カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼ 作:サバ缶みそ味
「…なるほどそういうことだったわけか」
「それって俺達の活動がホライゾンじゃねーか!」
武藤から詳しい内容を聞いたケイスケはカズキ達を呼び戻して自宅にて作戦会議を行った。星伽白雪が『
「はぁ?それを言うなら骨折り損だろ」
「イエェイ‼オリオリゾンゾン!ホネゾンゾン‼」
カズキの文句は置いといて、デュランダルの狙いがわかれば話が早い。
「デュランダルが白雪を誘拐したい時、手始めに何をやると思う?」
「頑張る‼」
「うん…たっくん。間違ってはいないけど、違うよ…」
「…連携を崩す」
標的にボディーガードが付いているというのならまずは守りの連携を崩すだろう。互いの信用、もしくは護衛対象との信用をバラシていく。当初はキンジとアリアの二人が白雪の護衛についていたのだが、キンジは白雪に付きっ切りでアリアは別行動でデュランダルを探している。お互い連絡をとらずバラバラに行動している。諜報科の情報によるとデュランダルの件で喧嘩していたことがわかった。
「デュランダルの存在を否定するキンジと存在していると確信しているアリア。そりゃバラバラになるわな」
「…他にもキンジ達の行動を観察しているかも」
「だとすれば盗聴器が上がるな」
ケイスケは深くなずく。より標的と護衛の行動を掌握するには盗聴器を仕掛けている可能性が高い。一応彼らも武偵なのだがそれぐらいは警戒しているはず。デュランダルは身を隠しながら慎重に標的に狙いを済ましているだろう。
「でもあいつの家に上がるのは難しいんじゃないの?」
カズキの言う通り、「盗聴器が仕掛けられているかもしれないから調べさせてくれ」と言うわけにはいかないし、厳重に護衛しているのなら部屋に入れさせてくれることもできない。何か理由があればいいのだが…カズキ達は悩んでいるとタクトは思い出したようにポンと手を打った。
「そうだ!白雪ちゃんにオープニングセレモニーの打ち合わせをしなくちゃ!」
「おおっ‼ナイスだぜたっくん‼やーるー♪」
それを理由にキンジ宅に上がることができる。次にどう探知するか4人はひそひそと話し合った。別にこの家に盗聴器が仕掛けられていないのになんでひそひそと声を潜めて話しているのかリサは彼らの様子を見て終始首を傾げていた。
__
「キンジ、スポ―――ン!」
遠山キンジは玄関のドアを開けるや否やなんで来たと言いたそうな顔をしていた。インターホンが鳴り、誰か来たのか玄関を開けてみればドヤ顔のタクトとノートパソコンを抱えたケイスケと眠たそうにしているナオトがいたのだった。
「お前ら…何しに来たんだよ」
「そりゃお前、白雪とオープニングセレモニーの打ち合わせをしに来たに決まってんじゃねえか」
「白雪ちゃん、やっほー」
キンジの後ろで白雪が申し訳なさそうな笑顔で手を振る。キンジはそういうのがあったなと思い出したように頭を掻いて面倒くさそうにしていた。
「それってお前らでできないのか?」
「お前いいのか?全部タクトに任せるとジャイアンリサイタルよりもひどいことになるぞ?」
「それは…嫌だな」
「ふっふっふ。今のところ、デラックス幸子ならぬデラックスたっくんを建てようとry」
「よし、上がれ」
アドシアードが世界初ひどいものになると察したキンジは即決で彼らを家に上がらせることを許可した。タクトは大喜び入っていき、ケイスケは部屋に入る前にナオトに目で合図をした。ナオトは頷きポーチからPHSのような形をした機械を何個か取り出した。
「白雪ちゃん!オープニングセレモニーの演出と衣装だけど…」
「たっくん…で、デラックスたっくんは予算がオーバーするしシンプルに行った方がいいと思うよ?」
タクトの草案を聞いた白雪は苦笑いして速効で却下した。しょんぼりするタクトを見て当たり前だと飽きれるケイスケはノートパソコンを開き、ナオトに準備が出来たとハンドサインを送る。玄関でスタンバっていたナオトはPHSのような機械、盗聴器探知機の電源をつけて歩いた。
するとピヨピヨと探知機からひよこの鳴き声の様な可愛らしい音が鳴る。いきなり鳴ったことにナオトとケイスケは驚きが隠せなかった。
「マジかよ…そこでさっそく一個目か」
