カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼   作:サバ缶みそ味

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 いよいよ、アメリカ特殊部隊に殴り込み…緋弾世界のアメリカにケンカを吹っ掛けるなんて…
 ヒャッハー!もうどうにでもなーれ☆


42話

「さあ早く来ないかな?待ち遠しいよ‼」

 

 ジキル博士は無邪気な子供の様にはしゃいでいた。ジキル博士らはニミッツ級原子力空母、ニミッツに乗り太平洋沖の海を渡っていた。空母の船内にあるラボの中でジキル博士はいつジーサードが来るか、いつ遠山キンジが来るか待ち遠しくしていた。

 そんな博士に緑の迷彩柄の軍服を着た糸目の男がハンバーガーとジュースを乗せたプレートを渡しつつ苦笑いをする。

 

「博士、ジーフォースを捕獲しただけで大きな成果なのですよ。ジーサードが来れば大きな被害は免れないでしょう」

 

「それは愚問だな、ハリソン君。僕は楽しみで仕方ないんだ!あいつらをとっちめてDNAだけ残して標本にしてやろうと思うんだ」

 

 ジキル博士はハンバーガーを頬張りながらモニター画面の方を見る。モニターには広い部屋にベッドだけ置かれ、そのベッドにジーフォースこと遠山かなめが泣きながら座っているのが映っていた。

 

「ジーフォース…今はHSSになっておりますが、効果が切れて暴れることはないのですか?」

「ハリソン君は心配性だなぁ。僕の作ったβエンドルフィンと同じ成分の薬、『ヒステリア・イミタシオン』は現段階では女性にしか効かないし、解毒剤を使わない限り解くことはない」

 

 心配そうにしているハリソンにジキル博士はケラケラと笑いながらジュースを飲み干す。

 

「哀れなモルモットだよ。双極兄妹(アルカナム・デュオ)なんて机上の空論だし、何の為に造られたのか…ま、強い子孫を残せる種馬しか使い道はないんだけどね!」

 

 ゲラゲラと笑うジキル博士をよそに、「可哀想に」、とハリソンが口をこぼしたその時、突然通信が入った。

 

『ジキル博士‼所属不明の航空機が1機、近づいて来ます‼』

 

 それを聞いたジキル博士は飛び上がって大喜びしながら通信を取る。

 

「やっと来たか‼ジーサードか?それとも遠山キンジか!?」

『わ、わかりません…航空機はC-2グレイハウンド!どうしますか?シ―スパローで撃ち落としますか?』

 

 撃ち落とすか、聞かれたジキル博士はプンスカと怒りながら通信に答える。

 

「ダメダメダメ‼ヒーローが変身する前に攻撃するバカがいるかい?ヒーローのご登場は盛大に拍手をしながら迎え入れないと‼」

『で、ですが博士…』

 

 通信のおどおどしている声にジキル博士は子供の様に苛立ったが、通信はさらに続ける。

 

『も、物凄い勢いでこちらに突っ込んできますが…よろしいのですか?』

「‥‥は?」

 

 その数秒後に上の方ですごい勢いで引きずりながら何処かにぶつかる音が響き、船内が少し揺れた。ジーサードがアイアンマン見たいに1人で着地するかと思いきや予想の遥か斜め下の結果にジキル博士は気になり、急いで甲板へと向かった。

 

「わお!?まさかこの歳で神風アタックを見れるなんて驚きだよ…‼」

 

 甲板にはグレイハウンドが引きずりながら壁にぶつかって着地をしていた。ジキル博士を守る様に兵士達が囲みながら近づいていく。するとハッチがゆっくりと開きだした。兵士が警戒して銃を構えるとジキル博士が撃つなと手で指示をする。開いていくハッチの隙間からポンと何かがこちらに向かって飛んで転がってきた。コロコロと落ちている物を見ると兵士の1人が咄嗟に叫ぶ。

 

「フラッシュ!?」

 

 転がってきたフラッシュ・バンが閃光と衝撃を放って爆発起こす。ジキル博士を守りながら兵士たちはしゃがむ。反撃して撃とうとしたがすぐにスモークが投げられ煙幕が上がる。その中に5人の人影が走っているのが見えた。

