カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼   作:サバ缶みそ味

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 7Days crisisもいよいよ終わり、エピローグです

 結構押し込んでしまってるような気が‥‥(土下座


128話

 一体どうしてこうなってしまったのか。民由党が代表、鬼島一郎は内心焦りを募らせていた。

 

 豪華客船のジャック、地上部隊の制圧、対象であった神崎かなえと遠山キンジの抹殺と同時に起こるはずだった。それが豪華客船の人質は菊池サラコを台頭にした菊池財閥の連中に奪還され、地上部隊は武偵と公安の連携により全員逮捕、そして首謀者であるフレイヤが捕えられどういうわけか失敗に終わってしまった。

 

 この事件をきっかけにNが日本の裏社会を掌握し、武器の裏流通がより通りやすくなる予定が大幅に狂わされ壊されてしまった。このままでは彼女達に関与している自分達も危うい。今は解放された人質のふりをして何とかこの場を凌ぎ、雲隠れをするか国外へ逃げるかの算段をしなければ。既に補佐の鷹山に命じて車の手配をするように仕向けている。岸に着いたらすぐに車に乗り込んでこの場を離れなければ、焦る鬼島は岸に到着したAAV7のハッチが開かれると我先にと出ようとした。

 

「‥‥待ってましたよ、民由党代表の鬼島一郎さん?」

 

 地上で待ち受けていたのは獅堂ら公安0課の面々だった。こちらを睨んでいる視線に鬼島一郎はドキリとしたがここで焦ってしまっては怪しまれる、いつもの平常心でやりすごさなければ。

 

「これはこれは公安0課の‥‥あちらの武装した連中の制圧、ご苦労様ですな」

「ええ、一時は混乱が起きましたが警察と武偵、そして公安が一致団結したおかげですぐに制圧することができましたよ」

 

 それならば何故待ち受けていたのか、一時も早くこの場を離れなければ。

 

「それは良かった。それでは事後処理は任せましたよ?何しろこの後記者会見やらマスコミやメディアに顔を出さなければならないようですし‥‥」

 

「いや、あんたらは顔を出す必要はねえ。今回の事件にあんたらが一枚噛んでいるようで、じっくり話を聞かなきゃなんねえからちょーーっとばっかし俺らと来てもらおうか」

 

 獅堂の鋭い眼光に鬼島一郎は冷や汗を流した。何故知っているのか、焦りは更に募らせるがなんとか落ち着かせる。彼ら公安0課は解体しようとした仕返しにでっち上げて今回の責任を擦り付けるつもりなのだろう。そう考えた鬼島一郎は乾いた笑いを出す。

 

「ははは‥‥何を言い出すかと思えば、面白い事をおっしゃる。私達は被害者ですぞ?出鱈目を言う場合ではないと思うのですがね?」

 

「しらばっくれんじゃねえ。こちとら証拠は嫌という程揃ってやがんだ。お前らが私設軍隊を持つ猿楽製薬とつるんで密造している銃器を買い、それらを裏へ流していること、この事件の武装した連中に武器を流したこと。音声や資料、写真と山ほどあんだ」

 

 今ここで見せてやろうか?と怒り睨む獅堂を見て鬼島一郎はゾッと顔を青ざめた。彼らが言っているのは間違いなく本当だ。どうやって証拠を集め手に入れたのか、心当たりがあるとしたら‥‥もう菊池財閥しかない。菊池財閥が、菊池サラコらが関与したのだろう。もう逃げ場はない、逃げられないと悟った鬼島一郎はへなへなと座り込んでしまった。

 

 今回の事件の容疑者と関与した連中を逮捕し、部下に連行させてやっとひと段落ついた獅堂は大きくため息をついた。今回の事件は全ては菊池財閥の手柄となってしまった、借りも作ってしまったし、菊池雅人にまた一手先を取られたことに悔しさが募る。

 

「ったく‥‥事後処理もあいつらに押し付けるか‥‥」

 

 獅堂は事後処理も菊池財閥に押し付けてやろうと考え、タバコをふかしながら海上に浮かんでいるアートになってしまった豪華客船を眺めた。

 

 

 

「おおう静刃、マキリは逃げられたのかじょ?」

 

