
「たしかにこっちは年に一回しかもてないからな!」
ケイスケとかなめも悪乗りし、更に場は盛り上がっていく。カズキは泡立て器のスイッチを入れながらニヤニヤしながら話を進める。
「そんな事いうのなら、俺にバレンタインデーという大切な日をことを、おー思い出せせるために美味しいチョコを俺にたべさせてみせろ!」
「お前はバレンタインデーにもててるんだからそれはお前自身よく分かってんだろうが」
「よーし、こうなったら俺達がお前に本当のバレンタインデーを教えてやる!なんせ俺達はバレンタインデーにもててるからな!」
「タクト先輩、なんかもうぐちゃぐちゃでよくわからなくなってません?」
かなめは苦笑いしながらツッコミをいれる。ナオトに至ってはもう面倒くさくなってあくびをしていた。
「それならば勇者共、チョコ作りで勝負だー‼」
カズキの合図とともに全員持っていたものを片付けてからエプロンを身に着けて集まった。
「‥‥と、いうわけでチョコを作るぞ‼」
「「おーっ‼」」
「下りが長げえよ!」
「そんなことよりイチゴ大福を食べたい…」
タクトとかなめは気合十分で元気よく拳を上げているがケイスケはグダグダな人形劇にツッコミを入れた。バレンタインデーという事でさっそくチョコ作りに取り掛かる前にかなめは不思議そうに首を傾げていた。
「この武偵校では誰もバレンタインだとか騒がないし、その言葉を聞くとみんな真っ青になるのはどうしてですか?」
「それはねかなめちゃん、アンチバレンタイン連合の陰謀さ!」
「たっくん、ちげえだろ。武偵校では何故かバレンタインという言葉が禁忌だ」
ケイスケはタクトを小突いてから本当の理由を話した。原因は蘭豹先生が昔好きだった書店員にチョコレートを渡したところ、恐怖のあまりに店を閉めて雲隠れをしてしまった事がすべての始まり。激怒した蘭豹先生は強襲科の生徒に八つ当たりをするだけでなくバレンタインというイベント事態にも矛先を向けた。それ以降はバレンタインという言葉は禁句となり、またその日だけはチョコを渡すということを禁止にしたのである。バレてしまったら教務科から楽しい体罰コースが待っているのであった。
「ふーん、要は自業自得ですよね?」
「まあ確かにそうなんだけが…それ本人の前で言ったらだめだからな」
「そこで俺は考えた!誰にももらえないのなら自分で作っちゃえばいいじゃないか!俺達の俺達による俺達の為のバレンタインチョコを‼」
「よっ、たっくん‼お前は天才だー‼」
大はしゃぎしているタクトとカズキを他所にかなめとケイスケはせっせと板チョコを湯煎して溶かしていく。
「それに好きな人にチョコをあげるのがダメなら家族にあげるのはいいと思いますよね?」
「その通りだぜかなめちゃん!俺なんか毎年母ちゃんから鼻血が出るほどチョコが送られてくるぜ」
「タクト先輩‥‥い、一応お兄ちゃんにあげるチョコが余ったらあげますね…」
ドヤ顔をして自慢するタクトにかなめは生温かい視線で微笑んだ。そうしているうちに用意していた板チョコを全てとかし終え、本格的なチョコ作りへと移ろうとしていた。
「それじゃあどんなチョコを作りますか?」
「じゃあ俺から。まずはこれをチョコに混ぜるか」
ケイスケがポケットから取り出して置いたものにかなめは思わず二度見してしまった。ケイスケが置いたものは鯖の味噌煮の缶詰だった。明らかにチョコに混ぜてはいけないものが出でかなめは焦りだす。
「ちょ、ちょっと待ってくださいケイスケ先輩!これ明らかにおかしいですよね!?」
「お前は何を言っているんだ?チョコはすげえから。何でも合うから」
