カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼   作:サバ缶みそ味

38 / 142
 今回はほのぼのとしております。これといったドンパチはなさそうです…


38話

「やぁ、今日は文化祭だなぁ!」

 

 食堂の厨房でカズキはわざとらしく高い声を出していた。文化祭当日、学園島に校外の人々が往来し、道端に露店があちこちに立ち、強襲科や尋問科も一般公開している。一般の人や親御さん、または取材も来るので物騒な物は地下に押し込み、薬莢が一個も落ちていないくらいに清掃し、どの棟も平和的に開放している。

 

 各学年、各学科はそれぞれ出し物をおり、2年は変装食堂を行っている。調理や接客の他、変装している職業らしくやっているか、各生徒の潜入捜査の練度をアピールをし、教務課に評価されるようやっている…のだが、約4名はそんな事を気にしていないようであった。

 

「こんな日はプリン曜日だし、プリンを食べたいことってあるよね!」

 

 厨房にいる誰もがプリン日和では?と心の中でツッコミを入れている中、ケイスケとナオトは面倒くさそうに返す。

 

「…そうだな」

「俺達はチームメイトだからな…」

 

 棒読みなケイスケとナオトの近くで緑の恐竜の着ぐるみを着ているタクトが高笑いしながらのしのしと歩いてきた。

 

「ふっふっふ、『イクシオン』のカズキ、ケイスケ、ナオト‼古に伝わりしプリン作りをしようではないか‼」

「「「プリン作り…‼」」」

 

 あの4人組はいつまで茶番劇をしているのか、彼らに関わらないよう他の生徒たちはせっせと調理に集中し続ける。

 

「そう‼世の中には『良い』プリンと『悪い』プリンの2種類がある…‼」

 

 ドヤ顔するタクトの台詞を聞いて生徒たちもその場の空気も凍り付いた。しかし、4人の茶番劇はそんな空気でも続くのであった。

 

「と、言うわけで各自でサイキョーのプリンを作るのだー‼」

「「いえーい!」」

「‥‥」

 

 

「やめろ」

 

 さっそくそれぞれのプリン作りに取り掛かろうとした所、蘭豹が真顔で4人を止めた。カズキとタクトはきょとんとする。

 

「え、でも蘭豹先生、俺達は厨房の担当だし…プリン食べたいなーって思って(ry」

「やめろ」

 

 いつもなら怒ってげんこつを入れる蘭豹なのだがカズキ達がプリン作りをすると聞いて怒らず真顔で止めているのであった。

 

「そうですよ‼ただのプリンじゃなくて見たこともない、アッと驚くプリンを作るんですぜ‼」

「…じゃあお前ら、これからどんなプリンを作るつもりなんだ?」

 

 一応確認しようと蘭豹は尋ねたのであったが、ナオトとケイスケは面倒くさそうに、タクトとカズキはドヤ顔で答えるのであった。

 

「…一人用のぷりん」

「杏仁豆腐」

「名付けて‼古に伝わりしデビルピッコロプリンだぜ‼」

「必殺のレバープリン‼食べるラー油を添えて!」

 

「よーし、お前らはフロアに行ってこいや‼」

 

 完全に作ってはいけないプリンだと判断した蘭豹は4人をフロアの方へ蹴とばしていった。とりあえずこの食堂が大惨事になるのは避けたので厨房の皆はほっと一安心した。

 

「そういえば…あいつら接客できたっけ…?」

 

 武藤のつぶやきでまた再び空気が凍り付く。一難去ってまた一難。蘭豹は咄嗟に指示を出す。

 

「遠山‼お前もフロアへ行ってあのバカ共をフォローしてこい‼」

「えっ!?俺!?」

 

