遊戯王ARC-V 崩壊都市の少女 作:豆柴あずき
「ではいくよ、綾香君。《サウザンド・アイズ・サクリファイス》の効果、発動!」
神宮寺が効果発動を宣言するとともに、再びフィールドには吸収力によって生じた暴風が吹き荒れる。
見た目から察せる通り、奴は素材となった《サクリファイス》譲りの効果を持っているようだ。厄介なッ……!
そうは思っていても、防ぐ手段がない以上は通すしかない。
ぐんぐんとティラスは奴のフィールドへと飛ばされていき、最終的には《サウザンド・アイズ・サクリファイス》の身体に磔にされてしまう。
破壊耐性を持ったモンスターをあっさりと除去され、磔にされる。
その光景はモンスターが違うだけで、さっきエンジネルを吸われた時と中身は全く一緒だった。
「バトル! 僕は《サウザンド・アイズ・サクリファイス》でダイレクトアタック!」
「――させない! 罠発動、《ガード・ブロック》!」
吸われたティラスから力を吸収した、千眼の怪物による攻撃。
それが迫りくる中、私は伏せていた罠を勢い良く展開させる。これによってダメージは消失し、デッキから1枚ドローをすることができる。
奴が切り札を出してきた以上ライフを温存しておきたかったことと、今の手札枚数ではやや心もとないところがあったこと。
それらを一枚の罠で解決させつつ、神宮寺の次なる手を待つ。
「ほぅ、やるじゃないか……僕はカードを1枚伏せ、ターンエンド」
ライフ的にはこっちが有利なものの、フィールド上の状況では神宮寺のほうが圧倒的に有利なのは間違いない。余裕の態度を崩さず、奴は伏せで守りを固めつつエンドする。
なんとかして、さっさとあの
「私のターン! まずは手札から《ガガガシスター》を召喚し、その効果を発動!」
魔法使い――《ガガガシスター》は小さな手で杖を振り回してから地面に向けると、にわかに小ぶりの魔法陣が出現。そしてその中央からオレンジ色の光が漏れ、私のディスクへと向かっていく。
この子の効果は、召喚に成功した時にデッキから《ガガガ》と名のついた魔法もしくは罠カード1枚を加えることができるというもの。私のデッキの中核に位置する「ガガガ」シリーズ。その中でも、とくに優秀といってもいいモンスターだった。
「私が選択するのは《ガガガリベンジ》! そしてそのまま、こいつを発動する!」
加わったカードをすぐさまディスクのプレート部分へと差し込むと、次の瞬間魔法陣が出現。このデュエル三回目の登板となる《ガガガマジシャン》が、陣の中央からゆっくりとその姿を現した。
「《ガガガシスター》にはもう一つ、ガガガモンスター1体を選択し、それらのレベルを2体の合計値にする効果がある。さて……今度は、どのランクのエクシーズ召喚を狙うつもりかな?」
「その前に私は、手札から《ガガガボルト》を使わせてもらう!」
残りの手札から素早く魔法を抜き取り、ディスクへと運ぶ。それを発動した直後、神宮寺の周囲を激しい雷鳴が轟き始める。そして間髪入れずに、稲妻が《サウザンド・アイズ・サクリファイス》へと降り注いだ。
電撃によって全身に重傷を負った千眼の魔獣は粉々に砕け散り、フィールド上からその姿を消していく。
《ガガガボルト》は自分の場にガガガモンスターがいる場合発動できる魔法カードで、フィールド上のカードを1枚破壊できる通常魔法。まずはこいつで、奴の厄介な融合モンスターを消させてもらった。
なにせどんな効果をまだ隠し持っているか分からないのだ。警戒するに越したことはない。無事《ガガガボルト》の発動条件を満たし、除去できて助かった……。
「そして《ガガガマジシャン》のレベルを3にし、さらに《ガガガシスター》の効果を発動!」
《ガガガマジシャン》が3つの星を吸った直後、《ガガガシスター》の手によって二体のモンスターの周囲には巨大な赤い魔法陣が出現。それによって起動した術式によって、二体の「ガガガ」モンスターのレベルはともに5となっていく。
よし、これで準備は整った……!
