カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼   作:サバ缶みそ味

110 / 142
 皆さま、明けましておめでとうございます。(大遅刻)

 今年もカオスな4人組をどうぞよろしくお願い致します

 横浜アリーナ…行きたいなぁ…


110話

 DAY:1

「よーし、HR始める前に一つ知らせておく。今日から7日間、このクラスに飛び入り参加するバカを紹介するでぇ!」

 

 新学期がスタートした2年C組、進級した2年生の生徒達は今日から新しい1年が始まる。このクラスの担任になることになった蘭豹は何時まで経ってもこの教室に入ってこない生徒に眉間にしわを寄せる。

 

「おらぁ吹雪ぃ!カッコつけてないでさっさと入って来いや‼」

 

「あいでででで!?ちょ、蘭豹先生、引っ張らんでくださいよ!こっからかっこいい入場をしようと思ってたんですよ‼」

 

「てめえに第一印象とかどうでもいいだろうが!」

 

 蘭豹はカズキの耳を引っ張って無理矢理教室に入れさせた。抓られた耳を摩りながら、2年C組の教室とこちらに注目している生徒達をじっくり見つめる。

 

「イエーイ!おっれがー♪吹雪カズキだっぜー♪7日間ヨロシクゥー‼」

 

 カズキはノリノリで歌いだして自己紹介しだした。カズキはドヤ顔でポーズをとるが生徒達はどう反応していいのか分からずポカンとしていた。しばらく静寂が流れ、反応が無い事にカズキは咳払いをする。

 

「んー‥‥じゃあ2番イクゼオラーッ!あぁー♪このークラァスの夢の命の世界がーいーまぁーっ‼」

「歌うな‼」

「アバスっ!?」

 

 カズキが2番パートを歌いだす前に蘭豹がカズキに渾身のげんこつをした。頭を抱えてのたうち回るカズキを無視して蘭豹は改めて話を進める。

 

「このバカは訳ありでこのクラスに入ることになった。短い期間だが、先輩としてお前らに色々と教え‥‥てはくれなさそうにないから無視してもいいし仲良くやってくれてもいい。好きにしいや」

「そ、そういう訳で皆よろしくー!」

 

 2年生の生徒達はどう反応したらいいか分からないまま苦笑いしながらパチ…パチ…とあまり勢いのない拍手をした。とりあえずはこのクラスの生徒として迎え入れられたようだ。カズキは適当に空いている席に着き、そこからは2年生達の自己紹介やこれからの授業のカリキュラム等々のHRとなった。カズキは蘭豹の話は聞かずにボンヤリとクラスの生徒達の顔を見て、窓からの景色を眺めながら携帯を見る。

 

「たっくん達、何してんだろうなぁ‥‥」

 

 蘭豹に学生寮に無理矢理連れてこられた以降、タクトとケイスケ、そしてナオトから連絡も来なければ電話をかけても誰もつながらなかった。自分の携帯が壊れているのか、電波が届かない所にいるのか、気になって仕方ない。

 

 一先ずは7日間までに単位を取って留年を回避し3年生に進級することに集中する。そうすればきっとタクト達が何処にいるのか分かるはずだ。それはそれとして今日の晩御飯は何にしようか考えながらカズキは欠伸をする。

 

「カズキ先輩、お久しぶりです‼」

 

「んな?」

 

 うたた寝をしていると誰かに声を掛けられた。気づけばすでにHRは終わっており休み時間になっていた。重い瞼を開けて見ると自分の席の前にかなめと間宮あかりがいた。

 

「おっ、かなめちゃんとあかりちゃんじゃん!元気してた?」

 

「はい!サードもみんな元気にしてますよ!」

「カズキ先輩、どうして私達のクラスに入る事になったんですか?」

 

 あかりに尋ねられてカズキは留年を回避するために7日間で一定の単位を獲得しなければならない事を説明した。それを聞いた二人は納得したように苦笑いして頷く。

 

「カズキ先輩らしいですね‥‥アメリカでも武偵や特殊部隊の間で有名になっちゃってますし」

「それで蘭豹先生が私達にカズキ先輩とチームを組めと言ったんだね‥‥」

 

「ん?チーム?あかりちゃんとかなめちゃんが?」

 

