カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼   作:サバ缶みそ味

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 今回はカオスさもハチャメチャさも全くありません…
 ただただ日常的なお話です(たぶん)
 


47話

「…解せぬ」

 

 セーラ・フッドは不満そうに口をこぼした。なぜ自分はこの男に連れて行かれているのか、何故こちらの意見を聞かずにこうも連れまわすのか、セーラはジト目で隣で歩いている男、菊池タクトを睨む。

 当の本人であるタクトはセーラの思考を無視して鼻歌を歌いつつ、辺りを見回しながら歩いている。ジト目で見ているセーラに気付いたタクトはニッと笑う。

 

「セーラちゃん、どったの?あれか長い時間飛行機に乗ったから酔った?」

「違う。なんで私までお前の両親のお呼ばれについて行かなきゃならないんだ」

 

 セーラはムスッとしてタクトを睨む。しかしタクトは首を傾げるので、ため息をついて諦めるしかなかった。タクトとセーラは北海道が旭川市の街中を歩いていた。タクトの両親に呼ばれ、どういう風の吹き回しかタクトはセーラを呼んで北海道に来たのだった。タクトは携帯のメールを見てニシシと笑う。

 

「カズキ達はリサを連れて札幌市内を観光してから旭川に来るってさ。俺達は先に実家に行こうか」

「お前達、謹慎中なんじゃ…」

 

 セーラは呆れて肩を竦める。この4人を束縛するものはないだろうと心なしか思えてきてしまった。そんな時、二人に向けてクラクションが軽く鳴った。すぐ近くに銀色のプリウスが停まり、開いた窓からひょっこりとタクトの父親である菊池雅人がにこやかに手を振ってきた。

 

「タクト、こっちだ」

「父ちゃーん‼迎えに来てくれたんだ!」

 

 タクトは遠慮なくすぐに乗り込み、セーラは恐る恐る乗り込む。雅人はプリウスを運転しながらタクトに学校はどうだとか、友達とは仲良くやっているのか、友達に迷惑かけてないかといった、普通な会話をしていった。至って普通なのでセーラは恐る恐る核心を尋ねた。

 

「なんでタクト達を呼んだの…?」

「ああやっぱり気になる?母さんの思い付き」

「母ちゃんすげー!」

 

 何か考えがあっての呼び出しかと思いきや、ただ単にタクトの母親の思い付きで呼んだということにセーラはずり落ちそうになった。

 

「正直な所、俺も母さんも12月と年末年始が忙しくなってさ。じゃあこの際だから母さんの誕生日で盛大に祝おう、と母さんが思いついた次第だよ。まあ僕に関しては公安の連中の目くらましになるし、ざまあみろってところなんだけね」

 

 セーラは半分納得した感じに頷いた。タクト達がアメリカの機関ロスアラモスと戦ったことで公安は更に目を付けるようになったとジョージ神父から聞いた。菊池財閥の力で公安の監視は抑えられているようだが、中には約束を破って秘密裏に探っている者(獅堂)がいるようだ。そうしているうちに市街地を抜け、一面広大な山と畑の大地が広がってきた。タクトと雅人が仲良く話しているのを他所にセーラは外の景色をずっと眺めていた。

 

「さ、我が家に到着だ」

 

 山の麓をバックに広大な土地に立つ武家屋敷のような家に到着した。ガレージに駐車され、タクト達は車から降りる。

 

「タクト、カズキ君達はいつ頃旭川駅に到着する予定だ?」

「うーん、たぶん15時ぐらい」

 

 そんな日常的な会話をして玄関へと向かっていると、玄関の戸が荒々しく開き、そこから黒い革ジャンを羽織り、黒いスーツを着て、茶色のサングラスを付け、煙草を咥えた茶髪の女性がゆっくりと出てきた。物凄いインパクトでセーラはギョッとするが、タクトは大喜びで女性に駆け出していく。

 

「母ちゃーん!ただいまー‼」

 

 女性は無言で無表情でタクトを見つめていたが、タクトが近づいてくるとへにゃりとにっこりしだしてタクトに抱き着いた。

 

「お帰り、バカ息子ー‼」

「いやっふぅぅぅっ‼」

 

 先程の威圧がふっとび、親バカのオーラ丸出しになったことにセーラはポカンとした。恐らくあの女性がタクトの母親で菊池財閥のボス、菊池更子。カズキ達がタクトの母親はサラ・コナーに似ていると言っていたがその通りに見えた。