「私は《ガガガマジシャン》と《ガガガシスター》で、オーバーレイッ!」
そう言うとともに、私の眼前には通常のモノよりも禍々しいエクシーズの渦が出現。光の玉となったモンスター達はその中へと突っ込んでいく。
奴が切り札を出してきた以上、こちらももう出し惜しみはなしだ!
そう思いながら1枚の、ついさっき手に入れたばかりの新たなエースをエクストラデッキから取り出していく。
「太古にありて、陸を支配せし灼熱の凶獣。時を超えて今こそ蘇れ、エクシーズ召喚!」
光が晴れるとともに降ってくる、凄まじい熱量を持った溶岩のオブジェ。それはすぐさま変形していき、溶岩を纏う最恐の凶獣へと変形を始めていく。
今まで見せたこともなく、他のエクシーズモンスターとは一線を画す独特な召喚シークエンス。
それを神宮寺は油断することなく、警戒心をあらわにして眺めていた。
「怒炎振り撒き降臨せよ、ランク5! 《No.61 ヴォルカザウルス》ッ!」
完全に変形を終えたヴォルカザウルスは大きな咆哮を上げ、眼前の敵を威嚇。神宮寺から汗が滴り落ちていく光景が、離れた位置にいる私からも分かるほどだった。
「こいつが、彼を倒したモンスター……!」
「まずは《ガガガリベンジ》の第二の効果、発動!」
その宣言とともにヴォルカザウルスは一瞬だけ赤いオーラを纏うと、その攻撃力を2500から2800へと上昇させる。
装備したモンスターがエクシーズ素材となり、このカードが墓地へと送られた場合。自分フィールド上のエクシーズモンスターの攻撃力が300ポイントアップする。
そんな効果も《ガガガリベンジ》は持ち合わせていたのだ。
「バトル! やれ、ヴォルカザウルス! ダイレクトア――!」
いまだ呆然とヴォルカザウルスを凝視する神宮寺をよそに、攻撃宣言を叫ぶ。
どういう訳かは分からないが、こいつの攻撃によって発生する衝撃波は他のモンスターのそれとは比較にならない威力を誇っている。
まだランク5は残っていた現状で迷わずヴォルカザウルスを出した理由には、そのあたりも絡んできていた。
神宮寺がデュエル後に何かしらの抵抗を行う可能性だってあるうえ、こっちのディスクでは奴をカードにすることはできない。
ならもう、直接現実に干渉して気でも失わせるしかない!
そう判断しながらの攻撃は、しかし神宮寺に届くことはなかった。
ヴォルカザウルスは途中で火を噴くのを中断すると、そのまま上げていた頭を元の位置へとゆっくりと戻していく。
一体何が、あった……?
「《リビングデッドの呼び声》を発動し、僕は《サウザンド・アイズ・サクリファイス》を特殊召喚したのさ」
神宮寺の場に表示されたのは一枚の、墓場が描かれたカード。それが発動した直後、《サウザンド・アイズ・サクリファイス》が突如として実体化する。
奴の発動したリビングデッドは墓地からモンスターを1体、攻撃表示で特殊召喚するカード。それのせいで私の攻撃は巻き戻されてしまったのだ。
「だったら、そのままそいつに……!」
バトルが巻き戻された以上、まだヴォルカザウルスには攻撃権が残っている。
おまけに奴の蘇らせた《サウザンド・アイズ・サクリファイス》も、今なら攻撃力0のただのカカシ。この状況ならば、それこそ
しかしその反面、奴の行動が読めない不気味さも確かに感じていた。なぜこのタイミングで、攻撃力0のモンスターなんか蘇生する……!?