 突然の指名でキンジはぎょっとする。なぜ自分なのかと言いたかったのだが、厨房の生徒たちから期待の眼差しで見られいう事が出来なかった。

 仕方なしに厨房からフロアへ出てみると嵐のような忙しさだった。女子生徒は華やかな衣装で男性客には人気で、まるでコスプレ喫茶のような雰囲気が出ている。それでもオーダーを受け、料理を運んだりと賑やかであった。キンジは女子のコスプレをあまり見ないようにしつつ、おバカ4人を探す。まずは1人、カズキを見つけることができた。カズキはどうやら注文のオーダーを受けている最中だった。

 

「えーと…ロースカツ定食に、メロンソーダですね。それではオーダーの確認をします。えーと、ロージュカチュと…マロンソーダですね!」

 

「え?あ、いえ、ロースかつとメロンソーダ(ry」

「はいっ‼オーダー入りまーす!メロンカツソーダ入りまーす!」

「ちゃんと話聞こうな!?しっかりしろよビップ‼」

 

 キンジはあがってしまっているカズキを落ち着かせてちゃんとオーダーをとってあげた。取りあえずカズキは噛み噛みなのでウェイターではなくお会計の方に向かわせた。

 カズキを向かわせたところでキンジはケイスケを見つけた。ケイスケは黙々とお客に炒飯を置く。フルフェイスで表情が見えないし、何も言わないので怖いオーラを出しているように見え、その男性客はビクビクしながら炒飯を食べるのであった。

 

「いや、何ビビらせてんだよ!?」

『はぁ?これがマスターチーフの職業なんだけど文句あんのか?』

「そんな職業あってたまるかよ!?」

 

 これではお客は寄ってこなくなる。こちらの仕事もなくなるし、お客も入りづらい。取りあえず客寄せの看板を渡して客寄せをするよう頼んだ。ケイスケだけでは不安なので『西部のガンマン』の衣装を着ている理子に頼んで一緒に行ってもらった。

 

「うおー!?やめろー!?」

 

 残りのおバカ2人を探さなくてはと気を取り直して探そうとした時、入り口付近でタクトの必死な声が聞こえたので駆けつけていく。そこには小学生の子供たちが緑の恐竜の着ぐるみを着たタクトに馬乗りするわ、尻尾を引っ張るわ、頭をつついたりと、浦島太郎に出てくる海亀のようにいじめていた。通りかかる子供たちも「あ、でっていうだ‼」と言ってでっていう弄りに加わるのだった。

 

「や、やめろー‼でっていうをいじめるなー‼」

「…おい、食物連鎖の頂点じゃなかったのかよ」

 

 キンジはただ呆れるしかなった。食物連鎖の頂点だと言っていた恐竜が哀れにも子供たちにいじめられていた。その後、女教師の衣装を着ている白雪と看護婦さんの衣装を着たリサに引率されるまででっていうはポカポカとやられていた。

 その後は白雪の的確な指示と接客上手なリサのおかげで食堂は盛り返していく。接客が苦手な生徒たちも巧く行くようになってきたのでキンジはほっと一安心した。

 

「あ…ナオトはどこだ?」

 

 ふとキンジは思い出した。最後の問題児、カズキとタクトに続いて接客が向いていないであろうナオトを探す…のであったが、庭のイスで寛いでいたのが見えたので思わずこけそうになった。青いTシャツにジーパン姿なので一般の客と間違えそうだった。

 

「おい、なにちゃっかり人混みに紛れてんだよ…」

「…キンジ…」

 

 呆れつつも声を掛けると、ナオトは何やら真剣に悩んでいるようだった。何事かとキンジは不思議に思って首を傾げる。ナオトは真剣な眼差しでキンジを見て口を開く。

 

「‥‥『スティーブ』って何?」

「…知るか!?てかそれをずっと悩んでたのかよ!?」

 

 自分の役職をどう演じるべきか、ナオトはそれをずっと考えていたようだった。一般人のような姿のおかげで蘭豹に見つからずにいた。文化祭の一日目でこの4人は接客にも向いていないことが分かってキンジはただただ呆れるしかなった。

 