 

「タクト、すこし背ぇ伸びたか?成績は上がってるかい?あとそれから…」

「ふははは、漆黒の堕天使は常に成長しているぜ‼」

 

「…更子?なんか焦げ臭いんだが?」

 

 水を差すように雅人が玄関から匂う焦げた臭いが気になって聞いてみると、更子が「あ」と口をこぼしドヤ顔で話した。

 

「忘れてた。ケーキ作ってる最中だったけど、漆黒のケーキになってしまったようね」

「ようは丸焦げじゃないか!?ケーキとかは僕が作るってあれほど言ったのに!」

「母ちゃん、チャーハンだけはうまいのにねー」

 

 それは余計だと更子はニコニコとタクトの額に軽くデコピンをする。それどころじゃないと雅人が猛ダッシュで玄関へ入り、キッチンへと向かった。そんな雅人を他所に更子は煙草をふかせながらセーラの方を見る。

 

「タクト、あの子は…あれかい?」

 

 更子はニヤニヤしながら小指を立てて動かす。タクトは首を傾げているが、セーラは顔を真っ赤にしてプンスカと怒り出した。

 

「違う!無理矢理連れてこられただけだ!」

 

「おばあちゃーん!タクトが女の子連れて来たわー‼今日はドンペリよー‼」

 

 セーラの話を無視して更子は大喜びで家の中へと走り込んでいった。この息子といい、両親といい、どうして菊池家の人間は人の話を聞かないのだろうか、セーラはため息をついて項垂れる。

 

「そんじゃ、ゆっくりしていってね!」

 

 全く理解していないタクトは満面の笑みでセーラを家へと向か入れた。菊池財閥の実家と聞いて高級そうな所かと思えば庶民的で素朴な感じだった。ただ枯山水のような中庭、いくつものある畳の部屋と中々な物もである。キッチンと思える場所では更子が雅人に赤飯作れとああだこうだ言っているのが見えた。

 

「あらタクト、お帰り」

 

 廊下を通っていると襖が開いている和室から藤色の着物姿の白髪交じりの女性がニコニコとタクトを見ているのに気づいた。タクトはにっこりとして手を振る。

 

「おばあちゃん、ただいまー」

 

 セーラはこの人がタクトの祖母なのかと見ていたが、ふとタクトの祖母の部屋に偃月刀や金棒、M60やG8やらが飾られているのを見てギョッとした。この人もタクトの両親と同じようにとんでもない人物なのかと焦りだす。タクトの祖母はこちらにおいでと手招きをした。

 

「タクト、友達と仲良くやってる?」

「もちの論!とっても仲良くやってるぜ!」

 

 仲良くやってるどころか仲良くやらかしているとセーラは心の中でツッコミを入れた。それでも両親も祖母も同じようにタクトの学校生活がどうなっているか、親として心配してるのだなと感じた。そうセーラが感心してるとタクトの祖母はセーラの方をにっこりと見つめてきた。

 

「こんな別嬪さん連れて来て…おばあちゃん、もっと長生きしなきゃね」

「ばあちゃんなら200歳も長生きするって」

 

 前言撤回である。菊池家の人は皆、思い切り勘違いをしている。そして連れてきた当の本人はその意味を全く理解していない。セーラは何とかして弁解しようとしたのだが、そこへ更子が割って入ってきた。

 

「おばあちゃん!今夜は鍋よ、赤飯よ、お酒解禁よー‼ちょっと酒の肴買ってくる!」

 

 ドンペリ片手に、飲みながらハイテンションである。エプロンつけた雅人とタクトが「飲酒運転はやめて!」と必死に止めようとしていた。静かな和室が一気に騒がしくなった。菊池家の人間は何時も騒がしいのかとセーラは呆れた。

 

「あれ?おじいちゃんは?」

「そういえば今朝から見当たらないのよね。雅人さん、純次は何処へ行ったのかしら?」

「み、光子さん、えーと純次さんは…札幌へ…」

 

 雅人がそう言うと、ピシリと空気が凍り付いた。更子もタクトも騒ぐのをやめ、ピタリと止まる。タクトの祖母、光子がニコニコしながらメリケンサックを握りだした。光子から黒い怒りのオーラが漂っているのがセーラにも何となく見えた。

