カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼   作:サバ缶みそ味

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 カオスにしては少しくさいところもあったり、ご都合主義なところもあるけども、シカタナイネ
 こういうベタなのも好きなので


69話

 シディアスは無言のまま騒いでいるカズキ達を見ていた。一方のカズキ達はシディアスのことはすっかり忘れているようで全員集合したことを喜び合っていた。

 

「たっくん、もう勝手に突っ込むんじゃねえぞ!」

「というかナオトの方向音痴を治すべきじゃねえの?」

「それよりも俺にナビをつけてくれよ」

「もっふもふ‼リサの毛並みもっふもふ!」

 

「おおーい‼なにしてくれてんのお前等ぁぁぁっ!?」

 

 やっと我に返ることができた静刃はカズキ達を叱る。無残にも倒壊しているオベリスクに指をさす。

 

「絶対やらかすと思ったけども…さっそくオベリスクを壊すとかお前らバカなの!?」

「ゴッドハンドクラッシャーでダイレクトアタックだ!」

「何言ってんだお前、戦いには犠牲がつきものだぞ?」

「やかましいわ!」

 

 全く反省の色を見せないタクト達に静刃は項垂れる。後ろではセーラやカツェ、ワトソンがやっぱりやらかしたんだなと遠い間でカズキ達を見つめていた。

 

「し、静刃くん、悔いている暇はないです。先にやらなければならないことがありますよ」

 

 同じく我に返ったアリスベルが静刃に呼びかける。確かにそうだ、自分達は倒さなければならない相手がすぐ近くに待ち構えている。仲良く騒いでいる4人組は一先ず置いといて、サン・ピエトロ大聖堂の入り口で静刃達を見下しているシディアスに視線を向ける。

 

 シディアスはずっとカズキ達を見ていたが、我慢できなかったのかプルプルと震えだし高らかに笑い出した。

 

「ふふふ…ふははははは‼私を止める輩が現れるとマイクロフトは言っていたが、誰かと思えば小童共じゃあないか!」

 

 

「へっ、ただの小童だと甘く見ない方がいいぜ‼」

「そうだぞー‼俺達はサイキョーの中二病の小童共だ‼」

 

「たのむ…お前達と一緒にしないでくれ…」

 

 不敵に笑うカズキとタクトを他所に静刃は頭を抱えた。戦う前から胃が痛む、こんな経験はきっと元いた時代に戻ってもないだろう。シディアスは低く笑い、カズキ達を睨み付ける。

 

「面白い…ならば私を止めてみるがいい」

 

 シディアスは左手から紫色の電撃が放たれる。バチバチと放電音を響かせながらカズキ達に襲い掛かるが彼らの前にセーラとカツェが立ち、水と風の壁で防ぐ。電撃は相殺されていくがかなりの威力があるようで、セーラとカツェは辛そうに睨む。

 

「くっ…かなりの威力…」

「ちっ…あれが【究極魔法・グランドクロス】ってやつか…‼」

 

 

「どうした?まだこの究極魔法のほんの一部分しか使っておらんぞ?」

 

 シディアスは更に力を込めて電撃を放ち、水と風で防いでいたセーラとカツェを押していく。シディアスが電撃を放っている合間に鵺と金狼となったリサがシディアスへと駆けて飛び掛り、シディアスの影からヒルダが飛び出し持っていた三叉槍で突こうとする。

 

「ふふ…威勢がいいのはいいことだ。だが、私を見縊っては困るな」

 

 シディアスが右手を振るうとピタリと鵺とリサ、ヒルダの動きが止まった。強制的に動きを止められたのか力を入れて何とか動こうと体が震えていた。

 

「ぐぬぬ…やってくれるじょ…‼」

「この老いぼれが…‼」

 

 ヒルダの挑発にもシディアスは聞いていないかのように鼻で笑って彼女達に電撃を放ち吹き飛ばす。

 

「鵺さん‼この…っ!」

 

「…待つじょ、アリスベル‼」

 

 髪の毛からプスプスと少し焦げた煙を上げながら鵺が起き上がってアリスベルを止めた。

 

