遊戯王ARC-V 崩壊都市の少女   作:豆柴あずき

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光波の煌き

 徐々にエンジネルが戦場へと近づくにつれ、センサー上では分からない現状が徐々に明るみになっていった。

 

 まず、敵は青が一人と、黄色が一人だということ。

 

 黒咲に助けられる前に襲ってきたのは赤と黄色だったし、色によって何かしらの区分でもあるのだろうか。

 流石に正確なところまでは分からないとはいえ、あり得そうな話な気はする。

 

 次に敵が従えているモンスターを展開しており、人型ロボットが奴らのすぐ近くに佇んでいたこと。

 

 遠目ではあるものの、あんなモンスターが奪ったデッキにいなかったのは間違いない。神宮寺といい今回の連中といい、これじゃあ効果を把握した意味がないじゃない……!

 

 ただ所々に錆の見られるモンスターのデザインと歯車の意匠から、そいつらが「古代の機械」である可能性は十分にある。

 ならまだ対処の仕様があるというだけ、神宮寺の「サクリファイス」シリーズよりかはマシかもしれない。

 

 そして最後に、アカデミアの決闘者二人に向かって行くレジスタンスの決闘者の後ろ姿。それはなんと――。

 

「カイト……!?」

 

 間違いない、今目の前にいるのはクローバー校のエース、カイトその人だ。クローバ校へと帰る途中だったからか、一番敵に近い位置にいたんだろう。

 

 黒い衣服に身を包んだその姿は記憶の中の彼と随分印象が異なるが、あれだけ決闘したことのある仲間を見間違うハズもない。

 

 敵が複数である以上、こっちも組んで対処にあたった方がいい。そう思った私は速度を落とし、カイトの近くへとゆっくりと着陸していく。

 

「カイト」

「……綾香か」

「私も加勢する。一対二よりは絶対いいでしょ?」

「……分かった。ただし、俺の邪魔だけはするな」

 

 ほんの短いやり取りの後、カイトもエンジネルに乗せて二人で移動する。アカデミアの連中がいるのはすぐ近くだが、少しでも体力は温存しておいた方がいい。

 

 こうして二人で敵のすぐそばまで接近すると、流石に向こうもこっちの接近には気が付いた。連中は展開していたモンスターに対し早口で命じ、実体化したモンスターによる攻撃が迫りくる。

 

 だが――もう私達も、お前らの攻撃を受けるだけじゃない!

 

「《始祖の守護者 ティラス》ッ!」

「《輝光子パラディオス》!」

 

 私たちはほぼ同時にエクストラデッキから一枚のカードをそれぞれ取り出すと、展開したディスクのプレートへと素早く設置。

 

 刹那、金翼の天使と白い戦士がエンジネルの前に現れ、敵の攻撃に対し応戦。主である私達を敵ロボットの攻撃から守ってくれた。

 

「ちっ……腐っても決闘者ってわけか」

「当たり前だ。俺たちがこんな攻撃ごときで倒せると思うな」

 

 リアルソリッドビジョンによる物理攻撃が終了した以上、ここから先は通常どおりデュエルで決着をつけなければならない。つまり勝負の土俵に持ち込むという第一段階は突破できたという事だ。

 

 この場にいた四人全員が、いったん展開したカードを元の位置へと戻していく。

 

「けっ、仕方ねぇ……相手してやるよ」

「かかって来い、アカデミアッ!」

 

 そう口に出しつつディスクを弄ってデュエルターゲットを前方のアカデミアに、そしてタッグ申請をカイトへと送信。すぐさまそれらは受理され、ディスクの液晶にはでかでかとタッグデュエルモードを示す文面が表示される。 

 

「さて、ルールだが……タッグフォースルールでいいな?」

「……どうする?」

 

 青服の提案に対し、私はカイトの方を向いて尋ねた。

 タッグデュエルにはいくつかの形態があり、どれを選ぶかはその場にいる全員の総意によって決定されるのである。

 

 タッグフォースルールはお互いの初期ライフポイントは通常の倍――8000ポイントで行い、墓地とライフをチームで共有。手札及びエクストラデッキはそれぞれが自前のモノを使う。そんなルールだ。