「はい。私とかなめちゃん、志乃ちゃんと桃子ちゃん、それから‥‥クロメーテルちゃんと組むことになったんですよ」

 

 あかりの親友である佐々木志乃と彼女と同じくらいの黒髪ロングの何処かで出会った事のあるような気がする鈴木桃子はカズキにペコリとお辞儀をする。どうやら彼女達もあかりとかなめの親友のようだ。面識のあるメンバーに出会えてカズキは頷きドヤ顔で笑った。

 

「これなら俺の単位もたった一日で獲得できそうだぜ!皆よろしくな!そういえば‥‥」

 

 カズキは隣の席に座っているさっきからずっとこちらを見ずに外の景色を眺めている少女へと視線を向ける。カズキはずっと気になって仕方なかったようで、不思議そうに尋ねた。

 

 

「キンジ、お前何してんの?」

 

 あかり達はえ?とキョトンとする。一瞬空気が凍り付いたがかなめが苦笑いをしながら首を横に振る。

 

「や、やだなー、カズキ先輩。そこのいるのはクロメーテルちゃんですよー」

 

 カズキの隣の席の少女、自己紹介でオランダ出身と名乗っていたクロメーテル・ベルモンドは恐る恐るカズキの方へ顔を向ける。その表情はどこか青ざめているようだ。

 

「ひ…人違いじゃないですか…」

 

 クロメーテルは口ごもりながら小声で否定をする。だがクロメーテルの顔をじっと見つめているカズキは納得したように頷く。

 

「いーや、やっぱりキンジだ。その巻き込まれたくないオーラと窒息しかけている魚の目、そんでHRの間に自分の世界に逃げ込むような仕草が同じだもん」

 

 一体何処からそんな自信があるのか、それよりも説得力のあるような無いような力説を唱えるカズキにクロメーテルは戸惑いだす。じっくり見つめるカズキにかなめが止めようとした。

 

「か、カズキ先輩、お兄ちゃんが女装をするわけが無いですよー」

 

「あ、そういえばジーサードがキンジをイギリスへ渡らせる為に作った偽造パスポートの写真がすごく笑えるとか言って画像をくれたよな。確かその画像が携帯にry」

 

「あー‼そうだった!クロメーテルちゃん、話したい事があるとか言ってたっけ!?カズキ先輩、ちょ、ちょっと来てください‼」

 

 かなめは突然思い出したかのようにポンと手を叩くとカズキとクロメーテルを引っ張って教室へ出た。そのまま引っ張られてカズキは空き教室に連れて行かれたのだった。かなめとクロメーテルはぜえぜえと息を荒げ、カズキは訳が分からないまま首を傾げていた。

 

「か、カズキ先輩、いいですか?これは絶対に誰にも言ったらダメですからね?」

 

「え?どういう事…?」

 

「‥‥どうしてお前がいるんだよ‼」

 

 カズキが戸惑っていると先程まで口ごもって小声だったクロメーテルが、男性特有の低い声に変わり項垂れてカズキをジト目で睨んだ。声も、仕草も、目つきもクロメーテルではなく遠山キンジそのものになっていた。

 

「え、え!?マジで本当にキンジなのか!?」

 

 クロメーテルの正体がキンジだったことにカズキは驚いた。どうしてキンジが女性の格好をしているのか、カズキはわなわなと震える。

 

「お、お前まさか‥‥‼」

「そうだ‥‥ああ、最悪だ。一番知られたくない奴に出会ってしまった」

 

「お前、カナさんみたいに本当は女の子だったのか!?」

 

 キンジとかなめは盛大にズッコケた。どうやったらそんな考えに辿り着くのか、キンジは呆れて肩を竦めた。

 

「何でそうなる!?というかカナは男だ!」

「マジで!?じゃあキンジは女の子ってわけだな!」

「違う、俺は男だ」

「じゃあカナさんは女の子ってわけか」

「だから違う。俺とカナは男だ」

「じゃあジーサードは?」

「だから‥‥ああもう、疲れる‼訳を話すから落ち着け!」

「まあまあ、そう慌てるなって。ほら深呼吸深呼吸」

 

 誰のせいでこんなに焦っているのか、キンジは内心殴りたくなってきた。胃が痛くなってきているキンジをかなめが宥める。

 

「カズキ先輩、事情を話すね。お兄ちゃんは‥‥留年しちゃったの」

 