 

「まったく、あの人ったらタクトが帰って来るのに女遊びでもしてるのかしら…うふふ」

「うちのばあちゃん、漆黒の年寄って呼ばれてるからねー。怒った時が怖い」

「漆黒の年寄…?」

 

 タクトが冷や汗をかきながらセーラに話した。セーラは『漆黒の年寄』と聞いて、ふと思い出した。昔、イ・ウーで未だ下っ端の生徒として活動していた時、主戦派の壮年のOBから『漆黒の年寄だけは怒らしてはいけない』とガクブルしながら話していた。まさかこのタクトの祖母がイ・ウー主戦派で恐れられている伝説の漆黒の年寄というのか、セーラは気になりだした。

 

「ただいま~!あっ、タクトおかえりー」

 

 そんな時、日焼けた肌の白髪と少し顎髭の生えた男性がニコニコしながら和室に入ってきた。この呑気ににこにこしている男性が間違いなくタクトの祖父だとセーラは瞬時に理解した。何故ならタクト達よりも速く、光子がその男性の胸倉をつかんでいた。

 

「あら純次さん、お帰りなさい。どこへ行ってたのかしら?」

「いやー、いい男でゴメンねー。ちょっと女遊びに…」

 

 言い切る前に光子がメリケンサックで殴りかかろうとしていた。雅人は必死にそれを止めた。

 

「光子さん!?それはタンマ!セーラちゃんの目の前でメリケンサックはダメだって‼」

「そうよお母さん。せめてグーで腹パンよ」

 

 それもダメだと雅人は更子も止めた。やっぱりこの菊池家の人間はハチャメチャすぎるとセーラは改めて感じた。純次はニコニコしながらセーラの方を見る。こんどはお前かとセーラは項垂れる。

 

「君カワイイね。12か13か14か15ぐらい?」

「‥‥」

 

 祖父の空気の読まなさと母と祖母のハチャメチャさと父の誠実さと中二病が混ざってできたのがこのタクトだとセーラはジト目でタクトを見る。そのあとタクトの祖父は祖母のキャメルクラッチをくらって悲鳴を上げていた。

 

__

 

 それからしばらくしてカズキ達が旭川に着いたとメールが来ていたので雅人が迎えに行き、純次はまたふらっとどこかへ行ってしまった。タクトとセーラは日の当たる縁側でのんびりとしていた。タクトはうたた寝をし、セーラはまさか自分がこんなに静かな場所で束の間の休息を取れるとは思いもしなかった。そんなとき更子が煙草をふかしながらお酒片手にやってきた。

 

「小さな傭兵さん、戦役の方はどうなってるのかしら?」

 

 更子が先程と違ってやや真面目な目で戦役の話をしだしたのでセーラは少し身構えた。

 

「そう焦らなくていいわ。菊池財閥は海外へ更に足を伸ばそうと思っててね。昔のコネもあるし、仲良くしたいのよ」

 

 一体何処と仲良くしたいのか、イ・ウーか、藍幇か、魔女連隊か、それとも別の組織かセーラは思考を張り巡らす。更子はニコニコしながら煙草をふかす。

 

「ま、そこら辺は私達で何とかするわ。『颱風のセーラ』、戦役が終わったらどうするの?」

「…その辺はまだ決めていない」

 

 今でもジョージ神父に雇われており、戦役が終わるまでか、あるいはその先か、いつになったら契約が解消されるのか分からない。そして何より自分の名が菊池財閥に、そのボスに知られていることに警戒しだす。

 

「もしその後フリーなら、菊池財閥の一員として正式に雇いたいわ」

 

 絶対に言ってくるとセーラは予想していた。航空機や装甲車、武器をほいほい出せたり、あれやこれやと出せる程の財力は確かに凄い。しかし、首を縦に振ればこのおバカ(タクト)の相棒にされるかもしれない。セーラはそのまま沈黙して更子を見る。更子はニコニコして頷いた。

 

「答えはいつでも待つわ。でも願わくばこの子が1人になった時、傍にいてほしいわ」

「どうしてそこまでして…?」

 

 この騒がしい馬鹿4人がバラバラになって1人になることはないだろう。なぜ自分なのか疑問に思ったが、更子はニシシと笑う。

 

「誰しも無敵だったと思う中二病の精神を忘れ、大人になる。親は誰だって子供の将来を心配するのよ。それにこの子は寂しいと死んじゃうし」

 

