SKO41に入った鮮血帝だけど、なにか質問ある?   作:ごはんはまだですか?

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エクレア「やぁ
ようこそ、Bar NaZariCKへ。
この”ナザリック”はサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい。

うん、「また」なんだ。済まない。
仏の顔も三度までって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。

でも、このタイトルを見たとき、貴方は、きっと言葉では言い表せない「ときめき」みたいなものを感じてくれたと思う。
殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい
そう思って、この作品を作ったんだ。

じゃあ、注文を聞こうか。 」



第24話 スマホチャレンジ

※正式名称は別だが、判りやすさと配慮で別名義

 

 モモンガはいつものようにログインした部屋で一人あたりを見回し、誰もいないことを知ると円卓から出て行った。今日は特になんの用事もなく、誰とも約束はしていなかったがログイン状況を示すサインは半数以上が点灯しており、誰かしらは捕まるだろうという目論見でとことこ9階層を歩いていく。

 

「うーむ、やはり性別が肝心なのでは?」

「でも、それだとシャルティアが大丈夫だった理由にはならんべ」

 

 そして、その目論見は当たり、階段を上がってくる二人に出会えた。

 あたたかくも冷たくもない、ぬるい死体に似た肌をしたタコ頭のタブラ・スマラグディナに、金色の軽鎧をつけた鳥人のペロロンチーノ。なにか一つに夢中になると、周りがみえなくなるほどの集中力をみせ、譲れない強いこだわりを持つオタク気質の二人なのだが、仲はよくもなく悪くもなく、仲間ではあるけど友達ではない関係だ。曰く、属性が違うそうだ。なんだ属性って……

 

「おはようございます、タブラさんにペロロンチーノさん」

 

時間は夜だが、定番になっている挨拶をすれば、それでこちらに気が付いた彼らからも同じ挨拶が返ってきた。ピコンと浮かぶ笑顔の感情アイコンの隣には、イエローカードが2枚ずつあった。

 

 イエローカード。それは規約違反を行ったものへ自動判定で送られてくる警告である。抵触したものの頭上に3か月もの間、表示され続けて、違反者を晒しものにする罰であった。

 良くも悪くも個性的で我が強いギルド:アインズ・ウール・ゴウンのメンバーが集まれば、必ず一人二人は頭上に黄色いカードを浮かべているぐらいなじみ深い存在だ。

 イエローカードは3枚溜まるとGMに召喚されて事情聴取となり、悪質な行為や反社会的な態度が目立つ場合にはアカウントの凍結や削除、公式サイトに違反者として情報が載るなどの処分が下される。なお、規約違反の中には一発でアウトとなるものもあり、その場合にはレッドカードが頭上に浮かび、GMの都合がつき次第、処分となる。

 余談なのだが、イエローカードにはごく稀に色違いが出ることがあり、それぞれ累計で銀なら5枚。金なら1枚。出現させることで特別な記念品が貰える謎のシステムがあり、そのアイテムを目的に3枚にならないように気を付けながら規約違反を行うプレイヤーもおり、運営狂ってると言われている原因の一つでもあった。

 

 

 

 そのイエローカードが二人の頭上に燦々と輝いている。

 るし★ふぁーや自分、源次郎とは違い、二人はカード集めはしているとは聞いていなかった。ただ、折りに触れ、制限されているからこそ、その中でどれだけのベストを尽くせるか、はたまた抜け道を見つけるか試行錯誤することで文化(エロ)は発展してきたと力説し、有言実行すべく規則限界の表現に挑んでいた。

 ただギリギリを攻めすぎて、時折うっかり乗り越えてしまいイエローカードをもらっていたので、今回もそれだろうか。

 

「今度はなにに挑戦したんですか? また露出の少ないエロ衣装でも作りましたか」

「童貞を鏖殺する服なら、もう完成したぜ」

「完成品は音改さんに預けましたので、きっとうまく使ってくれることでしょう」

 

 自信満々に胸を張る姿に、きっとすばらしい衣装が出来たのだろうと予測する。あとで見せてもらおう。

 

「では、どうしてイエローカードなんて貰ったんです」

「―――モモンガさん、スマホチャレンジって知ってます?」

「スマホ、チャレンジですか?」

 

 スマートホンは社会の授業で習いはしたが、教わったのは何分昔のことなので覚えているのは名前ぐらいだ。

 必死に小学校の記憶を呼び戻していると、ペロロンチーノが件のスマホを取り出してみせてくれた。モンハンに使っているPSPよりも少し小さい四角の板だ。電子空間に再現したものなので実物とは違うのだろうが、それでも今のものとは違い、温かみのあるデザインをした昔の道具にテンションが上がる。

 

「ええ、スマホチャレンジです」

 

 アームカバーに覆われた趾に掴まれている板の画面が点灯し、画像が映しだされる。

 そこに現れたのは、たわわな画像だった。

 

 丸くやわらかな二つの桃の上に、四角い板が乗っている。

 マシュマロの深い谷間を覆いかくす白いモヘアの上に、ちょこんとスマホが置かれている。

 掌サイズのスマホが小さくみえるほどの、大きなメロンがどーんと画面狭しと映し出されている。

 

 なるほど、これが、これこそがスマホチャレンジか。

 ひと目見ただけで、圧倒的な説得力でもって、言葉を通り越して脳に直接、理解をさせられた。それが男の本能だった。

 