 

「俺はそれで問題ない」

「カイトがそう言うなら、私も問題ない」

「なら決まりだ、早速やろうじゃねぇか。へへっ……」

 

 どのルールを選択するか決めた途端、ディスクが音声認識でタッグフォースルールの適用を承認。画面がそれ専用のレイアウトへと変更されると同時に、デッキのオートシャッフルが開始され、そして――。

 

「デュエルッ!」

 

 四人同時の宣言とともに、初のタッグでの戦いが開始された。そしてすぐさま、順序を現す表示が液晶に出現する。

 それによると今回は青服から始まって私、黄色、カイトの順でひと回りしていくらしい。流石に、今回は先行を取れなかったか……!

 

「まずは俺のターン! まず俺はフィールド魔法《歯車街(ギアタウン)》を発動!」

 

 敵はプレートではなくディスク側に存在するスリットに1枚の魔法を差し込むと、次の瞬間には周囲の様相は激しい変貌を遂げていく。

 歯車の意匠がふんだんに盛り込まれたビルがいくつも立ち並ぶ、中世の街並み。それが、この瓦礫に包まれたハートランドに一角に出現した。

 

 敵の使う忌々しいモンスター――古代の機械たちの、まさに本拠地。

 融合の象徴といってもいいような場所に突然放り込まれるってのは、物凄く気分が悪い……!

 

「やれ、《古代の機械騎士(アンティーク・ギアナイト)》!」

 

 そんな事を思っていると、青服は一枚のカードを素早く手札から抜き、プレートへと攻撃表示で置きはじめる。するとすぐさま一体の、大きな槍と歯車の盾を持ったロボットが現出しはじめた。

 攻撃力は1800。並の下級モンスターなら打ち倒せるほどの高スペックだったが、そんな事よりも私たちにとっては重要なことがあった。

 

「こいつは……」

「中心部に現れた、モンスター……」

 

 そう、このモンスターはアカデミアの侵略の際に出没したモンスターの1体だった。ハートランド市内全域を襲撃した《古代の機械猟犬》と違い繁華街ばかりに現れたものの、その被害は尋常ではなかった。

 

 いっぽう私とカイトのつぶやきを聞き取ったのか。《古代の機械騎士》は頭部の丸いカメラをこちらに向けてくると、一瞬だがギロリと発光しはじめる。

 なまじ嫌な記憶を思い返させられるモンスターであるだけに、否が応にも少し身じろぎしてしまう。

 

「俺はこれでターンエンド。さぁ、やれるもんならやってみろってんだ!」

「私のターン、ドローッ!」

 

 手札を5枚から6枚へと増やしてから、改めてすべてのカードを確認する。この手札と、タッグデュエルという性質。なら、取る手は……!

 

「私は《ガガガマジシャン》を召喚し、さらにカードを5枚伏せてターンエンド!」

 

 全ての手札を素早くセッティングし、黒衣の魔法使いと五枚のカードが場へと現出。そしてそのまま、ターンを相手へと投げ渡す。

 

 今、私がやらなければならない事。それは相棒(カイト)に、モンスターというバトンを何が何でも繋ぐという事。

 そのためにブラフ交じりとはいえ5枚も伏せ、防備も十分に固めてある。

 

「俺のターン!」

 

 私がターン終了を宣言した直後、黄色がドローを宣言して手札を増強していく。こいつがどう出てくるか次第で、カイトのターンでどれだけダメージが与えられるかが決まるといってもいい。

 さぁ、どう出てくる……。

 

「俺は《古代の機械騎士》をリリースし、コイツをアドバンス召喚させてもらう! 出てこい、《古代の機械(アンティーク・ギア)巨人(ゴーレム)》!」

 

 場にいたモンスターは敵の言葉とともに瞬く間に消失。直後、その代わりに一体のモンスターがフィールド上へと姿を現す。

 灰色の装甲をした、巨大な拳を持つ機械仕掛けの巨兵。攻撃力は3000と凄まじい高さを誇るそいつはリリースされた機械騎士同様、光る眼をこちらへと向けてくる……が、今はそんな事にかまっている暇はなかった。

 なにせ――。

 

「バカな……そいつはレベル8のハズ!?」

 

 そう、ディスクに表示される敵モンスターのレベル表記は8で、本来ならば召喚に必要なリリースは2体のはず。いったいなぜ……?