「かなめちゃん、バレンタインデーに限ってもてない魔王的には、美味しいチョコはこの世ではいくらでもありふれている。そうじゃなくて挑戦的に作って美味しいチョコを魔王は求めているんだ」
「まだその設定続いていたんですね!?よくわからないです!?」
普通ならばチョコを溶かしてから誰かの為に美味しいチョコを作る。だが、この喧しい4人は自分の為に作るのであり、そしてよく分からない挑戦をしているのである。と言うよりも彼らの行動がよく分からない。キンジが、兄が胃を痛めながらツッコミを入れている苦労がようやくかなめは理解できた。
そうしている間に鯖の味噌煮の缶詰を開けて身を解してからチョコをかけて混ぜ始めた。明らかに猫まんまにしか見えないチョコとサバの香りがするものをケイスケは小分けして冷蔵庫へと入れる。
「次は誰がやるんだ?蘭豹先生に見つかったらまずいからさっさとしろよ」
「じゃあ次俺」
ナオトが取り出したのはカレールー。しかも甘口のルーなだけにかなめは引き気味に苦笑いをする。
「カレーにチョコを入れる事もあるしその逆バージョンでもありかなーって」
「なるほどー…その考えはいたっておかしい」
「おかしいんですよね!?おかしいのに止めないんですね!」
かなめのタクトへのツッコミも虚しく、ナオトはルーを砕き、お湯を少量入れてからチョコを混ぜて小分けにして冷蔵庫へと入れた。
「さて、次はこのチョコ作りマスター菊池タクトの出番だな!」
「タクト先輩…タッパーに入ってるのは何ですか?」
かなめは恐る恐る、ドヤ顔しているタクトが手に持っているタッパーの中身を尋ねる。そんなタクトは当たり前かのようにさり気なく即答する。
「ニンニクだけど?さっき炒めたやつ」
即答したタクトにかなめは苦笑いしたままさーっと青ざめる。そんな事を気にもしていないタクトは笑顔で話を進めていく。
「実は元気になるためにニンニクを毎日食べる習慣があるんだ。だからチョコをかけて食べないと気が済まない、チョコなだけにね!」
「「「「‥‥?」」」」
ダジャレのつもりで言ったのようだが、何を言っているのかよく分からないとかなめだけでなくカズキ達も首を傾げた。
「たっくん、よく分かんないんだけど?」
「カズキ、まあ慌てるな。次で分かるぜ。そんで俺は更に健康になりたいために納豆も入れる‼チョコをかけて食べないと気が済まないからな、チョコなだけにね!」
「タクト先輩、結局よくわからないです」
タクトは納豆を混ぜてからニンニク、溶かしたチョコを入れてさらに混ぜ、何かよく分からない納豆の糸を引く固形物が出来上がった。小分けをして冷蔵庫へと入れるが、誰もがあのチョコはヤバイと確信していた。
「ようし、最後は俺だな!チョコ魔王的に甘くない、斬新なチョコを作るぞー‼」
「カズキ先輩、さっきまで全部甘くないチョコだったんですけど…」
かなめにツッコミを入れられ、カズキはたははと笑うが、彼が取り出したのはピザソースととろけるチーズ、そしてベーコンだった。
「やっぱりね、俺と言えばピザ!ピザチョコを作ろうと思う‼」
「結局ピザ頼りじゃねーか」
「去年はそれにシーフードを混ぜてたもんな…」
残りのチョコに全部ぶち込んで混ぜ、小分けした後冷蔵庫へと入れた。こうして4人組は明らかにカオスすぎる斬新かつ残酷なチョコを作り上げたのであった。
「あとは冷蔵庫で固まったら出来上がり!完成が楽しみだなー」
「わ、私はその完成が恐ろしすぎて怖いんですけど…」
「そんじゃあ次はかなめちゃんだな!かなめちゃんはチョコに何入れるの?」
