カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼   作:サバ缶みそ味

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前編後編に分けるつもりが長くなるのでさらに分割してしまう事に‥‥あ、これ、長くなるヤツや(白目)

 カオス4名様のMHWのプレイヤーキャラのデザイン…うん、やっぱり個性的すぎるよこの人達


114話

DAY:3

 

「フレイヤめ‥‥妾達をこんな所に呼ぶとは」

 

 パトラは訝し気に見上げていた。彼女の隣にいる遠山金一もといカナも同じように訝し気に自分達が向かうその建物を見ていた。

 

「本当に皮肉ね‥‥これは完全に私達の事も狙っているのかしら?」

 

 フレイヤに呼ばれ彼女達が向かった場所、そこは全面ガラス張りのピラミッドの形をした建物、『ピラミディオン台場』であった。2,3年前から日本もカジノが合法化され法整備直後に公営カジノ第一号店として建設された建物である。そしてこのピラミディオンはかつてパトラがアリアとキンジと最初に戦った場所、いわば多少因縁のある場所であった。黒いドレスを着たパトラも黒のコートを羽織り上下黒づくめ服を着たカナも『またか』と言わんばかりに訝し気にピラミディオンを見据えていた。

 

「フレイヤ‥‥何を考えているやら」

 

 黒い制服を着たセーラもため息を漏らす。恐らくここに来ているのはフレイヤだけではない、彼女の部下達や他のOBの連中も来ているだろう。念のために弓も矢も持っているケースの中にしまってある。もしもの時にはいつでも出せる。願わくば何も起きなければいいのだがとセーラは少し遠い眼差しをしていた。しかし絶対に何も起きない事は無いだろうと彼女は心なしか確信していた。

 

「タクト君いい?ここから先は何が起こるか分からないわ。くれぐれもフレイヤを刺激しないように気をつけるのよ?」

 

 カナは改めてタクトに注意する。今ここへ連れてきている何を考えているのか分からない問題児がきっと何かやらかしそうで怖いと感じているからだ。

 

「うぃーっす!今日はちゃんと着替えてきたぜ!」

 

 緊張感の無い元気のある声が響く。タクトは黒のスーツにどこか成金風な煌びやかなネクタイをつけどこかの社長のような恰好をし‥‥フクロウの覆面を被っていた。そんなタクトの姿を見たカナは思わず二度見してしまった。

 

「いや、あの‥‥た、タクト君?そのフクロウの覆面はいらないんじゃないかしら?」

 

「今日の俺はいっちょカッコよく決めてますぜ!言うなれば、今の俺はカジノ王決定戦二回戦敗退のフクロウ仮面ことサタンネイル木下と呼んでくれ!」

 

「のうセーラ、やっぱりこいつしばいていいぢゃろ?」

 

「パトラ落ち着いて。あとたっくんふざけるのはやめて」

 

 セーラがタクトのフクロウの覆面を取ろうとするがタクトはさせまいとはしゃいで逃げ回る。ピラミディオンに入る前に追いかけっこで5分も費やしてしまった。

 

「ここから警戒していくわよ」

「そうだ!カジノで資金を一儲けすれば…」

「たっくん、そんな暇はない」

「やっぱりこいつを差し出してさっさと帰ろうか」

 

 カナとパトラが先導してようやくピラミディオンの中へ。入り口を経て1階のフロアは海辺のカジノをイメージしてか広いホールを囲むように海に繋がるプールがあり、その周りにはスロットマシンやチェリーがあり若者や観光者向けのものが多い。カジノに来るのが初めてなのか、タクトは水路を電動式の水上バイクで行き来するバニーガールや金ぴかのスロットマシンに目を輝かせてたびたび寄り道しようとし常にセーラが引き止めていた。

 

「コイン拾っちゃったからワンチャンやってもいいよね?」

「だからそんな暇はないってば」

 

 目を離したら間違いなく勝手に何処かへ行く。セーラはタクトの手首を掴んで無理矢理引っ張って連れて行くことに。

 奥へ突き進み2階の特等ルーレットフロアを通過し、パトラもカナも行った事の無い3階のフロアへ。3階のフロアはVIPフロアとなっており、どこかの富豪や超一流企業の者達が集うホールとなっている。このエリアにはカジノは無いが、金持ちや企業の者達が集まってパーティーや会合を開いたりする。フレイヤや他の組織の連中がいるであろう扉の前に辿り着くとカナは改めてタクトに確認をした。

 

