カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼   作:サバ缶みそ味

67 / 142
 ここでクエスさんが戦うことになってるけども…赤松さんは緋弾の方でクエスさんを登場させるのかしら…蝶を操ったり魔力を奪う能力だからこんな感じかなと独自展開でお送りいたします…

 


67話

 静寂な夜のローマの道路を黒のメルセデスベンツが猛スピードで駆け抜ける。ただ蛇行したり、建てられている標識や街灯にぶつかりそうになったり運転がおぼつかない。それもそのはず、人生で初めてハンドルを握るカズキが運転をしていた。

 

「だからなんで雨でも降ってねえのにワイパーを動かしてんだよ!?」

「違うってば!曲がる所をウィンカー入れようと思ったらなんかパーって動いてんだもーん!」

「というか余所見しないで運転して!?ああっ‼またぶつかるっ!?」

 

「どうして運転代わったのよ…目的地に着く前に事故が起きそうなんだけど…」

 

 助手席でカツェがツッコミを入れ、ナビをするはずのワトソンは顔面蒼白に慌てだし、クラエスは遠い目で騒ぐ彼らを見つめていた。

 

 というよりも何故ケイスケが運転をカズキに交代させ、鵺と共にクエスと戦うことにしたのか。カズキ曰く、対獣人専用の道具があるとか、鵺たちのサポートをできるのはケイスケしかないとか。彼等チーム間での信頼があるからこそ交代したのだと思いたい。

 

「あぶねっ!?また街灯にぶつかりかけたぞおい‼」

 

「あれっ?おっかしいなー…マリオカートや頭文字Dならドリフト得意なんだけど」

「ゲームじゃないからね!?ほら余所見しないで真っ直ぐ見てよ‼」

 

「そういえば…リサっていう子が乗ってないわね…?」

 

 クラエスは気づいた。彼らのメンバーの一人であるリサという少女はこの車に乗っておらず、姿が見当たらない。そんな彼女の心配にカズキはニッと笑って振り向く。

 

「リサならちょっと()()してるんだ。すぐに追いついてくるぜ!」

 

 準備とは一体何なのか、クラエスは首を傾げた。彼女は戦闘向きでもないし、寧ろ後ろでサポートする方だと思っていたのだが遠方からの狙撃が得意なのだろうか。そんなクラエスの疑問を他所にカツェは少し引きつっていた。

 

「準備って…お前、まさか…」

「カズキ‼後ろを向かないで前を見て‼ほら、ぶつかるってば!」

 

___

 

 一方、ケイスケ、鵺、ヒルダはクエスと激闘を繰り広げていた。クエスが操る魔力を持った蝶が群れをなして3人に襲い掛かる。触れれば魔力や生気を奪われ、当たれば鉄が凹むほどの衝撃を受ける。

 

 ケイスケはポーチからすぐさまTH3焼夷手榴弾をピンを抜いて蝶の大群へと放り投げる。TH3焼夷手榴弾は爆音と爆炎を放出させていき蝶の大群を一気に焼き尽くす。サーメートの炎を避けるように飛んできた蝶達はヒルダが放つ紫色の雷球に巻き込まれて焼き焦がしていく。

 

 放たれた雷球のいくつかはクエスへ向かって飛んでいく。クエスは蝶を盾にしながら躱してヒルダへと迫る。猛獣の様な鋭い爪を振るおうとするが一気に迫ってきた鵺の蹴りに阻まれる。鵺は戦闘狂の様な笑みをこぼして両手から鎌鼬を放つ。クエスは下がって距離と取ると片手で一つずつ鎌鼬を打ち払った。

 

「ケイスケ‼今だじょ‼」

「おうよっ‼」

 

 鵺の大声に答える様にケイスケはM67手榴弾をクエスへと向かって遠投した。目の前まで飛んできた寸前に蝶で盾にして防ごうとするが爆発と共に飛んできた破片がクエスの体に突き刺さる。

 