玄関の他に、トイレや洗面所、キンジの寝室‥リビングに辿り着くまで4個ほど盗聴器が仕掛けられていることがわかった。どんだけガードが甘いんだ、これだけ仕掛けられているのに気づかないのかとケイスケは呆れてしまった。
今調べているのは無線式の盗聴器。追跡はできないが微弱な電波、周波数により相手を盗聴するにはせいぜい100m~200m。まずはデュランダルが潜んでいる距離が絞ることができた。リビングについても未だにピヨピヨとなる探知機にさすがのキンジもナオトの行動に不審がっていたのに気づいたケイスケはナオトに呼びかけた
「おいナオト、なんでいつもアラーム切るの忘れてんだよ‼」
「…眠いからしかたないだろ」
「それでそれで、ステージの下からプシューってガイナ立ちで登場するんだー‼」
「たっくん…それならできそう。あ、でもステージは既にできてるみたいだし…」
喧しい3人にキンジはやれやれとため息をついて我関せずというそぶりでソファーに深く腰掛けていた。それでいいのかボディーガードとケイスケは思っていたが今やることに集中した。白雪がタクトと真剣に打ち合わせをしている隙にケイスケはナオトにハンドサインを送った。
ナオトは首を横に振っているところをみると、無線式はリビングに合計4つ仕掛けられておりすべて無線式で有線式はなかったとのことだった。しかしこれでも追跡はできない。次の手に移るためにケイスケは携帯でメールを送った。しばらくすると白雪の携帯電話が鳴った。
「もしもし…?」
『いやっほ~♪羽の生えたカズキだよぉ♪』
電話をかけてきたのはカズキだった。いきなり滑った登場に白雪はどう返したらいいか戸惑っていた。カズキ本人も滑ったことに察したのか最初の出だしを無かったことにして話を続けた。
『あのさ、今そこにタクト達いる?あいつら俺を置いていって先に行きやがっててさー』
「う、うん。今キンちゃんの所にみんないるよ?」
『あのやろー‼俺が折角お土産を持ってきてるのにさ!すぐにそっちに行くから2,3分待ってて‼」
電話を切れた数分後にインターホンが鳴り、玄関を開ければタクトと同じドヤ顔でカズキがポーズを決めて立っていた。お前もかとキンジは呆れながらカズキも家に入れてあげた。カズキはにこやかに小さなケーキ箱を渡す。中には種類がバラバラの6個のケーキが入っていた。
「いやっほー、白雪ちゃんお土産ー。てめえらにはねえからなっ」
「とか言いながら人数分用意されてるじゃないですか」
「…ショートケーキがいい」
「いやったぁー‼ケーキィ~!キンジ、コーヒーを所望するぜ!」
キンジはへいへいと二つ返事で動き、お湯を沸かしてインスタントコーヒーを用意した。引き続き、タクトは白雪と打ち合わせをし、カズキとナオトはキンジと駄弁り、ケイスケは黙々とパソコンを打っていた。
「まさかこれにも引っかかるなんてな…」
ケイスケはそう呟いて作業を続けた。先ほどの携帯での会話、デュランダルは標的の携帯に脅迫状のメールか電話をするということでもしかしたら携帯電話にも盗聴の細工がされているのではないかということで探知をしていた。まさかあるわけはないだろうと思っていたが、これにも反応があったのに驚いていた。
相手はどんだけ舐めプをしているのかそれとも策士策に溺れる状態なのか分からなかったが逆探知に成功したので後はどこに潜んでいるか調べるだけだ。
タクトは白雪の必死の説得とアドバイスに納得し打ち合わせは着々と進んでいた。どうやら腐った匠の出番はないようなので一先ず安心した。カズキとナオトはキンジの愚痴を聞いていた。どうやらキンジはアリアの無茶苦茶な仕打ちに参っているようだ。
「へ~、真剣白刃取りの訓練されたり風穴開けられそうになったり大変だな」
「ほんっと困ってるんだ。『デュランダル』がどうのこうのとうるさいし…」
「「ふ~ん…」」
カズキとナオトは知らないふりをして頷いた。デュランダルはいるよー、なんて彼らに言ってしまえば大惨事になるし、デュランダル本人もびっくり仰天どころかさらに警戒を深め身を隠してしまう。どうしても知っているとドヤ顔で自慢したいのかカズキはプルプル震えていた。絶対にしゃべるなとケイスケはカズキに睨み付ける。
ようやく逆探知が完了し、場所の特定ができた。ようやくデュランダルを見つけることができるとケイスケは一息ついてパソコンを閉じて3人に目と口パクで合図した。