カズキが楽しみにしながらウキウキ気分でかなめに尋ねる。ここは真面目に普通の甘いチョコを作るべきか、彼らのノリにのって斬新なチョコを作るべきかかなめは悩みだす。
そんな時、家庭科室の扉を荒々しく蹴り開けて鬼の形相の蘭豹先生が乗り込んできた。片手にM500を持ってカズキ達を睨み付ける。
「くぉらぁ‼お前等、私にバレねえようにチョコ作りたぁいい度胸だなぁ‼」
「落ち着いてください蘭豹先生‼俺達は俺達による俺達の為のチョコを作ってるんですぜ‼」
「しかもありきたりじゃなくこれまでにない、最新かつサイキョーなチョコですぜ‼」
最新なのは確かだが、味覚は別の意味で最強であることは間違いない。カズキとタクトの言い分を聞くことなく蘭豹先生は冷蔵庫を開け、カズキ達が作ったチョコを取り出した。
「自分の為というのなら…一応体罰は見逃してやる。だが、バレンタインに向けてチョコを作ったことは許さん‼お前らのチョコは没収する!」
「あっ、そ、そのチョコは…‼」
蘭豹先生が没収したのはカズキ達が作り上げた絶対に食べてはいけないであろうカオスなチョコ。かなめは止めようとしたが、蘭豹先生はずかずかと荒々しく家庭科室から出て行った。持っていかれたチョコにカズキ達は沈黙する。
「…おい誰か試食ぐらいはしたか?」
「誰も食べたいとは思ってなかったけど…?」
「あ、あのー…もし先輩達が作ったチョコを蘭豹先生が食べてしまったら…」
かなめのその言葉を聞いて4人は青ざめた顔で見合わせる。しばらく沈黙が続いたが、もし蘭豹先生が知らずに食べてしまったらどうなるか結末は誰も知っていた。
「逃げろーっ‼」
「やめろー、死にたくなーい!」
カズキ達は一斉に家庭科室から出て一目散に逃げだしていった。その後、武偵校内では激昂した蘭豹先生が片手にM500、もう片方に鉈を持って鬼の形相で探し回っていたと言われ、もう二度とバレンタインと言う言葉を聞きたくないとのことであったという。
__
「…遅い…」
静かな料亭の席で獅堂は苛立っていた。わざわざ呼んでおきながら呼んだ当の本人が30分以上も来ていない事に怒りを露わにしていた。獅堂の怒りを察しているのか恐れているのか、周りに他の客は寄らず、店員もびくびくしながら獅堂の様子を伺っていた。
「やあ待たせてしまったね!」
そこへタクトの父親である菊池雅人がニコニコしながらやってきた。遅刻してきたことは一切詫びを入れず、全く反省の色を見せていない雅人に獅堂は殺気を込めて睨み付けた。
「半沢ぁ、てめえこちとら忙しいってのに呼んでおいて遅刻するたぁいい度胸してんなぁ…」
「獅堂くん。君は実にバカだな。デートをするわけでもないのに、寧ろ嫌いなやつなら嫌がらせするのは当たり前じゃないか」
平気の平左で毒を吐く雅人に獅堂は頭を抱える。ここでああだこうだ言っても余計に嫌味を言われるだけだ。獅堂はさっそく呼んだ理由を探ることにした。
「犬猿の仲とでもいうのに、なんで俺を呼んだ?」
「お互い忙しい身だし、率直に話しておこうか…その前に君達の公安0課は政権交代したと同時に事業仕分けで解体されたようだね」
さっそく痛いところを嫌な奴に突かれ獅堂は眉を顰める。突然行われた衆議院総選挙にて発足された『民由党』を中心にした民社国連立政権は、財政難に対応しようと様々な国家事業を廃止、縮減された。その中に公安0課も入っているのであった。
「突然のお触れだ。いきなり解体され、まとめあげるのに精一杯だ。それがどうした?」
「ざまあw」
雅人はゲスな笑顔でニッコリと笑って指をさす。獅堂は額に青筋を浮かべさらに殺気を込めて睨み付けた。
「てめえはわざわざそれを言いに来たのか‼帰るぞ‼」
