ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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今回、少しばかりエグイ描写があります。


85話

「……あの、王様、大丈夫っすか……?」

 

「なにがだ」

 

「あ、いや……なんでも、ないっす。すんません」

 

 

 俺の後ろに立っている犬月が静かに頭を下げながら謝ってくる。たくっ、何に謝っているか知らないが心配しなくても大丈夫だよ。あぁ、何も問題無いさ。ただ魔法使いと狂った悪魔を見つけて殺せばいいだけの事だろう? 簡単な事じゃねぇか。これまでに似たようなことをやってきたんだから全然、全く、本当に何も問題無いのは当然だろう。だが最悪な事に母さんとフェニックスの双子姫の行方の手掛かりは一時間程度経った今も全く無い。もっともそれに関してはもうすぐ手に入る予定だから焦ることは無いけどな。今までだったら夜空辺りがここにいたよーやら助けといたよーやらどうするー殺しに行くー? やらと騒ぎながら俺の所へ転移してきてたがその様子が一切無い。まぁ、当然と言えば当然だろうな。夜空すら見た事が無い本気の逆鱗(ガチギレ)が見られるチャンスなんだからそれを態々潰すような真似はしないはずだ。別にこれぐらいは今までの付き合いで分りきってる事だから怒ることは無い……だって夜空らしいからな。だから何も言わない。ただ、俺の逆鱗は凄いぞとだけ言っておくから楽しみにしておけ。

 

 犬月の様子に周りの面々も何かを言いたそうな表情にはなったが言葉を発する事は無い。ウザい。平家、確かに俺は全員集めろとは言ったが部外者まで集めろとは一言も言ってないぞ? どうなってんだおい。

 

 

「シトリー家次期当主がノワールと私達を集めろと言ったからこーなってる。しょーじき、邪魔。だから私のせいじゃないよ」

 

「知ってる。お前がこんな真似をするとは思っちゃいねぇよ。やるならもっとエゲツナイ事をするはずだからな。で? こんな場所に俺達を呼んで何をしたいわけ? こっちはこっちで忙しいんだけど……邪魔するなら殺しますよ」

 

「ッ、き、キマリス君達に集まってもらったのは今回の事件の状況を共に整理してもらいたいからです。三大勢力が和平を結んでから今日までこの学園が襲撃される事なんてありませんでした……それだけ異常な事態です。どうか、お願いします」

 

「あっそ。まぁ、情報待ちで暇だから付き合ってやるからさ、早く始めれば?」

 

 

 現在、俺が居る場所はオカルト研究部の部室がある旧校舎。水無瀬を除いた俺達キマリス眷属と遠出している面々とヴァルキリーちゃんを除いたグレモリー眷属、そして生徒会長と副会長と匙君が今回起きた事件について話し合おうという理由でこの場所に集まっている。正直どうでもいい。仲が良いわけでも無いし()()でもない連中と話し合って何の意味がある? あぁ、ウザい。雑魚の分際で周りを指揮しなければならないという考えに染まってる女も誰かに頼らないと動けない奴らがウザい。今この手で殺したいぐらいにウザったい。

 

 

「ノワール、落ち着いた方が良いよ。絶対に無理だけどそれはまだ取っておいた方が良い。あとブーメラン刺さってるよ」

 

 

 俺の隣に座っている平家が宥めるような言葉を発する。うん、知ってる! 俺も相棒に頼らないと何もできないからね! ついでにこんな場所で暴れても何の得にもならないのは俺だって分かってる。冗談だよ、冗談。なぁ、平家……お前は魔法使い殲滅するぞって言ったら付いてくるか?

 

 

「とーぜん。だって私はノワールの騎士だもん」

 

 

 ――ありがとよ。

 

 

「……では、状況を整理します。この駒王学園にはぐれ魔法使いと思われる集団が襲撃、校舎の一部を魔法で破壊、その騒動の中でフェニックスさん達を誘拐しています。校舎の被害に関してはどうにかなりますがその他が問題です……襲われた生徒達の記憶はアザゼル先生が残した記憶変換装置で別の記憶へと置き換えていますがSNSなどに投稿された動画などは今もネットの海を彷徨っているでしょう。もっともこちらの方も三大勢力のスタッフ、北欧勢力の方々、そして魔王様方がなんとかすると言っていましたから任せましょう」

 

「問題って言えば襲われた奴らが恐怖でおかしくなっちまうかもしれねぇってことだな。俺としてはどうでも良いが水無瀬をそいつらの介抱に向かわせてる。まぁ、こっちも時間が経てば解決するだろうぜ」

 

「えぇ。水無瀬先生、ロスヴァイセ先生の人気が役に立ちました……と言って良いのか分かりませんが今後も学校生活を送れると思われます。断言はできませんけどね。キマリス君、その、貴方の方で起きた事件も匙から聞いています……ですから怒られることを覚悟で話させてもらいます。今回の一件は――裏切者の存在があるかもしれません」

 

 

 はい残念でした違いますよ。どーせ駒王町を覆っている結界を通り抜ける事が出来るのは俺達キマリス眷属、グレモリー先輩達グレモリー眷属、生徒会長達シトリー眷属とこの町で働いているスタッフぐらいだからはぐれ魔法使いが潜入できたのはおかしいと考えたんだろうけどさ。残念ながら邪龍の筆頭格――アジ・ダハーカが操る魔法のおかげなんだよ。相棒からアジ・ダハーカは千の魔法を操ることが出来るから橘絡みで展開した結界や駒王町を覆っている結界ぐらいは楽に通り抜ける事が可能らしい。まぁ、言わないけど。勘違いをしたままドヤ顔をしていれば良いさ……笑えるし。

 

 しっかし匙君から聞いたねぇ……犬月、テメェか? あぁ、頭を下げたって事はお前ね。いや別に怒ってないから安心しろ。どうせ遅かれ早かれバレてたことだしな。この怒りはゴミ相手に発散させてもらうからお前は黙って俺の前に現れる虫を殺して来ればいい。

 

 

「う、裏切り者ですか……?」

 

 

 一誠君が驚いた声を上げた。でもその表情は思い当たる人物がいるようなものだ……うん、恐らくこの場にいる誰もがその名を、その存在を思い浮かべただろう。俺と平家以外はだけどな。

 

 

「はい。リアスから教えられているとは思いますがこの地域一帯には結界が張られています。怪しい人物が侵入したならば即座に私達や三大勢力に知らされますから今回の襲撃を考えれば魔法使い達が強引に侵入してきたとは考えられません。ですので考えられるとすれば三大勢力のスタッフを人質、あるいは結託して誰にも知られることなく侵入してきた……そしてもう一つは、光りゅ――」

 

 

 そこから先の言葉は無い。何故なら先ほどまで話していた生徒会長の顔に触れるか触れないかの距離に影人形の拳があるからだ。うん、若手五王って呼ばれてるから調子乗ってるのか知らないけどアイツがこの件に関わってると言いたいわけ? あぁ、やっぱり他からはそう思われるよな。はぁ……外面だけ見て中身を理解しようとしない分際が何を言うつもりだ。チッ、こんなところで力を()()させるのは得策じゃないってのによ……でもちょっとばっかり殺る気になったから頑張れそうだ。