 手応えがあったとケイスケは見据えた。しかし、黒煙が一気に吹っ飛んで見えたのは傷がみるみるうちに自然に癒えていくクエスの姿。ケイスケは舌打ちして睨みつけた。

 

「くそっ…あいつもリジェネ持ちかよ。めんどくせぇ」

 

「街中の人間の生気を奪っているからな。その力を再生能力にむけているようだじょ。まだ焼夷手榴弾があるなら遠慮なく投げつけてやれ」

「任せろ。あと5個ある」

「いやあなた武偵でしょ!?容赦ないわね!?」

 

 遠山キンジやアリアとは違って完全に殺す気でいるようなケイスケに思わずヒルダはツッコミを入れた。そんな3人のやり取りを見ていたクエスはクスクスと笑う。

 

「賑やかな人達ねぇ…でも、さっきから蝶を燃やしてくる輩は目障りだわ」

 

 殺気を込めて睨み付けたクエスは蝶の群れを標的をケイスケに絞って向かわせ、自分は鵺へと襲い掛かる。勢いよく飛んできた蝶の大群に焼夷手榴弾を投げようとするが、別方向からも蝶の大群が迫ってきていた。

 

「くそっ‼こっちからも来てたのかよ‼」

 

 舌打ちをするケイスケは手榴弾を使うと此方も巻き添えになる距離まで迫ってきた蝶の大群に向けてM4を撃ちだす。何匹か撃ち落としていくが放つ弾数が蝶の大群に追いつかず段々と近づいてきた。目の前まで迫りくる寸前に紫色の電光が放射状に放電された。蝶の群れが焼き尽されるとケイスケの前にヒルダがひらりと降りて来た。

 

「全く、獣人同志の戦いによくついてくるわね…」

 

 ヒルダはやや呆れ気味にケイスケを見る。正直チートじみた戦いをする遠山キンジとは違う戦い方をするケイスケには驚いていた。しかしこれといった特殊な力がないためかヒルダはサポートの方に回っている。自身に雷を打ち付けより強力な力を得れる『第3態』になって戦った方がより有利になれる。

 

「けれど…電気が足りないわ」

 

 ヒルダの能力は雷を操る能力だが、強力な雷球や放電、そして『第3態』になるためには町から電気を奪う必要がある。かなりの量を消費するため、クエスとの戦いでかなり消費するだろうしその次に控えているシディアスとの戦いにもあるのであまり奮発して使いたくない。鵺はそれならケイスケ達の力も借りればいいといっていたがこの男に渡り合える力があるのか半信半疑だった。

 

「電気か…いいこと思いついた」

 

 ヒルダの話を聞いたケイスケはニヤリと好戦的な笑みをこぼした。

 

 一方、鵺とクエスは爪や魔力を込めて放つ鎌鼬やらと激しい攻防が行われていた。距離を詰めて迫ってきた鵺の横から蝶の群れが飛んでくる。鵺は集るハエを打ち払うかのように片手で真空破を放った。蝶は一気に粉微塵になるが、鵺の視線が蝶に向けられていた隙にクエスの貫手が突かれる。鵺は咄嗟に両腕で防ぎ押されるが、クエスに対してギラリと鋭い歯を見せて笑う。

 

「ケケケ…おっとりとした見た目に反して随分と戦闘狂のようだな。そうやって油断した相手を騙し討ちしてきたのか?」

「ふん、よく言われるわね。でも騙される方が悪いのよ?」

「おうおう、よくもまあぬけぬけと…この鵺を騙した罪は重いじょ。そのでかい尻尾を引き抜いて狸鍋にしてやる!」

 

 鵺は殺気を込め、更にスピードを上げてクエスに襲い掛かる。迎え撃つクエスは鵺の爪や鎌鼬を蝶を盾にして防いでいく。未だにクエスに一撃を加えられていないと鵺は苛立ちを見せた。

 

「この糞狸‼こっちを見やがれ‼」

 