「まあまあ落ち着き給え。だから言ったじゃないか、君達公安0課は個々は強いけどそれ以外はめっっっっちゃくちゃ弱いから意味がないって。もうちょっと頭を使わないとただの無能集団になると」
雅人の挑発に獅堂はぐうの音も言えなかった。解体が知らされたと同時に
「東京地検特捜部となった君達はある危険人物を追わなければならない。国外へ亡命されたのならもっての外、君が集めた屈強なチームは各々国の外へと追いかけなきゃいけないみたいだね」
「笑いたきゃ笑え…お国の指示なら仕方ねえだろ。俺達は何を考えているのか分からんお前等と違って従うしかない」
半ばやけくそ気味に返すが、雅人はお前は何を言っているんだと言わんばかりの視線を向けていた。
「だから君は実にバカだな。君はそのまま従っていいのか?イエスマンみたいに何も考えずに承るのかい?」
「どういうことだ…?」
獅堂は初めて真剣に雅人へと疑問を持ち掛けた。いつも嫌がらせをするかのように毒を吐くこの男が敵対している自分に真面目に問いかけるのは珍しかった。
「君は考えたことがないのかい?君ほどの実力のあるチームが日本を出ると誰が今の政府を監視する?誰が今の政府の暴走を止める?」
「俺達がいなくても星伽が止めるだろ」
日本には星伽という政府へ関与できる一族がいる。これまでも飛行機ジャック事件や新幹線爆弾事件、スカイタワーでの戦い等々、遠山キンジと神崎アリアに関することは星伽の圧力で公に暴露されることは無かった。元公安0課の自分達がいなくても星伽がいるのなら問題がないはずだ。しかし、雅人は硬い表情が崩れることは無かった。
「おい…まさか今の政府に星伽でさえも抑えることができない事があんのか…?」
獅堂は雅人の様子に焦りを感じた。雅人は無言で頷き、持っていたバックから分厚い書類を獅堂に渡した。
「これは今の民由党の天下り先のリストだ。そのほとんど下り先が猿楽製薬という会社だ」
猿楽製薬という言葉を聞いて獅堂はしわを寄せた。一見ただの製薬会社に見えるのだが、裏では私設軍隊を所有しており、民由党に資金を送り、民由党は政治活動金をこの会社に寄付していることが分かっていた。
「この会社と俺達に何が関係しているんだ?」
「猿楽製薬の社長、木村雅貴が君達が追いかけている伊藤マキリの亡命を協力したと言われている」
それを聞いた獅堂は目を見開いた。追いかけるべき相手は既にこの国におらず、しかも亡命に手を貸した者もいることに驚きを隠せなかった。
「それはマジか…‼だとすれば…‼」
「君の考えている通り、すでに彼女は『N』の一員であり、この国は既に『N』の魔の手がかかっている。君までも国へ出るともう誰にも止められなくなるぞ」
『N』。超人的な国際テロリストを束ねている組織といわれ、目をつけられると国が滅ぶとも言われているほど恐れられている組織である。その『N』が日本の首根っこを掴んでいるというのならこれは危険な事態だ。
「おい、お前は俺にどうしたいんだ?てめえら菊池財閥は一度も政治には口を出さなかった。そんなお前らが動くということはよっぽどの事態なんだろ?」
「物分かりが早くて助かるよ。君達は遠山キンジ君達を助けて欲しい。彼らを助けることができるのは獅堂くん、君しかいないからね。その代わり…君達がやろうとしている事を僕らに任せてくれないかい?」
獅堂はぴくりと反応する。つまりは今自分達が受け持っている仕事を取り換えっこするということだ。しかし獅堂は嫌な予感がした。伊藤マキリを追跡するのを彼らに任せるということに色々と察してしまった。
「ということはお前まさか‥‥」
「安心してくれ。もうすでに話はつけているから」