 

 

「……どうぞ続けてください。光龍、なんですか? ほら、言ってくださいよ。早く早く。説明をしたいんでしょう? だったら最後まで言わないとダメじゃないですか。どうぞ放たれた拳なんか気にしないで思った事を口にしてください」

 

「……こ、光龍、妃のそんざ、いです」

 

 

 あら、言い切ったよ。以外と根性あるなこの人。

 

 

「なるほど、そうですか。流石は若手五王と呼ばれる(キング)、鋭い考察だ。あぁ、本当に――馬鹿じゃねぇの」

 

「っ!」

 

「あの夜空が魔法使い()()を学園に転移させると本気で思ってんのか? しかも校舎を破壊するわけでもなくただの転移だけ……ばーか。仮に夜空が関与してるんなら俺を楽しませるために校舎ごとお前らも殺害してるんだよ。まぁ、気が変わってこんなことをした可能性も無いわけじゃない。でもな……アイツのことを分かってない癖にくだらねぇことを押し付けてんじゃねぇぞ。ただアイツは楽しみたいだけなんだよ……邪龍らしく、人間らしくな。つーか今の俺の状態を見にきてない時点でその線はねーんだよ。はい、分かりましたかー?」

 

 

 とびっきりの笑顔で生徒会長を見つめると震えられたのがちょっと傷つく。なんか平家からそれは笑顔なんかじゃないって言われたけど凄く笑顔だと思うぞ? きっと目に光が宿ってないから笑顔大賞は確実なはずだ。落選確実? マジかよ。

 

 

 

「ちっ、ビビるくらいなら言わなきゃいいのによ。犬月、飲みもん」

 

「はいどうぞ! コーラっす! なんならお菓子もあります!!」

 

「サンキュー。あぁ、そうだ。匙君匙君」

 

「な、なんだ……? 今の黒井に呼ばれるとすげぇ嫌な予感しかしないんだが……?」

 

「ヴリトラ出して」

 

「はい分かりました!」

 

 

 俺のお願いに即答して足元から黒い蛇を出す。何故か足が震えているけど大丈夫か? 疲れてるんなら座っても良いんだよ?

 

 

『我を呼んだか、今代の影龍王よ』

 

『ゼハハハハハハハ! 呼んだのは()だぜぇ、ヴリトラよぉ』

 

『ッ!! な、なに……! まさか、そうなのか……! 何が、あったのだ! 今回の一件は……お前がその状態になるほどなのか……! クロム!!』

 

『おうよ! 今の俺はすっげぇ気分が良いからな! 除け者にしたくねぇからよぉ、良い事を教えてぇと思って呼んだんだぜ! ゼハハハハハハハハ! どうせ気づいてるとは思うけどな! 感じたんだろう? ヤツのオーラをよぉ』

 

『あぁ。しかし……まさか、本当なのか。本当に奴らなのか……!!』

 

『そうだ。俺も久しぶりに話が出来てすっげぇ楽しかったぜ? この状態じゃなかったら殺し合ってたところだぜ! ゼハハハハハ! ヴリトラよぉ、分かってるとは思うが――邪魔すんなよ』

 

『分かっている。あぁ、分かっているとも。我とて今の貴様に近づきたくはない』

 

『なら良いさ。黙ってるドライグにも言っておけ、俺の邪魔をしたら殺すとな』

 

『伝えて、おこう』

 

 

 蛇の姿のヴリトラが若干ではあるが震えているところを見ると今の相棒の状態はよほどの事らしい。俺としてはカッコいいんだけどなぁ……だって頼りがいがあるだろ? ドラゴンとしての在り方は尊敬する。ホント、ありがとうな……相棒。

 

 周りの面々……平家は俺の心を読んでいるから既に知っているけど他の奴らは何を言っているのか分からないだろう。特に教えるつもりは無いからこのままでも良いけどね。だって仲間じゃないし情報共有をする理由すら無いのにわざわざ教えてあげる理由がどこにある? 知りたかったら自分で情報を集めれば良いさ。そんな事を思っていると俺の携帯に着信が入った……相手は勿論、母さんからだ。あぁ、なるほど。よほど俺を怒らせたいらしい。

 

 

「もしもし」

 

『――ノワール・キマリスさんですね』

 

 

 男の声だ。声質は若い……俺と同じか一つ、二つほど上って感じだな。変声器すら使わないとは度胸があるのか馬鹿なだけか……どっちでも良いか。既に()()()()()

 

 

「そうだけど? どちらさん?」

 

『貴方のお母様、そしてフェニックスの双子姫様をお預かりしている者です。ご安心ください、彼女達には危害を加えてはいません』

 

「あっそ。で? 用件は何だ?」

 

『本日の深夜、こちらが指定する場所に来ていただきたい。勿論、来るのはグレモリー眷属、シトリー眷属、キマリス眷属、志藤イリナのみです。こちらの要求を呑んでもらえないのであれば……分かりますね』

 

「裏マーケットに奴隷として流すってか? はいはい童貞が考えそうなことで何よりだ。はいはい行きますよ、行けばいいんだろ? お前達が居る地下のホームにさ」

 

『……こちらはまだ場所を教えていないはずですが何故分かったんですか?』

 

「――ゼハハハハハハハハハハハッ!!! まさかマジで気づいてなかったのかよ!! 邪龍頼りの転移でそこまで気が回ってなかったかぁ? だったらそっちの落ち度だな! だったら教えてやるよ……俺の弱点だぜ? 何かあってもすぐに対応出来るように対策ぐらいするだろ。俺が生み出した影人形が機能停止された程度で止まるわけねーだろ! ゼハハハハハハハハ!!」

 

 

 アジ・ダハーカもお優しいね! まさか母さんの影に仕込んでいた影人形を()()()()させただけで破壊はしなかったんだからさ! 流石の俺でも完全に破壊されたら打つ手は無かったがそれだったらまだなんとかなるんだよ……俺がその手の技術をどれだけ血反吐を吐きながら鍛え上げたと思ってやがるって話だ。破壊されずに存在するなら遠隔操作からの再起動や他の霊魂共に痕跡を探させるぐらいは容易いんだよ! まぁ、流石にアジ・ダハーカの停止魔法を解くのに一時間弱は掛かっちまったけどな。その辺はまだまだ未熟って事だ……頑張ろう。

 

 俺が笑い声を上げるが相手は逆に静かになった。どうせ計画が狂ったとか思ってんだろうが……誰の逆鱗に触れたと思ってやがる。これぐらいは当然の結果だろうが!

 

 

「場所は分かった。あとはお前らを殺すだけだ。光栄に思え、お前の願いに応えてやる。別に逃げても良いがその場合は世界を滅ぼしてでもお前達を見つけ出して生まれてきたことを後悔させてやるから覚悟しておけ」

 

 

 それを言い残して強引に電話を切る。さてと……向かうか。母さんの影に仕込んだ影人形の再起動は終わったから何かあってもしばらくは対応は、ん? なんだよ相棒……マジで? あぁ、そっか。だったら遅れても良かったかなぁ? 良いか! 邪龍なんだから即行動は当たり前! タノシミダナァ! 皆殺し!!

