カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼ 作:サバ缶みそ味
発熱時は本当に何も動きたくないでござる状態でヤバカッタ。皆さんもインフルにはお気をつけて
治るまでハーゲンダッツ毎日食べたのはよかったけども
Day:4
「ナオトのバカはどこだ!?」
早朝、静刃のアパートに獅堂の怒号が響き渡る。憤怒の表情で押しかけてきた獅堂に丁度朝食を食べている最中のキンジと可鵡偉はポカンとしていた。
「おい、ナオトはどこ行った?あの野郎やっぱりやらかしやがって‼」
昨日のピラミディオンでの張り込みはナオトと静刃の活躍で幾人かの武装組織の人物をお縄に捕える事はできた。表面的に見れば確かに大手柄なのだが、ピラミディオンはナオトがMK3手榴弾やスタングレネードを投げまくったせいで中はあまりにもひどい惨状となっており、あちこち切り崩れているわ大穴が開いてるわで崩壊状態になっていた。
昨年にせっかく修理したばかりなのに前よりもひどく壊されてしまい、大惨事となってしまった。公安にとっても獅堂にとっても結局はプラマイゼロの結果に項垂れていた。そのやらかした張本人にげんこつを入れようと来たのだがナオトの姿が見当ない。そんな完全に激怒している獅堂に対し、可鵡偉は視線を逸らしながら申し訳なさそうに口を開く。
「し、獅堂さん、ナオト先輩なら‥‥静刃先輩と朝から出掛けました」
「なんだと‥‥あんの野郎、ずらかりやがったな!?可鵡偉、遠山‼お前らさっさと飯を食ったらあのバカを探せ‼ほっといたらまた何やらかすか分からんぞ‼」
「いやちょ、俺もか!?」
キンジは自分も巻き込まれている事にギョッとする。自分は獅堂ら公安に半ば無理矢理に手伝わされてた挙句、今度はナオト探しに駆り出されることにあまり乗りたくなかった。
ピラミディオンでの騒動でカナにばったり会い、自分が狙われている事をカナから聞いたキンジは此処から出ようと考えていた。自分の命を狙っているのなら相手はアリアや他の仲間も狙っているはず、ならばいち早くアリア達に知らせ対策を建てなければ。だが、ギロリと睨んでくる獅堂の前では言う事を聞くしかない。反対すれば今度こそ力尽くで押さえられるだろう。
「静刃がいるからどうにか抑えられるかもしれねえが‥‥ナオトが他の3人と合流すれば倍ひどいことをやらかすはずだ。いち早く取り押さえろ!」
前言撤回。獅堂の言う通りだ。ナオトだけならまだしもカズキ、ケイスケ、タクトの誰かと合流するか若しくは4人揃うと何をやらかすか分からない。否、絶対にやらかす。
昨日見た限りでは静刃だけではあの喧しい4人組を抑える事はできない。もっとストッパーが必要だ。代償として胃が痛くなるが。
「街中でヘカートやRPG7をぶっ放すバカ共だ。何が何でもあのバカ共を阻止しろ!」
「それだけは避けたいな‥‥可鵡偉、探しに行くぞ」
「でも遠山先輩、ナオト先輩の足取りはわかるんですか?」
「‥‥俺も分からん」
普通とは違う考えを持つ彼らの中でもナオトは天然の迷子。ナオトが行きそうな場所なんて全く心当たりない。これは探すだけでも数日は掛かるのではないかと遠い眼差しで天を仰いだ。
___
「‥‥で、ナオト。お前はこれからどこへ行こうとしているんだ?」
しばらくずっと黙って後をついて来ていた静刃は無言で歩いているナオトに尋ねた。朝からナオトが『ちょっと出かけてくる』と言い出したので慌ててついてきた。ほっといたらすぐに迷子になるかもしれない、それだけは阻止しなければ獅堂がかんかんに怒るに違いない。
「‥‥」
静刃が尋ねてもナオトは何か考え事かずっと黙ったまま歩き続けていた。何を考えているのか、多少考えが分かればいいのだがと静刃は悩んだ。
「むー…どうせ昨日の伊藤マキリとの戦いの事を考えているんだじょ」
静刃と一緒についてきていた鵺が欠伸しながら答える。
「あの女、多少ながら厄介な戦い方をしおってたわい。手の内が分からん相手をどう組み倒すのか、仕留めきれなくて悔しかったのか或いは次はどうやって勝てばいいか考えているんだろうのう」
鵺の言う通り、伊藤マキリという女は強かった。これまでとは違う戦い方をしている上にあの氷のような冷たい瞳を見ると手の内が読めなかった。ナオトが『デコピンで空気を撃ってくる』と教えてくれなかったら自分も負けていただろう。
これまで戦って負けなしだったナオトは一度捕え損ねた相手にまたしても捕えきれなかった事、戦って負けかけたことを悔しがっているのだろう。静刃は苦笑いしてナオトを励ました。
「ナオト‥‥お前達なら次は負けねえだろ。俺から一本取ったんだ。元気だせよ」