「お前の術式は彼奴の究極魔法を打ち消す可能性があるじょ。だから自分が持っているありったけの魔力使って荷電粒子砲を放て。今は力を最大限に溜めることに集中しろ!」

 

 アリスベルの術は相手の魔力を消して脱力させる。だからこそこの【究極魔法・グランドクロス】止める有効打。シディアスに打ち勝つにはこれしかない。

 

「わかっているな、静刃‼お前は全力でアリスベルを守って戦え‼」

「鵺、お前にしては随分と優しいんだな…いいぜ、やってやるよ‼」

 

 まさかこれまで鵺と死闘を繰り広げていたこともあったのに、鵺がこれほど協力的になるとは思わなかった。あの4人組のおかげなのか鵺は楽しんでいる。こればかりは静刃はカズキ達に少し感謝をし、バーミリオンの瞳を発動させ、準潜在能力開放をしてシディアスへと駆けていく。

 

「静刃がいった‼たっくん、ケイスケ、ナオト、俺達も行くぜー‼」

「おおーっ‼中二病筆頭に続け―‼」

「やっぱあいつも中二病だったんだな」

「‥‥俺達と同じだ」

 

 前言撤回である。やっぱりあのバカ4人に関わると胃が痛い事ばかりだ。静刃は心の中でツッコミを入れてシディアスに向けて蹴りを放つ。

 

「無駄だと言っている」

 

 シディアスは余裕綽々と左手で静刃の動きを止める。静刃は力強くで動こうとするが空中で止められて身動きができない。シディアスの右手からはバチバチと電撃が飛んでいるのが見えた。その右手を振りかざされる寸前、シディアスの頬に弓矢が掠る。弓矢を放っていたセーラが悔しそうに睨んだ。

 

「っ、まさか風の流れも強制的に変えられてるなんて…!」

 

「うらーっ‼その余裕面をドッキリさせてやるぜ!」

「あの野郎をその場からずり落としてやる‼」

 

 カズキはTRG-42で、ケイスケはM4でシディアスに狙いをつけて撃ち続ける。それに続けてナオトもAK47で撃つが、シディアスは右手をかざすとシディアスに向けて飛んでいた弾丸が空中で止まる。

 

「私に、そんな豆鉄砲で対抗しようとは…片腹痛い」

 

 シディアスは弾丸を跳ね返すとともに紫電の一撃を放った。撃っていた弾と紫色の電撃がカズキ達に襲い掛かるが金狼が前に出てその攻撃を体を張って防ぐ。

 

「リサ‼大丈夫か!?」

 

 ケイスケはすぐに呼びかけるが、金狼は心配ご無用と言うかのように『ワン!』と力強く吠えた。無暗に撃ってもシディアスに防がれてお返しされる。何とか隙を狙って撃つしかない。

 

「この…っ‼いい加減下ろしやがれ!」

 

 空中で止められていた静刃はシディアスを睨み付ける。そうだっと言わんばかりにシディアスは静刃を放った紫電とともに吹き飛ばす。その静刃の後ろからカツェとセーラが水と弾幕と鎌鼬を放つ。飛んできた弾幕をシディアスは軽々と電撃を放って防いでいく。そんなシディアスの隙を狙って肘から手首、手の甲からカードナイフのような小さな刃物を展開させたワトソンと拳を構えたナオトが飛び掛る。

 

「ふん…そんな子供騙しに引っかかると思っていたか?」

 

 すべてお見通しとでも言うようにシディアスは二人に向けて電撃を飛ばし吹き飛ばす。

 

「痛っ…付け入る隙がない…!」

「手強すぎる…」

 

 ワトソンとナオトは起き上がってシディアスを睨み付ける。静刃も同じように睨むが、あのシディアスの実力が想像以上に強く。生半可な力では倒せないと察する。

 

「くくくく…よもやそんな力でこの私を止められると思っていたのか?貴様らの様な小童共に私はたお…っ!?」

 

 

 高笑いして罵ろうとした瞬間、突然膝ががくりとなりバランスを崩してサン・ピエトロ大聖堂の階段から転げ落ちた。一体何が起こったのか、驚きを隠せなかったシディアスは起き上がり自分がいた場所に視線を向ける。

 