 

 

「平家」

 

「了解。恵に連絡しておくよ。現地集合で良い?」

 

「それで良い」

 

「王様? 姫様や王様の母さんを攫った連中は皆殺しで良いっすよね?」

 

「当然だ。必ず殺せ。逃げたなら追いかけてでも殺せ」

 

「ういっす!」

 

「……偶には虐殺も悪かないねぇ。にしし」

 

「いっぱい殺す。絶対に殺す。必ず殺す。主様のために頑張って殺す」

 

「という事だ。橘、お前はどうする? ここで大人しく待ってても良いぞ?」

 

「――行きます。私は悪魔さんの僧侶です。何処でも付いていきます」

 

 

  あの橘が覚悟を決めた表情でハッキリと答えた。そうか……悪いな。汚れ仕事だってのに気合い入れさせちまってよ。ホント、良い女だな。

 

 

「……分かった。というわけですのでちょっと虐殺(さんぽ)してきますね? あぁ、そうそう――邪魔しても良いですけど殺されても文句は言わないでくださいよ」

 

 

 邪龍スマイルで周りにいる奴らにそれを伝えてから部屋から出ていこうとすると待ちなさい! と引き留められる――ことなんて一切無く、他の面々は静かに俺達を見送った。デスヨネ! だって本気の殺気を放って止めるなよと釘を刺してたからな。自慢じゃないがあの殺気を放たれて動ける奴は将来大物になるだろうね! きっと! タブンネ!

 

 駒王学園を出た俺達は話をすることも無く駅へと歩き出す。多分だけど全員考えている事は魔法使い殺すとか絶対に助けるとかそんな感じだろうな……道中で水無瀬とも合流したが俺達の様子を見て一瞬で察したのか表情を一気に変える。流石俺の僧侶、言葉を話すまでも無く分かるとはね……やっぱりこいつも良い女だわ。

 

 

「平家」

 

「うん。ちゃんと地下にいるよ、深夜に来ると思ってるのかのんびりしてるっぽい。どうする?」

 

「説明が必要か?」

 

「いらない。それじゃあ虐殺(さんぽ)しよっか」

 

 

 エレベーターで駅の地下へと降りて鎧を纏う。そして今までのイライラを吐き出すように影を生み出して道の至る所に流す……ゼハハハハハハハハハハハハ! シャドーラビリンスの完成だ! 逃がさねぇぞ? ここで黙って殺されろクソゴミ共!

 

 

「良いか、これからやることは簡単だ! ガキでも分かる! ただこの場にいる奴らを殺して破壊して蹂躙するだけの簡単なお仕事だ! 遠慮なんかいらねぇから徹底的に殺れ! チーム編成は自由だが平家は俺と来い、それ以外は勝手に暴れ回ってろ! さぁ、パーティーの始まりだ!! 誰の身内に手を出したかを分からせてやろうじゃねぇか!!」

 

 

 俺の声と同時に犬月達は駆け出した。四季音姉妹は右、犬月と橘と水無瀬は左、グラムは中央と各々が楽しそうな笑みを浮かべて走っていく。それを見届けた後、俺は平家とある場所へと向かう……それは当然、母さんとレイチェル達が居る場所。別に急がなくても問題はもう無いんだがここまで来た以上は急いで向かった方が良いだろう……というよりも向かいたい。

 

 

「な、か、影龍王だと?! ま、まだ約束のじか――」

 

 

 道中ですれ違うゴミ共を殺しつつただひたすら突き進んでいく。先ほどから悲鳴や衝撃が響いているから他の場所でも虐殺が行われているんだろう……タノシソウダナァ! 俺も早く始めたいぜ! てか本当に多いな! ドンだけ数が居んだよ! サボりか?! サボりだな! お前らちゃんと働けよ! この時間でも働いている人達に謝れ! 俺が殺してやるから!

 

 平家が龍刀「覚」を握り、目の前にいるゴミ共の首や胴体が切り落とす。その表情は無表情で動作もゲームで遊ぶぐらい当たり前の行動をしているからか無駄が無い。俺達に襲われて恐怖のあまり逃げようとする魔法使い達もちらほらといるが残念な事にこの場所全体はシャドーラビリンスで覆っているから転移すら行えない……つまり逃げられないんだなぁ! お前達が出来るのは此処で殺されるしか無いわけだ。理解したならさっさと死ね。時間の無駄だ!

 

 俺達に向かってくる魔法を影人形の拳で防ぎ、お返しとしてさらに影を生み出す。そこから無尽蔵に湧いてくる影人形達によって魔法使い達はなす術もなくペースト状のなにかへと変化するが気に留める理由も無い。ん? なんだよ平家……目の前の男ははぐれじゃない? そっかー! なら捕まえるか。はい! 四肢切断からの全身の骨を折って口の中から影人形を体内に入り込ませて折れた骨の代わりや心臓を無理やり動かし、本来なら死ぬところを強引に生かしました! なんという無駄な技術! これは今後に役立ちそうだね!!

 

 

「きっと凄く役に立つよ」

 

「だろ? 今の状況は?」

 

「みんな張り切ってるよ。魔法使いは召喚も出来ないから魔法で攻撃するしかない。でもそれなら余裕で対応できるから楽に殺せてるよ。数で言うなら既に百は超えてるね」

 

「むしろ百人以上もこの場所にいることに驚きだ」

 

「とーぜんだよ。だって()()()が手あたり次第に外にいる魔法使いを拉致って此処に放置してるんだもん」

 

「おっ、良く分かったな?」

 

恋敵(ライバル)だもん。それぐらいは分かるよ」

 

 

 それは何とも凄い事で。いや誰だって分かるか……なんかさっきから空間に穴が開いてそこからゴミが降ってきてるし。てか夜空の奴……いくら暇だからってこの場所以外にいる魔法使い共を送り過ぎだろ! そこまでして俺達に殺させたいか! ダヨネ! だって俺のガチギレなんて滅多に見られないんだし長く見ようとするよね! でもさーお前も手伝ってくれても良いんだぞ? 歓迎するし俺もテンション上がってワクワクするからさ!

 

 

「ま、待てって! お、お前だって好き勝手にやってるじゃねぇか!? 自分が良くて俺達はダメなのかよ!!」

 

「おう。てか何言ってんだお前? 俺、悪魔で邪龍だぞ。自分が良くて相手がダメなんて常識だろ? だって悪で魔だから「悪魔」って呼ばれてんのにさ、正義の味方みたいに正しい事ばっかりするわけねーだろ。頭大丈夫か?」

 

「ふ、ふざけんな! そんなの、そんな――」

 

 

 何やら変な事を喚いていた男の足元から影を這わせてそのまま一気に絞る。ブチブチと何かが潰れる音と新鮮なトマトジュースが床に広がるが俺には関係ない。だって邪魔だったしウザかった。だから殺して何が悪い? 元々生かしておく理由も無いんだから当然だろ? あと別に好き勝手に何かするのは良いんだよ。俺達に関係無かったらドンドンやってくれ、でも今回は別なんだよ。喧嘩を売ってきて殺されたくないとか甘えてんのか? ばーか。無理だから黙って死ね。

 

 男の悲惨な姿を目撃した他のゴミ共は悲鳴を上げながら逃げようとする。でも残念ながら逃がすつもりは一切無いから影を生み出して一気に捕らえてミキサーにすると周囲にトマトジュースのように赤い液体が巻き散らされる。うーん、我ながら惚れ惚れとするね! きっと夜空も今の俺の姿を見たらメロメロになるに違いない! キャーノワールくん大好きー抱いてーとか思ってるに違いない! よっしゃ! 俺の本気はまだまだ続くからもっと殺すぞ! 夜空をメロメロにさせてやらぁ!