「タクト君、改めて忠告するわ。フレイヤを刺激しないこと。彼女を怒らせたらこのカジノは戦場になるわ」

 

「任せとけ!俺って干渉とか初めてだけど得意だから!」

 

 ちゃんと分かっているのだろうか。ドヤ顔をするタクトにセーラとパトラは顔を片手で覆う。

 

「間違いなくこのバカやらかすと思うんぢゃが」

「‥‥頑張って抑える」

 

「正直言ってフレイヤには会いたくなかったけども…行くしかないわね」

 

 仕方ないと、ため息をついたカナは深呼吸して扉を開けた。両開きの金ぴかの扉が重い音を鳴らしながら開けていくと、カナとパトラの予想通りこの大きなホールにかつてのイ・ウーの卒業者達、イ・ウーを出て行って新たに組織を建てた者たちが集っていた。

 

 取り巻きの男達に囲まれ葉巻をすっているふくよかな男性、顔に幾つもの傷跡がついて歴戦の戦士の雰囲気が漂う逞しい体格の男、グラマスな体形で妖艶なドレスを着たミステリアスな女性等々、誰もかれもが物騒な雰囲気を漂わせていた。その者達はホールに入って来たカナとパトラやセーラ、そしてタクトを注目する。中でも興味津々にキョロキョロするタクトを警戒しているような、殺気を込めた視線を指す。しかしタクト本人は全く気にしていない。タクトは幾つものテーブルに並べられている豪勢な料理やシャンパンに注目していた。

 

「うまそー…しまった、タッパー持ってくればよかった!最近リサの料理を食べてないしなー」

 

 本当に緊張感の無い奴だ、とセーラはため息を漏らす。こちらに指してくる視線と殺気、プレッシャーがビリビリと伝わる。その中でも一番嫌程伝わってくる奴が奥にいた。

 

「随分と遅かったじゃないの。所謂社長出勤かしら?いい度胸ねぇ‥‥」

 

 奥のテーブルに彼女はいた。薄い金髪のショートヘアーで金色の瞳、黒のドレスの上に黒い羽毛の付いたコートを羽織った女性。彼女の腰には黒い剣が提げられていた。そしてテーブルには空のワインのボトルとグラスは山ほど積まれている。

 

「フレイヤ、紆余曲折あって‥‥彼が少し自由すぎただけ」

 

 重苦しい重圧に耐えながらセーラは答えた。目の前にいる女性こそが、かつてイ・ウーのNO.2であり、あらゆるものを断ち斬る『斬撃のレギンレイヴ』と恐れられていた者、フレイヤ。フレイヤはセーラを見つめてるとフンと鼻で笑った。

 

「セーラ、貴女がいながらその彼‥‥って、その彼はどこに行ったのかしら?」

 

 え?とセーラは横を見た。隣にいるはずのタクトがいない。どこに行ったのか見回してみると、タクトは皿を持って豪勢な料理をホイホイと取っていた。

 

「たっくん、なにやってんの!?」

「え?持って帰って食べようかなーって。テイクアウトできるよね?」

「今はそれどころじゃないって言ってるでしょ」

 

 セーラは頬を膨らませてタクトの耳を引っ張って連れ戻す。改めてフレイヤはタクトを見つめてフンと鼻で笑った。

 

「初めまして、私はフレイヤよ。シャーロックは何を考えているのかしらねぇ‥‥こんな絵に描いたようなおバカさんをリーダーにするなんて」

「おっすおら悟空」

「ちゃんと自己紹介して」

「しょうがないなぁー‥‥この俺が、イ・ウーに新たな風のヒューイを巻き起こすと言われてるかもしれない可能性があるかもしれないと言われているかもしれない堕天使的存在、菊池タクトだぜ!」

 

 その瞬間、フレイヤが持っていたグラスが一つパリンと割れた。彼女は苛立ちでグラスを握り割ったのだ。彼女を見ていた者達も一斉に静まり返り緊張の雰囲気が漂い始めた。フレイヤは片手で払うと鋭い視線でタクトを見つめる。

 

「‥‥ふざけているのかしら?」

「俺は常に真面目だぜ!フレイザーry」

「フレイヤ、そろそろ彼を呼んだ理由を聞いてもいいかしら?」

 

 タクトがわざとのつもりかフレイヤの名前を間違えて呼ぼうとする寸前にカナがタクトの口を塞いでフレイヤに尋ねた。

 