「ユグドラシルでも、金貨チャレンジと名前を変えて流行りつつあるのです」

「心やさしい女神たちが、どんだけ沢山の金貨を積めたか競って証拠写真をネットに上げてくれてマジ感謝の念しかねえ。で、面白そうだで俺らもチャンジ中。ちなみに俺は8枚いけたぜ」

「私は3枚でした」

「そうですね、プロテインですね」

 

 鳩胸の勝利とかいうどうでもいい情報を生返事で適当に聞き流す。

 

「頭上のイエローカードはそのせいでしたか。 ……茶釜さんにでも挑戦させたんです?」

「いや、姉ちゃんのおっぱいってどこだよ」

 

 なんとなく一番身近でのってくれそうな女性をあげてみたが、確かに卑猥な形をしたピンクの棒の胸部がどこなのかは啓蒙の低い身にはわからなかった。

 他のメンバーならやまいこさんは強く押せば流されてやってくれそうだが、餡ころもっちもちさんは逆にこちらがチャレンジすることになりそうだ。流石に明美さんは他のギルドのものだし、なにより女性陣に阻まれて無理だろう。

 

「イエローカードはNPCとモンスターで挑戦した結果です、ねえタブラさん」

「はい、モンスターでも性別が♀ですとセクハラの対象になるようで駄目でした。以前は、胸部に物を載せる行為は規約違反に抵触しなかったのですが、スマホチャレンジの流行を受けて対策したと思われます」

「まったく! こんな時だけ対応が早いとかマジ運営クソ」

 

 手を大きく振って全身で怒りを表すペロロンチーノの隣でも、タブラが怒りマークのアイコンを浮かべて同意していた。

 

「試してダメだったのは、アルベドとソリュシャン、子供ならいいかと思って試したアウラ、そしてモンスターの吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)です」

「あと召喚獣もなー」

 

 モモンガはアウトになる基準について考察を始めた彼らの頭上に浮くイエローカードを見上げる。NPCが3体に3階層にいるモンスターが1体。それに召喚獣。なのにイエローカードは4枚。計算が合わないのが腑に落ちなかった。

 

「他にも誰か試していたのですか?」

 

 気になった疑問をそのまま口にすれば、ペロロンチーノとタブラはこちらを振り向いてから一拍置き、揃って顔を見合わせた。

 その様子に聞いてはいけないことを聞いてしまったのかと不安になる。

 

「あー、厨二皇帝がなー」

「はあ、ジルクニフさんがいたのですか」

「はい、一緒に試していたのですけど……」

 

 普段からいじられキャラとして遊ばれている彼のことなので、うっかり3枚もらってしまい呼び出されたぐらいなら笑い話にでもなりそうなのだが、歯切れの悪い返事に、笑い飛ばせないほどのことがあったのだろうかと、どんどんと不安が募る。

 

「モモンガさん、ロクシーってわかる?」

「確か、ジルクニフさんが一番初めにゲットした召喚獣でしたよね」

「そう、彼女の名前をつけて可愛がってたやつ。あれ、メスなんだってさ」

 

 ジルクニフがギルドに入った当初から連れているネコの召喚獣は、ふわふわとした毛並みで触らして貰ったことも一度や二度ではない。ネコ派のギルメンの中にはその可愛らしさに負けて召喚術師(サーモナー)Lv.1を取得した者もいた。

 

「ネコの上に金貨を積んだわけですね」

 

 所詮はゲーム内のデーターでしかないが、普通のネコと同じ見た目をしたモンスターの上に限界まで金貨を積むというのは虐待の香りがした。しかし、それぐらいで、鳥のように常に囀っているペロロンチーノや、語りだせば止められない止まらないタブラが口ごもるだろうか。

 

「立たせてからチャレンジはしたんだけど、1枚も載らないうちにイエローカードが出てさ―――」

 

 ごく初期に手に入る下級種族のネコモンスターは、サイズも形も現実にいるネコと変わりがなく、パッチでも当てれば別だろうが、メスであろうと無論、胸の盛り上がりなどなく、そこに金貨が載るはずはないのは当たり前だ。

 

「それで次は仰向けに寝転がらせてから金貨を積みだして、でも身体が小さいから4枚だけ載って崩れて。でも、すぐに止める間もなくまた積みだして、イエローカード3枚で呼び出し」

「はあ、なんなんでしょう」

 

 それを行った理由は不可思議だったが、盛り上がりに欠ける話だった。

 それぐらいで二人がこんな態度になるのも不思議である。だが、話はこれで終わらない。

 

「連れてかれる間際に叫んでましたよ―――『ロクシーにだってスマホチャレンジぐらいできるんだ! ロクシーにだって、ロクシーにだって胸はあるんだからな!』」

「あだ名かは知りませんが、ロクシーって彼女の名前でしたよね。なにかあったんでしょうか」

「”ナニ”が無かったんだろ。出てきたら至高のぺたん娘の出てくる俺セレクト・エロゲを貸してやろっと」

 

 ふと、モモンガは宙を見上げる。そこには灯りをともす燭台が掲げられていた。なんだか今日ばかりは彼女持ちのリア充にも優しく出来る気がした。

 

 

 

 

 

「あ、そうだギルマス、チャレンジした写真みてみてー、最高で75枚まで積めたんだぜ」

 

 わくわくして見たそこには、たわわな胸部に黄金色のコインを載せたガルガンチュアが映っていた。

 

「糞がぁああ!! 許せるものかぁああああ!!」


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