 

 

「――絶対にないよ」

 

 

 真っ先に否定するのをやめてください。心に響きます。

 

 そんなやり取りをしつつゴミ共を掃除(ころし)ながら目的地へと到達した。やや広い空間で地面には魔法陣が展開され、その上に母さんとレイチェル達が座らされているが周りには誰も居ない……流石に逃げたか。まぁ、逃がさないけどね。この場所全体には俺が生み出した影が広がっている……つまりどこに誰が居るのかなんて丸分かりなんだよ。だからたとえこの場所から逃げた所で意味なんてない――はい、遠くの方から悲鳴が聞こえてきました! きっと影の海に捕まってペースト状にでもなったんじゃねぇかな? どうでも良いけど。

 

 

「キマリス様!!」

 

「レイチェル、レイヴェル……悪い、助けるのが遅れた」

 

 

 影を纏った拳で魔法陣に触れて一気に力を奪って破壊し、一度鎧を解いてからレイチェル達の傍まで駆け寄る。決して……決して俺の胸に飛び込んでくるレイチェルのおっぱいの感触を味わいたいとか思ってない……思ってないよ? ほ、ほら! 俺の鎧って硬いじゃん? そんなのに飛び込んで来たら怪我しちゃうでしょ! いやー柔らかいなー! 流石フェニックスおっぱい……! 制服の上からでもこれとは将来が楽しみです!

 

 平家から蔑んだ視線を受けながらレイチェルの方を掴んで上から下へと姿を確認する。見た感じ、乱暴に掴まれた跡とか制服も乱れはあまり無いからその手の乱暴は受けてなさそうだ。一応念のため平家に視線を向けるとコクンと頷いたからどうやら俺の考えは間違ってはいないらしい。良かった……流石に一緒に住んでいる知り合いが知らない男たちに犯されたとかになったら世界を数回滅ぼすレベルで頭にくるしな。ホントに……間に合って良かった。

 

 

「い、いえ……前のように助けに来てくれると信じていましたから謝らないでくださいませ。それにお姉様とキマリス様のお母様が一緒でしたしこ、怖くなんてありませんでしたわ! で、ですけど……出来ればもっと強く、抱きしめてほしいですわね……」

 

「それぐらいならお安い御用だ。一応、聞くけど魔法使い達に何かされたか?」

 

「私とレイチェルは魔法陣で何かを調べられていましたがそれ以外は何もされてません……キマリスさまのお母様は人間ですのでただの人質、キマリスさまをこの場に呼ぶだけに攫われたようですわ。そ、それよりもキマリスさま! 魔法使い達が私とレイチェルを攫った理由ですけど――」

 

「そんなことは俺じゃなくて学園で待機してる生徒会長達にでも話してくれ。あぁ、一応フォローしておくが俺から一誠達に邪魔するなって言ったからこの場に来てないだけだ。今も心配してるだろうから元気な顔を見せてやれ……おい、無事だな?」

 

 

 レイチェルを抱きしめながらレイヴェルに説明をすると何かを察したような表情になった。まぁ、本当なら一誠のようなヒーローがやるような場面だろうが今回だけは譲れ。偶には邪龍だって助けたくなる時もあるんだよ。そんな事を思いながら母さんの方を向くといつもと変わらない表情を返してきた……たくっ、呑気なもんだ。いきなり攫われたってのに怖がる素振りすら見せないなんて度胸があるのか何なのか分かんねぇな。ただ――今回は護れて良かった。

 

 

「勿論よ。普通の人間なんだもの、人質以外の価値なんてないわ。もうっ、そんな顔しないの……大丈夫だから。ノワールが来てくれるって信じてたもの」

 

「……そうかよ。無事だったならそれでいい。親父やセルス達からも文句を言われずに済むしな」

 

 

 囚われた三人と話していると俺達がやってきた方向から足音がした。そして俺達の前に現れたのは自分の服を血で染めている犬月だ。うわぁ、すっげぇ返り血……どんだけ殺したんだよお前ら? よくやった。ドンドン殺せよ! 遠慮なんていらないからな!! つーか犬月……誰そいつ? なんか四肢が折れて今にも死にそうな男を引きずってきたけどお土産かなんかか?

 

 

「こんな所に居たんすか……って姫様!? ぶ、無事っすか! なにかされたっすか!? 遠慮なく言ってくれよ! 仕返しすっから!」

 

「だ、大丈夫ですわ! そ、それよりもシュンさんの方こそ大丈夫なのですか!? ち、血がいっぱい……」

 

「ん? あぁ、これは違うっすよ? ゴミ共を殺した時に付いたもんなんで俺自身は怪我すら負ってないから安心してください。てか王様? 水とかありません? 腹減ってたんで何人か喰ったんすけど逆に喉乾いちゃって困ってんすよ」

 

「あるわけねぇだろ」

 

「デスヨネー。じゃあ良いや、歯に肉とか挟まってマジで変な気分……終わったら歯を磨かねぇとダメっすね。あっ! 手土産としてコイツを連れてきたっすよ! なんか自分ははぐれじゃないとか言ってたんだがどうします?」

 

「平家」

 

「嘘だよ。思いっきりはぐれ魔法使い」

 

「マジかよ……引きこもりが言うんだし間違いねぇか。じゃあサヨナラ」

 

 

 首をブンブンと横に振る男の口に両手を入れて一気に開く。うわぁ、戦車に昇格してるからか見事に割れたな。人間って口を思いっきり開かれたらあんな風になるんだな……初めて知ったわ。あっ! ちゃんと三人に見えないように影で隠したよ! 流石にグロイからね!

 

 

「やっぱ引きこもりが居ねぇとどれが生かしておかないとダメな奴か分かんねぇわ。それでどうします? グラムも酒飲みも茨木童子も嬉々として魔法使い共をぶっ殺してますけどそろそろ終わりそうっすよ?」

 

「橘と水無瀬は?」

 

「あー、水無せんせーとしほりんも虐殺で忙しいっすね。此処に来る前にちょこっとだけ見ましたけど雷で焦がしてたり凍結させて粉砕とかしてましたし」

 

「そうか。だったらお前は母さんを背中に乗せて冥界へ行け。このルートを通ればキマリス家が所有する列車があるはずだ。途中で四季音姉を拾う事も忘れるなよ? 道中、何があるか分からねぇから護衛として連れていけ。文句を言ったら俺がデートしてやるとでも言っておけ。平家、お前はレイチェル達と一緒に学園に向かえ。そこでレイチェル達が得たであろう情報を聞いてあとで教えろ」

 

「ういっす!」

 

「りょーかい。ノワール、私もデート希望」

 

「はいはい。してやるからちゃんと仕事しろ」

 

 

 とりあえずこれで母さんは冥界にいる親父達、レイチェル達は生徒会長達が居るから一応は安全だろう。さてと……犬月達が居なくなったからこの場所には俺達()()だけだ。いい加減、姿を現しても良いだろ――夜空?