 

「うらー‼」

「レッドマウンテンブラスト―‼」

 

 煙の中からカズキとタクトが飛び出し、兵士のひとりにダブルキックをお見舞いした。隣にいた兵士が驚き二人を撃とうとしたがAK47を構えているナオトに手と足を撃たれ、ケイスケが二人に下がれと怒鳴りだす。

 わけのわからない連中の突然の襲撃に兵士達が戸惑いジキル博士に指示を伺うが、肝心のジキル博士は腹を抱えて大笑いしていた。

 

「ははっ‼ジーサードか遠山キンジかと思ったら…訳のわからない奴等が出てきた‼」

 

 ジキル博士は笑いながら突然現れた連中を見る。そこには重装備をしているカズキとタクト、ケイスケ、ナオト、そしてボディーアーマーを身に着けた間宮あかりがいた。

 

__

 

 それは数時間前に遡る。セーラがタクト達に伝えたその3分後にタクトから羽田飛行場に来てくれと返信が来た。あかり達は羽田飛行場へと向かった。飛行場内にいると聞いて進んでいくと、そこにはすでに重装備にAK47やM4、SR25と武装しているタクト達とその近くにC-2グレイハウンドがあるのが見えた。彼らの姿を見てあかりは目を丸くする。

 

「タクト先輩…それに先輩達、その武装と輸送機は…!?」

「あ、これ?母ちゃんに頼んで持ってきてくれたんだぜ‼」

「ちょっくら殴り込みに行ってくる‼」

 

 タクトとカズキはにやりと当たり前のように答える。まるで喧嘩でも吹っ掛けるかのような彼らにあかりや志乃、ライカはギョッとするが、セーラと夾竹桃は半ば呆れに苦笑いをする。

 

「セーラ、かなめは今どこにいるか、あいつを攫ったバカ野郎共は何処にいるか分かるか?」

 

 般若のお面を付けているケイスケにセーラは頷いて電子機器を渡す。

 

「あいつらは船に乗って太平洋沖に進んでる…早くしないとアメリカへ持ち帰りされる」

「よーし、そうと来れば今すぐ飛ばすぜ‼」

 

 タクトがすぐにでもグレイハウンドに乗り込もうとした時、あかりが意を決して一歩前に出た。

 

「先輩‼お願いします…私も連れってください!」

 

 あかりの一言にライカと志乃が驚いた。相手はアメリカの特殊部隊。自分達の力じゃ全く手足も出すことができなかった連中である。

 

「あ、あかり…お前本気か!?」

「そうよあかりちゃん…‼私達が今まで戦った相手とはケタが違います‼」

「でも…私はかなめちゃんを助けたい‼」

 

 あかりは目に焼き付けていた。かなめの恐怖に怯えるあの瞳が、彼女を助けようとしたが助けることができなかった悔しさが。そんなあかりにケイスケは睨み付ける。

 

「お前、わかってんのか?お前も経験したことがない、戦争みたいな戦闘になるぞ?下手したら死ぬぞ?」

「分かってます…‼『仲間を信じ、仲間を助けよ』…かなめちゃんを見捨てたりしたくないんです‼」

 

 ケイスケの威圧に耐えながらあかりはキュッと睨み返す。どうなるのか志乃達がどきどきして見ていたその時、ナオトがあかりにボディーアーマーを投げ渡す。あかりは慌てて受け取りキョトンとナオトを見つめる。

 

「え…?ナオト先輩…」

「時間が無いし、助けたいなら来ればいい…でも、勝手に死ぬな」

 

「ナオト、やっるー‼さあ行こう、あさりちゃん‼」

「おい、人の名を間違えてんじゃねえよ。ほら、武器は貸してやるからさっさと来い」

 

 カズキがあかりの名を間違えつつあかりを誘い、ケイスケがカズキを小突いてあかりに早く来いと指示する。あかりは目を潤わせつつ「はい!」と大きく返事してついて行こうとした。

 

「‥‥イギリスの武装集団の次はアメリカかい?カズキ君達は凄い事をするんだね」

 