 

「《歯車街》の効果だ! アンティーク・ギアのアドバンス召喚に必要なリリースはひとつだけ減り上級はリリースなし、最上級は1体のリリースで召喚できるんだよ!」

 

 戸惑う私に対し、青服のほうから言葉が飛んできた。なるほど、あのフィールドは融合ではなく、アドバンス召喚をサポートするためのものだったか……ッ!

 

「バトルだ!」

「私はその前に罠発動、《ガガガシールド》! こいつは発動後装備カードとなり、自分フィールド上の魔法使い一体に装備する事が出来る!」

 

 歯噛みしたくなる気持ちを抑え、敵が攻撃宣言に入る前に伏せていた二枚目のカードを使う。

 瞬間、《ガガガマジシャン》の前には巨大な盾が出現。彼は自分の背丈ほどもあるそれを右手に装備すると、前方へと構えはじめる。

 

 奴らのカードは奪ったデッキにはなく、効果も分からないモノだらけ。だが「古代の機械」を使っているという事は、なにかしらの発動封印を仕込んである可能性は高い。

 

 そう私は思ったからこそ、先回りして発動しておいた。読みが当たっているといいのだが……。

 

「はっ、盾を装備したところで、ステータスは何も変わっちゃいねぇじゃねぇか! やっちまえ!」

「おう! 俺は《古代の機械巨人》で《ガガガマジシャン》を攻撃! アルティメット・パウンドッ!」

 

 青服に促される形で、黄色は自分のモンスターへと戦闘を命じる。瞬間、鉄の巨人はその文字通りの鉄拳を《ガガガマジシャン》へと勢いよく振り下ろし、目の前の敵を粉砕しようと試みる。だが……。

 

「《ガガガシールド》を装備したモンスターは1ターンに2度まで、戦闘及び効果で破壊されない!」

「だが……ダメージは受けろやッ!」

 

 《古代の機械巨人》の拳はシールドによって阻まれ、ガガガマジシャンの破壊を防ぐ。だがそれによって発生した衝撃波はいかんともしがたく、私たちのライフポイントへと1500ものダメージが襲い掛かった。

 直立不動の姿勢を崩さないカイトはともかく、私は衝撃波の威力で思わず膝をついてしまいそうになる。クソッ……!

 

「俺はカードを5枚伏せ、ターンエンド!」

「私はあんたのエンド時に速攻魔法を発動、《非常食》! コイツの効果で自分の魔法・罠カード1枚を墓地に送るごとにライフを1000回復する……私は《ガガガシールド》と、伏せてあった《ガード・ブロック》を破壊!」

 

 黄色がこっち同様、大量にカードを伏せ終えてのエンド宣言。これが終われば、こっち陣営のカードのコントロール、その一切がカイトへと移譲される。

 その前に、私は最後の仕事を果たした。もう使わないであろう《ガガガシールド》と、奴らの使う「アンティーク・ギア」にはあまり効果のない《ガード・ブロック》。その2枚を纏めて破棄し、失ったライフポイントを補填。初期値よりも多い8500にする。

 

 よし、これでライフも無事に守り切ったし、モンスターも残せた。あとは……カイトなら、やってくれるはずだ!

 

「俺のターン、ドロー! 来い、《フォトン・クラッシャー》、そして《オーバーレイ・ブースター》!」

 

 私の期待する相棒はカードをドローすると、すぐさま二枚のカードを流れるようにフィールドへと展開していく。

 最初に通常召喚された《フォトン・クラッシャー》は手にしたハンマーを振り回すとカイトの前へと移動し、その隣に赤い装甲をした《オーバーレイ・ブースター》が守りの姿勢で随伴する。

 

 その攻撃力はどちらも2000。古代の機械巨人には及ばないものの、そこそこ以上の戦闘能力を備えていた。

 

