カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼   作:サバ缶みそ味

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 丁度キリがいいので投稿しますた。
 今回はイタリア編エピローグでございます。

 意外とイタリア編も長かった‥‥(白目


70話

 サン・ピエトロ大聖堂の広場でカズキ達の歓喜の声が響く中、上空にヘリが数機飛んできて広場へと着陸していく。

 

「やあ…無事に終わったようだね」

 

 その1機のヘリからにこやかにジョージ神父が降りてきた。久々に会う神父の姿にカズキ達は喜びの声を上げた。

 

「神父ぅぅぅっ‼来てくれたんですね!」

「おいこのクソ神父‼今更来たのかよ‼こちとら何回死ぬ目にあったと思ってやがる!」

「神父が来た‼これで勝つる!」

「…たっくん、もう終わってんぞ」

 

 ギャーギャーと騒ぎ立てるカズキ達をにこにことしながら宥めさせ、倒れているシディアスが身に着けていた十字架のロザリオを取った。

 

「カズキ君、タクト君、ケイスケ君、ナオト…よく頑張った。これで一先ず落着だね」

 

 ヘリからぞろぞろとスワットのような武装をした人達やスーツを着た公安の者たちが降りて来て、シディアスに手錠をかけ、ヘリへと乗せていった。

 

「あの人達は…?」

「彼らはイタリア政府の公安や警察の方々だ。すべて片付いたことだし、後の収拾は彼らに任せておこう」

 

「これで終わったんですね…」

 

 アリスベルは安堵したように一息ついて静刃に微笑む。

 

「ああ。アリスベル…ありがとな」

 

 静刃は照れ隠ししながら答えた。後は事情聴取やら色々とありそうな気がするが、二人はその間互いの手を握っていた。

 

「おおい‼リア充だ、リア充がいるぞー‼」

「リア充は爆発だー‼」

 

 先程応援してくれていたのに手のひらを返すかのようにカズキとタクトが騒ぎ立てる。終わっても尚、疲れを知らずに騒ぐ4人組に静刃とアリスベルは苦笑いをした。

 

__

 

 巨大な十字架の光が打ち消されてから数10分後、ローマ上空に何十機ものヘリやら軍用ヘリが飛び交い、道からはサイレンを喧しく響かせるパトカーやら更には迷彩柄のボディーアーマーを身に着け、MinimiやMK5を構えた陸軍の兵士達が大勢やって来た。

 

 五共和国派の残党の武装集団や殺し屋集団は次々に銃を降ろして手を挙げていく。自分達の敗北を察し、もう抵抗する様子はない。戦闘が終わったとキンジはほっと一息ついた。

 

「あいつら、勝ったみたいだな」

「いやー、一時はどうなるかと思ったけど何とかなったみたいだね!」

「ふぅ…これで一件落着か」

 

 理子もジャンヌも安堵して笑う。トリエラとクラエスは空を見上げていた。上空には飛びすぎていくヘリ、辺りに鳴り響くサイレンの音。戦いが終わり、勝利を祝うかのように夜の空に響き渡る。

 

「やっと…五共和国派の戦いに終止符がついたわね…」

 

「うん…終わったよ。皆…ヒルシャーさん…‼」

__

 

 事件後は色々なことがあった。カズキ達は事件が終わったその2日後にローマ武偵局の方々が謝罪にきた。一体全体どういう事かカズキ達はキョトンとしていたが、付き添いで来ていたディーノ曰く、事件の事を聞いたタクトの母である更子がローマ武偵局とローマ武偵校に「人の息子を誤認逮捕しかけたにも拘らず謝罪がないとかいい度胸してんな?」と笑顔でやって来たという。

 

「終わり良ければ総て良しじゃね?」

 

 タクトのその呑気な一言で何とか事なきを得た。容疑を解消されたカズキ達はローマ武偵校がお詫びとして彼らの短期研修を受け入れ、残りの期間で研修を受けた。武偵校の教師たちはカズキ達をSランクのクラスへと入れようとしていたが、カズキが「恐れ多い」と焦って断り、Cランクのクラスへと入ったとのこと。その後カズキは何故断ったと3人にボコられ怒られていた。

 

 ついでにという事でキンジ、理子、ジャンヌもカズキ達と共に研修を受けた。本当はジャンヌの修学旅行Ⅱ付き添いで来ただけだったがまんざらでもないようでひと時の休息に疲れを取る事ができた。

 

