カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼   作:サバ缶みそ味

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 少しシリアスにしようかと思ったけどもシリアスにできなかった。
 とても反省している(遠い目


68話

 モールの手のサインで武装した殺し屋達が動き出す。ある者はSG551やARX160、ある者はトカレフやFNハイパワーやらあらゆる銃器を構えて撃ってくる。

 

 このままナオトとトリエラだけでは戦いが厳しくなる。カズキ達は銃撃されてない反対側からドアを開け狙われないように素早く出ていく。

 

「ナオト!援護するぜー‼」

 

 転がり出たカズキはすぐさまTRG-42でナオトの死角から撃とうとする敵を狙撃していく。AK47で撃ち倒していったナオトはバイクをバリケード代わりにしているカズキの下へ転がり込む。

 

「近接相手とか、スナとか思った以上に数が多い!」

「そこをごり押しで蹴散らしていくのが俺達でしょ‼いつものパティ―ンでやるぞ!」

 

 カズキはドヤ顔しながら愚痴をこぼすナオトを鼓舞をする。ナオトはいつものようにやや面倒くさそうにため息をついてAKにマガジンを装填させて身を乗り出して突撃した。突き進むナオトをカバーするようにカズキが要所要所狙撃していく。

 

 狙撃しているカズキの背後から身を潜めて隙を伺っていた殺し屋の一人がククリナイフをかざして気付かれないように襲い掛かる。そうはさせないとどこからともなくボーリングほどの水の弾が飛んできてその殺し屋の横腹へ直撃して吹っ飛ばす。

 

「ったく、なんで肝心なところは隙だらけなんだよ」

 

 カツェが呆れながらカズキの背中を守る様に立つ。そんなカズキは当然だと言うように笑って親指を突き立てる。

 

「そりゃあ、カツェに背中を任せてるからな!これで心置きなく撃てるというわけだ、アムロ!」

「う、うるせーよバーロー!しかも赤い彗星のマネ似てねえし!」

 

 カツェは顔を赤くしつつも戦いに集中する。内心喜んでおり、カズキの背を守りながら水の弾幕を飛ばしていく。敵陣へ突き進んでいくナオトはカズキのサポートのおかげで死角を気にせず進めることができた。

 

「最初の時よりも多い…!」

 

 ナオトは相手の所有している武器を見ながら気づく。五共和国派の残党である武装集団も混ざっているが、他の殺し屋達は武器の統一感がなくバラバラ。他の殺し屋を雇ったのか、そのため『協会』に襲撃してきた数よりも多くいる。

 

 あまり深く考える暇はないとナオトは首を振って考えるのをやめた。今は目の前の敵に集中するのみ。ナオトは縫うように相手の銃撃を躱し、相手の拳やナイフをいなし、撃って反撃し、殺し屋のリーダーであろうモールへと迫った。

 

 モールは2丁のマイクロUZIを構えて撃って出る。ナオトが撃つ前に飛び掛る様に跳んで乱射してきた。ナオトは咄嗟に前へと転がって被弾を避け、その間に銃剣を取り付けたAK47で刺突していく。モールは突きを躱し、向けてきた銃口を打ち払い、片方のマイクロUZIの銃口をナオトへと向けて引き金を引こうとする。

 

「あんたの相手は彼だけじゃないわ!」

「やらせはしないよ!」

 

 ナオトを飛び越してトリエラがH&K M23とH&K P7を、ワトソンがSIG SAUER P226を構えて撃っていく。モールは咄嗟にナオトを撃つのやめて蹴り飛ばして標的を変えてマイクロUZIで迎え撃つ。迫ってきたワトソンの拳銃を払い落として蹴とばす。追撃して狙いを定めるがその隙にトリエラが迫ってきた。

 

 モールは左のマイクロUZIの引き金を引こうとした刹那、綺麗に切断される。モールは無言で目を見開かせるが、光に当ててやっと見えるくらいの極細のワイヤーが見えた。漂うワイヤーの糸はメジャーのようにワトソンの左袖へ戻っていく。

 

「余所見をすんなぁぁぁっ‼」

 

 トリエラが叫ぶように2丁の拳銃で撃っていく。モールの体に当たるが、重厚なボディーアーマーで防弾をしっかりしたようでただ当たって痛みに顔を顰めて右のマイクロUZIの銃口を向ける。しかしモールが引き金を引くよりも早くトリエラの後ろから飛んできた弾丸がモールの右肩を直撃する。

 