「《オーバーレイ・ブースター》は自分フィールド上に攻撃力2000以上のモンスターが存在する場合、手札から特殊召喚することができる」

「ハッ、そんなモンスター並べたところでなんになるってんだ!」

 

 場に新たに展開された2体を見て、青服は悪態をつく。だがカイトはそんな敵を無視し、次なる手を打とうと手札から一枚のカードを抜き取った。

 

「このカードは自分フィールド上の攻撃力2000以上のモンスターを2体リリースすることで、手札から特殊召喚することができる!」

 

 カイトは相手の二人に見えるように一枚のカードを開示してからプレートに置くと、ついさっき彼が展開したばかりのモンスター二体は光となってフィールド上から霧散する。

 そして赤い十字状の槍がカイトの手元に出現すると、彼はそれを思い切り上空へと投げ飛ばした。

 

「闇に輝く銀河よ、希望の光となりて我が僕に宿れ! 光の化身、ここに降臨!」

 

 カイトの口から紡がれていく口上。同時に上空では投げ飛ばされた槍がひときわ強い光を放ち、直後そこから一体の竜が顕現する。

 

「現れろ、《銀河眼の(ギャラクシーアイズ・)光子竜(フォトンドラゴン)》!」

 

 ――光子(フォトン)で身体を構成した、銀河の眼を持つドラゴンが。

 

 《銀河眼の光子竜》。

 カイトのエースのうちの一体で、攻撃力は相手の古代の機械巨人と同じ3000のモンスター。

 

 迅速なエクシーズのためステータスよりも展開性を重視するこの街の決闘者にしては珍しく、カイトはメインデッキにも高ステータスのモンスターを投入していたのだった。

 

「そして俺は《ガガガマジシャン》の効果を発動し、そのレベルを8とする」

 

 だが、今回はその高い攻撃力を活かすのではなく、素材にする方を彼は選択。私のフォローで残しておいた《ガガガマジシャン》は8つの星を吸うと、そのレベルを8とする。

 これで同じレベルのモンスターが2体――それも、レベル8が。

 

 間違いなくあれが、来る。

 

「俺はレベル8となった《ガガガマジシャン》と、《銀河眼の光子竜》でオーバーレイ!」

 

 名を読み上げられた2体のモンスターは光となってその身体を、カイトの前方に発生した光の渦の中へと飛び込ませていく。

 直後光の奔流とともにオーバーレイ・ネットワークは消滅し、代わりにひとつの竜がゆっくりとその姿を現していく。

 

「闇に輝く銀河よ、復讐の鬼神に宿りて我が僕となれ、エクシーズ召喚!」

 

 現れたのはカイトの、()()()()()()()()()()()()()()()()()。金色の鎧のようなものを肩と背中にまとったその竜は、出現してすぐに光の翼を展開。

 そうしてから、ひときわ大きな咆哮を歯車の街へと響き渡らせていった。

 

「降臨せよ! ランク8、《銀河眼の(ギャラクシーアイズ・)光波竜(サイファー・ドラゴン)》!」

 

 圧倒的な存在感を放つ、カイトのエース。その姿を目の当たりにした敵は後ずさりするが……無理もないことだろう。

 なにせ私自身、このモンスターの放つ威圧感がどれだけのモノか。よく知っていたのだから。競技としての決闘の際でも、思わず冷や汗が止まらなかったほどだ。

 

 そんなナンバーズと同等――いや、下手をすればそれ以上かもしれないインパクトを、目の前のドラゴンは放っていた。

 

「俺は《銀河眼の光波竜》の、効果発動! オーバーレイ・ユニットをひとつ使い、相手モンスター1体のコントロールをエンドフェイズ時まで得る! サイファー・プロジェクションッ!」

 

 カイトの宣告とともに光波竜の身体にオーバーレイ・ユニットは吸い込まれていき、直後その身体からは思わず目を瞑りたくなるほどの眩い光が漏れだす。

 神秘的なその光をもろに浴びた《古代の機械巨人》は瞬く間に私たちのフィールドへと向かって行くと――次の瞬間。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「やっぱりいつ見ても、すごい……」