 

 

「居るんだろ? いい加減、俺の前に出てきたらどうだ?」

 

「――しょーがないなぁ! おっひさぁ~! すっげぇガチギレ状態じゃん! にひひ! そこまで頭にきてたん?」

 

 

 俺の背中に転移してきたのは規格外こと夜空ちゃん! 先ほどまで魔法使いを拉致してたくせに息が切れてたり疲れている様子が一切ありません! まぁ、あの程度で疲れてたらとっくの昔に死んでるけどな。てか頭にきてたかって? 当然だろ……俺の弱点が狙われたんだ。そんな面白い事をしてくれる奴を殺せると思うとワクワクしてるんだよ! それはお前も同じだろ……声は笑ってるくせに無表情だぜ? あぁ、おっかねぇな……何かの拍子で一気に爆発しかけてんじゃねぇか! それは俺も同じだが……やっぱり似たもの同士って奴だな、俺達はさ!

 

 

「当然だろうが。今もな……爆発しそうでおっかねぇんだよ。俺も、相棒も……そろそろ我慢出来そうにない」

 

「だったらまた殺し合うぅ~? お母さんは助けたんだしもう暇っしょ? 今のノワールと殺し合うなんてすっげぇ楽しそうじゃん! ほらほら~やろうよぉ!」

 

「――悪いな。今はお前の相手をしてる暇は無いんだよ」

 

 

 あぁ、いつもなら喜んで殺し合いをしたいさ……でもな、()は遊んでる暇なんて無いから次の機会にしてくれ。

 

 

「――そっか。じゃあ、仕方ないね。仕方ねーから連れてってやる。感謝しろよぉ? 逃げないように威嚇しててあげたんだしお母さんだって護ってやってたんだからさ」

 

「あぁ。感謝してるよ……夜空、悪いな」

 

「別に謝んなくたっていいし。ノワールと殺し合いなんて何時でもできるしね」

 

 

 俺の背中にくっ付いている夜空が手を伸ばすと目の前に穴が開いた。夜空の態度からしてどうやらこの先に元凶がいるらしい……あぁ、やっとご対面か。タノシミダナァ!

 

 穴の中に入り、先へと進んでいくと別の空間にたどり着いた。何も無い真っ白いだけの空間、そこで待っていたのは服装が()()()()の男。なんかどこかで見た事のあるような顔とこれまたどこかで見た事があるような銀色の髪をしたイケメンだが地面に這い蹲って何かに震えているような様子だった……あぁ、なんだよ? 先に楽しんでたってわけか? おいおい……そこは俺に譲れよなぁ!

 

 

「……か、かげ、りゅう、おう……!」

 

「おう。約束破ってすっ飛んで来たぜ? まぁ、別に良いよね! だって悪魔だもん! 約束を破るのは悪魔の世界じゃ常識だしさ! てか夜空!? 俺より先に遊んでるんじゃねぇよ!」

 

「しかたねーじゃん! 暇だったんだしさ! でも私にしてみれば我慢した方だぞぉ! だって物理だけしかダメージ与えてねーし! しかもそれを治してあげたんだよ? すっげぇ優しいじゃん! どうどう? 優しくない?」

 

「すっげぇ優しいな! お前……いったいどうしたんだよ? 今までだったら指パッチンで即殺害だったのに五体満足で生きてるってなんか悪い物でも食ったか?」

 

「食べてねぇし! ちゃんと美味しいものを食べてるっての! ノワールの財布から取った金で!」

 

「……道理で最近、俺の財布が軽いわけだ。あっ! ごめーん? 無視してマジでゴメンね? 待たせたな。今度は俺とお楽しみタイムの始まりだ。覚悟しておけよ」

 

 

 殺気と共に銀髪男に視線を向けるとビクッと体を震わせた。なんかこれ……弱い者虐めをしている気分になってくるからやめてくれません? もっともやめる気なんて一切無いけどな。

 

 

「……ぜですか」

 

「あん?」

 

「……何故ですか……! 貴方は好きに生きている! なら私だって好きに生きていいはずだ! 悪魔らしく……邪悪で! 自分勝手に! 貴方のお母様を狙ったのも貴方と対話を行うため……危害など加えるつもりは一切無かった! 誰よりも悪魔らしく、邪龍らしい貴方の力を貸してもらいたかったからこその行動です! 貴方とリゼヴィムさまが手を組めば……世界中に悪魔を知らしめることができる……! そうすれば――」

 

「あっそ」

 

 

 影人形を作り出して何やら語りだした男の足を殴る。鈍い音を響かせながら男は殴られた衝撃で吹き飛ばされるがその直後に光が傷を癒す……なんだよ、お膳立てをしてくれるってか? 良い女だなぁ、やっぱりお前が大好きだ。なぁ……相棒。そろそろ限界だよな……殺そうぜ。

 

 一歩、銀髪男に近づこうとすると不意に意識が神器の奥底に引っ張られた――

 

 

 

 

 

 

 目の前に広がったのは壮絶な殺し合いの光景だった。

 

 山吹色の鱗をした美しいドラゴンと黒の鱗と禍々しい棘を生やしたドラゴンがとある存在と殺し合っている。神々しいほどの神力を相手に二匹のドラゴンは高笑いしながら戦っている。影のドラゴンが攻撃を防ぎ、光のドラゴンが攻撃する。その連携は恐ろしいとさえ言えるだろう……しかしそんな戦いもとある存在の言葉によって終わりを迎える事になった。

 

 

 ――あなたは真に誰かを護りたいと思った事はありますか?

 

 ――あなたは真に誰かを愛したいと思った事はありますか?

 

 

 あまりにも場違いな言葉に二匹のドラゴンは笑い出した。そんなのは無いと、あるはずが無いとひたすら笑い出した。しかし目の前にいる存在が発した言葉を笑っていたドラゴン達はその言葉が気になりだしたんだ……護るとはなんだろうと、愛するとは何だろうと疑問に思った。今の自分がやっている事が護るなのか? 自分が今までにやってきた事が愛する事なのか? 殺し合いの最中だというのに二匹のドラゴンはそれだけを考え始め――そしてこの答えに達した。

 

 

 ――そうだ、味わってみようと。

 

 

 誰かを護る時の感情はどんなものなんだろう、誰かを愛した時の感情はどんなものなんだろう、二匹のドラゴンは味わった事が無い感情に違いないとワクワクし始めた。確かに今の自分は隣にいるドラゴンを護る事をしているが真に護りたいとは思ってはいない。確かに今の自分は今までに数多くの存在と体を交えてきたが愛してはいない。それを味わってみたいという欲望に目覚めたがここで一つの障害にぶつかった……今の自分達は強すぎる。仮にも邪龍の中でも最強格と呼ばれている自分達だ、このままでは護るどころか愛することすら出来ないとドラゴン達は焦りだした。攻撃の手をやめ、目の前にいる存在すら眼中にすらいれず、ただひたすらにどうすれば良いかを話し始めた。そして行き着いた。