 鵺との激闘を繰り広げている所へケイスケが怒号を飛ばし走りながらM4を撃ってきた。クエスはチラ見しただけでただただ目障りだと鬱陶しく感じ、蝶の群れを仕向けた。

 

 それを待っていたかのようにケイスケはTH3焼夷手榴弾を2個投げつけた。焼夷手榴弾が爆発して放たれるサーメートの爆炎に蝶の群れは巻き込まれ、炎の手はクエスへと近づいてきた。汚らわしいものを払うかのようにクエスは振り払う。

 

「鵺!消火栓へ蹴とばせ‼」

「何を考えているか分からんが…任せろ!」

 

 ケイスケの指示に鵺は隙を出しているクエスを思い切り蹴とばした。直撃したクエスはそのまま少し古い消火栓へ直撃する。壊れた消火栓から勢いよく水が噴き出し、羽ばたいている蝶達やクエスを濡らしていく。しかし蹴とばされ消火栓に直撃したクエスには全くダメージが通っていないようだった。

 

「ふふふ…こんなんで倒せると思ったのかしら?目障りで生意気な小僧が。やっぱり真っ先に貴方から殺しておくべきかしら?」

「そんなんで倒せるわけねえし。ま、思い切り慢心してくれて作戦通りうまくいったけどな」

 

 一体何を言っているのかクエスは訝し気に睨む。その時、ふつりと街灯や屋内の電気の明かりが次々に消えていった。そして上からバチバチと電気が弾く音がした。まさかと見上げると真上の上空でヒルダが小さな黒翼を羽ばたかせながら片手を上げて巨大な雷を起こそうとしていた。

 

「知ってるだろ?水道水ってのは電気を通しやすいんだぜ?」

「貴様っ…‼」

 

「…堕ちろ」

 

 ヒルダはサディスティックな笑みを浮かべて巨大な雷を放った。クエスは蝶の群れと共に紫色の閃光に呑まれていった。放電する電気の音が激しいため悲鳴すらかき消していく。ケイスケと鵺の前にパタパタと小さな黒翼を羽ばたかせながら降りたヒルダは満足したような笑みを見せるが、思った以上の威力に流石のケイスケも引き気味だった。

 

「うわー…マジでえげつねえな」

「当然よ。この私をコケにしたのだから。これぐらいやっておかないと」

「獣人は簡単に死なないから安心するじょ。ま、助かったとしても丸焦げだけどな」

 

 『第3態』をしない代わりに街の電力をフルに吸収して放った雷電の威力はかなりのもので水に濡れた電灯も通路のレンガも焦がしていく。すこしやりすぎではとケイスケは引き気味に苦笑いをした。

 

 突然、未だに紫色の閃光を放っていた雷電が破裂した風船のように打ち消された。ケイスケ達は目の前で起きた事に驚愕するが、鵺とヒルダはケイスケとは別の反応をしていた。かき消えて発生した煙と一緒に何かが漂っているのが見えた。

 

「あれは…鱗粉?」

 

 空中に漂う赤褐色の粉塵は蝶や蛾の羽根につている鱗粉のように見える。その粉塵はケイスケ達の方へと漂いだす。

 

「ケイスケ、無暗にあの粉塵を吸うんじゃないぞ。間違いなくヤバい事になるじょ」

「ヤバイって、あの狸の仕業か!?」

「少しまずいわね…クエスの奴、『第3態』になったわ」

「なんだよそれ!?あいつデスタムーアだったのか!?」

 

 思わずカズキやタクトと同じようなリアクションをとってしまった。立ち込めていた煙が消えてクエスの全貌が見えてきた。先ほどの赤いドレスとは打って変わってアゲハチョウの羽根のように色鮮やかなドレス、綺麗なドレスに反する様に狸の様な獣の耳、鋭く伸びた犬歯と爪、狂気を込めた妖艶な瞳と凶暴さも感じられる。そして彼女の周りには赤褐色の粉塵が自我を持っているかのように渦巻く。

 