罠にしろそうでないにしろ、どのみち攻撃しないという選択肢はない。
そう判断して発した攻撃命令だったが、ヴォルカザウルスがそれを受け取ることはなかった。灼熱の凶獣は私の場でじっと固まり微動だにしない。
「おっと。残念ながらそうはいかないんだよ、綾香君。このモンスターが存在する限り、お互いのモンスターはこのカード以外で攻撃する事ができないのさ」
「な、に……!?」
神宮寺の言葉を受けて、私は《サウザンド・アイズ・サクリファイス》へと目を向ける。
すると奴のエースは全身の目でもってヴォルカザウルスを凝視し、その行動を制限しているのが分かった。
その眼光には凄まじいまでの威圧感がこもっており、プレイヤーである私ですら思わず固まりかけるほどのものだ。
なるほど確かに、こんなのに睨まれては攻撃なんてままならないだろう。そう思わせるだけの説得力は、確かにあった。
「さて、攻撃できない以上はバトルフェイズを終了させるほかないだろう。次はどうするつもりなんだい? 綾香君」
「――ッ! ヴォルカザウルスの効果……オーバーレイユニットを一つ使い、相手モンスターを破壊しその攻撃力分のダメージを与える」
私の命令でヴォルカザウルスはオーバーレイユニットを喰らい、奴の融合モンスターに対して猛烈な火炎放射を吐きかける。
攻撃とは違いこちらは何の障害もなく無事に行われ、迸る熱線は千眼の魔物をドロドロに溶解していった。
だけど……。
「だけど、僕の《サウザンド・アイズ・サクリファイス》の攻撃力は0……ダメージはない」
最終的に神宮寺の融合モンスターは爆発四散するものの、そこに衝撃波は発生することはなかった。
もっとも、ここで葬る以外の選択肢は最初から存在していなかったのだし、神宮寺が何らかの手段で復活でもさせない限りはこちらが有利。きっとそのはずだ。
「これで……ターンエンド」
そんな事を思い――いや、祈りながら、私はターンを終了する。
「では、僕のターン! まずは今引いたばかりの、この魔法でも使うとしようか」
ドロー直後に神宮寺は一枚の魔法を発動すると、直後地面には魔法陣が出現。それに遅れて、奴の発動したカードがソリッドビジョンによって拡大表示される。
このタイミングで神宮寺の引いたカード。それは私もデッキに投入し、かつ1枚制限がかかっているほどの強力な蘇生魔法――《死者蘇生》だった。
くそ、これじゃあせっかく葬った意味が……!
「蘇らせるのは、勿論――《サウザンド・アイズ・サクリファイス》さ」
対象を口にしたのに前後して、魔法陣の中央からは《サウザンド・アイズ・サクリファイス》が再び出現。
そしてさっきのお返しだと言わんばかりに、私とヴォルカザウルスへと恨みのこもった視線を向けている。そんな気がした。
そして今度こそ、かなりまずい――!
「さて、と……まずはその、厄介な恐竜には消えてもらおうかな!」
神宮寺の命令により、再び奴の切り札は強烈な吸引をヴォルカザウルスめがけて発動。
いかに未知のナンバーズと言えどこれに対処する手段はなく、そのまま《サウザンド・アイズ・サクリファイス》の身体へと吸収され、その攻撃力を搾取される装備カードと化してしまった。
こんなにもあっさりと蘇って、ヴォルカザウルスを奪われるなんて……ッ!
「バトル! 僕は《サウザンド・アイズ・サクリファイス》で、ダイレクトアタック!」
「ッ……ぐぅぅっ!」
危機感を覚えていた私のもとに、異形の怪物は目から怪光線を発射。それを直撃した瞬間、凄まじいまでの衝撃が全身に走り、激痛とともに後ろへと吹き飛ばされてしまう。
ようやく身体が止まったのは、駐車場に放置されていた車へと背中から強かに打ち付けられてだった。
あまりの激痛で意識が朦朧とし、起き上がるのも億劫になるほどだ。
くそ、こんな事で倒れて、たまるか……!
「僕はこれでターンエンド。さぁ、最期のターンだよ。精々アカデミアに盾突いた愚かさを後悔しながら過ごすといい」
「アカ、デミア……」
廃車によりかかったままの姿勢で、呆然と奴の口にした単語を呟く。
「そう。僕たちは融合次元のアカデミア。次元統一という崇高な理念のために戦う、デュエル戦士の集まりなのさ!」
痛みで揺らぐ意識の中聞いた、奴の言葉。それはあまりにも芝居がかっており、その内容と相まってとても現実感の感じられないモノだった。
異世界人だというのは、さっきも聞いたのでまだいい。だが次元統一だのデュエル戦士だのは、ここまで痛めつけられた現状でも到底真実味があるとは思えない。
だが、そんな神宮寺の妄言の中にも、一つだけ「私にとっての真実」があった。
それは――私の心の中の炎にくべる燃料としては、十二分な威力を誇っていたという事だッ!