 

 

 ――そうだ、弱くなろうと。

 

 

 偶然にも目の前にいる存在は同胞達を封じる術を持っている。ならこれを利用すれば弱くなるんじゃないかとドラゴン達は思いついた。ゼハハ、クフフと高笑いしながら殺し合っていたはずの存在に自分達を弱くしろと契約を持ちかけた。言葉を失う存在なんて無視して早くしろと、さっさとしろと急かしだすドラゴンはまるで子供のようにも見える。だがドラゴン達は本気なんだ……本気で味わってみたいから今までに得た力を捨てる。馬鹿だと、狂っていると言われても良い。自分達が楽しければそれで良いからと心の底から思っている。それを理解した存在は――その契約を結び、二匹のドラゴンを自らが開発した玩具へと封じこめた。

 

 これこそが「光龍妃の外套」と「影龍王の手袋」が生まれた切っ掛けである。

 

 

 

 

 

 

「……今のは、相棒の記憶か……?」

 

『ゼハハハハハ! その通りだぜ宿主様! 懐かしいぜぇ! 聖書の神と殺し合いをしてた時の記憶よぉ!』

 

 

 神器の奥底に意識を引っ張られたせいで目の前に広がる光景はガラリと変わっている。黒一色の世界、この場に居るのは俺と相棒、そして歴代達だけだ……なんか嬉しいな。相棒の過去を知れたんだしさ。

 

 

『見ただろう? あれこそが真実だ! ゼハハハハハハハハ! 聖書の神はよぉ! 俺様とユニアにあんなことを言いやがったんだぜ? 馬鹿だろ! 最強最悪の地双龍を相手に誰かを護りたいだの誰かを愛した事があるだのって本気で言いやがったんだぜ! でよぉ……気になっちまったんだよなぁ! その結果がこれよ! ゼハハハハハハハハハ! 俺様は全然気にしちゃいないがな!』

 

「……なんか、記憶の中の聖書の神が絶句してた気がするんだが?」

 

『気のせいだろう。むしろ逆に嬉しかったと思うぜぇ? 俺様もユニアも本気で頼み込んでたんだからなぁ! 宿主様、俺様はお前に出会えてよかった。長かった……長かったぜ! 途方もない旅だったがこうしてようやく俺様は――俺は答えを得られたんだ! 宿主様よぉ、お前の母上様は良い女だ。この俺が本気で護りてぇと思える程な』

 

「相棒……あぁ、俺なんかにはもったいない親だよ」

 

『ゼハハハハハハハ! そう言うな! 宿主様だからこそ母上様が居るんだ! 嬉しかったんだ……俺を恐れる事も無く屈託のない笑顔で話しかけてくれた母上様が……俺の話を聞いても引かずに楽しんでくれた母上様の存在が何よりも嬉しかった! だからよぉ……似合わないと言っても良い! あれを傷つける存在は世界から抹消してやるぜ!! ゼハハハハハハハ! これが、これが護りたいという感情か!! 中々良いものじゃねぇかよぉ! ゼハハハハハハハハハハハ!』

 

 

 笑っている。相棒が心の底から笑っている……子供のように楽しいから、嬉しいから笑っている。護りたいと思える相手と出会うために自ら封印されるなんて誰も信じないだろうな……でも、相棒らしい。俺は否定しないさ、だって気持ちは一緒だからな。

 

 俺の心と相棒の心が繋がる。俺達は二人で一人、好き勝手に生きて、好き勝手に楽しむことを信条としている悪魔で邪龍だ。誰にも邪魔はさせない……俺達は今を楽しんでいる! それを邪魔するのならば容赦はしない!!

 

 

「相棒」

 

『宿主様』

 

「やるぞ!」

 

『やるかぁ!』

 

 

 世界に知らしめよう――俺達の怒りに触れたらどうなるか!

 

 

「――ル、ノワール?」

 

 

 意識が現実に戻ると背中から大声で俺の名前を呼ぶ夜空の姿が見えた。なんというか可愛い……お持ち帰りしたいぐらいの可愛さだ! たくっ、そんな大声で呼ばなくったって聞こえてるっての。

 

 

「聞こえてるよ……うるせぇぞ」

 

「いきなりぼけーっとし始めたノワールが悪いんじゃん! 殺さねぇの?」

 

「殺すさ。なぁ、夜空……離れてろ。今から見せる俺達は前までとは違うからさ」

 

「ん? そっか、そっかぁ! にひひ! じゃあ見せてよ! 本気のノワールを!」

 

 

 夜空が背中から降りたのを確認すると今までためにため続けた怒りを一気に解き放つ。鎧を纏い、醜悪な呪いを放出しながら銀髪男へ呪文を唱えながら近づいていく。

 

 

「我、目覚めるは――」

《我らは止めぬ》《我らでは止められぬ》

 

「万物の理を自らの大欲で染める影龍王なり――」

《覇王の怒りが世界を呪う》《覇王の怒りが我らを染める》

 

「獰悪の亡者と怨恨の呪いを制して覇道へ至る――」

《怒りに触れた愚か者よ》《貴様は選択を間違えたのだ》

 

「我、魂魄統べる影龍の覇王と成りて――」

《見よ! これこそが真なる覇王の姿なり!!》《世界に呪いを!! 滅びを!!!》

 

「「「「「「「「汝を漆黒の回廊と永劫の玉座へと誘おう――」」」」」」」」

 

『PuruShaddoll Fusion Over Drive!!!!!!』

 

 

 俺と相棒が至った漆黒の鎧を纏う。俺の怒り、相棒の怒り、歴代達の怒り、全ての怒りが目の前の銀髪男に向けられている……いや違うな。俺と相棒の呪いが歴代達をそうさせているに過ぎない! 俺の意思はお前たちの意思だ……楽しもうぜ! 殺戮を! 虐殺を!

 

 

「……た、すけ、たすけ、ぐ、グレンデル!! ラードゥン!!! ニーズヘッグ!!! なぜ、なぜなぜなぜ!? 何故来ない!? ね、姉さん……姉さん! 姉さん!!」

 

「来るわけね―じゃん。テメェ程度が邪龍を使役できると本気で思ってたん? さっき私と遊んでた時に見せた偽物の神滅具のおかげでまーちょっとは楽しかったけどさ。素のお前って雑魚だろ。そんな奴の元に来るわけねーんだよ」

 

「だ、だだだだだが! 私が居なければ彼らの体は――ぎやあぁぁぁっ!?!?!」

 

 

 五月蠅いから回復していた足を踏みつぶす。俺から放出される呪いに犯され、足を潰された痛みで顔を酷く歪ませて助けてと叫びだしているがまだまだこれからだ――お前が味わう真の痛みはこれからなんだからな!

 

 

『Pain!!』

 

 

 鎧の宝玉から聞きなれない音声が周囲に鳴り響く。その音声が流れた途端、足元に転がっている銀髪男が発狂したように叫びだした。地面を転がり、()()から逃れようとしているが無駄だよ……俺が解除しない限り、それは永遠に続くんだ。聖書の神によって封じられていた最後の能力は護る能力なんかじゃない! 相棒が持つ唯一の攻撃能力なんだからな!