「そうね…まずは新しいイ・ウーのリーダーになった男がどんな人なのか確かめたかったわ。まあ一目でもうわかったし‥‥」

「彼を殺す気…?」

「まさか?()()()眠れる獅子を怒らせるつもりはないわよ。それにしてもセーラ、貴女のような守銭奴が彼に肩を持つなんて珍しいわねぇ」

 

 どうやらフレイヤもすぐに手を出すつもりでは無かった事にはセーラは内心ホッとした。彼の後ろには菊池財閥と菊池サラコ、そして『漆黒の年寄り』がいる。手を出した後が怖い。安堵するセーラとは裏腹に事を理解していないタクトはドヤ顔する。

 

「なんたっていつか披露宴とかするからな!よくわかんないけど!」

「バッ‥‥!?そ、そんなつもりはない‼」

 

 慌てて否定するセーラだったが、フレイヤはくすくすと笑う。彼女の表情から自分達を呼んだ理由がまだ何かあるはずだ。

 

「フレイヤ、『まずは』と言ってたわね‥‥まだ他に何かあるんじゃないのかしら?」

「ええ。私は彼に、イ・ウーのリーダーとして取引をしに呼んだのよ」

 

「いいry」

「バカバカバカ!?容易に了承するもんじゃない、人の話をちゃんと聞け!」

 

 すぐさま了承しようとするタクトをパトラが慌てて口を塞ぐ。人の話を聞かずに勝手に進める彼を止めたことにカナとセーラはほっとする。

 

「取引って何?」

「そうねぇ‥‥カナ、あなたは戦役の時は中立だったから気にはしていないけども私達も戦役に参加していたのは知っていたわよね?」

「ええ、フレイヤやこの会場にいる者達も『眷属』として参加していたのは聞いているわ。()()()()()()()()()()

 

 セーラは気付いた。カナの表情が少し険しい。フレイヤを警戒している。なにかしてくるとカナは終始構えていた。カナの話を聞いてフレイヤはクスクスと笑い始めた。

 

()()()()()()?フフフ、あなたもジョークが上手いわねぇ‥‥知っているわよ、あなたが戦役が終えるまで最後まで私達の邪魔をしていたことを。特に、私を遠山キンジと神崎・H・アリアに近づけさせまいと邪魔していたわよねぇ?」

 

 彼女はクスクスと笑いながら、カナに対して殺気立っている。カナだけでない、セーラもパトラも彼女が静かに怒っていること、彼女から伝わる殺気がビリビリと感じられる。

 

「教授から聞いたわ。フレイヤ、貴女は『緋緋色金』をずっと狙っていた」

 

「ホームズもひどいお人よ。緋緋色金は戦争に価値のある物。至高の兵器となりうる代物だというのに‥‥彼のやったことは何かしら?結局は私達を巻き込んだ家族内のいざこざじゃないの。ヒルダが殻金を奪いったことは手に入れる絶好のチャンスと思ったけども‥‥あの遠山キンジという男が全部取返し、そして宇宙に返した。今まで奪い争った歴史は何だったのかしら?そいつのせいで巻き込まれた私達は大損よ。戦役も色金も何もかもを台無しにしてくれたわ」

 

 キンジの事を話した途端にカナは更に表情が険しくなった。パトラもフレイヤが何を話そうといているのか次第に分かって来た。

 

「けれども、他の『スポンサー』のおかげでやることができたわ。『彼』が言うにはもう一度神崎・H・アリアに緋緋神を下せばいい。その彼女を利用すれば最高の侵略兵器が出来上がるわ」

「‥‥フレイヤ、貴女何をするつもりなの?」

 

 カナの怒りのこもった声が静かに尋ねる。待っていたかと言わんばかりフレイヤはニヤリと笑った。

 

「ここに呼んできている者たちは報復をする者達。要は‥‥遠山キンジの抹殺、彼の仲間の謀殺‥‥そして神崎・H・アリアの母親を殺し、あの子を絶望させ暴走させて捕える。後はスポンサーに任せるわ」

 

 それを聞いたパトラとセーラは見開いた。彼女達は本気で遠山キンジを殺すつもりだ。そしてそれを聞いたカナは間違いなく怒っている。そんな事はおかまいもなしにフレイヤは話を続ける。

 

「スポンサーのおかげで武器も兵士も戦闘機器も揃っている。後は奴等をまとめて殺せる機会を待つだけ。その協力を彼に提案するのよ‥‥パトラ、貴達も『主戦派』だったわよね?どうかしら、楽しいわよ?」

 