__

 

「…解せぬ」

「いや解せぬじゃねえだろ。怒られて当然だったし」

 

 あれこれあって10月31日。文化祭の2日目、ちゃんと接客できていなかった4人組は案の定、蘭豹に怒られてしまったのでった。接客も理由であったが、彼女がついうっかりカズキが試作していた必殺のレバープリンを食べてしまったこともある。文化祭終了前に食堂で行われる自分たちのバンドを『盛り上げなかったら射殺するからな』と八つ当たり気味に言われ、プレッシャーに押されつつも音楽室で最終調整をしていたのだった。

 

「むーん…」

「たっくん、何悩んでるの?」

 

 一通り打ち合わせて問題は無かったのだが、最後の最後でタクトは納得いかないように悩んでいた。

 

「ラストにやる曲…やっぱり女の子のボーカルが欲しいなぁ」

 

 カズキとナオトは「あ…」と口をこぼす。ほとんどはタクトが歌うか、音楽だけを奏でる曲なのだが、最後の曲はカズキとナオトが歌詞を作って作曲した曲がどうしても音程が高く、タクトには歌えなかった。

 

「やっぱりリサに歌ってもらう?」

 

 カズキはリサに歌ってもらおうと思ったのだが、ケイスケが首を横に振る。今頃リサはジョージ神父とセーラと一緒に文化祭巡りをして楽しんでいるだろう。ここはやはりボーカルはやめて演奏だけの曲にしようかと決めようとした。

 

「みんな、頑張ってる?」

 

 そんな時、ワトソンがひょっこりと音楽室に入って来た。シフトが終わったばかりなのか、女子制服を着たままであった。ワトソンはたこ焼きとイチゴ大福を持ってきたのだった。

 

「ナオト達はバンドの準備中だって遠山から聞いてさ…これ、お裾分けだよ」

 

「さっすがワトソン‼ありがてえーぜ‼」

「イチゴ大福…でかした」

 

 大喜びするカズキとナオトを見てワトソンは照れだす。ふと、気づけばタクトがこちらをじっと凝視しているのに気づいてワトソンは焦りだす。

 

「た、たっくん?ぼ、僕に何かついてる?あ、そ、それともこの格好…へ、変かな?」

 

「カズキ、ケイスケ、ナオト‼確保―‼」

「そういう事か…ワトソン、許せっ‼」

「うおぉぉーっ‼」

 

 ケイスケとナオトがワトソンが逃げ出さないように両腕を掴み、カズキが教室のカギを閉めた。突然の事でワトソンは慌てふためく。

 

「えぇっ!?ちょ、ちょっと待って!?こ、心の準備がっ…」

「ワトソン‼ボーカルやってー‼」

 

 慌てるワトソンにタクトはスライディング土下座をした。いきなり頼まれ込み、目の前で土下座をしている緑の恐竜(タクト)にワトソンは戸惑う。

 

「ぼ、僕が…ボーカル!?」

 

「お前、たっくんがここまでしてるんだぞ?とりあえずやれ?」

「たっくん、今度はローリングスライディング土下座にしようぜ‼」

「…ワトソン、頼む」

 

 ワトソンは困りだす。歌ったことはないし、しかもこの格好で歌うことになる。ナオトにまでお願いされたワトソンは悩みだしたが、覚悟を決めたのか首を縦に振った。

 

「わ、わかったよ…これまでの借りもあるし。()()()()()()にもなる…その頼み、受けるよ」

 

「いよっしゃぁ‼そうと来ればさっそく特訓だー‼」

「俺の指導は厳しいザマスよぉ!」

 

 音痴のお前に言われたくないと、ケイスケはカズキを小突く。本番が始まるまでみっちりと練習をしたのであった。

 

__

 

「うわー…めっちゃいるねー」

 