「私もそれなりに戦えるんだから、頭数に入れるのを忘れたら困るわよ」

「クラエス、ナイスよ」

 

 Minimiを構えて狙い撃ちをしていたクラエスにトリエラはウィンクをする。撃たれた右肩を抑えながらモールは後ろへと下がる。痛みに耐えながら近くにいた部下に視線を向ける。

 

「…ところかまわず射ち殺す。あれを用意しろ」

 

 モールの指示で数人の部下がいそいそと銃器を用意する。三脚を立てて設置されたその銃器を見たトリエラとナオトは目を見開いた。

 

「ちょっとあれってもしかして…!」

「あいつしゃべれたの…!?」

 

「ナオト、驚くところ違うよ!?あれはM134‼マズイ、急いで退くよ!」

 

 三脚に設置されたガトリング砲、M134の引き金が引かれる前にナオト達は急いで身を隠せる場所まで駆けだした。そしてモールはM134の引き金を引き、勢いよく火を噴くように乱射した。停められている車を蜂の巣にしていき、レンガの壁を削り、ありとあらゆる物を引っ掻き回す様に荒らしていく。

 

「ちょっ!?ガトリングとか卑怯だろ!?」

「あぶねえー…内蔵ぶちまけるレベルでやばいぞこりゃぁ」

 

 カズキとカツェも慌ててバイクから離れて弾が当たらない物陰へと隠れる。ナオト達も隠れて被弾しない物陰から伺う。ガトリングの弾幕は止んだが、下手に出るとミンチよりひでえことになる。だからと言ってもここにこもってもここからあぶり出される。この状況にクラエスは眉をひそめる。

 

「このままだとまずいわ…」

 

「あのガトリングさえ押さえればなんとかいけるんだが」

 

 ナオトはあのガトリングをどうすべきか対処を考え込む。むやみやたらと突撃しても蜂の巣にされる。

 

「…だったら、私が行く!」

 

「トリエラ!?だめっ‼」

 

 考えているうちに、意を決してトリエラが飛び出して駆けていった。クラエスが悲痛な声をあげてトリエラを止めようとしたが、トリエラが飛び出したと同時にM134の激しい発砲音を響かせて声をかき消した。

 

「あのバカ‼死ぬ気か!?」

「ちょ、あれってまずいんじゃね!?」

 

 後方で伺っていたカツェもカズキもギョッとする。トリエラは火を噴くように乱射するM134の弾幕から躱す様に駆けたり跳んだりしていく。だがいくら普通の人間の数倍の身体能力を得られる義体というものをつけていてもモールが乱射するガトリングとともに放たれる殺し屋達による一斉掃射も加わると対処しきれない。トリエラはM134の弾丸だけ当たらないよう必死に駆けていた。弾丸を掠め、四肢に当たろうとも足が止まることなく突き進んでいった。

 

「トリエラ!やめて‼」

 

 クラエスは必死に叫んだ。トリエラは、彼女はこの戦いで死ぬ気だとクラエスは気づいていた。五共和国派との戦いに生き残るも共に戦って死んでいった仲間達、心から愛した担当官のことも忘れてしまい、胸にぽっかり空いた虚無感をいくら満たそうと戦いへ出ようとも埋まらない。それならばいっそ全てを捨てていなくなりたいと、トリエラが心の隅で願っていたこともクラエスは知っていた。それを知りながら、彼女を止めることができなかった自分が許せなかった。クラエスは必死に叫ぼうとも死ぬ覚悟で特攻していくトリエラには届かなかった。

 

「ナオト行くぞぉぉぉッ‼」

「カズキ、絶対に仕留めろよ‼」

 

 突然カズキが叫びながら飛び出して駆け出していき、ナオトも同じように飛び出してカズキと共に突撃していった。それを見たワトソンはギョッとして止めようとしてももう止まることはなかった。

 

「二人とも!?危なすぎるよ‼」

 

「ああ畜生‼背中を任せてる身にもなれっての!絶対に死ぬんじゃねえぞ‼」

 

 カツェはやけくそ気味に飛び出して水の弾幕を張って飛ばす。駆ける二人の邪魔をしようとして来る敵に当てていった。全速力で駆けるナオトはトリエラに飛び掛って取り押さえる。

 

「カズキ、しくじんなよ!」

「わーってらぁっ‼」

 

 ナオトの声に答えるようにカズキは狙いを定めて引き金を引いた。飛んでいったTRG-42の弾丸はM134で乱射しているモールを撃ち倒した。火を吹くガトリングは止まり、銃弾の弾幕が消える。