「‥‥フレイヤよ、生憎ぢゃが妾はカナと婚約しておる。今はカナの弟である遠山キンジとは家族の関係にある。遠山家の妻として、妾は断る」

「あらおめでと‥‥で、セーラ、貴女はどうかしら?いい金額で雇うわよ?」

 

 パトラの断りにあっさりと返したフレイヤは静かに怒るカナを無視してセーラを見つめた。

 

「残念だけど、既に先約がある。それに今の私はたっくんの秘書‥‥すべてはたっくんの決断による」

 

「あらそう。じゃあ聞こうかしら?今のイ・ウーのリーダーであるあなたは‥‥って、彼どこに行ったのよ」

 

 振り向けばまたしてもタクトの姿が無い。何処にいるか見回すと肝心のタクトはエビチリをのんびりと食べていた。

 

「たっくん、何してんの!?」

「あ、セーラちゃん!このエビチリめっちゃうめえ‼」

 

 吞気にエビチリを食べている場合ではない。どうしてこうも緊張感のカケラもないのか。セーラはタクトの頬を引っ張って連れ戻す。

 

「随分と自由なお人ねぇ。それで、貴方は私達の取引にどう答えてくれるのかしら?」

 

「ごめん、話が長すぎて全然聞いてなかった」

 

 その瞬間、フレイヤの殺気と怒りが一気に頂点に達した。カナたちも、フレイヤの周りにいる彼女の協力者達もぞっとした。フレイヤはゆっくりと提げている黒い剣を引き抜く。

 

「‥‥私、もう一度説明するの大嫌いなんだけど?」

「えーとなんだっけ?あ、このネクタイ、ブックオフで1500円したんだぜ?」

 

 そんな話をしている場合ではない。フレイヤは剣を強く握り絞めた。今すぐにでもタクトに斬りかかるかもしれない。パトラとセーラとカナはいつでも戦えれるよう身構える。これ以上フレイヤを逆撫でしたらまずい、セーラはタクトに耳打ちする。

 

「たっくん‥‥フレイヤは遠山キンジを殺すつもりなの。そしてたっくんに協力するよう、取引をしている」

「え?そうなの?」

 

「仕方ないわね‥‥チャンスをあげる。貴方、私達と協力して遠山キンジを殺してくれるかしら?」

「え?何で?」

 

 キョトンと首を傾げるタクトにセーラもフレイヤも面食らう。彼はこの話を本当に理解しているのか、絶対に話を聞いていない。

 

「‥‥理由は知らなくていいわ、協力しなさい。貴方が束ねるイ・ウーは犯罪組織。常に戦い、奪い、抗うものは容赦なく潰す。それがイ・ウーよ」

 

「うーん‥‥」

 

「それに協力すれば財も力も栄光も、貴方の欲しい物全てが手に入るわ。どうかしら?」

 

「うん‥‥やっぱ無理!」

 

 腕を組んで深く考えてたタクトは頷いてドヤ顔で答えた。タクトの答えにフレイヤは静かに見つめる。

 

「一応聞くわ、何故かしら?」

「だってさー、楽しくないじゃん。欲しい物は頑張って手に入れた方が一段と楽しいし、それに今はカズキ達やリサ、セーラちゃんといる方が断然マシ‼」

 

 タクトは納得しながら自己満足で頷く。話は理解していないけれども、断ってくれたタクトにセーラはほっとした。

 

「そう‥‥残念だわ」

「それにさ、プレゼンメッチャ下手くそだなー。おら全然ワクワクしねえぞぉ」

 

 だってたっくんは頭空っぽだもの、セーラは心の中でツッコミを入れた。だがそれを聞いたフレイヤは額に青筋を浮かべていた。それに対し、カナは鋭くフレイヤを睨み付ける。

 

「悪いけどフレイヤ、貴女のする事を見逃すことはできないわ」

 

 カナはくるりと長い三つ編みを躍らせ一回転する。三つ編みの中に隠してある金属片を一気に組み立てる。そして一回転し終えたカナの手には大鎌が握られていた。いつでも戦闘可能、そんなカナにフレイヤは肩を竦めてため息をついた。

 

「まあそうなるわよねぇ‥‥けれどもいいわ。あなた達は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

フレイヤは再び黒い剣を握る。そして周りにいるフレイヤの協力者、同じ組織の者達もいつでも襲い掛かれるよう構えていた。だがその者達はフレイヤに近づこうとしなかった。寧ろ彼女に注意して待っている。ただ一人、タクトだけがこれから何が起こるのか分からずキョトンとしていた。フレイヤは再びやれやれとため息を漏らす。