 

 パートナーのエースの、恐るべき効果。それを見て、思わずそんな感想を漏らしてしまう。

 

 サイファー・プロジェクション。

 それは相手モンスターを強奪し、攻撃力を3000にして《銀河眼の光波竜》として扱うというもの。

 

 奪ったモンスターの効果は無効になり、このターン直接攻撃できるのは本体の光波竜に限られるというデメリットも存在はしている。

 とはいえ、攻撃力3000が2体並ぶのは十二分に驚異的である。その脅威は私自身、デュエルスクール時代の対抗戦でイヤというほど味わっていた。

 

 そんなモンスターが今は味方なのだから、心強いことこの上ない。

 

「バトル! 殲滅のサイファーストリームッ!」

 

 こうしてがら空きになった相手に対し、《銀河眼の光波竜》の攻撃が撃ち込まれる。

 パッと見ても分かるほど高威力のビームを口から吐き出すと、それはまっすぐに黄色の胴体へと直撃。刹那その身体を宙へと浮かせ、数秒後に地面へと強かに打ち付けられた。

 直後相手のライフポイントから3000が引かれて残り5000となり、大幅に差をつけることに成功した。よし、これならいける……!

 

「俺はセットされていた《リビングデッドの呼び声》を発動し、墓地から《ガガガマジシャン》を特殊召喚! そしてさらにレベルを8にする!」

 

 敵の様子を完全に無視しつつ、バトルフェイズを終了させたカイトは次なる手を打つ。私が伏せた5枚のうちの4枚目を使い、墓地から《ガガガマジシャン》を蘇生。直後、再び星を吸い込んだ不良魔法使いはレベルを《古代の機械巨人》と同じ8にする。

 これで再び、同じレベルのモンスターが2体となった。

 

「俺は《銀河眼の光波竜》扱いとなっている《古代の機械巨人》と《ガガガマジシャン》で、オーバーレイッ! 現れろ、2体目の《銀河眼の光波竜》!」

 

 カイトは奪ったモンスターすらも利用して、2体目の光波竜を己の場へと顕現させる。

 これによってエンドフェイズ時に、奴らに《古代の機械巨人》を返さなくて済むようになった。レベル8なんか迂闊に使うから、こうなるんだッ!

 

「俺はカードを3枚伏せ、ターンエンド!」

 

 そんな風なことを思っていると、カイトは残りの手札全てをセット。

 こうして強力な攻撃力3000のドラゴンが2体と、計4枚の伏せという鉄壁の布陣で一巡目は終了。エースモンスターを2体も並べた状況で終えられるというのは、なかなかに良いコンディションじゃないだろうか。

 カイトがどう思っているのかは分からなかったが、少なくとも私はそう思っていた。

 

「俺のターン、ドロー……くくっ」

「何がおかしい?」

 

 黄色と違い吹っ飛ばされなかった青服はドローすると、途端に気色の悪い笑い声を口の端から漏らし始める。そのあまりにも不審な光景に、私はついつい問いを投げかけてしまった。

 どうしたんだコイツ、急に気でも触れたのか……!?

 

「いやぁ、ちょっとはビックリしたが……()()()()()()()()()()()()()

「劣勢の癖に何を」

 

 青服の返答を受けて、カイトはバッサリと切り捨てる。

 切り札は強奪された挙句にオーバーレイ・ユニットとなり、おまけにこっちの場には光波竜という凶悪なモンスターが2体。

 しかもどっちもオーバーレイ・ユニットをまだ保持しているため、次のターンで再びモンスターを強奪する事も可能というこの状況。

 

 なのに、なぜ奴らはここまで余裕ぶれる……!?

 

「面白いものを見せてくれた礼だ。見せてやるぜ」

「――融合次元の、結束の力ってヤツをなぁ!」

 

 私の悩みをよそに、カイトに吹っ飛ばされたダメージが回復し、起き上がって来た黄色は言い放つ。そして言葉を引き継ぐ形で、青服もまた私達へと啖呵を切る。

 

 そんな敵二人の睨み付ける視線とともに、いよいよ二巡目が始まっていったのだった。


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