「本来、獗は無駄な労力を使わず獲物をしとめるためにあの手この手と騙して苦しめて、生気や魔力を奪ってから戦うのだけど…まさか私をここまで本気にさせるなんて、随分となめた事してくれたわねぇ…‼」

 

 先程の穏やかさが何処かへ行ったかのように怒りを込めて手から赤褐色と黒色が混じった粉塵の様なものが勢いよく放たれた。

 

「げえっ!?あれは流石にマズイっ‼」

 

 ギョッとした鵺は咄嗟に右目を緋色に光らせ極超短波増幅砲こと緋箍を放った。粉塵と緋色の閃光が相殺するようにぶつかるが、クエスの方が力を勝っているのか段々と押されていった。

 

「っ‼貴方は離れていなさいっ‼」

 

 危険を察知したヒルダはケイスケを押し飛ばす。押し飛ばされたケイスケは難を逃れたのだが、鵺とヒルダは鱗粉の粉塵に巻き込まれた。粉塵の波が通り過ぎるとそこには鵺とヒルダが力を奪われたかのように倒れていた。

 

「鵺、ヒルダっ‼てめえこの野郎…‼」

「ふふふ…次は貴方の番よ?」

 

 相手を見下す様に嘲笑うクエスに対し、ケイスケは反撃しようとしたが周りに漂う粉塵に着火し粉塵爆発を起こしかねないと気づき銃を降ろす。彼女達を助けつつクエスを苦しめる方法は一つしかない。ケイスケは意を決して片手で腰につけているポーチの中身を探る。

 

「銃を撃たない貴方に何ができるのかしら?ナイフで斬りつける?その前に…お前の首を切り落としてやるわ」

 

 クエスは舌なめずりしながら、爪をケイスケへと向けて近づいてきた。ケイスケは相手がギリギリの距離まで来るの待った。

 

「あるさ…獣人であるお前を苦しめるなら手はあるぜ‼」

 

 ケイスケはすぐさまポーチから黄緑色の液体が入った小瓶を取り出してクエスへ投げつけた。飛んできた小瓶をクエスは爪で割る。しかし割れた小瓶から黄緑色の煙が目の前で巻き上がる。

 

「なっ…これは…うぐっ!?く、くっさぁぁぁぁぁぁっ!?」

「ざまあみろ‼獣人であるてめえならこんだけの『ゲロ瓶』でも効果覿面だろ!」

 

 ケイスケはざまあみろと中指を突き立てる。嗅覚や視覚がより優れている獣人ならともかく更に獣人の能力を引き上げる『第3態』は『ゲロ瓶』から発生される悪臭と煙により敏感になる。案の定、悪臭が鼻に入り、目には強烈な煙が入ったクエスは声にならない悲鳴を上げてのた打ち回っていた。

 

「で…でかしたじょ、ケイスケ!ごり押しの緋箍をくらえ!」

 

 フラフラと立ち上がった鵺は鼻をつまみながら、無理やり気味に緋箍をもう一発放った。のた打ち回るクエスに直撃し爆発を起こす。撃ち終わった鵺はバタンキューと仰向けに倒れる。

 

「よし、流石にこれで…」

 

 これで倒したろとケイスケがいい終える前に煙からクエスが飛び出してきてケイスケの首を掴み持ち上げた。クエスの瞳にはもう穏やかさが消え、狂気と怒りで満ち溢れていた。

 

「この…下等な人間風情がぁぁぁっ‼獗である妖をここまでコケにしてきたのは貴方が初めてだわ‼貴様の生気なぞもういい、このまま殺してくれるわ‼」

 

 クエスは怒りまかせにケイスケの首を絞めていく。すぐにでも首の骨が折れそうなのに、すぐにでも首が引きちぎられるかもしれないのに、ケイスケは苦し紛れに笑っていた。

 

「何がおかしい…‼」

 

「お前も…バカだなぁ…こんな日に大層なことをしなきゃよかったのに」

 

 死ぬ間際にトチ狂ったのかと思っていたが、ケイスケはクエスを無視して話す。

 