 いよいよ本番となり、食堂のスペースを空けて建てられたステージの裏でタクトは様子を覗いていた。ただノリでやった提案だからそんなに来ないだろうと思っていたら、予想を超える生徒達とお客の数に驚いていた。機材を用意してくれた武藤と平賀が「俺達が宣伝をしてやったぜ!」と親指を立ててポーズをとる。

 

「そろそろ時間になるぞ。準備はいいか?」

「け、ケイスケちょっと待って!そ、素数を数えればいいんだよな!1、2、3、5、10…」

「…カズキ、素数でも何でもないし」

「いくぞっ!俺達の伝説はこれからだぜ‼」

 

 完全に打ち切りになりそうなセリフを言ってタクトが最初にステージへ駆けだした。おどおどするカズキをケイスケがステージへと蹴とばし、最後にナオトがゆっくりと出て行った。

 

「すぽおおおおんっ‼みんなお待たせ―‼」

 

 愛用のギターを持ってタクトは手を振ると観客達は歓声をあげて返す。タクトはニシシと笑って位置に付いた。もうやってやると集中するカズキもマイペースなケイスケとナオトも位置に付くのを確認し、タクトはマイクをチェックする。

 

「さあ、文化祭のトリを盛大に盛り上げていくぜー‼一曲目スタートだ‼」

 

 タクトはさっそくギターを奏で、シンセサイザーのカズキもベースのケイスケもドラムのナオトも合わせて奏でていく。いつもわちゃわちゃしている4人だが、そんな4人が合わせた演奏は観客達を魅了していく。演奏だけではなく、タクトの意外な歌唱力にも息を飲み、驚き、さらに盛り上げていった。

 

 時に幻想、時に厨二っぽい演奏や歌に盛り上がり、時間の経過を忘れさせていく。そうしていうちにいよいよ最後の曲へと移っていった。

 

「さあいよいよ最後の曲だぜ‼」

 

 最後となって別れが惜しいのか、えーっ‼という声が響く。アンコールの声もあったが、時間が時間なので終わらせるしかなったのが名残惜しい。

 

「最後の曲は、スペシャルなゲストに歌ってもらうよー‼」

 

 生徒達もノリに乗って歓声を上げる。タクトはにやりと笑ってステージの端の方を指さす。

 

「さあ甦れ!IRONシェフ‼」

「たっくん、シェフじゃないでしょ」

 

 カズキのツッコミにドッと笑いが上がるが、それでも中々ゲストが来ない。一体誰なのかザワザワと声が上がる。そんな様子を見ていたワトソンは緊張して出ることができなかった。キンジやカズキ達以外には男子として通しているのだが、女の子として、そして女子制服を着たまま皆に見せるのことに緊張と焦りがあった。

 

「みんなー‼応援して勇気づけてあげるんだー‼」

 

 タクトの指示に観客達は従い「がんばれー!」といった応援の声が上がる。それでもワトソンはどうしたらいいか戸惑っていた。そんな時、ナオトがひょっこりと顔を出し、手を差し伸べた。

 

「…ワトソン、行こう」

「‼…うん!」

 

 ナオトに勇気づけられたワトソンは覚悟を決めて手を取り、ステージへと向かった。女子制服を着たままのワトソンを見て、観客達は驚きと喜びの声を上げる。

 

「と、言うわけで、スペシャルなゲストは…ワトソンだぜぇ!」

 

\ウオオオオオオオッ‼/

 

 女子達も男子達のまるで外人4コマのように興奮して歓声の声を上げて盛り上がる。そんな様子を見ていたワトソンは照れながらもマイクを取る。タクトはニシシと笑ってギターを持つ。

 

「じゃあ最後の曲、行くよー‼テーマは『THE WORLD』だ‼」

 

 カズキのシンセから始まり、タクトのギターが盛り上げていく。ナオトのドラムとケイスケのベースも奏でていきついにワトソンは緊張しつつも歌いだす。ワトソンの歌声と歌詞に皆息を飲んだ。曲名通り、世界を、描かれていく世界の壮大さを彷彿させるような歌と演奏に魅了してく。そしてワトソンが歌い終わり、ほぅと息を吐いた。それと同時に盛大な拍手と歓声が響き渡った。