 その時、聞き覚えのある声がしたのでカズキ達は振り向くとキンジのクラスメイトである不知火が苦笑いして歩いてきた。

 

「ぬいぬい‼まさかぬいぬいも駆けつけて来たんだね!」

 

 タクトは嬉しそうにするが、不知火は申し訳なさそうに首を横に振る。

 

「その逆だよ…僕は君達を止めに来た」

「はあ?」

 

 その一言にカズキとケイスケはムッとする。彼らの怒りを分かっているように不知火は話を続ける。

 

「公安はジーサード、ジーフォースの件について、これは無かった事にしようとしている。遠山君は彼らを味方に入れようとしているけど、彼らが巻き起こしたことに首を突っ込めば…アメリカは黙っていないだろう」

 

 ジーサードの件はアメリカでも悩みの種であり、アメリカ自身が彼らが他の手に渡らないように始末しようとしているのだ。もしこれに手を出してしまえば国際問題だと言ってくるだろう。

 

「僕もカズキ君達の気持ちはわかるよ…でも、この件は危険だ。すでに公安の人たちも遠山君を止めようとしている。ここは手を引いて…」

 

「よーし、いつでも飛ばせるぜ‼40秒で乗りな‼」

「たっくん、その台詞好きだねー…」

「…あかりはMP5Kでいい?」

「ええっ!?こ、これですか!?」

 

 カズキ達は不知火の忠告を無視してすぐにでも行けるように乗り込もうとしていた。全く話を聞いていないことに不知火はずっこける。

 

「ちょ、僕の話を聞いてた!?」

 

「不知火、やめとけ。こいつらに難しい話は無駄だ」

 

 ケイスケが溜息をつきながらこけている不知火を起こす。不知火はカズキ達がこれからすることに焦りを感じていた。

 

「いいのかい?君たちがこれからやることは…下手したら大問題以上の事態になるよ!?」

「あのな不知火…確かに国の法律ギリギリどころかもろアウトな事になるかもしれない。お前ら武偵や公安共の言ってることも正しいかもしれない…でもな」

 

 自分たちがすることはアウトな事かもしれない、しかしケイスケはそんな事を気にせず不知火を睨み付ける。

 

「お前…たった一人の仲間も救えなくて世界を救えると思ってんのか?」

 

 ケイスケの一言に不知火は目を開き、何も言えなくなった。そんな不知火にタクトは申し訳なさそうに見る。

 

「ぬいぬい、ごめん。俺達は行くよ‥‥大事な後輩を助けに行かなくちゃ。後は菊池財閥に任せとけ!」

「不知火‼公安の人たちに言っとけ!俺達はミョンストッポングってな‼」

「…なぜそこで噛む」

 

 不知火はそれ以上何も言わなかった。ただ無言で頷き、グレイハウンドに乗り込み飛んでいった彼らを見送る。

 

「あ、いけね!早く遠山先輩やアリア先輩達に知らせなくちゃ‼」

「その心配はいらないわ…すでに理子に伝えているから彼らも動いているはず」

「でも私達で手伝えることがあるはずです。急ぎましょう!」

 

 ライカ達も急いでキンジ達の下へ向かうことにした。ただ1人飛行場に残された不知火はふうと苦笑いを込めた溜息をして携帯電話をかける。

 

「もしもし…獅堂さん?ええ、僕が言った通り、彼らには無駄でしたよ。あっ、そんなに怒らないでくださいよ」

 

 携帯電話から獅堂の荒々しい怒鳴り声が響く。不知火は獅堂の怒りようから、すでに菊池財閥が動いていること、または何処からかの圧力により動きが抑えられたと察する。

 

「菊池財閥が動いているのなら…恐らく穏便に物事を納めるのでは?いえいえ、僕は彼らに肩を貸すつもりじゃなくて、一人の武偵としての意見を…」

 

 不知火は苦笑いしつつ、携帯電話で話を進めた。彼らがただ無暗に暴れるだけじゃなくて何のために向かうのか分かった気がしたのであった。

 

「いやー…止められそうになった時は焦ったぜー」

 