 そこにはタクトがドヤ顔をして、立っていた。何故自分の背後にいたのに気づかなかったのか、そんな理由よりもこの自分に何をしたのかが分からなかった。

 

「貴様…‼この私に何をした!」

 

 先程まで余裕綽々で相手を貶していたが、まさかこんなよく分からない奴に階段から転げ落とされるのは屈辱的だった。怒り、睨むシディアスにタクトは再びドヤ顔をする。

 

「ふっ…名付けて、漆黒の堕天使的スーパーミラクルダイナミックアタック膝カックン!」

 

 よく分からない技名にシディアスはポカンとする。

 

「なんでえええっ!?なんでそこで膝カックンなんだよ‼馬鹿か‼」

「たっくん‼折角のチャンスに何してんの!?」

 

「たっくん…空気読んで」

「ぎゃははは‼見ろよ、ヒルダ、獏‼あやつのポカンとした顔‼ざまあみろだじょ‼」

「やはり彼の行動はよく分からんな…」

 

 

 ケイスケとカズキはプンスカと怒って文句を言い、セーラと貘、ヒルダ、静刃は呆れ、鵺は腹を抱えて大笑いをしていた。

 

 やっとシディアスは気づいた。あんなちっぽけな男に足元をすくわれた。まさか最初に膝カックンとやらにやられたという事に。自分が立つべき場所を容易く蹴落とされたことにシディアスは激昂する。

 

「この下郎がぁぁぁっ‼」

 

 怒りに任せてタクトに向けて電撃を放った。慌てるタクトの前にセーラが立ち、風の壁で防ぐ。タクトへの怒りに集中しすぎたシディアスに隙ができた。金狼が前肢の爪を立ててシディアスに振るう。

 

「このっ、野犬が…邪魔をするなっ‼」

 

 電撃で防ぎ、左手で全力の放電を放つ。金狼は「キャイン‼」と悲鳴に近い声を上げて吹っ飛ばされる。

 

「これならいける…‼3分で片を付けてやる‼」

 

 タクトのおかげでシディアスは取り乱して隙ができている。静刃は妖刕を抜刀し、潜在能力開放を発動させる。二振りの妖刕を構えて一気にシディアスへと迫った。反応が遅れたシディアスは電撃を放って防ぐが、身体能力をフルに上げた静刃の力が強く、どんどんと押していった。

 

「おおおおおっ‼」

「この…っ‼小童共がっ‼」

 

 静刃を弾き飛ばし、シディアスは息を荒げる。その様子は血眼で、怒り心頭であった。

 

 

「シディアスは近接に慣れていない…一気に叩き潰せばいけるぞ‼」

 

 

「…【究極魔法・グランドクロス】をこの程度の魔法だと思っていたのか?」

 

 静刃の一言に癪に来たのかシディアスは殺気を込めて睨み付けた。そうして片手を空へとかざす。

 

「究極の力、とくと見せてやる‥‥‼」

 

 シディアスは力を込める。すると見つけている十字架のロザリオが白く光りだす。その威圧にカツェ達異能者達はビクリとする。

 

「あの野郎…まだあんなに魔力があったのかよ!?」

「嘘…あの量は膨大過ぎます‼」

「まさかその塊の一部を放つつもりじゃ…‼」

 

「いや何々!?よく分かんないんですけど!?」

「ようはマジでやっべえんじゃないのか!?」

 

 カツェやアリスベル、ヒルダは驚愕するが、異能者ではないカズキやケイスケは困惑する。また手から電撃を放ってくるのかと静刃は身構えたが、ふと自分達がいる場所が少し明るくなってきたのに気づく。静刃は見上げると目を見開いた。

 

「おい…嘘だろ…!?」

 

 その声に続いてカズキ達は空を見上げると此方に向かって上空から光の大柱の様なものが落ちてきていた。

 

「なにあれ!?サテライトキャノン!?」

「やっべえ‼今日は満月だった!」

 

「そんなこと言ってる場合じゃないじょ‼くそっ…こうなったら最大出力で撃ってやる‼」

 

 鵺はそうツッコミを入れると右目を緋色に変えて今まで放った時よりも大きな緋箍を放つ。光の柱と大きな緋色の閃光がぶつかるが若干こちらが押されている。

 