 

 そんな様子にワトソンはきょとんとしていたが、すぐに達成感と感動がこみ上げ、目を潤わせつつも笑顔で頭を下げた。タクト達も満面の笑みで手を振って返した。

 

「ナオト、皆…ありがとう。僕は…勇気を貰えたよ…」

「イエーイ‼みんな、ありがとーう!」

 

 タクト達は手を振ってステージから去っていった。そんな彼らの演奏を、歌を離れて見ていたリサはかなり感動して拍手をしていた。

 

「皆さん…すごいです(モーイ)すごすぎです(ヘール・モーイ)‼」

 

 ジョージ神父も拍手をし、ちゃっかり来ていたセーラも彼らの歌を聞いてふっと笑っていた。

 

「WORLD、か…中々いい事言うね…」

 

 彼らの歌のように、この世界も誰もが愛せればいいなとセーラは心の中で感じていた。

 

__

 

 文化祭の演奏は大成功になった。その後の打ち上げも盛り上がった。特にトリで歌ったワトソンは大好評で、『ワトソンくんちゃんがめっちゃ可愛かった』とか『ワトソンちゃんくん、歌手デビューしたら?』とかそんな声が上がっていた。こうして、文化祭も無事終了したのだった。

 

 無事に終わったその深夜、タクトはパタパタと学園島の公園をあたふたと走っていた。終わって自宅に帰り、いざ寝ようとしたところ、肝心の愛用のギターをステージに置きっぱなしだったのを思い出し、大急ぎで取りに戻っていた。

 

「いやー、すっかり忘れてたぜー…あ、帰りにカズキに頼まれたプリン買わなくちゃ」

 

 愛用のギターを背負いつつ駐車場へ向かう。その途中、タクトは学園島の公園を通っていると、綺麗に切れている街灯を見かけた。それだけではなく、スパッと切断されいる車もあった。

 

「え…?ナニコレ、スゲー‼」

 

 綺麗に切れていることにタクトは目を輝かせる。一体どうやって綺麗に切られたのか不思議に思っていると、どこかで金属音と空を切る音が聞こえた。何事かと思いタクトは音のする方へ向かう。

 

「あれは…白雪ちゃんと…誰?」

 

 抜き身の日本刀を構えている白雪と体の各所にマットブラックのプロテクターを装着し、目には猫耳のような形装置が付いた半透明の赤いバイザーかけた茶髪の小柄の少女がいた。その少女は自身の身長よりもある大型のタクティカルナイフのような刀を構えていた。

 白雪の近くには同じ武偵校の制服を着た茶髪の短いツインテールの小柄の少女が気を失って倒れていた。タクトはその少女はアリアの後輩である間宮あかりだと気づいた。

 

「この状況…あれか‼ハロウィンだな!」

 

 もう深夜だけども10月31日だし、打ち上げ終わった後にハロウィンパーティーもあったし、ハロウィンが続いていると納得する。となると、あの少女はお菓子欲しさに白雪と間宮あかりに悪戯をしているのだろうとタクトは考える。そうとなれば自分も乗ろうとタクトは駆けだした。

 

「白雪ちゃん‼俺もハロウィンやるー‼」

 

「えっ!?た、たっくん!?」

 

 タクトの突然の乱入に白雪は目を丸くして驚き、少女も驚いていた。そんな彼女たちを見てタクトは首を傾げる。

 

「あれ…?ハロウィンじゃないの?」

「たっくん‼ここは危ないからあかりちゃんを連れて逃げて‼」

 

 白雪は悲痛な叫びを出す。しかし、状況を理解していないタクトは親指を突き立ててドヤ顔をする。

 

「あれだな!本格的なハロウィンってやつか‼」

「あはっ!貴方も気づかなきゃよかったのにねぇ。非合理的ぃー」

 