 無論、カズキ達だけではなく周りも慌ただしくなっていた。シディアスがローレッタやメーヤを使い、師団と眷属、両陣営の情報を流し、混戦状態にしていたという事、おかげで両陣営は疲弊していたという事で停戦協定を結んだとの事だった。カズキ達が研修を受けている間、ワトソンとカツェはドタバタとしていた。しかもその仲介役がキャバッローネファミリーのボス、ディーノとボンゴレファミリーの暗殺部隊ヴァリアーのボスだったという。まさかのヴァリアーのボスが介入してきたという事に師団も眷属も血相を変え、すぐに停戦を結んだとカツェが遠い目をしながら語っていた。

 

「なあ理子、スクアーロさんのボスってどんな人なんだ?」

「キーくん…知らない方がいいよ…ヤバイから、マジでやばいから」

「流石の私も灰になりたくないわ…というかよく流血沙汰にならなかったわね…」

 

 スクアーロの上司がどんな人かとキンジは気になって尋ねたが、理子とヒルダはガクブル震えて教えてくれなかった。知らない方がいい事もある、キンジはとりあえずこの事は気にする事をやめた。

 

「そういえば…カズキ、『妖刕』と『魔剱』達はどうしたんだ?」

 

 キンジは当初師団が警戒していた『妖刕』と『魔剱』といった異能の傭兵の事を尋ねた。会って話はしてないが、事件後以降彼らに一度も会っていない。

 

「それならあいつ等ならもう帰ったぞ?」

「俺達が先に見送ってあげたんだぜ‼」

 

 タクトはドヤ顔しながら自慢する。いつどこで見送ったのか、キンジは首を傾げる。日本に帰ったのか、それとも別の傭兵の仕事へと向かったのか、気になるがあまり考えても思いつかないのでそれ以上は聞かなかった。

 

___

 

「遅くなってすまないね。これが『雲外鏡』だ」

 

 ジョージ神父は貘に『雲外鏡』を渡した。魔法具を受け取った貘は安心したように微笑む。

 

「すまないな、神父。これを渡す前に私のわがままに付き合ってくれて感謝する」

「なに、彼らも私の知り合いでね。『心函』の事は安心するといい、ちゃんと彼らにも君の伝言を伝えておいた」

「何から何まで…本当に助かった」

 

 貘はジョージ神父に何を頼んだか静刃は気になったが、今はやっと元の時代に帰れることに嬉しさが募る。

 

「やっと、帰れるんだな…」

「ええ、これまで随分と色んな事がありましたね」

 

 アリスベルと静刃はこれまでのことを思い出す。2010年からこの時代に飛んで、まさかあの騒がしい4人組のハチャメチャな戦いに翻弄されるわ、彼らと共にゾンビと戦うわ、物凄い強大な魔法を使ってきた相手と戦うわと多くの困難があった。けれども騒がしい4人組に巻き込まれてからは一度も辛いと感じることは無かった。

 

 

「もう帰っちゃうのか?」

「なー、もう少しゆっくりしてけよー。俺のワンマンライブとか聞かせてあげるからさ!」

「少しぐらい休んだらどうだ?」

「…急がなくていいんじゃないか?」

 

 まさか胃を痛めてくれた彼らが心配するとは思いもしなかった。目を丸くしていた静刃は笑って答える。

 

「わりいな。俺達にはまだやらなきゃいけないことがあっちの方で残っている」

「ひひっ、また鵺と一緒に大暴れしたいなら、すぐにでも遊びに行くじょ?」

 

 鵺も珍しく嬉しそうにギザギザした歯を見せケラケラと笑う。暴れるのが好きな鵺なら彼ら4人組とウマが合うかもしれない。ただもっとひどい事になりそうだと静刃は苦笑いをする。

 

「さあ、皆。元いた時代に帰るぞ」

 

 貘は術式を雲外鏡に投影させ魔方陣を展開させる。静刃達を囲うように空色の立体魔法陣が光りだす。飛び交う光の粒子が集まりだし、静刃達を包み込む球体へと形を変えていく。

 

「貘、この光量ならうまくいけそうですか?」

「大丈夫だ。雲外鏡に反映され4年後の時代へと還れることができる」

 

 カズキ達は何の事やらと首を傾げているが、光量や式力から見てうまくいったとアリスベルと貘は安心していた。もしあのままクエスに騙されていたのなら何をされていたのか、静刃は自分達を雇ってくれたジョージ神父に感謝した。

 

「ふふふ…やっぱり、こ奴等がキーマンだったか」

 

 そんな中、鵺は満足したように頷いて笑いだす。

 

「鵺、一体どういう事ですか?」

「お前等気づかなかったのか?タクト達に関わってから、《《一度も存在劣化症候群にかかっておらんのだぞ?》》」

 