「お前ら!全力で防げ‼じゃないとみんな丸焦げになるじょ‼」

 

「ちっ…んなこたぁ分かってんよ!」

「あの膨大な魔法…無茶苦茶すぎるわ‼」

 

 カツェもヒルダもセーラも水や雷、風を放って鵺の放った緋色の閃光とともに落ちてくる光の柱へと全力でぶつけた。ありったけの力でぶつけ、光の柱を相殺させる。爆発した衝撃と閃光がカズキ達に降りかかった。

 

「っ‼くぅ…さっきの緋箍で限界か…」

「2戦連続は少しきついわね…」

 

 鵺とヒルダはクエスとの戦いのこともあって限界が来たようで辛そうに膝をつく。セーラとカツェはぜえぜえと息が上がっていた。

 

「皆さん…‼やっぱり私も…っ‼」

 

「ならぬ、アリスベル‼今は耐えろ…‼」

 

 最大の魔力で当てるために力を溜めていたアリスベルは獏に止められて悲痛に悔やむ。

 

「リサ、おま、大丈夫か!?」

「無茶をするな…!」

 

 カズキとナオトは焦る。金狼はカズキ達を衝撃から体を張って守っていたが、衝撃にかなりの威力があったようで、流石に体に応えた。金狼はへたりと伏せる。ケイスケとタクトはそんな金狼を優しく撫でる。

 

「お前も俺達みたいに無茶をして…リサ、あとは任せろ」

「ここからは俺達のターンだ‼」

 

 静刃も負けていられない。潜在能力開放の限界時間はあと2分。第二破が放たれる前に一気に決着をつかなければならない。

 

「まだ分からないのかね?私の究極の魔法には手も足も出ないのだと…‼」

 

 シディアスは手を再びかざした。すると静刃の体が急に重力がかかったかのようにずしりと重くなり地に這いつくばる。いくら反抗しようとも体が上がらない。シディアスの力にかかったのは静刃だけではない。ワトソンもカツェも獏も、そしてアリスベルも重力が押し付けてきたように地に伏せて動けないでいた。

 

「どうかね?究極の魔法と君達の実力では天と地の差があるのだよ…‼」

 

 

 いくら足搔こうとも体が動かない。静刃の潜在能力開放が2分を切る。押し付けられる力が増々強くなっていく。このままでは全員圧し潰されてしまう。

 

 

「ふふふ…ふははは…‼どうだ、誰も私を止められないのだよ‥‥‼」

 

 シディアスは体が動けず地にへと押しつぶされそうになっている静刃達を見下して高らかに笑った。もう誰にも止められない。そう確信したシディアスは高く見上げて笑いあげる。

 

 

 

 

 

「レッドマウンテンブラストォォォッ‼」

「アバッシングハイッター‼」

 

 横からどかっとタクトとカズキの飛び蹴りがシディアスの横腹に直撃して突き飛ばす。油断してもろに当たったシディアスはよろめきながら起き上がる。

 

「『ゲロ瓶』はもうねえけど…これでもくらいやがれ‼」

 

 起き上がるシディアスに追い打ちをかけるようにケイスケがポーチから透明な液体の入った小瓶を投げつけた。小瓶から液体が漏れて気化し鼻が曲がるような臭いが法衣につく。

 

「馬鹿な…何故お前達は動けるのだ!?」

 

 驚愕するシディアスは咄嗟に紫電の電撃を放った。カズキ達に向けて襲い掛かるがフライパンを持ったナオトに防がれる。

 

「やっぱ神父印のフライパンはすげえな…」

「いやージョージ神父はすごいよ。様様だぜ‼」

 

「ふっ…なぜ動けるか、教えてやるぜ‼俺達は無敵だからだ‼」

「たっくん、それじゃ理屈が分かんねえよ」

 

 ケイスケがツッコミを入れた通り、なぜ動けるのか全くもって分からない。彼らにその魔法の耐性があったのか、それに対抗する魔力が秘められているのか、それとも本当に無敵なのか、いくら考えても思いつかない。

 

 

「言ったはずだぜ?中二病はすげえんだぞ‼」

「だからその理屈はおかしいつってんだろ、クズ」

 