 揺れる機体の中で沈黙していた中、カズキは今頃呟く。ケイスケは今頃かと緊張感のないカズキを見て呆れる。あかりはボディーアーマーを身に着け、MP5Kの銃身を握りしめる。これから行く戦いはイ・ウーでもなく、先端科学でもなく、アメリカの特殊部隊。今まで集団との戦闘はしたことがない、経験したことのない戦いになる事に緊張していた。そんなあかりにナオトとカズキがポンと肩を叩く。

 

「あかりちゃん‼俺達がフォローしてやっから任せときな!」

「…俺達が頑張る」

 

「せ、先輩たちは怖くないんですか…?」

 

 不安そうにしているあかりにカズキ達はニッと笑う。

 

「俺達は慣れっこだからな‼怖いもんなしだぜ‼」

「どっかのバカが装甲車で突撃したりするもんな。なんか慣れた」

「‥‥恐れたらいけない」

 

 いつもハチャメチャで滅茶苦茶な彼らだからこそ、恐れを知らない。あかりは苦笑いしつつ、緊張が解けていった。

 

『よーし、皆見えてきたぜ‼あの空母にかなめちゃんがいるぞ‼』

 

 運転席からタクトの声が響く。どうやらかなめを攫った連中に追いついてきたようだ。いよいよ戦闘になると気を引き締めるが、ふとカズキは思い出す。

 

「ん…?今操縦してるのって、たっくんだよな…?」

 

 カズキの一言にケイスケもナオトもピタリと止まる。あかりはどうしたのかおどおどするが、カズキ達に嫌な予感がよぎった。

 

『なあ、ケイスケー』

「ど、どうしたたっくん…?」

 

 タクトがさりげなくケイスケに尋ねてくるのでケイスケは物凄く嫌な予感を感じながら頷く。

 

『これ…どうやったら着陸できるんだっけ?あと、スピード止まらないんだけど、教えて?』

 

「…シートベルトしてしがみ付け‼」

「やっべえ‼あかりちゃん、早く‼後しゃべると舌噛むから気を付けて‼」

「だからたっくんに運転を任せたらダメだって言ってただろうがー‼」

 

 タクトの質問に3人は慌てだし、あかりも慌ててシートベルトをしだす。タクトの『ブルーマウンテンスクラップアターック‼』と叫んだその直後、物凄い勢いで空母に着陸したのであった。

 

__

 

「ナオト、カズキ‼シールド‼」

 

 ケイスケの指示に大きめ防弾シールドを背負っていたカズキとナオトが防弾シールドを前に出し、銃弾を防いでいく。その合間にケイスケがM4で、タクトがM16で撃ちだす。銃弾を防ぎつつ、壁へ下がり、その合間に撃つ。しかもノーキルで倒していく、そんな彼らを見てジキル博士は何度も頷き、兵士たちに攻撃を中止させた。

 

「いやー、すっごいね。どっかの凡人かどっかのテロリストかと思ったけど…中々面白いじゃないかい‼スカウトしてほしいのかい?それとも僕の首が狙いかな?」

 

 子供のようにはしゃぐジキル博士にタクトはプンスカと怒りながら叫んだ。

 

「こらー‼かなめちゃんを返せコノヤロー‼」

「そうだぞ‼お前ら人攫いの罪で全員逮捕だ‼」

 

 目的がジーフォースの奪還である事、そして彼らの中にあかりの姿が見えたことにジキル博士はやれやれと肩を竦めた。

 

「なんだ、武偵か…そこまでしてモルモットが欲しいのかい?君たちのその感情はよく分からないなぁ」

 

 ジキル博士のその一言にケイスケは睨みを利かせ怒鳴り声を出す。

 

「ふざけんな!あいつは、遠山かなめはたった一人の人間で、遠山キンジの妹だ‼」

「…あかり、あの博士は半殺しにしていい。そうまでしないと反省しない」

 

 カズキ達の怒りを感じたのかジキル博士は悪戯っ子のようににやりと笑いだした。

 

「成程。君達のその考え、興味を持ったよ。いいだろう、取り返すならやってみなよ…できるものならね!」

 