 かなめが言うには、キンジは春休み終了前に武偵高校から留年の通達が来てしまった。留年生には別の武偵校へ転籍して新2年生のフリをすることになっているのだが、キンジはイタリアの武偵校へと留学することになった。海外へと留学となると準備の期間が10日もかかる。その期間の間、キンジは変装して2年のクラスにいなければならない。もしバレてしまったら即退学となってしまう。どうやってバレないように変装するかキンジが困っていところをかなめが手助けをしてくれたようで、彼女のアドバイスと手伝いでクロメーテルに変装することになったのだ。

 

「これならバレないと思ってたのに…カズキ先輩、勘がいいですね」

「ったく、何でこういう時に限ってお前は冴えてるんだよ‥‥」

 

 キンジはため息をついてカズキをジト目で睨むが、カズキはにんまりと気持ち悪い程の笑みを見せていた。

 

「へぇー、キンジが留年、ねぇー。ピブー」

「いやお前も似たような状況だろ!?」

「ざんねーん、俺は変装しなくていんですー、ピブー!」

 

 最もこの状況を知られたくない4人組の一人に知られてしまった事にキンジは項垂れた。

 

「カズキ、取り敢えず協力はする。だからこの事は秘密にしてくれ」

「任せておきな!俺はこう見えてお財布のがま口のように口が堅いぜ!」

 

 不安でしかない。がま口の時点でもういつ彼の口が開いてしまうのか、考えるだけで胃が痛くなってきた。そんな事をしているうちに授業のチャイムが鳴ってしまった。授業の最初で遅刻はまずい、チャイムが鳴り終わる前にキンジ達は大慌てで教室に戻った。

 

「おうお前ら、ギリギリやなぁ。トイレか?」

 

 そんな教室では蘭豹がニヤニヤしながら待っていた。キンジが女装しているかトイレはどうしたらいいか迷い、カズキとかなめに助けを求めていたと思っているのだろう。すると、キンジもといクロメーテルの前にカズキが立つ。

 

「先生‥‥」

「あ?なんや吹雪?」

 

 ここでカズキがフォローをしてくれるのか。いや、フォローしてもらう必要のない場面なのだがとキンジもかなめも蘭豹も戸惑う。

 

「クロメーテルは‥‥なぞめーてるってかー‼」

 

 カズキは自信満々に大声でダジャレを言った。彼は渾身の一発だと満足げにしている。しかし、教室の空気は一瞬にして凍りついた。

 

「‥‥アホなこと言ってないでさっさと席につけボケ‼」

 

 変な空気をぶち壊すかのように蘭豹のげんこつが炸裂した。本当にこの先変装がバレずに過ごせるかどうか分からなかなくなってきた。カズキがボロを出す前にどうにかしなければとキンジは頭を抱える。

 

「あ、そうだった。キン…クロメーテルちゃん」

 

 席に着いたカズキは何かを思い出したようでキンジに声を掛けた。一体何だろうか、またしょうもない事を言うのではないだろうかとジト目で見つめる。

 

「先に謝るわ、ゴメン」

 

 カズキはニッと笑ってごめんねのサインを出す。どういう意味か最初は分からなかったがしばらく考えると一つの答えに辿り着いた。

 

(おまえ、まさか‥‥っ‼)

 

___

 

 差出人:カズキ

 件名:やべぇ

 本文:やべえ、キンジが女装してる‼親友だけどどうしよう…

 

 

「ぶふぅぅぅぅっ!?」

 

 突然送られてきたカズキのメールの内容を見たケイスケは飲んでいたコーヒーを盛大に吹いてしまった。突然ケイスケが噴き出したことに理子とリサはギョッとする。

 

「ちょ、ケーくんどしたの!?」

「ケイスケ様、大丈夫ですか!?」

 

 咳き込むケイスケは手で大丈夫だとジェスチャーをする。咳き込んで何とか落ち着く。

 

「か、カズキが世迷言を言ってるだけだ…」

 

 カズキからのメールをすぐに削除し、なかったことに。もしカズキが言っている事が本当だとしたら色々と考えさせられる。それよりもこの事を知られてはいけない人物が目の前にいる。そうこうしているうちに理子が気になってニヤニヤしながら迫って来た。

 