 シディアスは何度も何度も電撃を放つ。しかし、それを次々にナオトがフライパンで防いでいく。

 

「このっ…くるな、くるな…‼」

 

「…今だっ‼」

 

 拘束が解かれた静刃は起き上がって一気にシディアスへと迫る。今のシディアスはカズキ達に気を取られている。峰打ちながらも妖刕をシディアスに叩き込んだ。よろめくシディアスに続けてナオトがフライパンでフルスイング。シディアスは高く飛ばされたが、空中で起き上がり宙を飛ぶ。

 

「もう許さんぞ…‼こうなれば…【究極魔法・グランドクロス】を発動させ、このローマごと消し去ってくれるわ‼」

 

 シディアスは血眼になって空高く上空へと飛んでいく。一体何をするのか静刃は構えるが、シディアスが空を飛んだことにカズキ達は目を輝かせていた。

 

「すっげえ‼舞空術だ‼」

「俺も空を飛びたいな―‥‥」

「いや呑気に言ってる場合じゃなさそうだぞ」

 

 一体何が来るのか、また先ほどの光の柱を落としてくるのか、静刃は見上げた。そしてシディアスが発動した究極の魔法に唖然とする。

 

「んだよ‥‥そんなのありか…!?」

 

 上空には巨大な十字架の形をした光が浮かんでいた。その大きさはローマの街を壊滅できるほどの巨大なものだった。

 

_

 

 

「跳ね馬‼上を見上げろぉ!」

 

 武装集団と交戦中、スクアーロが咄嗟にディーノに呼びかけた。一体何事かとディーノは見上げると上空に輝く巨大な十字架の光を見て絶句した。

 

「おいおいマジかよ…あれが【究極魔法・グランドクロス】か…!?」

 

 あれが落ちてくると間違いなく甚大な被害が出るどころじゃすまない。シディアスは敵も味方も全部ひっくるめてこのローマを破壊するつもりだ。

 

「やべえぞ…ありゃぁ。ボスでもあれは止めらんねえぞ…」

 

 スクアーロも額に冷や汗を流している。ディーノはごくりと生唾を飲んだ。

 

「頼むぞタク坊…‼あれを止めれるのはお前等しかいねえんだからな…‼」

 

__

 

 

「キーくん‼上‼上‼なんかやばそうなのが‼」

 

 同じく殺し屋集団と交戦中、上空を見上げた理子はギョッとしてキンジに呼びかける。

 

「なんだあれは…!?」

 

 上空に浮かぶ光の十字架を見てキンジもジャンヌもギョッとしていた。これまで緋緋色金に関わる戦いをしてきたが、アリアや猴が放った緋色の閃光よりも何十倍もの大きいものは見たことが無かった。

 

「まずいぞ、遠山。あれが落ちてきたら間違いなく私達も巻き込まれる…‼」

 

 ジャンヌの言う通り、全員巻き込まれるがそれ以上にこのローマの街が崩壊しかねない。

 

「あいつら…絶対に止めろよ…‼」

 

__

 

 

「やべえぞたっくん‼ノストラダムスの大予言並みにやべえぞ‼」

「落ち着けカズキ‼あれを何とかしてでも止めるしかねえ!」

 

 焦るカズキをケイスケがげんこつを入れて落ち着かせる。

 

「そうだ!アリスベルちゃん、これを止めれるよね?」

 

 タクトははっとしてアリスベルの方に視線を向ける。静刃も同じようにアリスベルに視線を向けて駆け寄る。しかし、上空の究極魔法を見上げていたアリスベルは絶望していた。

 

「無理です…私では…あれは止められません…」

 

 今まで、これまでの戦いの中で、あんな膨大な魔力と強大な力を込められた魔法は一度も見たこともない。今の自分ではそれに対抗できる、あれを打ち消す程の力がない。へたりと座り込んだアリスベルは体を奮わせてポロポロと涙を流す。

 

「ごめんなさい…‼静刃君が…皆が傷ついて戦っているのに…何もできなかったうえに、止める力もない…‼」

 

 