にっこりとする雅人に獅堂は項垂れた。
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カズキ達は東京武偵局の会議室にいた。突然、緑松校長に呼ばれて東京武偵局に来るようにと言われたのであった。カズキ達はきょとんとしているが、リサは緊張してガチガチになっていた。一体なぜ呼ばれたのかカズキ達は考えても理由が思い浮かばなかった。
「なあカズキ、なんで俺達は呼ばれたんだ?」
「たっくん、あれじゃね?この間俺達が作った激マズチョコをお偉いさんが食べてしまったから、その仕返しじゃね?」
「というか激マズってことは既に自覚してたんだな」
ケイスケはため息をついて苦笑いをした。正直もうすぐ春休みに入るというのに、どうしてこんな面倒な所に呼ばれたのか、早く帰って寝たいという思いだけで4人はまとまっていた。
そんな時、会議室のドアが開き、紺のスーツに無地のネクタイをした、一見ただのサラリーマンのような男が入ってきた。
「すまないね、突然のお呼びかけに来てもらって」
ニコニコとしている男性にカズキ達は少し身構える。ケイスケは男性の襟についている秋霜烈日章のバッジに気付いた。
「もしかして…武装検事か?」
「ええ。如何にも、私は武装検事です」
「ケンジさんだな‼俺は漆黒の堕天使的存在で有名な味噌汁大好き菊池タクトだぜ!」
「たっくん、あの人ケンジちゃう」
ノリノリになったタクトにカズキはツッコミを入れるが、タクトは理解していないようで首を傾げる。
「ええっ!?あの人ケンジじゃないの!?」
「うん、検事だけどもケンジじゃないの」
「でもケンジなんだろ?」
ナオトが割り込んだことにより、カズキは「ぬん?」と言って首を傾げた。
「ナオト、だから検事じゃなくてケンジを否定してるんだっての」
「じゃあケンジさんなんだな!」
「たっくん、ケンジであって検事…あれ?どういうことだ?」
「私は黒木とお呼びください」
混乱しているカズキ達を見て、絶対に収拾がつかないと察したのか武装検事の男性は黒木と変わらない笑顔で名乗った。
「よろしく、黒木ケンジさん‼」
「だからもうケンジから離れろよ」
ケイスケは呆れながらタクトにツッコミを入れる。相手がどういう者なのか分かった所で早速本題に入ることにした。
「その検事が俺達を呼んだのはどうしてですか?」
「
笑顔でいう黒木をみて何処かあの神父に似た雰囲気を感じ、ケイスケは嫌そうな顔をした。それを見た黒木はニコニコと話を続ける。
「内容を話す前に…君達は3年生へと進級するのは確定しているみたいだね。そろそろ将来の事考える時期になるとおもうけども、君達は何になりたいんだい?」
「俺達は世界ですげえといわれている武偵になりたい‼」
「たっくん、それ大雑把過ぎじゃね?」
即答したタクトにカズキはもう少しよく考えてとツッコミを入れた。タクトはもう一度考えるが、「うーん」と唸りながら深く考え込んだ。
「うーん…父ちゃんが『絶対に公安にはなるなよ』って言ってたからねー、やっぱ世界を駆けるサイキョーな武偵になりたいのが一番かなー」
「成程…君達4人は公安でもなく、武装検事でもなく、国際武装警官になりたいんだね」
「そうだぜ‼‥‥あ、リサの事も忘れるんじゃないぞ!5人でなるんだ‼」
「なんか俺達もまとめられた?」
ナオトは同じ目標だと認識されたと呟く。黒木は成程といいながら何度も頷いた。
「ふむふむ…日本で起きた事件の他、ドイツ、イタリアにおける君達の活躍を聞くと悪くはない。個々ではなくチームで動く、良い仲間がいる武偵は良い武偵だと聞くからね」