「お腹すいた」
ようやく喋り出したナオトの一言に静刃と鵺は盛大にズッコケた。
「お腹すいたって、ええっ!?」
「いや、朝ごはん食べてなかったし。何かいいかなーって」
「ずっとそれを考えていたんかい!?」
やはりナオトらこの何を考えているのかよく分からない4人組はブレない。ずっと黙りこくっていたので心配して損したと静刃は項垂れる。だがそれならばなぜ出掛けると言い出したのか、本当は何か目的があって外出したはずだ。
「そろそろ着く」
そんな事を考えているとナオトが呟いて歩みを早めた。やはり朝ごはん食べたいとは別の目的があるようだ。ナオトが進む先には住宅街の中に紛れている教会が見えてきた。もしや、と静刃は嫌な予感が過る。
「な、なあナオト‥‥お前が行こうとしている場所って、あのジョージ神父のところか?」
「そうだけど?」
即答するナオトに静刃は顔を片手で覆う。まさかここであのジョージ神父に出会う事になろうとは。静刃にとってジョージ神父も何を考えているのかよく分からない存在。手の内を見据えているようで苦手な相手だ。
「しかしなんであの神父の下へ行くんだ?」
「情報収集。それにたっくん達が何処にいるのか知りたい」
ナオトは残りの3人の居場所を探しているようだ。やはりあの伊藤マキリ相手では4人揃わないと戦いづらいのだろう。ナオトらは一人よりも二人三人四人と組んでいる方が対策を練りやすいようだ。
「一人だけならまだしも、こいつらが全員揃うと大惨事になりそうだじょ」
「俺もそんな気がする‥‥」
ドイツやイタリアの件で静刃は散々経験している。この4人組は何をしでかすか分からない。願わくばまだ揃わないで欲しいと心の中で願う。静刃の心配をよそにナオトはずかずかと教会へ入っていく。
「おや?ナオトじゃないか。よく来たね」
インターホンも押さずに入ったナオト達を迎えたのは丁度庭いじりしているジョージ神父だった。黒い司祭服を着ていながら花壇に色鮮やかなパンジーを植えている最中でシュールであった。そんなにこやかしているジョージ神父にナオトは眠たそうに頷く。
「今日は神父に聞きたい事があって来たのとお腹すいた」
「それは丁度よかった。スコーンを沢山焼いてあるから食べるといい。それに静刃くん、鵺ちゃん、久しぶりだね。すぐに紅茶を用意するからゆっくりしてくれ」
「えー、鵺はワインがいいじょ。神父の事だから年代物でも持ってるはずだ!」
朝から飲むな、と静刃は鵺にげんこつを入れた。呑気そうな笑みを見せながらも隙を見せない神父に静刃は言われるがままに上がろうとしたがふと何かに気づく。
「…なにか中が騒がしくないか?」
身にまとっている黒套の効果で気配を察しやすくなったせいかい、何だか協会内が騒がしい。どたどたと走るまわる音や誰かがはしゃぎながら大声を出していたりと嫌という程気配がビンビンに感じられる。その音は次第に外へと近づいてきた。
「いやっほぉぉぉぉっ‼神父!遅めの朝食が出来上がったぜ!名付けて、禁断の宝玉のカタストロフィ、グリーンデビルエディション‼」
「たっくん、ただのスクランブルエッグにブロッコリー乗せただけでしょ」
「本当に朝からハイテンションの輩ぢゃのう‥‥」
外に出てきたのはスクランブルエッグにブロッコリーを乗せた料理を持ってきてドヤ顔をするタクトとその暴走するタクトを止めに追いかけていたセーラとパトラだった。そんなタクトにジョージ神父はにこやか笑って頷く。
「きりのいいところだ、さっそく頂こう。賑やかになるのは好きだからね」
「たっくん!ここにいたんだ」
「あえ?ナオトじゃないか!このブレイクファーストはやらんぞ?」
「びょひひひ、やっぱりいたな!」
「お?鵺ちゃんじゃん!おひさー‼あと‥‥せい‥‥誰だっけ?」
どうして鵺は覚えていて自分の事はすっかり忘れているのか。それよりもなんでこんな所で出くわすのか、静刃は頭を抱えた。
____
「へー、たっくんがイ・ウーのリーダーに?」
「そうだぜ?俺をもっと崇め奉れ?」
「なんかすぐに崩壊しそう」
「そうならないように私が必死にフォローしているんだけど‥‥」
漸く朝食に在り付けたナオトは早速タクトと情報交換をした。ナオトは公安と協力して伊藤マキリを追い、タクトはシャーロックに頼まれてイ・ウーのリーダーを務める事になり、そのタクトの秘書に任命されたセーラがサポートしている、と同じように苦労している人がいると静刃は同情と安堵の眼差しでセーラを見つめた。
「それでたっくんはなんでジョージ神父の所に?」
「それは俺がスーパー洗浄フォームになってしまった事によりテーピングマン赤城との戦いに備え精神と時の部屋での修行を‥‥」