 【究極魔法・グランドクロス】を、究極の魔法の力を完全に見誤った。沢山の期待に応えられなかった自分が悔しかった。もうあれを止める術はない。アリスベルは絶望し続ける。

 

 

「アリスベルちゃん…諦めちゃだめだよ」

 

 そんな涙を流しているアリスベルをタクトは立ち上がらせる。アリスベルは諦めていたのにタクトは、タクト達4人は諦めていなかった。

 

「母ちゃんが言ってた。『どんな絶望的な状況でも、諦めることを考えちゃいけない。切り抜くために、生き抜くために、全力で足掻け。そうすれば切り開ける』って」

 

 

「たっくんの事だから諦めたらそこで試合終了とか言うと思ってた」

「カズキ、空気読もうな」

 

 ぼそっと呟くカズキにケイスケは容赦なく横腹に肘鉄を入れる。

 

 

「で、ですが…私の力じゃ…」

 

 タクトの言葉にアリスベルは戸惑う。そんなアリスベルの様子を見かねたのかタクトはムスッとして静刃の腕をつかむ。だんだん光の十字架が降下してきているのに何をするつもりだと静刃は焦るが、そんな事を気にしていないタクトは静刃の手を掴み、アリスベルの手へと触れさせる。

 

「爺ちゃんが言ってたぜ。『好きな女の子が悲しんでたら手を差し伸べて助けてやるのが男だ』って」

「いやなんで俺なんだよ!?」

 

「せ、せ、静刃…くん…」

 

 静刃はタクトにツッコミを入れるが、アリスベルが頬を赤くして静刃を見つめていた。そんなアリスベルを見て静刃もドキッとする。どうするか考えるが、もう時間がない。タクトの考えに身を任せるしかない。

 

「…1分だ。俺はあと1分が限界だ。アリスベル、これで決めるぞ」

 

 静刃は少し照れ隠ししながらもアリスベルの手を握る。潜在能力開放の残りの力をアリスベルの魔力へと供給できるか試みる。

 

「静刃くん…私、やってみます、やり遂げてみます‼」

 

 自信を取り戻せることができたアリスベルは静刃の手を強く握る。静刃の手は自分の手よりも大きく、優しい。傍にいてくれるといつでも感じられた。

 

「お前等‼これも使え‼」

 

 そんな時、よろよろと立ち上がったカツェが眼帯の封を開けてある物を静刃に投げ渡した。緋色の金属のようなものだがこれは何かと首をかしげる。

 

「他人の所有物だけども…緋緋色金の殻金だ。付け焼き刃かもしれねえけど、力になれるはずだ」

「おまえ、そんなレア物隠し持ってたのかいな…」

 

 仰向けに倒れている鵺はやや呆れながらも苦笑いをする。静刃にはどういったものかは分からなかったが、その殻金とやらにも力を感じる。静刃とアリスベルは一緒にそれを握りしめた。

 

「静刃くん…いきます。かなりモーレツですよ?」

「ああ…安心しろ。傍にいるから全力でぶつけろ」

 

 アリスベルは微笑み、環剱を二人の頭上へと浮かばせフルに回転させる。バチバチと放電させる。照準をこちらに向かって落ちてきている巨大な光の十字架とそれを落として高笑いしているシディアスへと向ける。環剱に溜められた魔力が光り出し、静刃とアリスベルの周りがまばゆい光で明るくなる。

 

「よーし‼俺も手伝うぜ‼」

 

 突然、タクトが静刃とアリスベルの方に手を置いた。いきなりの事で二人は驚く。

 

「いや、タクトくん!?」

「お前、何かできるのか…!?」

 

 先程励ましてくれたのは確かに助かった。しかし彼にそんな力があるのは感じられない。

 

「任せろって‼俺の漆黒の中二病パワー、お熱い二人に手を貸すぜぇぇぇっ‼」

 

 タクトは力を込めた。すると静刃とアリスベルの体に大量の魔力が流れ込む感覚と同時に力が漲ってきた。

 

「この底の付かない魔力…タクトくん、貴方は…!?」

「なんだこれ…お前、こんな力を隠してたのか…!?」

 