「なんたって…今日は()()だからな」

 

 一体何のことかと訝し気に睨む。その瞬間、狼の遠吠えの様なものが響き渡った。そしてクエスの目の前に疾風のような勢いで金色の巨大な何かが駆けつけ、クエスをぶっ飛ばした。強力な一撃をくらいつつも起き上がったクエスは視線の先にいるものを見て驚愕した。

 

「金色の狼‥‥まさか、ジェヴォーダンの獣!?」

 

 美しく輝く金色の毛並みを靡なびかせる巨大な金狼、妖の中でも最強クラスの『百獣の王』であるジェヴォーダンの獣がケイスケを守る様にしてこちらを睨み付けていた。ケイスケは安堵してに金狼を優しく撫でる。

 

「サンキュー…助かったぜ、リサ」

 

「おお…すっげえ激レア。まさかジェヴォーダンの獣を手懐けていたとはな」

「というか…あいつら、いつの間にリサの秘密を…しかもあの子積極的だし、あいつら何をやったのよ」

 

 グロッキーながらも鵺は面白そうににやつき、ヒルダは驚愕していた。あの戦闘を嫌うリサが金狼になってでも戦おうとしていた。彼らが彼女の何を変えたのか、ヒルダは分からなかった。

 

 リサはこの戦いはカズキ達の力になって戦いたいと感じていた。『教会』でクエスの侵入、危険を察知できなかったこと、力にもなれずただお荷物となっていたことを悔いていた。国の危機にも匹敵する程の戦いに自分も力になりたいと、意を決して金狼となってカズキ達を手助けすることを決めたのだった。金狼はケイスケの頬を舐めると襟を軽く甘嚙みして背中に乗せた。

 

「ああ…一緒にあの狸を懲らしめるぞ!」

 

 金狼は声高く吠え、勢いよくクエスへと迫った。

 

「ありえない…‼こんな奴らに金狼が…ジェヴォーダンの獣が味方になるなんて…‼」

 

 クエスは咄嗟にケイスケと金狼に向けて先ほどよりもより強大な粉塵を放った。しかし金狼は怯むことなく、勢いよく咆哮を放つ。霧を晴らすかのように粉塵は吹き飛び、更にはクエスの周りに漂っていた粉塵もかっ消していく。更にもう一発咆哮を放つ。それは衝撃波かのように勢いよく飛び、クエスに直撃する。

 

 直撃して建物へと激突したクエスはフラフラと起き上がる。今まで奪ってきた魔力や生気が一気に吹き飛ばされたかのように力が無くなっていた。気が付けば目の前に金狼が、金色の毛並みを靡かせて睨んでいる。

 

「リサ…お手」

 

 ワン‼と大きく吠えたと同時に大きな前肢でクエスをぶっ飛ばした。高く飛ばされたクエスを見てケイスケは大きく息を吐いた。

 

「ふー…すっきりした!」

 

 これまで溜まっていた鬱憤が吹き飛んだ気分でケイスケはほっと一安心した。しかし、あれでも獣人はタフ。また隙を狙って反撃してくるかもしれないと思ったケイスケは金狼とともに吹っ飛ばされた先へと向かった。

 

 向かった先にクエスはうつ伏せに倒れていた。しかし、少し変わった所は体が縮んでいたということ。妖艶な姿とは違って幼い子供の姿に。化けているのかと警戒していたが、クエスはよろよろと思い頭を上げた。

 

「こ、こにょ…お、覚えていなしゃい…魔力が戻ったあかちゅきには…必ずあなた達を殺してあげりゅわ…‼…キュー」

 

 そしてよくアニメや漫画にあるグルグル目になって気を失った。果たしてこのままほっといていいのかとケイスケは戸惑う。

 

「獗は魔力や生気が空っぽになると幼子の姿になる。此奴の場合は何百年も生気や魔力を奪って贅沢してきたんだ。元に戻るには…何百年後先になるじょ」

「散々奪ってきたんだから、自業自得ね…ま、しばらくは悪さはできなくなるからほっといても大丈夫よ」

 