激しく燃え上がった心の焔。その熱を利用し立ち上がろうとした――その瞬間。
がくん、という衝撃とともに、意識の中に一体のモンスターが描かれた。
そしてそいつは、巨大な目でもって私に訴えかけてくる。出せ、そうすれば奴を倒せると。
直後、私の頭の中にはそいつのステータスがどんどんと流れ込んでくる。
ランク、属性、攻撃力、守備力、素材数、種族……そして、その効果。
確かに、こいつならば……いける。
そう思いながら、今しがた訴えかけてきたモンスターを出せるカードが来る事を祈って、デッキの上からカードをドローする。
「そうか、お前らの名前はアカデミア……憶えた」
「憶えたところでもう遅いさ。だって綾香くん、君はもうすぐカードになるんだからね!」
神宮寺の戯言を無視しつつ。冷めきった意識の中、今しがた引いたばかりのモンスターをディスクのプレートにセッティングする。
「このカードは私の場にモンスターが存在しないとき、レベル4扱いで召喚できる。来い……《ガガガヘッド》」
私のフィールドには褐色がかった肌の、やはり不良っぽい見た目をした魔法使いが出現。そしてその直後、《ガガガヘッド》の両端には魔法陣がひとつずつ展開。魔法使いの小さな女の子と黒衣の不良魔法使いが番長の呼び声に応じて招集され、フィールド上へと舞い戻る。
《ガガガヘッド》は召喚に成功した時、墓地から2体までガガガモンスターを選択して特殊召喚する効果を持つのだ。
「……なるほど、このタイミングでそれを引くのかい」
「私は《ガガガマジシャン》の効果を発動し、レベル5を選択。そして《ガガガシスター》の効果で、私のフィールド上に存在するモンスター2体のレベルを7にする」
「ランク7、か。君がそのランクのモンスターを使うなんてね」
少しだけ驚いたような口ぶりで、神宮寺はこっちのレベル調整に対して感想を漏らす。だがその口調からは余裕の色が見て取れ、少し腹が立つ。
だが……まぁいい。
すぐにその、余裕ぶった態度をとったことを後悔させてやるッ!
「私は《ガガガマジシャン》と《ガガガシスター》で、オーバーレイ!」
そして私の前に現れる、ヴォルカザウルスの時と同じ禍々しい光の渦。どうやら、ナンバーズは全部通常とは違い、このタイプのが出現するようだ。
「悪夢の眼球、魔より出でて万物を睥睨せん! 全てを誘惑せし究極の魔眼を今、ここに!」
そんな感想をよそに、すらすらと口から紡がれていく口上。そしてそれとともに、「何か」が空からゆっくりと舞い降りてきた。
――おびただしい数の赤い紐。それらは何重にも絡み合っていき、そして紐の先端にくっついている白い球体が何個も何個も合体。
そうしたプロセスを経て、ひとつの物体を形成する。
黄金のリングがついた、巨大な白い円錐状の物体が。
「エクシーズ召喚! 現れろ、幻惑の瞳を持つ支配者! ランク7、《No.11 ビッグ・アイ》!」
その名を私が読み上げると円錐の上部にあった巨大な瞳は見開かれ、攻撃力2600のモンスターは神宮寺を見下していった。
「目には目をって事かい。中々面白いジョークじゃないか。……だが、僕の《サウザンド・アイズ・サクリファイス》の効果で君は攻撃できない状態だ。今更何になるというんだい!?」
そんな私の様子を見た神宮寺が叫ぶ。確かに攻撃できれば勝てる状況であっても、奴のモンスターの前では宝の持ち腐れ。
だが――。
「《ビッグ・アイ》のオーバーレイユニットを一つ使い、効果発動!」
そもそも、
最初から――コイツの効果が狙いだ!
「このターンこのモンスターの攻撃を放棄する代わりに……アンタのモンスター1体のコントロールを奪うことが出来る!」
「なん……だと!?」
「やれビッグ・アイ! テンプテーション・グランス!」
命令とともにオーバーレイユニットがひとつ、ビッグアイの眼球へと吸い込まれる。
素材の力を得、赤く発光したビッグアイの眼球は超常の力を発揮。神宮寺の《サウザンド・アイズ・サクリファイス》を凝視する。
千眼の怪物は当初こそ誘惑に抗ってみせたものの、最終的にはビッグアイの眼力に屈してしまう。反転して私のフィールド上へと移っていき、コントロール権がこちらへと変更されていく。
これで神宮寺のフィールドは、がら空き……ッ!