「白雪ちゃん、アドバイスありがとね!アドシアードのオープニングセレモニー、楽しみにしといてくれ‼」
「たっくんの打ち合わせも終わったことだし、お前ら帰るぞ」
タクトとケイスケが立ち上がって、それに続けてカズキとナオトも立ち上がって帰ろうとした。
「…護衛任務、しっかりこなせよ?」
「それじゃあ頑張れよキンジ。いないのにいるとかいう『デュランダル』を探すのって大変だろうしな!」
「ああ、ちゃんとボディーガードは務めるさ」
キンジは苦笑いして彼らを玄関まで見送ってあげた。ばいばーいとタクトは手を振って別れを告げ、ドアを閉めた。しばらく沈黙と静寂が経過すると4人はバッと急ぐように動いた。
「…探知できた?」
「ああ、ばっちりだ。場所も特定できたし急ぐぞ」
「やっとエクスカリバーさんとご対面かー!」
「ヨッシャー!カリバーーっ‼」
カズキ達は急いで階段を駆け下りて、男子寮の前に停めておいたバンに乗り込みケイスケが特定した場所へと向かって行った。
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「…なんて喧しい奴等なんだ」
キンジの家を盗聴していた『イ・ウー』の一員である『
「ただただ騒がしいだけの連中だな…」
かつて理子が渡してくれた資料に書いてあった通り、多少は警戒していたが聞いていた様子では何にも脅威だと感じられなかった。Cランクの武偵だしその程度だろうとジャンヌは考えた。遠山キンジも自分『デュランダル』いないと見なしており、他の武偵も『いない』ものとみなし探そうとしないことにここの武偵は大したことはないなとにやりとした。
「…いや、ちょっと待て…」
ふとジャンヌはぴたりと止まった。探すという言葉に一瞬違和感を感じた。先ほど、あいつはなんて言っていた?ジャンヌはカズキの言った台詞を思い出した。『
「…まさか…‼」
ジャンヌは背中に冷たい汗が流れたのを感じた。奴らはデュランダルは存在すると確信、いや知っているのではないか…もしそうだとすれば奴らが遠山キンジの家に来たのは仕掛けられている盗聴器を探し、自分の隠れている場所を特定しようとしていたのではないか…策略家と自負していたジャンヌは次第に焦りだした。
「まずい…考えていることが正しければ…奴等はここに来る!」
奴らの偶然か、それともアリアが他の手を使ったのか、すぐにこの場を離れるか作戦を考えていたその時、小型のPHSがブザーを鳴らした。敵が侵入しようとした時に作動するトラップが動いたことを知らせるブザーだった。はっとしたジャンヌは咄嗟に床に刺していた鋼をも両断する自慢の愛剣、『
__
「なあ、本当にこんなところにエクスカリバーさんはいんのかよ?」
「だからデュランダルつってんだろ!」
いちいちデュランダルを間違えるカズキにケイスケは叱った。カズキ達がデュランダルを追ってたどり着いた場所は男子寮から200m離れた場所にある誰も棲んでいない廃マンションだった。念のためボディースーツを身に着け装備も万全にした4人はそっと静かに廃マンションへと向かった。
「…たっくん、ストップ!」
「あえ?うおおっ!?」
タクトはナオトに止められて、目の前にあったうっすらと見えるピアノ線に驚いた。このまま知らずに進んでいたら顔が切られていただろう。ナオトは目を凝らし、他にピアノ線が仕掛けられていないか確かめた。
「…?」
「ナオト、どしたの?」
確かめている最中、首を傾げるナオトの様子にカズキは気になって尋ねた。
「…最初の一本を除いて全部切られてる。しかも焼き切った痕ばかり」
「それってどういうこと?」
「…わかんない」
「怖えな。慎重に進むぞ」
ケイスケの意見に3人は頷いて、それぞれの銃を構えて慎重に進んだ。他の所にはトラップは仕掛けられていないようだ。ようやく特定したポイントの所まで着いた。4人は閉まっているドアの前に立ちごくりと生唾を飲んだ。カズキは恐る恐るドアノブを握りタクト達を見る。3人は頷いていつでも準備はできていると合図をした。頷いたカズキは勢いよくドアノブを回し、ドアを開けた。
「エクスカリバーさん‼お、おひゃなしぇがりみゃすっ‼」
「うおおおっ‼突撃隣のカリバーさん‼」
