カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼   作:サバ缶みそ味

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 昔はシャーロック・ホームズの本を読んでいたのに、シャドーゲームでホームズの兄がいたことに驚いた。


24話

「その…マイクロソフトってどんな人なん?」

 

 いつまでも首を傾げているカズキにケイスケは苛立ち押し寄せるように言い寄った。

 

「だからマイクロフト・ホームズっていうのは名探偵シャーロックの実兄で、卓越した頭脳を持ち英国政府の政策にも携わり、弟のホームズが政府そのものっていうぐらいの凄い奴だよ‼」

「つまり、シャーロックのお兄さんってことだな!」

「そういってるじゃねえか!バカか」

 

 何度も説明してカズキとタクトがやっと理解したことに物凄い疲労感を感じた。

 

「ところで兄さん、僕の所に来るという事は…MI6絡みかい?」

 

 MI6、イギリスの外事諜報組織、英国情報局機密情報部(SIS)の通称であり、捜査の他に戦い、防諜、内偵を行う組織である。ジョージ神父はにこやかに首を横に振った。

 

「いや、もう英国政府から隠居している身でね。今回は私個人の行いだ」

「やっぱり、兄さんに遺書を送ったのはまずかったかぁ」

 

 名探偵らしくなくシャーロックは苦笑いして頭を掻く。ホームズ兄弟のやり取りを見ているとカズキ達の前いるのは名探偵ではなくよくあるような兄弟そのものに見えた。

 

「ここで長話は酷だろう。広間があるからそこでゆっくり休むといい」

 

 ジョージ神父はそう言ってシャーロックを連れて長い廊下を進んでいった。カズキ達もついて行くが恐竜の骨格標本や天然大理石の彫刻、大きな書庫や人工芝の大温室等、目を見張るものがあった。

 

「すっげぇぇっ!?ここに暮らしたいんだけど!」

 

 タクトとカズキが目を輝かせて興奮し、ケイスケは大理石の床や潜水艦の中の自由な造りに驚く。そして寛げるにはペルシャ絨毯が敷かれた広いホールに着いた。

 

「弟の2番煎じの造りだが…ここで休んでくれ」

 

 ジョージ神父とシャーロックはロッキングチェアに座る。ケイスケは躊躇っていたが、タクトが遠慮なしに喜びながらど真ん中に置かれてあったキングサイズのベッドにダイブした。

 

「いやっふぅぅっ‼」

「すっげえ‼ふっかふかだー‼」

 

 タクトに続いてカズキもベッドにダイブして跳ねながら遊ぶ。まだまだ元気があるじゃないかとケイスケは呆れる。そしてナオトに至っては、大きなクッションを枕にしてスヤスヤと眠っていた。リサとジルはシャーロックと話をしているジョージ神父の近くに立ち、セーラはベッドで遊んでいるカズキとタクトをジト目で見ていた。

 

「なぁ、この潜水艦、どこへ行くのか分かるか?」

 

 ケイスケは取り敢えず話を聞けれそうなセーラに尋ねた。しかしセーラはムスッとした顔をして首を横に振る。

 

「知らない。教授の潜水艦に向かう途中、突然あの神父が現れて私を連れるし『君を雇いたい』と言って報酬を渡して、詳しい依頼内容を話してくれなかった」

 

 セーラにも詳しい内容を話していない。そうとなると直接聞くしかない、そう考えを察したのかジョージ神父がにこやかにケイスケに伝えた。

 

「心配することはない。1日ほどの回遊だ。浴場や食堂、寝室もある。それまで自由にしてくれたまえ」

 

 読心術でも備わっているのかとケイスケとセーラは苦虫を噛み潰したような顔をする。全くもってあのジョージ神父ことシャーロックの兄は読めない。

 

「ケイスケ‼すげえぞ、マリ夫カートもあるぞ‼」

「この俺のドライビングテクを見せてやるぜー‼」

「しゃあねえな…俺もやる‼ナオトをたたき起こせ!」

 