 無人となっている橋の上で海上に浮かんでいるアートになってしまった豪華客船を眺めていた静刃に鵺がニヤニヤしながらやってきた。

 

「ああ‥‥マキリはあの船が一部切り崩されたのを見て帰っていった」

 

 静刃はマキリを足止めするために彼女と戦っていたが、豪華客船の一部が切り崩されたのを見て『もう計画は破綻した、これ以上関わる気はない』と言って去っていった。相手は本気で戦っていなかったようだが、ヴァーミリオンの瞳をもってしてでも倒せなかった。後々厄介な強敵になるだろうと考えていたがそんなことよりもとジト目で鵺を睨む。

 

「おまえ、カズキ達と一緒じゃなかったのかよ」

「ああー‥‥あいつら勝手にどっか行ってはぐれた」

「はぐれたぁ!?」

 

 タクトがトイレに駆け込んで、カズキが迷子になった時に鵺はカズキ達とはぐれてしまった。鵺とはぐれるとは何という4人組か、と静刃は呆れ果ててしまう。

 

「まあいい‥‥俺はこのまま獅堂の下へ戻る。いい加減戻らねえとどやされるからな」

 

 今回は獅堂の指示があってあの4人組に協力をした。相も変らぬハチャメチャすぎる彼らの行動に振り回されたと静刃は苦笑いしてため息をついた。次は絡むことはないだろうと願うが恐らくだがすぐにまた出会いそうな気がしてならない。ふとポケットに入れていた携帯が鳴った。4人組の誰かだろうかと確かめてみれば電話の相手は獅堂だった。

 

「静刃、どうした?電話に出ないのか?」

「‥‥絶対嫌な予感しかない」

 

___

 

「はぁ~‥‥やっぱ実家とリサの手料理の方が落ち着くわ~」

「ここがメシアやぁ~」

 

 カズキとタクトはリビングでだらけきっており、ナオトは鼻提灯を膨らませて眠っていた。あの事件から数週間が経過した。事件直後の事情聴取はタクトの付け足しすぎる解説で更に混乱するわ、ナオトが勝手に何処か行くわ、カズキが突然歌いだすわで混乱を極めた。

 そして緑松校長からカズキは単位獲得できたので彼の進級は認められ、ケイスケは武装検事の黒木から任務達成ということで国際武装警官への一歩を踏み出すことができたと認められた。ナオトは獅堂からもう厄介払いされ、タクトはいつも通りとやっと我が家に帰れたことに喜び、寛ぎまくった。

 

「おらお前らそこどけ、掃除の邪魔だ」

 

 ケイスケが掃除機をかけながら寝転がっているカズキ達を蹴とばしていく。事情聴取後の記者会見は菊池財閥の代表、タクトの母親の菊池サラコがすべて行った。いままでいがみ合っていた武偵庁と警察、警視、公安が協力したことにより国内のテロを未然に防げたことと今後『N』のような武装組織に対する司法の強化、彼らへの武器や人材を全て菊池財閥がバックアップをすること、今後武偵とは違った人材育成機関を設立することを語った。

 

「今回は菊池財閥の一人勝ちな気がする‥‥」

 

 セーラはムスっとした表情でブロッコリーの塩ゆでを食べながら頷く。結局イ・ウーはタクトが未だ仮ではあるがリーダーになってしまったことで研鑽派は吸収、主戦派はその筆頭であったフレイヤが破れたことにより沈静化または分散していった。真面な機関に雇われたと考えればマシだろう。今回の事件で菊池財閥に刺激されたことにより国内の司法は改めて変わることになる。そうすれば裏で流通される武器や麻薬、密航してくる武装組織もより取り締まるが効くことになるかもしれない。

 

 だが変わったのはいい事ばかりではない。今回の事件の容疑者のひとり私設軍隊を持っていた猿楽製薬の社長、木村雅貴は逮捕できなかった。公安や警察が彼の会社に押しかけた時には既に彼の姿は消えていた。既に海外へ逃げたか『N』へと逃げていったのだろう。そして今後『N』による攻撃も激化し、菊池サラコやタクト達もその対象になるに違いない。

 

「だというのにお前達と来たら‥‥」

 

 セーラはだらけきっているカズキとタクト、普通通りのケイスケとリサ、そしてぐっすり眠ってるナオトを見て相変わらず平常通りだとため息をついた。おかげで見ているこっちも緊張感が抜けていく。