 アリスベルも戸惑っていたが、特に静刃が戸惑っていた。1分を切って警告信号が出ていた潜在能力開放が復活したのだ。正常になり、自分の潜在能力開放の力をアリスベルにリンク、魔力放出量が100%を超えるだの、情報が沢山流れ込む。そんな多すぎる情報の中に気になる物が見えた。

 

 

【M.■.■■■:カ■■■■■ー】

 

 静刃のバーミリオンの瞳は相手の異能の技もコピーする力もあるが。情報量が多いためかコピーが失敗したようだ。もしかしたらこれがタクトの能力なのかもしれない。一体これが何なのか、どんな能力なのかは分からない。ただ分かるとすれば、彼らは恐れを知らないし決して恐れなかった事。だからこそ彼らは戦えたのだ。

 

 

「静刃くん…‼」

「ああ、思い切りぶつけてやれ‼」

 

「今こそ見せてやれ‼二人の…スーパーラブラブマウンテンブラスト青春真っ盛り!」

「「そんな技じゃない‼」」

 

 静刃とアリスベルはツッコミを入れ、二人は環剱からこれまでになかった強大な荷電粒子砲を放った。落ちてきている十字架の光にぶつかり押し上げる。それでも巨大な光なため、力を入れないと逆に押し負けてしまう。二人の手はより強く握りしめ合う。

 

「二人とも、もっと気合いを入れろー‼」

 

 タクトに応援されさらに力を入れていく。

 

「すげえぞたっくん‼所謂ミナデインってやつか‼俺も力を貸すぞ‼」

「…なんか違う気がする」

「ああもう‼死んだら絶対にあのクソ神父を祟ってやる‼」

 

 カズキ、ナオト、ケイスケもタクトの肩に手を置く。彼らには異能は無いが、それでも力を自分達に送ってくれている感覚がした。静刃とアリスベルはありったけの力を込めた。

 

「「いっけえええええええっ‼」」

 

 二人の叫びに答えるように環剱は輝き、荷電粒子砲をより強く放つ。荷電粒子砲はどんどんと巨大な光の十字架を押し上げ、そしてど真ん中を撃ち貫く。

 

 

 

「な、なん…だと…!?」

 

 上空にいたシディアスは撃ち貫かれ次第に消滅していく究極の魔法と次第に迫ってくる荷電粒子砲に驚愕する。この瞬間、自分は負けたという事が全身に伝わってきた。

 

 

「馬鹿な‥‥この私が、【究極魔法・グランドクロス】が‥‥‼」

 

 

 シディアスはこちらを見上げている静刃とアリスベル、その二人を支えていてドヤ顔しているタクトを見た。彼らを、あの中二病と名乗る青年に敗北したと全てを察した。その刹那、シディアスは光に包まれる。

 

 

 

 十字架の光は消え、静かな夜に戻る。静刃とアリスベルは荒い息遣いをしながらお互いを見つめ合う。辺りはかなりの衝撃だったのか地面や柱、建物にヒビがはしっていた。

 

「これで…終わったのか…?」

 

「静刃くん…あれ…!」

 

 アリスベルは上空を指さす。見上げると空から法衣がボロボロになって気を失っているシディアスがゆっくりと落ちてきた。ふわりと地面に落ちると、光り輝いていた十字架のロザリオは光を失う。【究極魔法・グランドクロス】のを扱えるほどの魔力が無くなった証拠だ。

 

「静刃くん…!」

「ああ…これでお(ry」

 「「「「終わったぁぁぁぁぁっ‼」」」」

 

 抱きしめ合う静刃とアリスベルを他所にあの喧しい4人組が大喜びで叫んだ。

 

「あー、もう疲れた。休ませてー」

「たっくん!?そこで寝ちゃダメだぞ!?」

「ったく、何とか終わったな。このダークサイド野郎、面倒かけやがって」

「‥‥ピザ食べたい」

 

 やっぱりぶれないなと静刃とアリスベルは苦笑いをして微笑んだ。そしてお互い抱きしめ合っていることに貘が指摘するまで気づかなかった。





 静刃とアリスベルの二人はもっとイチャイチャしていいと思ったので甘々増々

 ちなみにたっくんの能力の名前はすぐに分かってしまいそうでコワイ(ガクブル

 planetの曲はほんと好き


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