「たっくん、出鱈目言わないの」
セーラが即座にツッコミを入れて説明した。イ・ウーのOBである『斬撃のレギンレイヴ』と呼ばれたフレイヤという人物がまだ仮ではあるがイ・ウーのリーダーになったタクトを良く思っておらず、ピラミディオンに来るように呼び、タクトに遠山キンジ暗殺計画の誘いに入れようとしたがタクトはキッパリと断り襲撃されてしまった。追手を振り撒く為、一時ジョージ神父の協会へとやって来たとの事である。
「ピラミディオンの崩壊、やっぱりお前が絡んでいやがったか」
静刃はジト目でテヘペロしているタクトを睨む。どうして彼らといると建築物が崩壊してしまうのだろうか。
「そういえば、マキリもフレイヤがどうのこうのって呟いてたな‥‥」
確かにピラミディオンでの戦いで伊藤マキリはフレイヤの名を呟いていた。そうとなればフレイヤも伊藤マキリや『N』と一枚噛んでいるに違いない。
「つまりはフレイヤらは『N』と協力して遠山キンジとアリアを抹殺しようとしているわけか‥‥随分と厄介ぢゃのう」
「伊藤マキリだけでも強敵だ‥‥かなり苦戦を強いられるかもな」
「じゃあまとめてぶっ潰せばいいんだな!」
「たっくん、厄介な相手って言ってるでしょ?」
「もー、セーラちゃんは心配性だなー。ドントウォーリードントウォーリー」
フレイヤと対峙した時といいどうしてこうも緊張感が無いのだろうか、セーラはため息を漏らす。
「でも連携を崩せばどうにかなるかも」
「ナオトの言う通りだじょ。そのフレイヤとやら、伊藤マキリとつるんで居るのだろう?その伊藤マキリは猿楽製薬ともつるんでいると聞く」
「たしか猿楽製薬は私設軍隊を持っていたな。武器も製造していると噂もあるし連中も使うとなると‥‥大規模なテロが起きるやもしれん」
パトラが案じる通りフレイヤ達の犯罪組織、伊藤マキリら『N』、そして私設軍隊を持つ猿楽製薬らが結託して事を起こせばテロにより甚大な被害を被る一大事だ。しかしどれか一つを崩せば連鎖して崩れ、阻止できるかもしれない。
「猿楽製薬がいいかも。伊藤マキリが隠れ蓑にしているかもしれないし、公安も取り締まりたかっていたから」
「しかし獅堂達より先に勝手にしていいものなのか‥‥」
獅堂達は証拠や手掛かりさえあれば猿楽製薬へと潜入できるのだが、何も手を打たずに勝手にやるとなると恐らく獅堂が激昂するに違いない。
「それならば私が手を貸そう」
悩んでいた静刃にジョージ神父がにこやかに話に入って来た。何とも頼もしいような、どんな手を使ってくるのか分からないで怖い気がする。
「ジョージ神父が協力してくれるんですか!?やったー!」
「私も『N』に関しては調べなければならない事もあるし‥‥今回は、色々と早めに手を打たなければならないこともあるからね」
「神父が…しかし」
「静刃、ここはあの神父の言う通りにしておけ。鵺も色々と聞きたい事があるからなぁ」
鵺が静刃に耳元でささやく。確かに雲外鏡を持っていたジョージ神父ならば自分達が探している『影鰐』の情報を知っているかもしれない。
「この人数なら余裕で明日にでも潜入できるっしょ‼勝ち格ですぜ勝ち格‼」
「たっくんは心配だなー‥‥」
「いや、たっくんもナオトも心配なんだけど」
セーラが心配そうに見つめているように、この二人は不安しかない。寧ろ本当に大丈夫だろうかと心配になって来た。やいやいと騒ぐタクトとナオトに対し、パトラが申し訳ないように手を挙げた。
「セーラ、すまんのう‥‥妾とカナはちょっと参加できん」
「パトラ、何かあった?というよりも体調が悪そうだけど」
セーラはずっと気になっていた。カナは戻って来た直後に死んだように眠り暫くは目覚めないようであったが、パトラの具合が不調のようだ。
「いや少し吐き気と‥‥あと、酸っぱいものが欲しい」
パトラの一言にセーラと静刃は目を見開き、神父は「おや」と口ずさむとにこやかに頷いた。
「ぱ、パトラ、それ本当?というかいつから…?」
「むぅ、だいぶ前から、か?あ、ちょっと気分が‥‥」
「すぐに酸味のある物を用意しよう。金一君も隅に置けないねぇ」
パトラの不調にセーラは顔を赤くして慌て、神父は更にニコニコとしていたがタクトとナオトは終始キョトンとして首を傾げていた。
「もしかして梅干しマン?」
「何回か酸っぱい物食べないとダメな症状とか」
「お前ら‥‥」
教えた方がいいのか、知らない方がいいのか、通常運転の彼らに静刃は項垂れた。
25巻でまさかのパトラさんがおめでたに。カナさんぇ
遠山一家にまた恐ろしい子が一人追加に‥‥遠山一族、おそるべし