 

 

「どうだ? 痛いだろ? まだまだ続くから壊れるんじゃねぇぞ」

 

「たすけ、たすげでぇぎああああぁあぁぁぁっ!?!?!?!!」

 

 

 足を潰し、手を潰し、腕を潰し、目を潰し、耳を引き千切り、髪を引き抜く。その動作をするたびに『Pain!!』という音声が鳴り響くので銀髪男は()の痛みを味わい続けた……しかもそれだけでは終わらず背後に居た夜空から光が飛んできてダメージが全回復するので文字通り永遠に同じことを繰り返されることになっている。あらら、死んだ方がマシだろうな……なんせこの能力は「痛みを倍増させて与え続ける」からね! 俺が与える全ての痛みが倍増し、能力を解除するまでそれが永遠と続く「苦痛」と称された能力こそ相棒が長きに渡ってスカアハに殺され続けた末に会得したものだ。殺されては再生、再生しては殺され続けた相棒はこの「痛み」を別の誰かにも味合わせたいと強く思っていた……その結果、自分が与える痛みを倍にして永遠に与え続ける能力を目覚めさせた。でもユニアほど派手じゃないから気に入らねぇとは言ってたけど絶対に気に入ってるよね!

 

 そんな事は置いておいて潰されては回復、回復して潰されを繰り返していると銀髪男は精神の限界が来たのか壊れてしまったらしい……だってさっきから幼児退行とかいうかなんかそんな感じの状態になってるし。どうでも良いがなんかキモイな。

 

 

「キ、ひぃ、あひ、ひひひひひひひひひひいひひひい! ぎぎぎぎぎいいいいあああああ! あうあいうひぃひひひひひひ!」

 

「……こんなもんかよ。まっ、使い勝手は良さそうだ。実験台ご苦労様、解放してやるから感謝しろ」

 

 

 精神崩壊を起こしたゴミを宙に放って影人形二体を生み出し、ダブルラッシュタイムを浴びせる。勿論、苦痛の能力を発動しながらだから痛いという次元を通り越してるような気がしないでも無いが問題無いだろう。というより……コイツって結局誰だったんだ? リゼちゃんと繋がってるのは分かったが名前を聞くの忘れたな……良いか! そんなものに気を使うよりも今は別の事をしたいし!

 

 ゴミを掃除した後、後ろを向くと夜空が笑顔になっていた。子供のようにはしゃいでいる笑顔……楽しいことが見つかったと言いたそうな表情だ。あぁ、きっと楽しいぜ? だからお前も早くユニアの能力を解放しろよ……そして殺し合おうぜ! いつもの様にな!

 

 

「『ゼハハハハハハハ! さてと肩慣らしは終わりだ! 本命に行くとするかぁ! 夜空、おまえはどうするよ?』」

 

「んなの決まってんじゃん! ついていくー! てかぁ! 新しい能力に目覚めるとかズルイぞぉ! なんか凄そうじゃんか! にひひ! やっぱりノワール大好きー!!」

 

「『俺も好きだぜ! じゃあ、デートと行こうじゃねぇか!!』」

 

「ん~別に良いよ。どこいくぅ~?」

 

 

 どこって……決まってるじゃねぇか!

 

 

「『うぜぇメフィストのジジイがいる灰色の魔術師の本部に決まってんだろうが! ゼハハハハハ! 魔法使い狩りと行こうか!!』」

 

 

 

 

 

 

 灰色の魔術師(グラウ・ツァオベラー)、番外の悪魔であるメフィスト・フェレスが理事を務める魔法使いの協会であり古くから悪魔とも強い関わりを持っている組織。数多くの魔法使いが所属する協会で日夜、魔法使い達が自らの魔法の研究を行っているが今はそれどころではない。

 

 理事であるメフィスト・フェレスは自らが仕事を行う理事長室でこの状況をどう打破しようか思考を張り巡らせていた。突如として自らが運営する協会、しかもその本部が襲撃された事態ですら異常だというのにそれを行ったのが若手悪魔と人間なのだからなおさら異常だ。所属している魔法使い達は逃げようにも協会本部全体を覆っている黒い膜によって転移魔法を行う事も出来ず、周囲を徘徊している黒い人影によって一人、また一人と殺害されていく。いくら悲鳴を上げても、いくら助けを求めても、いくら命乞いを行ってもそれらは殺戮をやめる事は無い。これを行った相手が普通の悪魔が相手であるなら前線から身を引いたとはいえメフィスト自身、古い時代より生きている悪魔のため軽く制圧は容易だが――目の前の存在達はそうはいかない。

 

 

「――予想はしてたけどね。まさか、本当に襲撃してくるとは思わなかったよ……ノワールちゃん」

 

 

 メフィストと対面するように座る男と女を見つめながら慎重に声を出す。目の前で座っているのはどこかの学園の制服を着た男と光り輝くマントを羽織、ミニスカートを履いている女。それらは退屈そうにメフィストの言葉に反応する。

 

 

「売られた喧嘩は買わないとダメだろ? 邪龍的にさ。そもそも事の発端はテメェが発表したランキングって話じゃねぇか? そのせいでくっだらねぇことに巻き込まれたんだがどうしてくれんだよ?」

 

「……聞いているよ。はぐれ魔法使い達が一般人が通うキミたちの学校を襲撃したとね。でも、それは僕たち灰色の魔術師は関係ない話だ。今なら勘違いで治められる……ノワールちゃん、ここは引いてくれないかい?」

 

「へぇ、関係無いと来たか。ゼハハハハハハハ! じゃあこれは何なんだよ?」

 

 

 学生服の少年が使役している黒い人影が何人かの魔法使いを連れてきた。それらは酷い状態で四肢は折れ、唾液を垂れ流し、ひたすら助けを求める姿を晒している。メフィストは連れてこられた面々を見て表情を変えるしかなかった――何故ならそれは自らが運営する協会に属している者達だったのだから。

 

 

「今回の駒王学園襲撃、及び俺の()()()()()のフェニックスの双子姫と一般人の誘拐を行った集団にいた奴らだ。見覚えはあるよなぁ? テメェのところにいる魔法使いだろうが。色々と話してくれたぜ? 今回のランキングで若手悪魔が上位を占めたから力試しがしたかったってな……別にそれ自体は人間らしいから文句は無いさ。ただな、俺の契約者候補に何してくれてんだ? おい」

 

 

 この部屋全体を支配するほどの殺気を放ちながら話す少年にメフィストは次なる手を考え始める。最初から話が通じるとは思ってはいなかったが自分が運営する組織に所属する魔法使いがテロに関わっていたなどとは考えてもいなかった。目の前にいる少年は自らと同じ勢力に属する悪魔、このような事をすれば現在の地位を剥奪されて投獄、あるいは処刑すらあり得るだろう……しかし目の前に居るのはそれすらどうでも良いと本気で思っている少年だ。生半可な対応はこの場所以外に存在する協会にも被害が出かねない。それほどまでに――怒りをぶつけてきているのだから。