 それを聞いた静刃とアリスベルははっとする。2度も時代を跳躍した静刃達は未来から来たことにより起こる歴史の改変を修正する地球の歴史の復元力、未来からの来たものを消す存在劣化症候群に襲われていた。自分達の存在を消すために色んな災難に遭ったが、彼らに関わってからその症状は一度もなかった。

 

「じゃ、じゃあそれってつまり…タクト君達に関わったことで歴史の復元力から逃れることができた、という事ですか!?」

「理屈は分からんが…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、消されることが無かったんだろうな。おかげで貘がピンピンしておるわい」

 

 ケラケラと笑う鵺に言われ、獏は苦笑いをしてタクト達の方に視線を向ける。

 

「よもや私までも助けられるとは…お前達の力は不思議なものだな…」

 

「へへっ、俺達はサイキョーの中二病集団だからな!」

「たっくん、その理屈はおかしい」

 

 ニッと笑ってガッツポーズをとるタクトにナオトは冷静にツッコミを入れた。

 

「これでお前達のハチャメチャに振り回されるのは最後か…ありがとな。結構楽しかったぜ」

 

「静刃!元いた時代でも俺達の武勇伝を伝えてくれよな!」

 

 カズキの言葉に静刃はふっと笑った。敵陣に一番に突っ込み、装甲車で世界遺産にダイレクトアタックしかけたタクト。よく嚙みよく寒いギャグを言う、よく置いてけぼりにされる狙撃が得意なカズキ。4人の中でよく怒鳴り、よく悲鳴をあげる、自分達を苦しめたあの『ゲロ瓶』を作ったケイスケ。冷静で寡黙、戦闘も強いのにすぐに迷子になるナオト。これからもこの先も、そして元いた時代にも、武偵のくせにこんなハチャメチャな戦い方をする喧しい馬鹿は彼らだけだろう。

 

「ああ…一応、考えとく」

 

「後それから、静刃、アリスベルちゃん‼末永くお幸せにねー‼」

 

 ニシシと笑って手を振って叫んだタクトに静刃とアリスベルは思わず吹き、顔を赤くした。

 

「な、な、なんて事を言うんですか!?」

 

「お前等もうイチャイチャしとけ?」

「…お祝言、いつか送る」

 

「お前等も悪乗りするなよ!?」

 

 まさかケイスケとナオトまで悪乗りしてくるとは思いもせず、二人はわたわたとするが満更もないようで、落ち着いた二人はすぐに手をつなぎ微笑み合う。

 

「ああーっ‼これでもかと俺達に見せつけやがって‼リア充爆発しろや!」

「いつかお前の実家に味噌汁のワカメ1年分送りつけてやるからな―‼」

 

 お前達が言ってきたんだろ、と静刃とアリスベルは騒ぎ出すカズキとタクトに心の中でツッコミをいれた。そうしているうちに包み込んでいる光が強く輝きだしてきた。もう間もなく、元いた時代へと時間跳躍が行われる。

 

「お前達のおかげで無事に帰れること、感謝しているぞ。この恩、貘は忘れん…さらばだ」

 

「ひひっ‼これまでのドンパチ大騒ぎ、楽しかったじょ‼やがてまた、会おうぞ‼」

 

「皆さん…本当にありがとうございました。タクト君達の事、絶対に忘れませんから!」

「これまでさんざん胃を痛められたが…お前らと一緒に戦えたこと悪く無かったぜ。じゃあな‼」

 

 そうして光は静刃達を包み込み、見えなくなっていく。

 

「またなー‼俺達ソウルメイトの絆は不滅だぜ‼」

「あっちの時代でも頑張れよー‼」

「じゃあなー‼何かあったらそっちの時代の俺達に頼れー!」

「‥‥末永く幸せに」

 

 タクト達はそれぞれ叫んで手を振ったが、静刃達を包み込んだ光の球体は強く輝き、一瞬に消えていった。その場にはもう静刃達の姿はなく、ただ静寂が流れる。カズキ達はしばらく黙っていたが、タクトが神父に尋ねた。

 

「ねえ神父、静刃達は無事に帰れたかな?」

「うむ…雲外鏡を使っての時間跳躍は効果があるか、それは実際に受けた者にしかわからないが…彼らなら無事に帰れる、私はそう思うよ」

 

「たっくん、そこは当たり前だろ!あいつらも俺達のソウルメイトなんだからな!」

 