 ジキル博士がゲスな笑みをしだしたその時、ジキル博士の横をドラム缶が物凄い勢いで過りカズキ達めがけて飛んできた。カズキ達は慌てて左右に避けて直撃を免れた。ジキル博士の後ろのハッチが開いておりそこから投げられたのだろう。

 

「ウィィィィハァァァァッ‼」

 

 何処からともなく大きな雄叫びが聞こえたと思えばゆっくり上がって来るハッチから何かが飛び出し、ジキル博士の横に着地した。それは上半身はすっぽんぽんだが、筋骨隆々で強靭な肉体を持ち、腕も上半身の肉体も筋肉ででかい大男だった。

 

「博士ー‼ジーサードじゃねえじゃねえか!こんな虫けらすぐに潰れちまうぞ‼」

 

 雄叫びをしながら大男はジキル博士に文句を言う。ジキル博士はニヤニヤしながら大男を宥める。

 

「落ち着き給え。これはただの前座だ。君が派手に暴れれば…ジーサードは来てくれるかもよ?」

「マジでか!?ウ゛オオオオオッ‼じゃあこいつらぶっ潰してやるぜ‼」

 

 大男はゴリラの様に胸を叩きながら雄叫びをする。そんな大男を見てカズキ達はギョッとした。

 

「ちょ、お前言うなれば、古に伝わりしプロテイン大好き筋肉モリモリマッチョマンファイティングエディションでしょ!?」

「いやたっくん、名付けてる場合じゃないでしょ!?」

「つかプロテインどころじゃねえぞあれ‼」

 

 焦りだすカズキ達にジキル博士はニヤニヤしながら話を進める。

 

「紹介しよう。彼は対ジーサード用に用意した人工兵器、コードネーム『タンク』だ。仲良く遊ぶといいよ」

「Woooooooooo‼」

 

 博士が遊んでおいでと言い出す前にタンクが雄たけびを上げながらカズキ達目がけて走り出した。カズキ達は一斉に銃を撃ちだすが、ビクともしていないのかタンクは構わずこっちに来た。

 

「やべえって!?」

「みんな走れ!」

 

 ナオトの叫びで一斉に走り出す。その直後にタンクが右手で力いっぱい叩き付けてきた。ケイスケはあかりを引っ張り避ける。頑丈な甲板が握り拳の形に凹んでいた。あと一歩遅ければトマトの様に潰れていただろう。

 

「あれって反則でしょ!?」

「カズキ、落ち着いて対処するしかない。ケイスケ、フラッシュは…?」

 

 フラッシュが効くかどうかわからないがやるしかない。ナオトはケイスケに持っているかどうか聞くが返事が来ない。どうしたのか視線を向けると、そこにはケイスケだけでなくタクトもあかりの姿もなかく、落とし穴の様に床が開いていた。

 

「ああ、そうそう。ジーサードが来るまで僕の退屈しのぎに付き合ってもらうよ?」

 

 ジキル博士は兵士達を連れて甲板にあるエレベーターに入る前に悪ガキの様に歯を見せてニッコリ笑っていた。その手にはよくお笑い番組であるような落とし穴のスイッチを持っていた。ジキル博士の手によりカズキとナオト、ケイスケとあかりとタクトに分断されてしまった。

 

「それじゃあタンク。たっぷり遊んで、たっぷり楽しませてくれ」

 

 ジキル博士はそう言ってエレベーターに乗って戻っていった。カズキとナオトはジキル博士を追いかけようとしたがタンクに遮られる。

 

「Yeaaaaaaaaaaaaah‼」

 

 タンクが力いっぱい拳で叩きつける。カズキとナオトは必死に避けて撃ちながら下がった。

 

「ナオト‼ここはごり押しでやるしかないな‼」

 

 いつものように力を合わせて、ナオトは前衛でカズキが後方で支援しながら倒していく。カズキは作戦をナオトにそう伝えたのだが、頷くも様子がおかしい。

 

「ヘヘッ…」

 

 ナオトの頷くもタンクを見ながら引き笑いしだしたことにかずきは「あ…」と口をこぼした。これまで組んで行動した時もあったが、ナオトが引き笑いするときはいつもヤバい時だ。つまり、今の現状はまずい状態であるというのであった。