 

 

「まっ、悪魔らしく否定しても良いよぉ? そん時はどうなるかなんて考えなくても分かってると思うけど。てかぁ! 優しすぎない? もっと殺そうよ!」

 

「一応交渉の場だから大人しくしててくれません? ほら、お菓子上げるから」

 

「わーいノワールだいすきー」

 

「たくっ、あー話を戻すぞ。で? お偉い理事様はこれをどうするつもりだ? 別に良いんだぞ、否定してくれてもさ。その時はこっちも派手にやらせてもらうだけだし」

 

「私と言ってること変わんねーじゃん」

 

 

 この状況での最善の策はなんだとメフィストは考え続ける。普通の者が相手ならばいくらでも考え付くが目の前にいる少年たちは別だ。どのような嘘も謝罪の言葉も受け入れはしないだろう……やりづらいとメフィストは表情を変えずに心の中で思う。

 

 

「……分かったよ。これは僕たちの落ち度だ、キミ達の望むことをしよう。それで手を打ってはくれないかい?」

 

「ふーん、へぇー、ほー、望む事ねぇ? だったらジジイ、お前は何をしてくれるんだ?」

 

「……そうだね。今後、ランキングを行わない。悪魔と魔法使いの関係をさらに厳格にする。そして……僕は灰色の魔術師の理事をやめ――が、ぁ、っ……!!」

 

 

 反応することすら出来ない速度で黒い人影が拳を放ち、メフィストの片腕をへし折った。本来ならば曲がることが無い方向に腕を曲げ、痛みに悶えるメフィストに追い打ちをかけるように部屋中に音声が鳴り響いた。その途端、腕を折られたメフィストが脂汗を出し始め、必死に腕を抑えて痛みに耐えるような様子を見せ始めた。現在、メフィストは折られた腕から感じる強い痛みに耐えているのだ――思考すらままならないほどの強い痛みに。

 

 

「おいおい冗談だろ? 自分だけ逃げるってか……そりゃねぇよメフィストのジジイ。組織を運営している長だろ? だったらもっとやることがあるんじゃねーの?」

 

「……っ、ぁ、なに、か、な……?」

 

「さぁ、それを考えるのはお前だ。テメェのところの魔法使いによって巻き込まれた一般人の方々にお前は何をしてくれるんだ? なぁ、メフィストちゃん。教えてくれねぇか? 俺ってまだガキだからさ、分かんないんだわ」

 

「……わか、た、僕の、命を捧げ、よう……! でも、頼む……他の子たち、には手を出さないでくれ……あああああぁぁぁぁっ?!!?」

 

 

 真横から黒い人影に殴られ床に吹き飛ばされる。恐らく骨は折れているだろうがそれ以上に鳴り響く音声によってメフィストが感じる痛みが常軌を逸したものになっている。声を上げ、痛みから逃れようともがくが一向に無くなる気配はない。それを見ている少年たちはキモイと言いたそうな表情を浮かべている。

 

 

「ゴメン、ちょっと俺の耳が悪くなってたみたいなんだがさ、くれっていった??」

 

「……ひ、ぐ、手、をださない、でくだ、さい……!! 彼ら、はしょう、らい有望な……魔法使い、なんだ……!! 僕、の命だけ、でこの、場を、治めて、くだ、さぃ」

 

 

 自らに向けられた殺意からか体中に広がる強い痛みのせいか分からないがメフィストはひたすら頭を下げ続ける。そんな様子を見た少年は呆れた表情のままある言葉を言い放った。

 

 

「将来有望ねぇ。まー良いけど。ジジイ、俺の要望はただ一つだ、この組織を解体してくんない? ウザってぇんだわ。元々悪魔との契約は魔法使い個人がやるもんだろ? 何で悪魔のテメェが斡旋なんかしてんだよ。将来有望なら個人で悪魔と契約を持ちかけるぐらいは出来るだろ。さぁ、どうする? 別に死んでも良いがその場合はどうなるかなんてお前でも分かるよな」

 

「……分かった……! 解体、する……!」

 

「――夜空ちゃん、聞いた?」

 

「――もっちろん! 解体するってさぁ!」

 

 

 その言葉を待ってましたとばかりに少年たちは嗤いだした。悪意に満ちた笑みでメフィストを見つめ始める。

 

 

「よし、これで灰色の魔術師は無くなったわけだ……まー正式な手続きとかはしてないがお前個人からその言葉が聞けたんなら問題無いか。うん、メフィストちゃん?」

 

「なん、だい……?」

 

「――これで此処にいる魔法使い達は()()()だよな?」

 

 

 その言葉の意味を理解するのに時間はかからなかった。あぁ、元から許すつもりなどなかったと気づくのには遅すぎた。普段のメフィストであれば一瞬で気づくであろうことだが全身に広がる痛みによって思考が鈍くなっていたのだろう……そのせいで新たな悲劇が起きてしまったのだ。

 

 部屋の外から先ほどよりも激しく悲鳴が響いてくる。全てが遅すぎた……魔法使い達に伝えておけばよかったのだ……ドラゴンの逆鱗に触れたらどうなるかを強く教えておけばよかったのだ。

 

 

「ぁ、あ、ぁ」

 

「あーそうそう、お前は殺さないからな? だって見届ける奴が居ないと意味が無いからさ。良かったねぇ! お前の命は保証されてるよ! だから泣くなよメフィストちゃん! イケメン面が台無しだぜ?」

 

「ねぇねぇノワール!! 次は私がこーしょーしたい! なんか楽しそうじゃん! てかやらせろぉ!!」

 

「別に良いが……お前、交渉のやり方を知ってんのか?」

 

「ん? ただ光ぶっぱして殺せばいいんじゃねーの?」

 

「それはただの攻撃だっての……やりたいなら別に譲ってやるけどさ。次はどこに行く? 黄金の夜明け団か薔薇十字団か……それともお前が言ってた魔女の夜ってところでも攻めてみるか?」

 

 

 惨劇を引き起こした少年たちは何事も無いかのように話し始めるがそれを見続けるメフィストも限界だった。自分の可愛い子ともいえる魔法使い達を見せしめの様に殺され、さらに楽しんでいる様子に怒りが限界を超えた。少年の名前を叫び、自らの手で殺そうと立ち上がった瞬間――メフィストの影から黒い人形が現れて無数ともいえる殴打の雨を浴びる事になった。意識を失う直前、メフィストが見た光景は――自分の事すら眼中に入れずに帰っていく二人のドラゴンの姿だった。

 

 




・影の龍クロム
「影生成」・・・自由自在に影を生み出す。
「捕食」・・・影に触れた存在の力を奪う。
「再生」・・・いかなる傷も再生し、不死身の肉体を得る。
「苦痛」・・・相手に与える痛みが倍増し、解除しない限り永遠に痛みが続く。

以上が影の龍クロムが保有する能力です。
そして今回の話で出たドラゴン達と聖書の神の会話をダイジェストにするとこうなります。

影の龍「俺様を弱くしろよ」
陽光の龍「私を弱くしなさい」
聖書の神「マジかよ」

観覧ありがとうございました!

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