 テレビゲームをしだす緊張感のない二人につられ、ケイスケものることにした。セーラはそんな4人を見てため息をついて呆れていた。

 

__

 

 潜水艦は浮上して島へと停泊した。ハッチを開けて景色を見るとコバルトブルーに透けたの海、真っ白な砂浜、遠くから見える緑の木々の森に目立つような病院のような白い建造物が見えた。

 

「常夏の島だぁぁっ‼」

 

 艦橋から垂れ下がる縄梯子を真っ先に降りたタクトがはしゃぎながら白い砂浜を駆け回る。セーラ、リサ、カズキ達、ジル、シャーロックとジョージ神父の順で降りていき、島を見渡す。

 

「いやいやいや、ここどこだよ」

「地図上では南太平洋にあるフィジー諸島の近く。英国政府にいた頃の私のプライベート用の島だ」

「懐かしいなぁ。僕がライヘンバッハから帰ってきて、兄さんに世界旅行したいからと頼んで買い取ってもらった島だね」

 

 さらっと凄い事を言う兄弟にケイスケとセーラとリサはぎょっとする。砂浜を通り、削って作られた石の階段を上がり、森の一本道をぬけると開けた草原に建つ白いホテルのような建物に辿り着いた。

 ジョージ神父が扉を開け、カズキ達を中へ入れる。中は大理石の床に、豪勢なシャンデリアが吊るされた病院とホテルが掛け合わせたようなロビーが広がっていた。

 

「シャーロック。少しの間、治療を受けてもらうぞ」

 

 ジョージ神父が指をパチンと鳴らすと白衣を着た医者と思える人達がやってきた。そんな医者達を見てシャーロックは納得するように頷く。

 

「なるほど、ルーマニア国立加齢科学研究所(INGG)のマーリア女史に依頼したのか」

「その通り。彼女に頼み、お前を蘇生するとともにNMNでサーチェイン遺伝子の活動を亢進させ若返りも行う」

 

 ホームズ兄弟の会話を聞いてケイスケとリサは驚く。

 

「INGGにNMNって…ほんとジョージ神父のコネはどうなってんだよ」

「蘇生治療、若返りも行うんですか…!?」

 

 二人が驚いている一方でカズキとナオト、タクトに至っては難しい事ばかりで目が点になって首を傾げていた。

 

「つまり、どういうことだってばよ?」

「あれじゃね?シャーロックさんがショッカーになる的な手術を受けるんじゃね?」

「…しょっかー」

 

 ナオトのくだらないギャグを聞き、3人はドッと笑いあう。そんなやり取りをケイスケとセーラは無視をする。するとシャーロックがカズキ達に近づきにこやかに手を差し伸べた。

 

「カズキくん、ケイスケくん、ナオトくん、そしてタクトくん。君たちには本当に感謝している。君たちのおかげでまた冒険をしたくなったよ」

 

 カズキ達は少々照れながらシャーロックの手を取り握手をする。次にシャーロックはリサの方に視線を向けた。

 

「リサ、君には辛い思いをさせてしまったね。助言を伝えれられなかったこと、危険な目に会わせてしまったことを心から詫びよう」

 

 頭を下げているシャーロックにリサは慌てていたが、優しく微笑む。

 

「教授様…お気になさらないでください。今はもう…リサは大丈夫です。ですからお顔をお上げください」

 

 顔を上げたシャーロックはほっと一安心したように微笑む。そしてセーラに申し訳なさそうににこやかに見た。

 

「セーラ、君には大変申し訳ないのだが…彼らの手助けをしてくれないかい?」

「えっ」

 

 シャーロックに頼まれたセーラは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして驚く。立て続けるかのようにジョージ神父がにこやかに彼女の肩に手をポンと置く。

 

「そうだ。言うのを忘れていたのだが、シャーロックが生きている事は『イ・ウー』や他の組織には秘密だよ」

「えっ…あっ!」

 