「なになにー?理子に見せられないものなのかなー?」

「バカ言うな。それよりもさっさとこれからの行動の方針を決めるぞ」

「ちぇ、ケーくんのケチ」

 

 ケイスケにデコピンされ理子は渋々と下がった。ケイスケとリサは理子がかつてイ・ウーの一員だった頃の活動拠点にしていた秋葉原の高層マンションの一室にいた。

 

「というかそもそもなんでこんな所を拠点にするんだ?俺達の家の方が行動しやすいだろ?」

「実はそうでもないの。猿楽製薬を調べる場合、普通にしてたら直ぐにバレてゲームオーバーになっちゃう」

「それはどういう事だ?」

 

 ケイスケは視線を鋭くする。思った通り、今回もかなりヤバイ事になりそうだ。理子はふふんと自信満々に話を進める。

 

「猿楽製薬には日本政府、民由党と裏で繋がってるの。資金も賄賂も送り送られ持ちつ持たれつってやつ。下手に探れば連中が本気で消しにかかってきちゃう」

 

「随分と物騒だな‥‥」

 

 ケイスケは面倒くさいと悪態をついてため息をついた。アメリカでは副大統領だったが今度は日本政府が関わってくるとなると慎重に行動しなければならない。

 

「それに‥‥アリアのお母さんを無罪放免にするのを最後まで頑なに反対してたのも民由党の連中だったし、星伽の圧力にもビビらなかったのは裏で猿楽製薬がいたからなんだってさ」

 

 それはどういう事かケイスケは分からなかったが理子の話によると民由党は『緋緋色金』に関する件でアリアの母親である神崎かなえを人質にし、アリアを利用しようとしたらしい。裏で猿楽製薬がいる事で星伽の圧力にも動じなかったが、これまで政府に口を出さなかった菊池財閥が動いたことで民由党の連中は諦め、神崎かなえを無罪放免にしたという。

 

「イロカネって奴はよく分かんねえけど、利用って何をしようとしてたんだ?」

「考えられるとすれば、兵器を造ろうとしてたと思うよ。緋緋色金を使った兵器を造れば核兵器の代理にもなる程だし」

 

 『色金』がどんな代物は分からないが核兵器と並ぶとなれば想像は絶する物なのだろう。確かに猿楽製薬は私設軍隊を保有しているし、秘密裏に武器を製造もしているに違いないだろう。

 

「緋緋色金が無くなったとなれば連中の企んでた計画もパーになるし、民由党は今後どうするか猿楽製薬とコンタクトしてくるはず」

 

 理子は写真と資料をケイスケに渡した。写真にはいかにも悪代官というような悪人面した男性とやや気弱そうな細身の男性が猿の顔のマークがついたリムジンに乗る瞬間が写っていた。

 

「一番猿楽製薬と接触しているのは民由党代表の鬼島一郎、その補佐の鷹山勇樹。理子とケーくんで連中の悪事の証拠を掴み、検事さんに報告する事とそれに乗じて猿楽製薬に潜入し、兵器等のデータを盗み、ついでにケーくんが探している伊藤マキリを見つけるのがミッションなのです!」

 

「サラッとかなり面倒くさい事を言いやがるなおい」

 

 要はこの二人の張り込み、猿楽製薬に接触した所をこっそりと潜入して兵器製造の協力か、賄賂かの証拠を掴むこと、そして猿楽製薬に潜入してデータを盗み、伊藤マキリの隠れ蓑をぶち壊してガサ入れをするという事。やることが多くて面倒であるが、ケイスケはノリノリである理子に尋ねた。

 

「気になっていたんだが、何で協力をしてくれるんだ?まずは理由を教えろ」

 

「うーん‥‥ノリ?」

 

「ああ゛?」

 

「嘘ですごめんなさい真面目に答えます」

 

 鬼のような剣幕で睨むケイスケに理子はすぐに頭を下げた。顔を上げると理子は何やら真剣な表情になっていた。

 

「知ってる?猿楽製薬って医薬品も製造しているんだけど、本当はどんな病気をも治す『万能薬』を作るために研究している‥‥っていう噂があったの」

 

「‥‥誰か何かしら病を患ってんのか?」

 