 お前の息子はウサギかとツッコミを入れた。しかしこの菊池財閥は戦役と聞いて『色金』のことには全く興味なさそうに見える。ジョージ神父といい、菊池財閥といい一体何を求めて戦役に割り入るのか疑問に思った。そう深く考え込むと、光子が更子を呼んだ。

 

「更子ー、ちょっと台所が焦げ臭いわよ?」

「やっべ‼ローストチキンを焼きっぱなしだったわ!?」

 

 どうして料理を放り出して来たのか、やはり彼女も滅茶苦茶であるとセーラは呆れた。この後カズキ達を連れて来た雅人に正座されてこっぴどく叱られた。結局、盛大に祝うどころか鍋をしただけで菊池更子の誕生日は過ぎていった。

 

__

 

 北海道の菊池家で1か月を過ごし、謹慎期間と武偵活動禁止期間が解禁されてカズキ達は東京へと戻ってきた。祖父の純次がリサをナンパしたり、酔った更子がセーラに土下座して『どうかバカ息子を頼んだ』と言い出すし、光子がナンパする祖父を締め上げたり、雅人が胃薬を飲み干したり、やはり菊池家の人々は相変わらずハチャメチャだった。一部始終を見て来たカズキとケイスケは苦笑いしてタクトを見る。

 

「いやー、たっくんの家族は相変わらず元気だったね」

「久々に来てみて元気そうで何よりだな」

 

 肝心のセーラに至っては『もう二度と北海道に来たくない!』と涙目で言いだし、空港で別れた。更子に酒を飲まされるわ、光子や純次に早くひ孫の顔見たいとか言い出すし、彼女が一番大変だっただろう。

 

「母ちゃん達はまたセーラちゃんを連れて来てねって言ってたぜ!」

 

 そんな彼女の苦労を知らずタクトはにっこりとしてウキウキしていた。こればかりはカズキとケイスケもセーラに同情した。一方のナオトとリサは観光できたり、お土産を買えてご満足の様子。

 

「北海道、広い大地に豊かな自然…美味しいものがあったり、とても楽しかったです!今度は雪まつりを見てみたいですね!」

「…後は小樽にも行ってみよう」

 

 こちらはのほほんとしているのでカズキとケイスケは良しとした。しかし、まだやらねばならない問題がある。それは単位だった。

 

「長い間休んだ分、しっかり単位を稼がねえと留年にされるぞ」

「それでケイスケ、この短い期間で単位を稼ぐという事は…ジョージ神父に頼み込むんだな?」

 

 そうニヤニヤするカズキにケイスケは足蹴をする。絶対にジョージ神父に頼む込むと碌な事がないのはテンプレである。

 

「誰がするかよ。修学旅行・Ⅱでみっちり稼ぐぞ」

 

 修学旅行・Ⅱ、日常がサツバツナイトしている武偵高生達に用意した、毎年クリスマスに用事がない生徒達の為の修学旅行である。この期間で単位を稼ぐ生徒も多く、3年次に向けていい経験をすると言われている。

 2年生は東京の他、上海、香港、台北、ソウル、シンガポール、バンコク、シドニーの何処かを選ぶのだが、最近では希望者がいれば3年次に選べるヨーロッパやアメリカにも行けるらしい。

 

「藍幇の事もあるからな…アジア圏はダメだ」

 

 ケイスケは秋の修学旅行でココや呂布との戦いを思い出す。あの件で藍幇からは警戒されているかもしれないし、わざわざ敵地に向かう愚行はしない。そうとなれば何の情報もないオセアニアの方が安全であろう。

 

「シドニーだな!よっしゃ、カンガルーだぜ‼」

「いえーい!コアラー‼」

 

 カズキとタクトは大喜びではしゃぎだす。日本が冬ならばオーストラリアは夏、常夏気分をもう一度味わえるなら絶対に行きたいとウキウキしていた。これで修学旅行は決まりだとケイスケは満足して頷いていた。

 

「やあ、皆。丁度よかったよ」

 

 短い休息だったとケイスケは項垂れだした。振り向けばジョージ神父が手を振りながら愉悦な笑顔でやってきていた。ケイスケを覗く3人はにっこりとお辞儀をし、ナオトは無言で頷く。

 