 

「ほーら、みーたかさ‼」

「みたかさ…?ほら、さっさとガトリングに近づかさせないようにして」

 

 ドヤ顔して噛んだカズキにナオトは首を傾げてすぐに次の指示を出す。褒められなかったカズキは渋りながら撃っていった。

 

「なんでよ…戦って、戦い抜いて、死ぬつもりなのに…なんで生かすのよ…‼」

 

 

 トリエラはナオトの胸倉をつかんで問い詰めた。彼女の眼には熱がこもっていて、潤わせていた。

 

 

 『この人と一緒に 必死に生きて そして死のう』 条件付けで消されてしまった記憶の中で唯一記憶に残っていた言葉。『この人』とは誰だったのか、そして何故こんな誓いをしたのか、生き残ってしまったトリエラには分からなかった。それを知っているであろう大人達は教えてくれず、その理由を知っているであろう仲間は次々に死んでいった。一期生で唯一知っているクラエスも語ってもくれなかった。

 

 いくら忘れようとも、いくら自分で思い出そうとしても、ただただ虚しさだけが残って心の中を空っぽにしていく。なんで自分は生き残ってしまったのか、自分達の事も戦い抜いてきたことも忘れ去ってしまうのなら意味がないのではないか。

 

 それならばいっそのこと、戦って、戦い続けて、死のう。胸の残る虚無感を満たすために、死と隣り合わせの戦いをし続けた。戦って死ぬならば、『この人』に、死んでいった仲間達に会える。その為に死ぬつもりで戦い続けた。

 

 

 そう決意していたトリエラにナオトは怒る事もなく、それを悲しむ事なく答えた。

 

「誰かが死んだら、その人を知っている人が悲しむって神父が言ってた」

 

 その答えを聞いたトリエラは胸倉を掴んでいた手を放す。それと同時に頬に痛みが走る。トリエラはクラエスにはたかれたのだった。

 

「クラエス…?」

「馬鹿な事言わないで…!」

 

 クラエスは瞳を潤わせて体を震わせてトリエラを睨んだ。

 

「貴女が死んだって貴女の事を覚えている私達が悲しむだけ…‼死んだ人にはもう会えないし、死んだ人は貴女の死を悲しめないのよ‼」

 

死ねば死んだ人に会えるなんて誰にも分からない。トリエラはへたりと座り込んで涙を流した。

 

「じゃあ…じゃあどうしたらいいのよ…」

 

「生きなさい。死ぬつもりで生き抜くんじゃなくて、必死に生きて、生き続けていくの。それが…戦いで死んでいった仲間達への私と貴女のやらなきゃいけないことなのよ…‼」

 

 トリエラは顔を上げて見上げた。クラエスも生き残って、自分達がいたことを、自分達が戦い抜いた日々を忘れないように必死に生き続けている。彼女も彼女なりに戦っていることにトリエラは気づいた。クラエスは手を差し伸べる。

 

「立ちなさい。この戦いで、愛する国の為に、貴女の為に戦って死んだヒルシャーさんの為に、五共和国派との戦いにけじめをつけるわよ」

「クラエス…!私…(ry」

 

 

「ちょっとおぉぉっっ!?弾幕がやばすぎるんですけどぉぉぉっ!」

 

 いい雰囲気をぶち壊してしまうようにカズキが焦りながら叫ぶ。このやり取りの間、カズキは1人で必死に抑えていた。

 

「は、話はすんだよな!?てかナオトぉ!お前は手伝えよ‼」

「カズキ、そこは空気を読まないと」

 

 ナオトはカズキの手伝いはせずにクラエスとトリエラの話をずっと見つめていた。トリエラとクラエスはお互いの顔を見つめ、苦笑いをする。

 

「取りあえず…話はここまでにしてやらなきゃね」

「そうね…続きは終わってからにしましょうか」

 

 クラエスもトリエラも銃を手に取り戦いを再開する。大将は既に討ち取った。後は数は多いけれども残りの敵を蹴散らすだけ。早くしないとタクトがサン・ピエトロ大聖堂にダイレクトアタックをしかねない。

 

 その時、武装集団の前に氷と炎の柱が立ち上る。一体何事かカズキ達はギョッとしたが、屋根からカズキ達の前に降り立った2人の姿を見てナオトとカズキは喜ぶ。

 

「ジルさん…!」

「おおっ‼ジャンピエールちゃん!」

 