 

「セーラちゃん、こういう時はどんな事態にもどしっと構えれる余裕を持たないと!俺みたいに‼」

「たっくんの場合はだらけきっているだけでしょ」

「おまえ、ナオトの余裕っぷりを見てみろ!鼻提灯膨らませて寝てんだぞ‼強者じゃねえか!」

「お前達の強者の基準がいろいろとおかしい」

 

 何処をどう見たら強者というのか、セーラは呆れてため息をつく。今はやっと得られた平穏に寛いでいるがすぐにでもまた厄介事が起きて巻き込まれるのだろうと少しだけ覚悟はしていた。

 

「お前らだらけてねえで手伝え。部屋の掃除をリサに任せっぱなしすんじゃねえよ」

 

 ケイスケは掃除機をかけながらごろ寝しているカズキ達を蹴とばしていく。こんなだらけきっているタクトが今後本当にイ・ウーのリーダーになるとしたら、とセーラは考えたらなんだか胃が痛くなってきた。隙を見てこっそり抜け出そうかとセーラは立ち上がった。

 

「やっほー、バカ息子ー!元気してるぅー?お土産も持ってきたわよぉー」

 

 そこへどかどかと菊池サラコが上機嫌でやってきた。嗚呼、もう逃げられない。セーラはまた胃が痛くなってきた。ごろ寝していたタクトとカズキはガバッと起き上がり彼女の持ってきたお土産にたかっていく。

 

「母ちゃん、ゆっくりしていってね‼」

「たっくんはゆっくりしすぎてただけだでしょ」

「流石はバカ息子、見事な余裕っぷりね!これなら将来安泰だわー」

「どこをどう見たらそうなるの」

 

 どうして自分はこのバカ親子のツッコミ役をしているのだろうか、セーラは自分が菊池家のペースに乗られてしまっていることにもう何が何だかわけがわからなくなってきた。サラコがソファーにどかりと座り、リサが注いできたお茶を飲むと物凄く満足して頷く。

 

「美味い‥‥リサちゃん、貴女いいお嫁さんになれるわよ!」

「お、お嫁さん!?も、も、勿体なきお言葉ですよ‥‥!」

 

 サラコに褒められたリサは顔を赤らめてへにゃりと照れだす。茶化すサラコにセーラはジト目で睨んだ。

 

「ここに来たのは用事があって来たのでしょ?」

「鋭いわねー、流石はバカ息子の秘書」

「秘書じゃない!はやく本題に入って」

 

 タクト達はサラコのお土産であるバターサンドを只管食べてるし、リサは照れまくっているし、彼らが話を聞かなくなる前に本題に入ってほしい。むすっと頬を膨らませるセーラにサラコは高笑いして本題に入ろうとした。

 

「あの一件でイ・ウーは再評価された。今後は菊池財閥の下で新たな人材育成機関、派遣機関として改築していくわ」

「埋もれるか朽ちるかの末路よりかはマシだけど‥‥」

「でもねぇ、『N』との戦いとか今後の事を考えたらそれでも人材不足なの。やっぱり纏める人と手練れた人や組織は必要よね」

 

 彼女の言っている事にセーラは少し嫌な予感がよぎる。確かにイ・ウーはトップであったシャーロック・ホームズが抜けたその直後に内部対立が深まり、その対立は戦役にまで至った。

 

「それから‥‥息子達が国際武装警官を目指している事を武装検事の方から聞いてね、そこで緑松校長にその事を話し息子達に海外研修させてみてはどうかと提案したの、校長は喜んで賛成したけど武偵庁までもが賛成してきたことにはビックリしたわねー」

 

 サラコが先手を打ってきた。戦車で爆走するわ、あちこち破壊するわ、船や建物壊すわで武偵庁も彼らの暴走はもはや止められないと匙を投げた。国内に被害が及ぶ前に海外で押さえる、そう考えた武偵庁は彼女の提案に喜んで飲んだのだろう。そして間違いなく協力させられる、口実を取られたセーラは逃げ場がもう失われたと察した。

 

 サラコは懐から6枚の手紙をタクト達に渡した。ご丁寧に赤いシーリングスタンプで封されている手紙だ。ペーパーナイフで開けて取り出すと何やら外国語で書かれた紙が出てきた。