 

「パトラ、セーラ、残念ね。恨むなら自分を恨みなさい‥‥カナ、遠山キンジの兄であるあなたを殺せばあいつは絶対にやってくるから丁度いいわね」

 

「‥‥キンジには指一本触れさせないわ」

 

「そ‥‥できるものならやってみれば?」

 

 そう告げるとフレイヤは剣を両手で握り勢いよく斜めへと振り下ろした。その寸前、カナはパトラ達に大声で叫んだ。

 

「避けて‼」

 

 カナの声にパトラとセーラはタクトを引っ張る。その直後、ガキン‼と金属が激しくぶつかる音と豪快に斬れた音が響いた。フレイヤはふうと一息ついて剣を下した。

 

「ふーん、斬撃を逸らせる程度はやるじゃない‥‥」

「‥‥っ!」

 

 カナの手が震え、持っていた大鎌を落とす。それと同時にタクト達のいる後ろの壁が音を立てて斜めへと切り崩れ、天井には斜めに斬られた大穴がボッコリと開いた。

 

「え!?なに!?どしたの!?」

 

 何が起きたのか未だに状況が理解できていないタクトだけが慌ててキョロキョロする。そうしている間にカナが鎌を拾い戻し後ろに下がって戻っきた。

 

「タクト君、ここから逃げるわよ‥‥!」

「え!?まだ料理をテイクアウトできるのか聞いてないし後エビチリ食べたいんだけど?」

「そんな場合じゃないでしょ!?帰ったらエビチリ作ってあげるから!」

 

 フレイヤは、彼女達は完全にここで殺す気でいる。今はここから逃げることが先決だ。突然の壁と天井の破壊にカジノの中は警報が響く。振り向くと、フレイヤがもう一度剣を振るおうとしていた。

 

「危ないっ‼」

 

 カナがタクトを引っ張る。フレイヤが剣を縦に横に振るうと今度は此処だけでなく扉から向こうの壁と床が縦に横に一気に斬られた。床は下の階まで斬られ、崩壊していく。

 

「フレイヤめ…!この建物ごと妾達を斬り殺すつもりぢゃ‼」

「どういう筋肉してるんだよ!?お前言うなれば古に伝わりし、チャンバラマスター!『飛ぶ斬撃は見たことあるか?』ロロノア三十六煩悩キャノンマスターデラックスファイティングエディション‼」

「‥‥たっくん、ファイティングエディションって言えばいいって思ってるでしょ」

「うん」

「そんな事している場合か!?おぬし達急ぐぞ‼」

 

 斬り崩れる3階を一気に降りて混乱で客たちが逃げている2階を駆けていく。後ろからはフレイヤの仲間達が追いかけてきていた。刀を持つ者、ナイフを投げてくる者、混乱に乗じて銃を乱射する者等々ゾロゾロと追いかけてくる。

 

「パトラ、セーラ、お願いできる?」

「まかせろカナ!フレイヤでなければ容易い‼」

「一気に混乱させる‥‥!」

 

 パトラは砂を巻き起こし、セーラは暴風を巻き起こした。砂と風が混ざりあい、強大な砂嵐が舞い上がる。追手を撃退する砂嵐を見ていたタクトは目を輝かせてた。

 

「すっげえぇぇぇっ!言わば神砂嵐!」

「たっくん、結構呑気しているでしょ」

 

「カナ‥‥やっぱりこのアホを置いて行ってもいいぢゃろ?」

「お願いパトラ、今は落ち着いて協力して?」

 

 カナに頼まれては仕方ないとパトラはため息をついて砂でアヌビス像を幾つも作り上げていき、追手と戦わせた。ふと上から盛大に斬られた音が響いた。カナは見上げると目を見開いた。上から大きく斬られた天井が斬り崩れ瓦礫となって落ちてきた。

 

「っ‼フレイヤ、標的を殺すなら周りも全て巻き込むつもり‥‥‼」

「やっべえええ!上から来るぞぉ!せ、セーラちゃん‼」

 

竜巻地獄(ヘルウルウインド)‥‥‼」

 

 セーラが手を翳し、暴風が巻き起こる。下から吹き荒れる暴風にぶつかり落ちてきた瓦礫は上へと吹き飛ばされていった。

 

「うおおおお‼突っ走れえええっ!」

 

「‥‥たっくん、こういう時は速いんだから」

 