「お久しぶりですぞ、お二方‼」

「ポルナレフじゃない、ジャンヌだ‼いい加減覚えろ‼」

 

 ジルはニッと笑ってドジョウ髭の青いひげをさすり、ジャンヌはプンスカと怒り出す。ジャンヌの姿を見たワトソンもほっと安堵した。

 

「ジャンヌ、無事だったんだね!」

「うむ、捕まっていたところを神父とジルが助けてくれてな…」

 

 ジョージ神父とジルが見つけて助けに来てくれたのだが、自分が十字架に磔にされてたところを目撃してしまったジルが激昂して相手を燃やさんとするほどの勢いで大暴れしたのは敢えて言わなかった。たぶん神父が止めてくれてなかったら流血沙汰になっていただろう。ジャンヌはワトソンの後ろで視線をそらしていたカツェを見る。

 

「厄水の魔女、カツェ・グラッセ…今は師団と眷属が争っている場合ではないことは承知している。今宵は共に力を合わせて戦おう」

 

「何で師団の奴等は頭が固そうなやつばっかなんだよ…分かってるっての。ただ今回だけだからな!」

 

 カツェは少々照れながらそっぽを向いた。ふっと笑ったジャンヌはデュランダルを敵の方に向ける。

 

「今回はあまり活躍させてもらえてなかったからな…暴れさせてうぞ。ジル、私に続け!」

「勿論ですぞ姫様‼このジル・ド・レェ、姫様の刃となりましょう!」

 

 何百年ぶりか、ジャンヌと共に戦えることにジルは喜び、ジャンヌと共に前線へ駆けていく。あちこちで氷と炎が飛び交う中、カズキ達はポカンとしていた。

 

「お、俺達も急いだほうがいいかな…?」

「でも車がないぞ?」

 

 さきほどのM134による乱射でメルセデスベンツもバイクも蜂の巣にされておじゃん。走って行ってもタクトの下へ着くのに時間が掛かる。

 

 するとカズキ達の所に一台の赤いフェラーリが猛スピードで来た。

 

「やっほー☆カズくん、ナオト!神父の要請で応援にきたよー!」

「カズキの事だから車で来て正解だったな…」

 

 フェラーリから理子とキンジが降りてきた。ディーノとスクアーロ、キャバッローネファミリーと共に前線を駆けて行く途中、ジョージ神父と合流。別の場所でカズキ達が足止めされているとのことで二人が駆けつけて来たのだった。

 

「ここは俺達がやる。カズキ、ナオト、後は頼めるな?」

 

「おうよ‼俺に任せておきな?クライマッキュスで仕上げるぜ‼」

「カズキ、お前運転したことないだろ。キンジ、理子、助かる」

 

 運転席に乗り込もうとするカズキを抑えてナオトが乗り込んだ。

 

「ワトソン、カツェ、こいつらのサポートを頼んだよ。彼らを任せれるのは二人しかいないからね」

 

「けっ、お前に言われなくてもやるっての…てか遠山、何か雰囲気変わった?」

「ほ、ほらカツェ、早く行くよ!」

 

 キリッとしているキンジにカツェは首を傾げながらもワトソンに押されて乗り込んだ。カズキはトリエラ達の方に声を掛けようとしたが、二人はそれよりも早く首を振った。

 

「貴方達の突破口は私達が開いてあげる」

「二人とも…任せたわよ!」

 

 トリエラとクラエスは敵陣へと駆けて行く。見届けて行ったナオトは頷いてアクセルを思い切り踏んで飛ばして突き進み、タクト達が向かって行ったサン・ピエトロ大聖堂へと向かった。

 

「ね、キーくんも行けばよかったのに」

「理子、俺達に俺達の戦いがあるように、あいつらにもあいつらなりの戦いがあるんだ。こういうのは背中を押して手助けしてやるのが一番だよ」

 

 キンジは苦笑いしてデザートイーグルを引き抜く。理子もカズキ達のこれまでの行動を思い出して「だよねー」と苦笑いして微笑んだ。

 

「む、遠山!理子!お前達も来ていたのか‼」

 

「やあジャンヌ。無事で何よりだよ」

「ジャンヌ…なんか今日はかなり張りきってるよね?」

 

「ああ‼今宵のエクスカリ…じゃなかったデュランダルは一味違うぞ!フォローミー‼」

 

 これまでの鬱憤を晴らすかのようにジャンヌは突撃していく。キンジと理子はお互い苦笑いし合って続いて行った。

 