「だから違うつってんだろがクソ共‼」
「…だめだこりゃ」
カズキは噛み、タクトは勢いで飛び出し、ケイスケはその二人に怒声を飛ばし、ナオトはもうバラバラだと呆れて部屋に入ろうとしたが中の光景をみて4人はぴたりと止まって驚いた。中はカチコチに氷漬けの如く凍っていた。床も天井も、ドアの裏側も氷が付いていた。
「寒っ!?ど、どうなってんだこれ!?」
「おま、これってアイスエイジでしょ!?」
「これは…もしかして『
ケイスケはそう口をこぼした。超能力の中には『
「…中に誰かいるぞ‼」
ナオトの言葉に3人はすぐに銃を構えた。慎重に進んでいくとリビングに誰かいた。薄汚れた茶色の外套に身を隠れていて顔が見えなかったが身長がかなり高く、右の鋼の手甲で燭台を模した槍を持っていた。
「お…おまえが、エクスカリバーだな?」
「だからデュランダルだっての」
カズキとケイスケは警戒しつつ声を掛けたが、その人物は沈黙のまま窓が開いているベランダの方をずっと向いたまま動かなかった。
「…どうなんだ?」
「もしかして、人違いかも」
タクトが声を掛けた途端、外套の人物はピクリと動いて振り向いた。それでも顔が見えなかったが様子がおかしかった。
「…そうか、貴様がそうか…‼」
すこし低い声の男性のようだ。しかし声からして何か怒っている様子だった。カズキ達が警戒していると男はフルフルと身体を震わしていた。
「貴様には邪魔はさせんぞ…我が姫には指一本触れさせはせんぞ…‼」
「姫?…デュランダルのことか?」
カズキがそう尋ねると、男は槍の石突を強く床に突き付けた。ギンッと金属音が響くと、一瞬部屋の中が蒸し暑く感じた。
「デュランダルだと…?貴様らの様な下衆な輩が‼我が神聖な姫を侮辱するとは‼」
「デュ…デュランダル様?」
カズキが言い直して尋ねると、男は更に石突を床に強く叩きつける。今度は部屋の中が一気に蒸し暑くなった。
「なんという汚れた輩のことか‼我が姫を気安く呼ぶ出ないぞ‼」
「な、なんて聞けばいいんですか!?」
「カズキ、余計な事はしゃべんな‼なんかやべえぞ‼」
ケイスケはカズキに注意した。ケイスケの言う通り、この男が怒るたびに部屋の様子がおかしい。蒸し暑くなっているどころかあちこち凍っていた氷が解け始めている。それどころか焦げ臭いにおいが臭ってきた。
「…みんな、ここはやばい。逃げるぞ‼」
ナオトが大声で呼びかけた。カズキ達が急いでその場を去ろうとした途端、男の持っている槍に炎が纏っているのが見えた。これはマジでヤバイと察した4人は大急ぎで出口へと駆けだした。
「ああ主よ…‼我が姫を守るために我が愚行をお許しくだされ‼」
男が槍を振るうと炎がカズキ達目がけて噴出した。カズキ達は出口へ駆けて二手に分かれて2方向へ避けた。炎は真っ直ぐかけて正面の壁を焼き焦がした。
「あっぶねえ!?髪の毛焦げかけたんですけど!?」
「おまえ言うなれば古に伝わりし、ジェラシーにまみれたファイアーダンス、世界の中心で姫をさけぶ田中くんでしょ!?」
「…田中くんやべえな」
「お前らそれどこじゃねえだろ!?」
ケイスケは怒声を飛ばし、身構えた。初手はうまく躱すことができたがこのまま追いかけられたらまずい。しかし、炎を飛ばした田中くん(仮)は追撃はしてこなかった。寧ろ違っていた。
「ジャァァァァァァァァァンヌゥゥゥゥッ‼今私めが貴方の下へ会いに行きますぞぉぉぉっ‼」
そう男の叫び声が聞こえたので恐る恐る入り口から覗いてみると男はベランダへ駆けて飛び出していった。4人は焦げ焦げになった部屋を駆けてベランダを覗く。すでに男の姿はなかった。一体何が何だか、4人は少しぽかんとしていた。
「…とりあえずわかったことがあったな」
ナオトの言葉に3人は静かに頷いた。なんとなくなぜ『デュランダル』の姿を言わなかったのか、なぜ理由を話さなかったわかってきた。
「ああ…『デュランダル』を護衛しなきゃいけない理由も見つかったぜ」
「訳の分からんストーカーから守ること…それから」
「『デュランダル』の本名…えーと『ジャーン・ヌー』さんってことだな!」
本物の『デュランダル』に出会うことはできなかったが、多くの情報を手に入れることができた。
もうこれでストーカーさんが誰かなってのは分かってしまうかも…というか察しているかもしれない…まあいっか‼(白目)