カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼   作:サバ缶みそ味

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 京都の修学旅行、バスの多さで道に迷ってしまいなかなかお寺を回れなかったという苦い記憶しかない…(白目)


26話

「え゛ぇぇぇ⤴!?レキがキンジと!?」

「なんなのアイツ‼爆発すればいいのに!」

 

 帰宅してケイスケからレキがキンジにアタックしていることを聞いたタクトとカズキは苦虫を噛み潰したような顔をして憤慨していた。ケイスケはパソコンの画面を見ながらコーヒーを飲みさらに話を続ける。

 

「諜報科から聞いた話だと三角関係な状況になって、アリアとレキが喧嘩をしたようだ」

「「~っ‼」」

 

 殺虫スプレーをかけられて悶えているゴキブリのように二人はジタバタとしだす。ケイスケはそんなバカ二人を無視してコーヒーを飲む。

 諜報科の情報によると、レキがキンジとイチャコラしているところアリアに目撃され、最初は3人絡みの口喧嘩だったのだがレキがアリアにビンタしたことでゴングが鳴り、徒手格闘でアリアが有利だったがレキが銃剣を使いだし、しかも殺す勢いで襲い掛かったという。キンジがレキを止めて何とかなったが、関係は最悪の状況になったという。ケイスケは予想以上に振りまされていることに苛立ちを感じた。

 

「あのバカ。何やってんだか…」

「リア充は爆発しろ!」

「その通りだ!爆発四散だ‼」

 

 嫉妬で怒っている二人はとりあえず無視することにした。他人の昼ドラはひとまず置いといてこちらの問題に取り掛かることにする。

 

「で、俺達のチーム編成はどうするんだ?」

「ケイスケ、何って言ってんだ。もう決まってるだろ?」

 

 カズキはケイスケに向けてドヤ顔で答える。カズキ、タクト、ケイスケ、ナオト、リサと確かにこうして一緒に住んでいるのだからすでに決まっている事であるが一つ問題が残っている。

 

「じゃあ聞くけど、リーダーは誰だ?」

「「リーダーは俺だ‼」」

 

 バッと自分を指さすカズキとタクトはお互いを見た後すぐに取っ組み合いをした。誰がリーダーを務めるか、これが問題だった。

 

「ケイスケがリーダーだとなー…しごかれそうだし」

「あぁ?カズキ、はっ倒すぞ?」

「そうだ!ここはリサをリーダーにしようぜ!」

「わ、わ、私ですか!?そ、そ、それはリサに勿体無さすぎます!」

 

 リサはあたふたと断り、ケイスケは睨みながらカズキの胸ぐらを掴む。どの面子もリーダーにしては濃すぎる気がする。ふと、タクトはナオトがリビングにいないことに気づく。

 

「あれ?ナオトはどこ行った?」

「そう言えば、宅配便が来たから取りに行っているが…」

 

 そんな話をしているとナオトが大きな段ボールを担いで戻って来た。重たそうにしているので中は結構な量がるように見える。テーブルに段ボールをずしりと置いてナオトは一息ついた。

 

「…ジョージ神父から、荷物が届いた」

「おお!?マジで!?」

 

 今も尚ヨーロッパからなかなか戻ってきておらず、連絡がこないジョージ神父から贈り物が来た。タクトは喜んですぐに段ボールを蓋を開ける。中にはチョコや洋菓子、調味料や置物などあっちの国でのお土産屋で売ってありそうなものが詰まれていた。

 

「さっすが神父!これでお菓子を買わなくて済むぜ!」

「修学旅行に持っていこ!」

 

 カズキとタクトはさっそくお菓子の取り合いをする。そんな二人をよそにケイスケとリサで整理をしていると奥から紙で包装された大きな物が出てきた。しかも手紙が付いておりナオト宛に書かれていた。

 

「ナオト、神父から贈物のようだぞ」

「…俺に?」

 

 ナオトは手紙を見る。手紙には『ナオトへ これは君が使うといい byジョージ』と短く書かれていた。手紙を読み終えてすぐさま封を開ける。

 

「…フライパン?」

 

 中身は黒く輝く底が浅いフライパンだった。グリップは良く、振り回すに丁度良い重さ、軽く叩いて頑丈そうな音がする。無言のままフライパンを凝視し、満足したのか高く掲げた。

 

「ずるいぞナオト‼」

「お前だけいいもん貰ってんじゃねー‼」

 

 未だにお菓子を取り合っているカズキとタクトがプンスカと怒る。ジョージ神父はナオトの養親だしこのぐらいいいのではないだろうかとケイスケは心の中でツッコミを入れる。

 

「…俺の分はいいからお菓子はお前たちにやるよ」

「さっすがナオトだぜ‼」

「よっ、お前こそナンバーワンだ‼」

 