「あ、ジョージ神父!お久しぶりです!」

「…これお土産」

「あれ?神父様、何処かへお出かけするところですか?」

 

 リサはジョージ神父が大きなキャリーバッグを引いているのを見て気になって尋ねた。ナオトからお土産を受け取ったジョージ神父はにこやかに頷いた。

 

「ああ、ドイツ教会から依頼があってね。これから出掛けねばならないんだ」

「ジョージ神父も引っ張りだこですねー」

 

 タクトは大変そうだなと見ているとジョージ神父はにっこりとしてカズキ達を見る。ケイスケはもう嫌な予感しかしなかった。

 

「実は…君達に手伝って欲しい事があるんだ」

 

「やったなケイスケ‼単位を稼げるぞ‼」

「ジョージ神父!俺達は何処へでもお供しやすぜ!」

「…お土産、食べる?」

 

「そんな気がしたよ、畜生!」

 

 すぐに乗り出すこの3人にケイスケはため息をついてガクリと頭を抱えた。そんな苦労するケイスケにリサは優しくケイスケの背中をさする。

 

__

 

 修学旅行当日、羽田空港にてワトソンは藍幇と戦うため香港へ向かったキンジ達を見送った。自分は彼らの拠点となる東京での守備役を務めることにした。敵の工作を阻止したり、彼らの帰りを迎えなければならない。張り切るワトソンだが、ただ一つ気になる事があった。

 

「そういえば、ナオト達は何処へ行くんだろうか…」

 

 いつもどこからともなく滅茶苦茶と暴れて周りを混沌と成すカズキ達の動向がワトソンもジャンヌも勿論キンジ達も分からなかった。まさか、同じ香港に行って、巻き込み、巻き込まれていくのか心配しだす。

 

「あれ?ワトソンじゃん」

「やっほーワトソン、スポーン‼」

 

 そう心配していると大きなボストンバックやキャリーバッグを持ったカズキ達がやってきた。どうやら彼らも海外へ修学旅行をするのだろう。ワトソンは心配気味にナオト達に尋ねた。

 

「や、やあ。ナオト達も海外へ行くのかい?」

「へっへー‼すげえだろ!俺たち海外デビューするぜ!」

「デビューはしねえよ」

 

 ノリノリのタクトをケイスケは小突くが、何やら少し不機嫌のように見えた。ワトソンは彼らがどこへ行くのか気になりだした。

 

「それで、皆は何処に行くんだい?香港?それともシドニー?」

 

「ふっふっふ、どれも違うんだなこれがー」

「…最初はシドニーに行こうとしたんだけど、予定を変えた」

 

 ドヤ顔するカズキをよそにナオトは当初の予定を話した。どうやら香港には行かず、キンジ達の戦いに巻き込まれることはないとワトソンは安堵した。しかし彼らは何処に行くのか疑問はまだ残っている。

 

「みなさーん!こっちの便に乗るみたいですよー!」

「おら、武器のチェックは長いんだからさっさとしろ!」

 

 リサとケイスケが武装職従事者専用のゲートの前でカズキ達を呼びだす。カズキとナオトは急がなきゃとワトソンに別れを告げで走りだし、タクトはドヤ顔でワトソンに行先を話した。

 

「俺達ドイツに行ってくるぜ!」

 

「‥‥えっ?」

 

 それを聞いたワトソンは目を点にしてピシリと動きが止まった。今、ドイツと言わなかったか?自分の耳を疑った。もう一度聞こうか試みようとした。

 

「ドイツードイツー‼」

「たっくん、ノリノリじゃん!ドイツは何処のどいつだってかー!」

 

 タクトは歌いながら、カズキは下らないギャグを言って武装職従事者専用のゲートへと入っていった。

 

「えぇぇぇぇっ!?」

 

 驚愕したワトソンは思わず叫んでしまった。藍幇やキンジ達どころではない。彼らは混戦としているヨーロッパ、眷属の本拠地、魔女連隊とイ・ウー主戦の拠点のドイツへと堂々と向かって行くのだ。師団と眷属の戦いがさらにややこしくなってしまうかもしれないワトソンはあたふたとしているが、カズキ達はゲートを通過していき飛行機へと向かって行った。




 今回は菊池家の紹介とその日常でした(たぶん)
 
 そして遂にドイツ、ヨーロッパへと…ドイツ、カオスな4人といえば…

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