 理子の知っている誰かが病気を患っておりそれを治す為の万能薬とやらを手に入れる為なのだろうか、ケイスケジト目で理子を睨むが理子は色気のある笑みでクスリと笑う。そこから詳しい事を教えてくれそうにもないのでケイスケはため息をつく。

 

「言っとくが万能薬ってもんは存在しねえ。誰にそんなでけえ釣り針を仕掛けられたのか分からねえがやめとけ」

「‥‥はぁー、そこはミステリアスな女だなとか答えるのが普通でしょー。これだからケーくんに春が来ないんだから」

 

 肩を竦める理子にケイスケはイラッとしデコピンをする。

 

「いだっ!?二度もデコピンした!キーくんにデコピンされたことないのに!」

「うっせーバーロー。次、真面目に答えないと苦丁茶飲ますぞオラ」

「うわっ凄い苦いやーつじゃん!?もー、朴念仁のケーくんには正直に話しますよ、もう」

「リサ、そのかばんの中に苦丁茶が入ってるから用意してくれ」

「嘘ですゴメンナサイ‼言いますから、言いますから‼」

 

 理子は大慌てで苦丁茶を取り出して淹れる用意をしているリサを止めて、正直にケイスケに話した。

 

「実は、そいつらキーくんを留年にさせた黒幕なの。武偵庁に裏金使って裏で操作したの…まあ学校の方は単位が足りなかったという事で留年したんだけどね」

「へー‥‥って、あいつ留年したのかよ!?」

 

 それを聞いたケイスケはギョッとするが理子はそこはツッコまず詳しく話した。民由党は緋緋色金を利用しようとしたがアリアが緋緋色金を宇宙に返した事で企ては失敗に終わった。緋緋色金、そしてアリアの件に遠山キンジが関わり彼のせいで計画が潰れた事分かると、今後アリアと関わらせないように邪魔をするために武偵庁を裏で操作して留年させたという。というよりも既に単位不足で留年することになったのでやっても意味は無かったことだが。

 

「というか八つ当たりだな‥‥」

「でもほったらかしにするとあいつらキーくんの邪魔をするだろうし、やってくる前に潰す。理子は仕返しをするためにケーくんに協力をしたというわけです!」

 

 ケイスケはフンスと胸を張る理子を無視してコーヒーを啜る。とりあえず、これからの行動は民由党の動向を調べること、連中が猿楽製薬に接触するのを待つ。

 

「ま、しばらくは変装したりして調べなきゃね」

「潜入とか得意じゃねえけど、やるしかねえか‥‥」

 

 ケイスケは仕方ないとため息をつく。カズキやタクト、ナオトでは潜入ミッションは難しかっただろう、彼らと合流できない以上自分がやるしかない。

 

 そんな事を考えていると理子の影から吸血鬼のヒルダがぬっと出てきた。出会ったのはイタリア以来であろうかと考えていたところヒルダは無言のままつかつかとケイスケに歩み寄って来た。何やらヒルダは少し機嫌が悪いのかケイスケをジロリと睨む。

 

「ちょっと、いいかしら?」

 

 そう言うとケイスケとリサの腕を引っ張りベランダへと連れて行かれた。何事かとケイスケとリサは困惑するがヒルダは日傘をさして窓を閉める。そして疲れたかのように大きなため息をついた。

 

「これから言う事は理子やジャンヌには言わないでくれるかしら?これ以上混乱させたくないの」

 

 ヒルダはどう言えばいいのかと多少焦り、困惑していた。

 

「あんた達、海外で散々やらかしてきた挙句、今度はイ・ウーを崩壊させるつもりなの?」

 

「イ・ウーが崩壊!?な、何があったんですか!?」

「いや、俺は何もしてないんだが何があったんだ…?」

 

 リサは驚きケイスケは不審そうに見つめる。ヒルダの様子からして嫌な予感しかない。ヒルダは頭を抱えてため息をつく。

 

「セーラが私に知らせに来たの。あんた達の仲間‥‥菊池タクト、彼…イ・ウーのリーダーになるかもしれないわよ」

 

 それを聞いたケイスケは再び盛大に吹いてしまった。




 7DAY、一日目前半でした。
 イタリア、イギリス、アメリカとどたばたと連戦続きでしたのでこの章は少しほのぼの日常を混ぜつつ戦闘もあり、な話にしていけたらいいなぁと思います。できたらいいなぁ…

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。