 

___

 

 

 サン・ピエトロ大聖堂の入り口の前でシディアスは立っていた。静寂なこのローマの町に響き渡る爆発音と銃声を聞きながら星空を見上げていた。

 

「戦況が奴らの有利になろうとも、捨て駒がいなくなろうとも…もう手遅れだ」

 

 シディアスはほくそ笑む。どんなに相手が強くともこの【究極魔法・グランドクロス】とそれを扱える魔力を蓄えた自分に敵う者はいない。あとはこの究極の魔法を発動させローマを全て消し去るだけ。

 

 頃合いかと思い行動に移ろうとした時、遠くから鈍いエンジン音が聞こえてきた。はて、何事かと思ってその音がする方へと視線を向けると。この大聖堂へと続く道の先に何かが来ているのが見えた。それは段々とエンジン音を響かせながら此方に近づいてくる。それと同時に何か変な声が聞こえてきた。

 

『スポォォォォォォォォォンッ‼』

 

 耳障りになるほど喧しい声を上げながら、フレッチャ歩兵戦闘車が猛スピードでサン・ピエトロ大聖堂広場へと突っ込んできた。

 

「た、タクトくん、ブレーキ、ブレーキ‼」

「アリスベルちゃん、この俺にブレーキなんてねえ‼あるのは突撃するのみ!」

「バカヤロウ‼いいから止まれっての‼」

 

 アリスベルと静刃は必死にタクトを止めてブレーキをかける。ブレーキがかかったフレッチャ歩兵戦闘車はブレーキ音を響かせながら止まろうとする。猛スピードを上げていたためか中々止まることなく真っ直ぐ進んで行く。

 

「うん…これまずい」

「みんなでタクトを止めるぞ‼」

 

 さすがに世界遺産にツッコむのはまずいとセーラと貘も加わりタクトを止めてブレーキを踏む。やっとスピードが落ち着いて行き、サン・ピエトロ大聖堂広場の中央にある建築物、バチカン・オベリスクにぶつかって止まる。思い切りぶつかったのだが、オベリスクは倒れることはなかった。ぶつかったことに静刃とアリスベルはギョッとするが事なきを得てほっと一安心した。

 

「た、助かった…」

「静刃くん、まだ戦いはこれからですよ…って何か聞こえますね…」

 

 ハッチから出て外の様子を見た静刃とアリスベルの安堵を打ち払うかのように遠くからフェラーリが物凄いスピードで来るのが見えた。

 

「ちょ、ちょ、ナオト、スピード出し過ぎでしょ‼」

「お前程じゃねえよ。やっと追いつたー…」

 

「お前等安心してる場合じゃねえよ!?このまま行くと戦闘車にぶつかるっての‼」

「は、はやくブレーキ‼」

 

 車内で騒ぎだすカズキ達にナオトはやれやれと一息ついてブレーキを踏む。喧しいぐらいのブレーキ音を立てながらフェラーリは止まりだす。フェラーリは戦闘車にゴンとぶつかって止まった。その衝撃でバチカン・オベリスクが揺れたのを見た静刃とアリスベルは全身に冷や汗が流れる程に戦慄する。

 

「せ、せ、静刃くん…!」

「あ、慌てるな…と、止まれ‼倒れるな!」

 

 静刃の願いが通じたのかバチカン・オベリスクは倒れはせずに揺れが止まった。ほっと一安心したのも束の間、遠くから金色の大きな生物が駆けてきているのが見えた。

 

「カズキ、ナオト、たっくん!やっと追いついたぜ‼」

 

「おお、ケイスケ‼それにリサも!」

「これで面子は揃ったな!」

「大集結…」

 

 外に出ていた3人は喜んで手を振る。金狼が高い所から飛び降りて着地をするとずしんと揺れた。その衝撃で戦闘車が少し前へコツンとバチカン・オベリスクに当たる。するとサン・ピエトロ大聖堂広場の中央で、目印であるバチカン・オベリスクは大きな音を立てて倒れて行った。

 

「」

 

 カズキ達が集結したことを喜んでいるのに対し、静刃とアリスベルは白目で倒れたオベリスクを呆然と見ていた。

 

「や、やっぱりやらかしやがった…」





 さすがにサン・ピエトロ大聖堂を崩壊させたらたっくんのおかんもそりゃ無理だと首を振るのでオベリスクで…え、それでもダメ?

 黒幕もローマを破壊する気満々だし、いいよね!

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