「バトルッ! 私は《サウザンド・アイズ・サクリファイス》でダイレクトアタック!」
想定外の事態に慌てふためく神宮寺に、奴自身の召喚したモンスターが攻撃を開始。顔面の巨大な眼球から一条のビームが放たれ、それはそのまま本来のマスターへとあっさりと直撃する。
2500のダメージが入って神宮寺のライフを0にまで追い込むと同時に、奴は衝撃によって床に思い切り叩きつけられた。
――これで私の、勝ちだ……!
「……ぐっ、まさか……こんな得体のしれないカードを、2枚も持っていたとはね……」
立ち上がろうとしつつ、神宮寺はそんな事を漏らす。だがはっきり言って、そんなのはお互いさまだろうとしか言いようがなかった。
なにせこいつらは全員、融合をはじめとして知らないカードばかりで構成されたデッキを使ってきている。いまさら1枚や2枚、私達が新たな力を使ったところで、咎められる謂れはない!
「……カードに。してやる……ッ!」
「おっとそいつは……無理な相談だよ、綾香君」
神宮寺はディスクを操作すると、瞬く間にその身体がうっすらと透けていく。いったい、何をした……!
「いったん融合次元に帰らせてもらうよ」
「……逃げるなっ!」
既にかなり背後が透けて見えるまでになった神宮寺に対し、怒りの叫びをぶつける。
なんだそれは、自分たちは一方的に撃つくせに、いざ負けたら無事に逃げて脱出できるだと!? そんな卑怯な話があってたまるか!
「次に会う時を楽しみにしているよ……綾香君。もっとも、
その言葉を最後に、神宮寺京麻は完全にこの場から消失。廃棄されたショッピングモールの駐車場には、私以外誰もいなくなってしまった。
――そう、思っていたら。
デュエルモードを解除したばかりのディスク、その液晶には青い点がすぐそこに2つあると表示されているのが見えた。
「――ッ!」
神宮寺とのデュエルの間はセンサーを併用できず、ライフ表示しかされていなかったために気づかなかった。
ここに、新たな敵が近づいてきていることなんて。
絶句している私をよそに、赤と黄色の服を着た敵が一人ずつ、目の前に現れた。
「こいつ……俺たちの仲間をやったってのか!?」
「だが今は相当消耗しているみたいだし……やっちまえ!」
そう言いながら、二人の男達はディスクのプレートを展開しようとした――その刹那。
突如私達3人のディスクから、大きな警告音が鳴り響いた。
「な、なんだ……!?」
男の一人が、私の代弁といわんばかりにそう口にした――その直後。
突如上空から「何か」が飛来し、辺り一帯には強烈なまでの突風を吹き荒れる。そのあまりの衝撃から敵はディスクでもって顔を覆い、とっさに防御姿勢をとる。
つられて防御をとろうかと思った、その瞬間。
「早く掴まれッ!」
聞きなれた声がしたので、私はなんとかそのままの姿勢を維持。飛来したものが何かを見極めようと、声のした方を向く。
飛来してきたのは機械の鳥が一羽と、その上で直立不動の姿勢を保つ、黒衣の決闘者。そしてその決闘者は、私もよく知る人物だった。
「黒咲……?」
ハートランドのデュエルスクール四校のうちのひとつ・スペード校の生徒で、圧倒的な実力を持つ決闘者だ。
いま彼が下に展開しているモンスターはエースモンスターの《
しかし……どうして黒咲がこんなところに……?
「早くしろッ!」
「ッ! ……分かった!」
せかされる形で黒咲の手を取り、私はライズファルコンの上へと乗る。それと同時に機械仕掛けの鳥は凄まじいまでの烈風を噴き上げ、天高くへと舞い上がる。こうなってしまえば、もう奴らが迎撃を仕掛けることは不可能だ。
そこまで考えると、途端に緊張の糸が切れ…………。
そのまま私は、意識を手放していった。
これで2戦目も無事投稿完了です。
ここまでお読みいただきありがとうございました。