 セーラはやれやれとカナより前へと走るタクトに苦笑いをした。奮闘しているパトラが作り上げたアヌビス像のおかげで追手は来ていない。後はフレイヤの斬撃がまた来る前にここから出るだけ。セーラがそう考えていると、気が付けばタクトは真っ直ぐ突き進み2階のフロアの窓へと突っ走り、ガラスをぶち破り飛び出していった。

 

「最後のガラスをぶち破れぇぇぇっ‼」

「ちょ、たっくん!?そっちは海!?」

「お主は牛か!?」

 

 セーラが慌てて止めるが時すでに遅し、タクトは夜の海へと飛び込んでいく。やむを得ないとセーラとパトラはため息をついて後に続いて飛び込んだ。

 

「ぶぶっ!?つめたっ!?」

「たっくん、周りを見てなさすぎ‥‥!」

「まあいい…おかげで逃げれたわ」

 

 セーラとパトラは後ろを振り向く。公営カジノであるピラミディオンは天辺は切り崩れ、一部は崩壊し煙を上げている。

 

「どうしてたっくんといるとこうも必ず何か壊れるんだか‥‥」

「超エキサイティングでしょ!あれ?そういえばカナさんは…?」

 

 タクトは周りにカナの姿が無いのに気づいた。パトラはジト目でピラミディオンを見つめて答える。

 

「カナは…ちょっと用事で離れたわ。何、直ぐに戻ってくるから安心せい。今は、ここから離れた方が良かろう」

「フレイヤ達はすぐに追いかけてくる‥‥ビルに戻るのは危ない。別の場所に移ろう」

 

 きっとフレイヤ達は血眼にして探してくるだろう。普通にあのビルに戻ったら間違いなく襲撃が来るに違いない。すぐに別の場所に移れるかどうか、いい場所はないだろうかとセーラは悩んだ。しかし、タクトは気にもせずケロッとしていた。

 

「じゃあ直ぐに相談しなきゃな!」

 

 誰に?と言おうとしたが、きっと菊池サラコにでも相談するのだろう。

 

「こんな時はジョージ神父のお家にお邪魔しますだぜ!」

 

 そうだった。菊池サラコの他に頼れる、否頭を悩ませる人物がいた。セーラは頭を抱えた。

 

___

 

 結局断られ逃げられてしまった。残されたフレイヤは静かに怒りを燃やしていた。

 

「本当に何を考えているのか分からない奴だったわね‥‥」

 

 イ・ウーを『楽しい』基準で考えているあいつが癪に障る。次こそは必ず仕留めなければとフレイヤは決意した。

 

「はあ、腹も立つし気晴らしにこの建物を斬り崩してあげようかしら?」

 

 フレイヤは軽く考えて黒い剣を振り上げた。フレイヤの視線の向こうにいる、混乱して逃げ惑う客たちの中にいる、パトラが召喚したアヌビス像に戸惑っている憎いあの少年に向けて。何故いるのか、分からなかったがここで仕留めれるのなら丁度いい。建物ごと真っ二つにできるのならさぞ快感であろう。フレイヤは剣を振り下ろそうとした。

 

 

「―――――フレイヤ、暴れすぎですよ」

 

 静かな声に引き止められ、フレイヤは舌打ちして剣を下した。

 

「もう少し早く来てくれたのなら、遠山金一も抹殺できたのに」

 

 フレイヤは振り向いて睨み付けた。彼女の後ろにいたのは伊藤マキリだった。マキリは無表情で氷のような瞳でチラリと見て首を横に振る。

 

「こちらも少し邪魔がありました。貴女が暴れたおかげで其方へ行かざるをえなくなりましたが」

「何よ、私が邪魔だというのかしら?」

 

 無言でジト目で見てくるマキリにフレイヤはやれやれと肩を竦め剣を鞘へと戻し、お手上げと両手を上げてた。

 

「はいはい、分かったわよ」

「これ以上派手に暴れたら目立つ。スポンサーが呼んでいるわ、直ぐに戻りなさい」

「ちっ、あの社長、人使い荒いのよねぇ‥‥全員撤収させるわ」

 

 フレイヤは合図を上げて協力者達に引くよう伝え、マキリと共にこの場を去って行った。




 斬撃のレギンレイヴより、フレイヤさん。
 イメージ的にはジャンヌオルタ的な?
 斬撃のレギンレイヴは剣でズバズバとデカブツも両断していくのでこんな某海賊剣士並みの剣技に‥‥まあいっか!(ナゲヤリ

 新宿のジャンヌオルタさん、メッチャえろい

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