 お好み焼きを返す様にすぐに手の平を返す二人にケイスケは呆れる。

 

「たっくん、さっそく鞄に詰め込むぞ‼」

「おうよ‼今年の修学旅行は俺達がサイキョーだぜ‼」

「お前ら、チーム編成の最終調整する行事だからな?」

 

 カズキとタクトは修学旅行に持っていく鞄にこれでもかというぐらい菓子を詰め込む。ただの修学旅行じゃないというのに緊張感のない二人にケイスケは肩を竦めてナオトの方を見る。しかしナオトはそんなケイスケに同情することなく、リサと一緒に『るるぶ京都編』や旅行ガイドを開いていた。

 

「今年は京都に行くみたいだ。リサは何処に行ってみたい?」

「そうですね…京都には金ぴかのお寺があるって聞きました。リサはそれが見てみたいです!」

 

 ひたすら菓子を詰め込む二人、旅行プランを立て始める二人、そんな彼らを見てケイスケは深く頭を抱えた。

 

___

 

「‥‥」

 

 レキは新幹線の窓側の席に座り、無表情のまま窓から景色を眺めていた。レキの隣に座っているキンジは落ち着けなかった。

 9月14日。修学旅行という名のチーム編成の調整旅行が始まり、これから京都へと新幹線で向かっていたのだが、キンジはうんざりとしていた。レキが付きっきりというからではなく、武偵校の女子がこちらを見てひそひそと話しているからではなく、隣の座席に座っているカズキとタクトが親の仇とでもういかのようにこちらをずっと見続けているからであった。

 

「キンジ…お前、爆発しろよ」

「そうかそうか、つまりキンジ君はそんなヤツだったんだな」

「あのな…ケイスケ、なんとかしてくれ」

 

 キンジは嫉妬の塊の二人の向かい側に座っているケイスケに助けを求めた。しかしケイスケはぶっきらぼうに返す。

 

「知るか。お前がしっかりしてないから起きた結果だろ。自分で何とかしろ」

 

 キンジは項垂れた。ケイスケの隣にいるナオトかリサに助けを求めようとしたが既に寝ていたのでやっけになって自分も寝ることにした。

 

「ね、ね、レキちゃん!お二人が付き合ってるってホント!?」

「あれでしょ?ドッキリってやつでしょ?」

 

 キンジの眠りを妨げるかのようにカズキとタクトがレキに興味津々に聞いてきた。そんな二人にレキは無表情のまま顔を向けた。

 

「…キンジさんとは婚約者の関係です」

「」

 

 その一言で二人は固まる。火に油を注ぐどころではなく火にガソリンをぶちまけてしまったレキをよそにキンジは飛び火が掛からないように必死に寝たふりをした。

 

___

 

「‥‥」

 

 レキは無表情のまま金箔で装飾された金色の寺、金閣寺を眺めていた。流石世界遺産に登録された日本の金色の寺だけあって他県からの観光客だけではなく外国の観光客も多い。

 キンジは項垂れていた。人が多いからではなく、人混みの中離れないようにレキがキンジの腕を組んでいるからではなく、時折ばったり会ってしまう武偵の生徒に何か言われるからではなく、カズキとタクトがこちらをずっとなまはげのような顔で見ているからだ。

 

「お前ら…そんなに俺達に見せつけたいのか…」

「この野郎!ボンバーヘッドになればいいのに!」

「というかなんでお前達に出くわすんだよ!?」

 

 キンジは逆に聞きたかった。京都駅に降りてガイドブックを開いて即席で立てたプランで、最初は清水寺へ行っていたがそこでカズキ達に出くわし、あえて人混みが多いから見つからないだろうと金閣寺へ向かったところ、またしてもカズキ達に出くわしたのだった。

 

すごいです‼(モーイ)本当に金ぴかです‼」

「…八つ橋が売ってる。買いに行こう」

 

 そんな彼らをよそにリサとナオトは楽しく観光しいた。2度も出会ってしまったのでさすがのケイスケも呆れてため息をつく。

 

「あのな、見せつけるのもイチャコラするのもお前らの勝手だけどな…さすがに目立つぞ。なんとかしとけ」

「わ、わかってるっての。次に銀閣寺か三十三間堂のどっちかに向かう予定だが…まさかお前らもか?」

 

 次に向かう場所を話し、ちらりとカズキとタクトの方に目を向けると二人は苦虫を思い切り嚙み潰したような顔をしていた。考えていることが同じだということにキンジは頭を抱えた。

 

「しかたねえな…俺達が別の所へ向かう」

「す、すまないケイスケ。恩に着る」

 

 ケイスケは嫉妬の鬼と化した二人を引っ張って移動する。通り過ぎる際、キンジに耳打ちした。

 

「その代わり…アリアとは仲直りしとけよ?あいつ治療費払ってないからな。そうしないと倍にしてお前に請求するぞ」

 