 カズキはニッと笑ってタクトを励ました。それを聞いたタクトは頷いて笑う。一緒に戦って冒険したソウルメイト、静刃達はきっと、絶対に元いた時代へと帰還しただろう。

 

___

 

「ほら、お前に返すぜ」

 

 フィウミチーノ空港にて、カツェは眼帯の小物入れから緋緋色金の殻金をキンジに渡した。突然の事でキンジは目を丸くして驚く。

 

「おまえ、これいいのか!?」

「ああ…師団と眷属は停戦協定も結んだし、もうこれもいらねえだろ」

「だ、だけどカツェ、お前そんな事して大丈夫なのか?」

 

 キンジは気に掛けた。カツェは魔女連隊の連隊長でもあるが、殻金を持っていれば有利なのにこんな勝手な事をしては処刑物のはず。

 

「気にすんな。あたしにこれは無用の長物だし、これのおかげで助かったんだ。借りは返しとくぜ?」

「そ、そうか…ありがとな」

「結局は第三者にコロコロ転がされた戦いだったし徒労に終わっちまったしな」

 

 カツェとキンジはお互いに苦笑いをする。このヨーロッパでの戦役はシディアスの手の上で行われていた争い。どっちも損したまま終わり、これ以上の被害も出さずに終わったので良かった。バチカンも教皇たち、ローレッタ、メーヤも共に建て直していくようで、これで一件落着である。

 

「キーくん、そろそろいくよー♪」

「ああ…またなカツェ。今度もまた敵同士じゃなくて一緒に戦ってくれることを願うぜ」

「へっ、どうなるかなー…水の流れるまま、身を任せるさ」

 

 理子に引っ張られキンジは出国ゲートへと向かって行った。キンジ達が見えなくなったとこでカツェは一息ついて背を向けて去ろうとした。

 

「カツェ、カズキ達を見送らなくていいの?」

 

 そんな時、セーラに止められた。セーラはジョージ神父と一緒に空港へと来ていた。

 

「セーラ…てかお前はどこ行くんだ?」

「私はこの後神父と一緒にロンドンへついて行かされる…」

「回収した【究極魔法・グランドクロス】を魔術協会へ届ける所さ。今度こそもう誰の手に渡らないよう封印する」

 

 にこやかに笑う神父に対してセーラはジト目で見つめる。戦役が終わっても尚、ジョージ神父に雇われているようだ。

 

「カツェ…これからどうするの?」

「あたしか?ドイツに戻ってもなぁー…『異性恋愛罪』で処刑されるし、殻金を渡しちまったし、もう裏切り者同然。うーん…しばらくジョージ神父の傭兵として雇われようかなー」

「…やめといたほうがいい。神父にあれこれ振り回される」

 

 セーラはジト目でカツェに注意する。よっぽど色んな事で振り回さたんだなとカツェは見つめる。

 

「私の傭兵かい?それは大歓迎だ…ああそうだ。君に渡しておかなければならない手紙がある」

 

 ジョージ神父は思い出したように懐から一通の手紙を取り出してカツェに渡した。

 

「君の上司が君に渡してくれと私に頼んできたのでね」

「イヴィリタ長官が…?」

 

 カツェは手紙の封を開けて読みだす。内容を見てカツェは目を丸くした。手紙にはイヴィリタ長官の字で『もし、辛いことがあったり耐えきれないことがあったらいつでも帰って来なさい。貴方のお家でもあるのだから』と書かれており、他には部下たちのエールが書かれていた。

 

「彼女は君を心配していたよ。これから先歩んでいく君を応援し、いつかまた帰ってくる日を待っているようだ」

 

「長官…みんな…!」

 

 カツェはプルプルと震え、涙を流していた。こんな自分を心配し、応援してくれている。自分は愛されいるんだなと実感した。

 

___

 

「結局、神父の野郎は見送りなしかっての」

 

 ケイスケはムスッとしたまま不貞腐れていた。

 

「仕方ありません。神父様はこれからの事でお忙しそうにしておられましたし、ケイスケ様達を見送りたくても見送れなかったのですよ」

 

 不機嫌なケイスケをリサは宥めさせていく。キンジ達は先に別の便で日本に帰っていったようだし、神父はイギリスへと行くと言っていたし、仕方ない。

 

「ま、あたし達が見送りしてあげるんだからいいじゃないの」

 

 トリエラとクラエスが笑いながらケイスケを宥めさせていく。一方でタクトとカズキがお土産を沢山かって両手に紙袋を提げながらはしゃぐ。

 

「いやーイタリアでは色んな事があったけど、スッゲー楽しかったな!」

「ああ、もうてんやわんや‼」

 