 

__

 

「いててて…あかりちゃん、大丈夫?」

「は、はい、なんとか…」

「おい、お前ら重いぞ。さっさとどけや」

 

 突然開いた床に落ちたタクト達は船内の洗濯室に落とされていた。何重も敷かれたシルクの布団のおかげで怪我はしなかったものの、甲板に残されたカズキとナオトが心配だった。

 

「カズキ先輩達、大丈夫でしょうか…」

「あの二人なら大丈夫さ…たぶん」

 

 たぶんで大丈夫なのあかりは心配しつつもさっさと進むケイスケとタクトの後に続く。洗濯室からでると船内はかなり広く、廊下も白の大理石の床で広い通路になっており、まるで大きな研究施設の様な雰囲気を漂わせていた。

 

「妙だな…兵士たちの数はかなり少ないぞ…?」

 

 ケイスケは覗きながら通路の様子を伺う。中は閑古鳥が鳴くかのようにがらんとしており、見回る兵士もかなり少ない。船内の兵士たちは20~30名ぐらいではないかと推測する。

 

「よし、急いでかなめちゃんの所に行こう!」

 

 タクトが先頭して進みだす。ケイスケとあかりは部屋の入口や中を一つ一つ注意して見ながら進む。もしかしたらすぐ近くにかなめがいるかもしれない。

 

 

「あらぁ?タンクったら、ネズミちゃんを仕留め損なったのかしらぁ?」

 

 後ろから野太いおかま口調が聞こえた。ケイスケとあかりは恐る恐る振り向いた。二人が振り向いたその先にはタンクと同じように上半身はすっぽんぽんだが、タンクとは違い肥満体型で禿頭で派手な化粧をした世紀末な肩パッドを付けた大男がいた。その大男の右腕はでかく、サイボーグのような機械をした右腕をしていた。

 ケイスケとあかりは咄嗟に銃を構えたが、大男はうふふふと笑いながらデカイマシンな右腕を振る。おおらかな雰囲気に見えるが二人には物凄く嫌な予感がよぎっていた。

 

「そう怯えなくていいわぁ。あたしはコードネーム『チャージャー』。仲良く遊びましょ?」

 

 まずい。この男、いやこのおかまはヤバイとケイスケとあかりは焦りだす。ケイスケは冷や汗を流しながらあかりに視線を向ける。

 

「あかり、手を抜くな。手を抜くとお前が殺されるだけだからな…‼」

「わ、わかりました…‼タクト先輩も…って、あれ?」

 

 さっきからタクトの喧しい声が聞こえない。あかりは気になってタクトの方を見ると、肝心のタクトの姿が無かった。

 

「け、ケイスケ先輩‼タクト先輩がいませんよ!?」

「ハァ゛ァ゛ッ!?あのバカ、何処に行きやがった!?」

 

 他の戦闘員と戦闘になるという時にタクトが何処かに行った。ケイスケは高めな声を出して慌てだす。そんなケイスケを見ていたチャージャーはじっとケイスケを見つめていた。

 

「…慌てだす姿は可愛いわね‥‥嫌いじゃないわ‼」

 

 チャージャーのうっとりしている姿を見て、ケイスケは背筋が凍り、そして…何かがはじけた。

 

 

「もうヤダヨォォォォッ!!」

「ちょ、ケイスケ先輩!?」

 

 ケイスケは甲高い声を出して叫びながら逃げ出していった。あかりもケイスケから今まで発したことのない高い叫びを聞いてギョッとするが急いでケイスケの後に続いて走り出した。チャージャは肥満体型と思えないスピードで走りだして追いかけていく。

 

「うふふふふ!逃がさないわよー‼」




 ここらで登場するジキル博士が用意した対ジーサード用人工兵器、『ハンター』『チャージャー』『タンク』について、彼らはゾンビじゃなくて人工天才みたいなエージェントにしております…

 ゾンビじゃねえじゃねえか!?という方、ごめんなさい
 前話でジキル博士が言っていた『お気に入り』はL4Dからではなくオリジナルです‥‥たぶん

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