 

「ほふぉえふぇふぇっふぉ、ふぇふぉふぃふぉ?」

「たっくん、バターサンド食うか手紙を読むかどっちかにしろ?」

「というかこれ何語?全然読めねえ。未知との遭遇だわこれ」

「バターサンドおいしい」

 

「これは…イ・ウーの同窓会のお知らせのお手紙ですね」

 

 良かった。ここにリサがいて本当によかった。セーラは実家のような安心感を得られてほっとした。

 

 手紙の内容は第一回となるイ・ウーの同窓会を5月23日にイタリアのヴィア・デル・コルソで行うとのこと。その他会場や時間帯等々細かく記載されていた。リサが一つ一つ丁寧に説明してくれたのだが、タクトは不思議そうに首を傾げていた。

 

「その‥‥コンソメがなんだって?」

「コンソメパンチは美味いよな!やっべコンソメパンチ食いたくなってきた」

「コンソメで思い出した、コンソメはまだ残ってたか?無ければ買い出しに行くが」

「俺はうすしお味がいい」

 

「サラコさん、話は私が聞くからもうこいつら無視して話進めて」

 

 セーラはもう諦めて彼らの代わりに話を聞くことにした。

 

「シャーロックさんもこの第一回の同窓会に参加するみたい。でも、これは『N』を誘き出す為の罠。彼は決死の覚悟で刺し違える気でしょうね」

 

 今回の事件で『N』と真っ向勝負をすることになった。シャーロックだけでなくタクト達も出るとすれば必ず『N』は現れるだろう。そしてイ・ウーのリーダーであったシャーロックが刺し違える覚悟でいる事に驚きを隠せなかった。

 

「シャーロックさんは私達にとっても、『N』と対抗するためにも大事な人材‥‥それでタクト達にはシャーロック・ホームズの救出と護衛をお願いしたいの」

 

「オッケー‼母ちゃんの頼みとならやんねえとな‼」

「たっくん、決断が早すぎ」

 

 詳しい内容も聞かずすぐに即決するタクトにセーラは項垂れる。了承してくれた息子にサラコは満足そうに頷くと更に話を続けた。

 

「それがまず一つ」

 

 まさかまだやってもらう事があるのかとセーラはギョッとした。

 

「その足でイタリアから香港へ。藍幇へちょーっと挨拶してきてほしいの」

 

 イ・ウーの次は上海を拠点にしている秘密結社、藍幇。非戦闘員を含めると100万も上る大きな組織だ。まさかその藍幇をも取り込んでと彼女は考えているのかとセーラは焦るがサラコはにっこりとして首を横に振った。

 

「まあ今後とも御贔屓にっていう挨拶よ。でも、藍幇はまとめ役である諸葛静幻が病に弱まっているせいで後継者争いが内部で勃発してるみたいでね?静幻さんを助けてあげたら彼らに借りができるでしょ?」

 

 やはりとんでもない事を考えている。彼女の楽しそうな笑みを見て胃がキリキリしてきた。

 

「母ちゃん!そんで香港に行って何すればいい?」

「そうね、香港に行ったら諸葛静幻を助けてちゃんとした後継者を見つけてあげて。『N』はシャーロックと諸葛静幻、この二人の巨頭を潰し、混乱を狙っているわ。それを必ず阻止して頂戴」

 

「っしゃあ‼イタリアに香港か!そうと決まれば早速旅支度だぜ!」

「リサ、このバカ共にイタリア語の復習と中国語を教えてやってくれ」

「衣服と弾丸の補充と‥‥あと武器はどれくらい持ってく?」

「お前ら、40秒で支度しな!」

 

 重大すぎる任務になったことに対して平常通りの4人にもう動揺しなくなった自分が怖い、セーラはそう考えながらも胃が痛くなってきた。

 

 日本からイタリア、そしてイタリアから香港と次は長旅になりそうだ。 





 次なる舞台はイタリア、そして香港。
 
 どうしよう、この物語はセーラちゃんが心労で倒れそうな気がしてならない。
 原作じゃあまり登場しないからって思って多く登場させた結果これだよ!シカタナイネ!

 そして病に侵されてる諸葛さんや猴ちゃんが彼らのカオスに耐えきれるかどうか心配になってきた

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