 鵺とヒルダはお互い肩を組みながらケイスケとリサの下へ来た。これでクエスは大人しくなるのならもう追撃する必要はない。ケイスケはリサを撫でる。

 

 

「リサ、ありがとな。これもお前のおかげだ」

「貴方、彼女をどうやって手懐けたのよ。金狼は凶暴で大暴れするはずなのに…」

 

 ヒルダは興味津々にケイスケに尋ねた。『たっくんの厨二パワーで落ち着かせた』とでしかナオトは言ってくれなかったのでケイスケは苦笑いしてその場を流した。

 

「まだ終わっておらんじょ。後は【究極魔法・グランドクロス】。まだまだ戦う必要がある。ジェヴォーダンの獣よ、力を貸せ」

 

 鵺の言葉に答える様に金狼は高く遠吠えをする。そしてヒルダと鵺を乗せて勢いよく駆けた。タクト達が向かっているサン・ピエトロ大聖堂へと駆け抜けていく。

 

___

 

 

「狼の遠吠え…お前、どうやってジェヴォーダンの獣を味方にできたんだよ!?」

「すべてはたっくんのおかげ!」

 

 狼の遠吠えを聞いたカツェはギョッとしながらカズキに尋ねる。眷属や師団ですら恐れる『百獣の王』をどうやって味方につけたのか、この騒がしい4人組の底力がよく分からなくなってきた。ドヤ顔するカズキは直線の進路なら慣れたのかアクセルを思い切り踏み込み猛スピードでメルセデスベンツを走らせる。

 

「よ、よし…これならたっくん達に追いつくよ‼」

「ワトソン、敢えてカズキが運転しやすような道を選んでくれたのね…」

 

 ワトソンはやつれ気味に地図を持って大きくため息をつく。そしてその苦労を目の当たりにしたクラエスは生優しい眼差しで見つめた。

 

「よーし、これで一気に大聖堂へダイレクトアタックだぜ‼」

「いやお前もそれだけはやめろよ!?…って、カズキ、気を付けろ‼」

 

 カツェはツッコミを入れるが車の通路の先を見た途端、カズキに注意するよう呼びかけた。その先には待ち構えていたかのように武装集団が銃を構え一斉に撃ってきた。カズキは咄嗟にハンドルを回して正面から当たらないように車を横に向ける。

 

 待ち伏せしていた武装集団の真ん中には赤と黒の模様のフェイスペイントをした禿頭の男、シディアスが雇った殺し屋モールが待ち構えていた。

 

「ちっ…あの野郎、この先へは行かさねえってか‼なめやがって、やってやろうじゃねえか!」

「カズキ、ここは僕とカツェが‥‥」

 

 ワトソンとカツェが外へ出て撃って出ようとするが気づけば陰から潜んでいた敵に囲まれていた。このままだと一斉掃射でハチの巣になり兼ねない。

 

 そこへバイクのエンジン音が大きく響いた。気づけばトリエラを乗せて大型バイクを走らせるナオトが駆けつけて来たのが見えた。トリエラは勢いよく跳んで着地した後、ウィンチェスターM1897を撃ち、殴り、ナオトはバイクを走らせて囲っている敵を蹴散らしていく。

 

「ナオト、トリエラちゃん‼追いついたんだな!」

 

 カズキはほっと一安心して喜んでいるが、肝心のナオトとトリエラは逆にカズキよりもほっと一安心して喜んでいた。

 

「やっと合流できた」

「いやー…人生で初めて迷子になったわ」

 

「まだ迷子になってたのかよ!?」

「トリエラなら迷わないと思ってた私がバカだったわ…」




 どうしても金狼を再登場させたかった(オイ

 原作ではこの冬の時期にリサは金狼になってたし…満月限定だしいいよね!(白目
 ちょっと無理矢理感がするけど…一歩踏み出したという事で‼(視線を逸らす) 

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。