「タク坊、今回はお前達のおかげで無事に終わった。ありがとな!」

「サラコさんにまた日本に遊びに来るって伝えてくれ」

 

 ディーノとロマーリオも見送りに来ていたようで、道に迷いかけたナオトを止めてくれていたようだった。

 

「まーたお前、迷子になりかけてたのかよ」

「ナオト―、もう少し落ち着け?」

 

「俺もお土産をもっと買いたかったな…」

 

 もうイタリアでバラバラになるのは懲り懲りである。ドタバタ騒ぎだったのが昨日の様で、短い間で本当に色々なことがあった。

 

「ドイツといい、イタリアといい…もうヨーロッパは勘弁な」

「何言ってんだケイスケ、お次はフランス、イギリスでデビューだぜ‼」

 

 もうやめてとケイスケは必死にタクトに願う。そうしている間に時間が迫ってきていた。

 

「ほら、そろそろ行くぞ。イタリアでのドタバタ、何だかんだで楽しかったぜ」

 

「トリエラちゃん、クラエスちゃん‼絶対に花見にきてくれよ!その時はたっくんが漆黒の堕天使的スーパーライブ、披露してやるぜ‼」

 

「ふふふ、楽しみにしているわ。みんな、ありがとう」

「喧しい気がするけど…必ず日本へ行く」

 

「‥‥その時は俺達が案内する」

「じゃあ、イタリアの皆‼ばーーーーい‼」

 

 タクト達は手を振って出国ゲートへ向かって行った。

 

___

 

「あっという間、だったわね‥‥」

 

 トリエラは空港の窓から空へと飛び立っていった飛行機を見上げていた。恐らくあの飛行機にタクト達は乗っているだろう。

 

「そうね…騒がしい人達がいなくなるとこうも静かになるなんて」

 

 クラエスはくすりと笑いながら飛んでいった飛行機を見送った。

 

「ねえ、クラエス‥‥やっぱり私、洋上施設には行かずにこのローマの街で暮らしていくわ」

「…貴女なら言うと思ったわ。『教会』も改修されるし、私も残るわよ」

「でもね、クラエス‥‥私、死ぬまでに沢山、たっっくさん、やりたい事が見つけたの。あの人が…ヒルシャーさんが愛したこのローマで、皆の分まで精一杯生きていくわ」

 

 クラエスはトリエラを見つめた。前までの虚無感に満ちていた悲しい顔はなくなり、今の彼女はやりたい事が見つけた、明るく楽しそうな笑顔をしていた。クラエスはふっと笑う。

 

「そうね…義体の技術のおかげで短命ではないのだし、一杯、いっっぱい、やっていきましょ。私も一緒にいいかしら?」

 

 クラエスの問いにトリエラは頷き、元気いっぱいな笑顔を見せた。

 

 

 

 

「勿論‼私達、ソウルメイトなんですから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____

 

 

「ネモ…やっぱりうまういかなったでしょー?」

 

 

 

 ジキル博士はチュッパチャプスを口に咥えながら、不機嫌そうに白い椅子に腰かけている軍服を着た水色のツインテールの少女、ネモに向けてケラケラと笑う。

 

「だから僕はあれほど言ったんだ。遠山キンジだけじゃない、脅威となるのは純粋な精神を持つ彼らだ。彼らが君達の計画の障害となるんだと…『可能を不可能にする女(ディスエネイブル)』である君も足下掬われちゃうよー?」

 

「…だまれ、道化」

 

 ネモは殺気を込めてジキル博士を睨み付けた。しかし、ジキル博士はネモの殺気を恐れておらず、いたずらっ子の様にゲラゲラと笑う。

 

「さっそく4つのうち一つがなくなっちゃったねー。次はどこかなー?」

 

「‥‥お父様はもう見切りをつけていた。どれも無くなったとしても、【終焉兵器・ビックバン】、【十四の銀河】があればどうにでもなる」

 

 ネモはそれでも不機嫌なようで、持っていたワイングラスを握りつぶした。ジキル博士はケラケラと貶す様に笑っていた。

 

「流石は『N』のトップでいらっしゃる」

「余計な口を抜かすな。次はその首を落とすぞ」




 マフィアや宗教、そして少女達の戦いも無事に終わりました。

 アリスベル組たちも一時のお別れ…また登場させたいですね

 【究極魔法・グランドクロス】も無事回収して次なる舞台へ…‼


 3月の投稿ですが、お引っ越しも兼ねてしばらく一月くらいお休みいたします。
 しばしの間、投稿できないので申し訳ございません‼

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