 ナオトとリサを呼び戻してここから去る前にちらりと視線を向けるとキンジはものすごく項垂れていた。

 

___

 

 

 結局、次に向かう三十三間堂はカズキとタクトが嫉妬の鬼から嫉妬の神にランクアップしてしまうので地図上で近くにある仁和寺へと向かうことにした。

 

「リア充は爆発しやがれ!」

「ほんとにさ!大爆発でもしろっての‼」

 

 道中、カズキとタクトは爆発しろと愚痴を言い続けていた。あれだけ見せつけられたらああ言うしかないだろうなとケイスケも頷く。

 

「あいつもあいつなりで何とかしようとしてるみたいだが…気が遠くなりそうだな」

 

 果たして仲直りはできるのだろうかと気にはしていた。そんな時、タクトの歩みがぴたりと止まる。

 

「うん?たっくん、どしたの?」

「なあカズキ、あそこに人が倒れてね?」

 

 タクトが指さす先には裏道のど真ん中で黒の革ジャン、黒のレザーパンツを身に着けた大男がうつ伏せで倒れていた。カズキ達はその男の所に駆け寄りケイスケが脈をとる。

 

「脈は…あるな」

「だ、大丈夫ですか!?」

 

 カズキが恐る恐る尋ねると男は顔だけあげてこちらを見る。黒のオールバックで黒い太い眉に鋭い目つきとまるで怒れる虎、憤怒する鬼のような顔つきだった。カズキ達はギョッとして焦るが男は弱々しく声を発する。

 

「み、水…それと…飯…」

「は、腹が減ってるんだな!?たっくん、水と何か食べる物!」

 

 カズキに呼びかけられたタクトはすぐさま水とカズキのお菓子を男にあげた。ついでにナオトもお店で買った八つ橋をあげた。男はすぐさま水を飲み、菓子をがっつくように食べだす。

 

「ふぅ…」

 

 食べ終わった頃には元気を取り戻し立ち上がった。体格もがっちりとしており、身長は180は軽く超えている程の大きさにカズキ達は愕然としていた。男はふっと笑って左手で右手の拳を包み頭を軽く下げる。

 

謝謝(シェシェ)。お前たちのおかげで助かった」

「いえいえ、武偵として当たり前のことをやったまでですよ」

 

 タクトは胸を張って返す。俺達は武偵として当たり前の事はそんなにやってないのになとケイスケとカズキは心の中でツッコミをいれる。ナオトは気になっていたことを尋ねる。

 

「…どうして倒れてたんです?」

 

「うむ、俺の上司が人使いが荒くてな。人探しをして来いと言われ中国から日本まで自力でやってきたのだ。その道中で腹が減ってしまってな…」

 

 男は不覚をとったかのように落ち込んで答えた。それを聞いたリサは心配そうに男の方を見る。

 

「自力ですか…大変ですね」

「なに、『猿』の相手をするよりかはまだ楽な方だ」

「人探しをしてるって…どんな人を探してるんですか?」

 

 タクトが興味津々に尋ねると男は少し考え込んでいた。話すかどうか考えていたようだがふっと笑って答えた

 

「『璃巫女』と呼ばれる少女を探している」

「りみこ?」

 

 カズキとタクトは首を傾げる。変わった名前の女の子だと感じた。

 

「俺の仲間の話だとこの京都にいると聞いた。これから人探しを再開する」

「りみこちゃん見つかるといいですね!もし猫の手も借りたい時は俺達を呼んでください!」

 

 ドヤ顔でポーズを決めるタクトに対し、男は高笑いをする。

 

呵呵呵呵(かかかか)‼面白いなお前たちは。気に入ったぞ」

 

 男は踵を返して去ろうとした。その前に目線をこちらの方にむけた。

 

「おっと、助けてくれた礼として俺の名を教えよう‥‥俺の国ではルーブーと呼ばれている。お前たちの国ではry」

「オケーイ‼わかりましたぜ、ルーさん!」

 

 カズキは男の話を遮って即答した。ルーさんと呼ばれた男は目を丸くしていたが高笑いして手を振って去っていった。

 

「うん?ルーさんは中国から来たって言ってたからルーブーは中国語の読みだろ?」

「ケイスケ、どうかしたのか?ルーさんはルーさんだろ?」

 

 ルーブーと聞いてケイスケは何か引っかかったような感じで首を傾げていた。

 

「どっかで聞いたことがあるんだよな…」

 

 ケイスケは気になって仕方なかったのだが、その後『アリア、激おこぷんぷん丸』という題名で送って来た理子のメールを見て深く考え込むのをやめた。




 太郎は日本では『たろう』と読みますが、中国語では『タイラン』と読みようですね。
タイランて…かっこよすぎ(コナミ感)

 ルーブー 中国でググルと…

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