 セーラはハッと気づく。今、『イ・ウー』の一員としてシャーロックが生きている事を知っているのは自分だけ。他はシャーロックは死亡、イ・ウーは崩壊したと見ており、()()()()()()()()()に備えて動いている。

 もしシャーロックが生きている事を知ればその場は混沌とするだろう。この事実を知っている自分を口封じするのかとセーラは警戒するがジョージ神父はにこやかにする。

 

「そこで…君をしばらくの間、本格的に雇いたい。依頼料である24金、99.99%(フォーナイン)以上の金地金(インゴット)。60㎏は勿論、それの数倍の報酬も用意しよう」

 

 セーラは頭にしわを寄せて考え込む。ちらりと視線を変えれば目をタクトがキラキラと輝かせこちらを見ており、シャーロックは苦笑いしてセーラに補足する。

 

「兄さんの財力は底無しだ。セーラ、僕からもお願いする」

「金の他に…君の好物であるブロッコリーを栽培できる畑も手配しよう」

 

 好物のブロッコリーを聞いて、セーラはぐぬぬと悔しそうにするがやっけになって頷いた。

 

「前金として依頼料の2倍!くれないとすぐに手を切る」

「いやったー‼セーラありがとぉぉっ‼」

「ウォーウォー,セーラ~♪迷わなーいでー♪もーっと感じるままにー♪」

 

 喜んで抱き着くタクトに、セーラを励ますかのように音程を外して歌うカズキにセーラはムスッとする。そんな彼らを見てシャーロックはクスリと笑い、医師たちの方へ歩み寄りカズキ達の方に顔を向けた。 

 

「そろそろかな…しばらくの間、僕は療養する。それまで会えないが…いずれまた会おう」

 

「シャーロックさん‼今度会うときは…皆で桃鉄でもやりましょー‼」

 

 タクトは手を振って去るシャーロックに向けて叫んだ。なんで桃鉄なのかとカズキ達はずっこけそうになった。シャーロックに至っては笑いながら去っていった。シャーロックは医療棟へ去っていき、ロビーにはカズキ達とジョージ神父だけが残っていた。

 

「さて…カズキくん達にはお礼をしなければな」

 

 一息いれたジョージ神父がにっこりとカズキ達の方に視線を向ける。

 

「やっと終わったかよ。これから帰るのか?」

 

 ケイスケがこれまでの仕返しかというようにぶっきらぼうにジョージ神父を軽く睨む。それは察していないのかジョージ神父は愉悦な笑顔で返す。

 

「そうだな…君たちの夏休みを削った分、ここで休暇をとるといい。水着、花火、遊ぶのに必要なものがあるのなら用意してある」

 

 子供じゃあるまいし、そんなお返しに乗るかとケイスケは言おうとしていたがカズキとタクトが大喜びしていた。

 

「マジっすか!?たっくん、これから海へ泳ぎに行こうぜ‼」

「よっしゃー‼海も泳ぐし、虫取りもするし、花火もするぞー‼」

 

 マジかよとケイスケが頭を抱える。さっさと帰ろうと意見をしようとするが、リサも興味津々にしていた。

 

「そ、それでしたら…リサも花火をしてみたいです」

 

 少し控えめに、少し照れながら言うリサにカズキとタクトはさらにテンションをあげる。

 

「そうこなくっちゃな‼さっすがリサだぜ‼」

「ケイスケも、セーラちゃんも皆で行こう!」

「なっ、わ、私も!?」

 

 ノリノリで手を取るタクトにセーラは慌てる。ジト目で冷静なセーラだったがハイテンションなタクトに振り回されて焦っていた。

 

「もちの論だ!多い方が楽しいじゃん!」

「わ、私はいい。お前達で勝手に…」

「ヒャッハー!バケーションだぜー‼」

「話を聞け!」

 

 話を聞かないタクトに引っ張られセーラは咄嗟にケイスケの方に顔を向ける。助けが欲しいようだがケイスケはやれやれと首を横に振った。

 