 少女は標的をタクトに変えたようで、タクトめがけて襲ってきた。頭をにハテナを浮かべているタクトの前に白雪が立ち、日本刀で少女が振り下ろした刀を防いだ。しかし、少女の力が強いのか白雪は押されてしまった。

 

「健気ぇー。でも、分かってるんでしょ?今夜は璃璃色金の粒子が濃い。能力者には良くない夜なんだよ」

「くっ…‼」

 

 白雪は悔しそうに少女を睨み付ける。そんな様子を見ていたタクトは今の状況を見て納得して頷く。

 

「そうか‥‥白雪ちゃん‼俺が力を貸してやるぜ‼」

「「えっ…?」」

 

 そんなタクトに白雪も少女もきょとんとする。早速タクトは白雪の手を握りだす。

 

「悪戯してくるオバケを追い払う…そんなシナリオ、好きだぜ‼」

 

 タクトが力を込め始めた。すると、白雪は体全体に強い力が流れ込み、溢れんばかりの気と力が込み上がって来るのを感じた。白雪はこの状態に驚いていたが、今すべきことに集中した。

 

「たっくん、ありがとう…いくよっ!緋火虜鎚(ひのかぐつち)‼」

 

 白雪は自身の刀に松明のような炎を纏わせて斬撃を繰り出した。その炎は白雪自身が思っていた以上の大きさと威力に驚いていたがすかさず少女に向けて繰り出す。

 

「きゃぁっ!?」

 

 白雪の炎の威力と大きさに少女は驚き、防いだ。なんとか防ぎきったものの、今の威力に驚きを隠せなかった。

 

「ウソ…!?璃璃色金の粒子で能力が使えないはずなのに、なんで!?」

 

 白雪と慌てている少女はタクトの方を見る。タクトはドヤ顔してブイサインしている。能力が使えたこと、そしてそれ以上の力が出たのはもしかして彼の力なのか、二人は考えた。

 

 

『…時間だ、ジーフォース』

 

 その時、どこからか男の声が聞こえた。姿は見えずとも声が響く。それを聞いた少女は焦りだした。

 

「嘘でしょ…もう少しでお兄ちゃんの邪魔者を始末できるのに…‼」

『部外者に見られた上に、手こずってるじゃねえか。そいつはもういい。さっさと遠山キンジを誘き寄せるぞ』

 

 ジーフォースと呼ばれた少女は男の指示に納得いかないようで、猛犬のように白雪を睨み付ける。

 

「待ってよ。あと数秒…あと数秒であの女を半殺しにしてやるんだから…‼」

 

『…フォース。てめえ、俺を怒らせてぇのか?』

 

 殺気が籠った男の声が響く。それを聞いたジーフォースはびくりと恐怖におびえるかのように震えだした。

 

「ご、ごめん…ジーサード、い、勢いがついちゃっただけだから…」

『ふん…おい、運が良かったな。てめえらはその内俺が殺してやる』

 

 ジーサードと呼ばれた男の声はすぐに消え、ジーフォースも白雪を睨み付けた後、闇夜に消えていった。一体どういうことなのかタクトは分からなかった。ほっと一安心した白雪はガクリと膝をついた。

 

「たっくん…私、ちょっと休むね…あかりちゃんを起こして一緒に病院へ連れてって…」

 

 白雪はそう言って力尽きたように眠ってしまった。その代わり気を失っていた間宮あかりが起きようとしていた。

 

「…あれ?ハロウィンやらないの?」

 

 結局、ハロウィンだとタクトは勘違いしたままだった。




 Sは抜けてるけども…『THE WORLDS』は好きな曲ですね…

 文化祭終わったと思ったら、もう次の敵と…原作の展開の速さには焦った。
 敵さんハヤスギィ!?
 フリーザ終わったと思ったら人造人間登場ぐらいの速さかな…

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。