黒木はにっこりしながらカズキ達に一枚の写真を渡した。その写真には軍用のロングコートを着た髪の長い女性が写っていた。
「これは何ですか?奥さん?」
「これは君達がその国際武装警官になるための最初の試験のようなもだ。国の武偵局、検事局として君達に任務を授ける。カズキ君、ケイスケ君、ナオト君、タクト君、そしてリサ君。君達には『伊藤マキリ』という女性を捕え、この国だけじゃない、世界に降りかかろうとしている脅威を止めてほしい」
「いいよ‼」
「たっくん、はやいよ‼」
即答するタクトにケイスケはげんこつを入れた。いきなりよく分からない、若しくは内容から明らかにヤバイ件に即了承してはならないと警戒していた。
「明らかにヤバすぎる一件じゃねえか!?すぐにOKするんじゃねえよ‼」
「ケイスケ、だってこれ俺達の新たなる挑戦じゃね?こういうのは受けて立つのが俺達ってもんよ‼」
そんなポリシーは要らないとケイスケはさらにげんこつを入れる。リサはその伊藤マキリという女性の写真を見て黒木に尋ねた。
「あの…この女性がどう関係しているのですか?」
「彼女はこの国を亡命し、『N』と呼ばれる国際テロ組織に入ったと言われている。彼女はこの日本を変えようという危険な思想を持っていてね、『N』に入ったというのなら更に危険になった」
「わたしはNです」
「たっくん、それを言うならLじゃね?」
タクトとナオトに至ってはもうしょっぱなから人の話を聞いておらず、他人事の様にしていた。黒木はそのギャグをスルーして話を続ける。
「更にはもう既に『N』はこの日本にも潜んでいると言われいる。これ以上、この国に危険を及ば差ないためにも君達にも協力してほしいんだ」
イ・ウーやこれまで戦ってきた眷属やら師団やらの他にもこんな厄介なものにも巻き込まれる。正直ケイスケはうんざりしていた。けれども半ば嫌そうでもないので仕方なくカズキ達の方に視線を向けた。
「俺はもう反論しねえ…お前らはどうなんだ?」
「もちやる‼世界に瞬くスターになるんだぜ。やるっきゃないぜ‼」
「どうせ巻き込まれるんだから、やるしかないでしょ」
「り、リサも皆さまのお力になれるよう何処までもついていきます‼」
「おうさ‼俺達がその伊藤マキリを捕まえてまきわりマンバーワンになるぜ!」
「「「「「マンバーワン!?」」」」
カズキの噛んだ言葉にタクト達はとっさにリピートし、どっと笑いあった。そんな様子に黒木は満足そうにうなずく。
「聞いていたとおり賑やかですね…それでは早速現地へ赴き、お願いします」
「早速現地へ?あ、あの、その伊藤マキリは一体何処に…?」
ケイスケは嫌な予感がして、恐る恐る尋ねた。黒木は頷いて笑顔で答える。
「新しい目撃情報では‥‥伊藤マキリはイギリス、ロンドンにいると言われています」
それを聞いたケイスケは頭を抱えた。まさかのまたヨーロッパ。ドイツのゾンビといい、イタリアのドタバタチェイスといい、ヨーロッパにはいい思い出がない。今度はイギリスだと喜んでいるタクト達と反対にケイスケは深くため息をついた。
「もうヨーロッパは懲り懲り‥‥」
国際武装警官を目指す(?)彼らに新しい戦いが…
伊藤マキリをチェイス、N陣営との戦い(たぶん)、イギリス編スタートです
N陣営ですが原作では何かよく分からない敵ばかりなのでネモ以外出ません。
あとキンちゃんパパには男3人(カナ兄姉さん、キンジ、サード)女2人(かなめ、???)と言われいるようですが、ややこしくなるのでこちらでは妹はかなめだけにします。
キンジ「なんか姉か妹がいるような気がしていたが別にそんなことはなかったぜ‼」