「諦めろ。たっくんは人の話を聞かないからな」

 

 さーっと顔を青ざめるセーラをよそにタクトはセーラの手を取りそのまま外へ走って行った。タクトに続き、カズキが歌いながら駆け出していく。ケイスケもため息をついて彼らの後を追いかけて行った。

 

「ナオト様は行かないのですか?」

 

 話に入っていなかったナオトが気になってリサはナオトの方に振り向く。すでに水着に着替え、イルカの浮き輪を抱えているナオトがいた。

 

「…思い切り楽しまなくちゃ」

 

 用意周到であるナオトにリサはくすっと笑う。

 

「そうですね。それでは私も着替えて、セーラ様の水着も用意いたしますね」

 

 

 

「彼らは面白いな…。ベイカー街遊撃隊の少年たちを思い出すよ」

 

 シャーロックは広いベランダから海辺で遊んでいるカズキ達を眺めていた。

 

「兄さん、この先に起こるであろう戦いに彼らも参加するのかい?」

 

 シャーロックの隣でカズキ達を眺めているジョージ神父の方に視線を向ける。ジョージ神父は真剣な表情で頷きふっと笑う。

 

「彼らでないとできないことがあるんだ。君の言う、アリアとキンジ君に『緋弾』を託すように、私も彼らに託している」

 

 『緋弾』と聞いてシャーロックは目を丸くするが納得したように笑う。『緋弾』の事を知っていたジョージ神父に参ったと軽く両手をあげる。

 

「兄さんにはお見通し、か…色金をめぐり、世界を渦巻く戦役に彼らはどう関わるのか、興味を持ったよ」

「まずは…ジル、すまないがヨーロッパに向かい調べてほしいことがある。頼めるかな?」

 

 ホームズ兄弟の後ろにいたジルはすっと跪いて承知した。

 

「お任せくだされ。ジャンヌと私を救ってくださった恩人、タクト殿のためにもこの役目、務めましょう」

 

 

___

 

 

「‥‥え?それってマジか?」

 

 

 広い豪邸の中、男は今耳に入った報告を聞いて呆然としていた。男に伝えた白のボディースーツを着た兵士は恐る恐るもう一度、伝える。

 

「は、はい…シャーロックを仕留めることができず、そのまま逃げられたとのことです…」

 

 それを聞いた男はわなわなと震え、立ち上がる。

 

「ファァァァァァァッック‼」

 

 男は激昂し、もっていたノッキーン・ポチーンの瓶を思い切り床に投げつけ、氷を入れたウィスキーグラスも投げ割る。

 

「何故だ!?何故だ!?奴のICBMもあの島に落ちるように細工もして、沢山の兵も事前に潜ませて、死にかけのあいつならいつでも殺せたはずだぞ!?」

 

 怒り狂う男に兵士はびくびくとしながらさらに報告を続ける。

 

「そ、それが…奴には、シャーロックに4人ほどの護衛がいて…更に2人の異能者に邪魔をされ…」

「4人!?たった4人に百ほどの兵が負けたとでもいうのか、くそったれが‼」

 

 男は怒り任せにガラス製の灰皿も床に叩き付けて割り、叫びながら壁を怒り任せに殴る。

 

「クソが‼ライヘンバッハで奴が生還した時といい、カムデン・ハウスの時といい…なんでシャーロックを殺せないのだ‼」

 

 フーッと息を荒げながら男はわなわなと震えて怒り喚く。

 

「おのれ…‼我が一族が敬愛し、崇拝する『教授』の名を盗んだ忌々しい探偵め…‼今に見ていろ!こうなったら貴様と貴様の相棒の曾孫共の息の根を止めて血筋を絶たせてやる!」




 原作20巻でマーリア女史についてシャーロックが話してたけど…人間に擬態しているブラドの『人間』の夫人でいいのかな?
 色々ごっちゃになってるけど…これでいいや‼(白目)

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