ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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影龍王と骸骨神
75話


「――ゼハハハハハハハ!! 邪魔だぁっ!!」

 

 

 剣の姿になったグラムを握り、特大の呪いをその身に浴びながらイライラをぶつけるように目の前へと波動を放つ。それは龍の顔のようなものへと変化し、キマリス領へと進撃中の巨大怪物とそいつから生まれ出るミニ怪物を切り刻む。大体数百メートルは切り刻んだ影龍破だが標的の怪物はいまだ健在、傷を再生させながら殺しても殺しても虫のように湧いてくるミニ怪物を時間と共に生み出していく……やっぱりデカい奴を殺さねぇと意味はねぇな! てか俺の目的は見下すように歩き続ける怪物だけなんだよ!! 雑魚は黙って道を開けやがれバーカ!!

 

 

『宿主様! まだまだ止まる気配はねぇぜぇ! どうするよ!!』

 

「決まってる! グラムの最大出力を叩き込んでやらぁ!!」

 

『ゼハハハハハハハハッ! そうだなぁ! その通りだ宿主様ぁ!! 俺様も見下されるのは我慢できねぇ!! ぶっ殺してやろうじゃねぇのぉ!!』

 

 

 手の甲にある宝玉から相棒の声が響き渡る。その声色はかなり激怒しているものだ……無理はねぇな! なんせ良く分からん雑魚に見下されて無視されてるんだもんね! マジで「ちょっと通りますねぇ」って感じで歩き続けてこっちをガン無視……ふざけんじゃねぇぞおい! うちの領地をタダで通れると思ったら大間違いだ!!

 

 視線を少し逸らせば鬼の軍勢が高笑いと共にミニ怪物を殴り飛ばしている。昨日、俺に片腕を切り落とされた鬼の頭領、寧音は凄く嬉しそうな笑みで金棒を握り、次々と薙ぎ払っていく……片腕だけなのにどんなパワーしてんだよ!! それどころか四季音妹の母親、芹もまた全身から妖力を放出してデカい大剣を手に寧音と同じように周囲を薙ぎ払っていく。身の丈以上の大剣は「斬る」というよりも「叩き割る」を重視してるんだろう……強度的に言えばかなり堅そうだ! それを鬼の腕力で振るわれたならどうなるかはお察しです! うちの領地付近がドンドン更地になっていくよ! ゼハハハハハハハ! 避難完了しててよかったわぁ!!

 

 

「皆さん! 橘志保! 一生懸命歌います! いっくよぉ~♪ みんなで怪物退治だよ♪」

 

「「「「「しっほりぃ~ん!! アイラブしほりぃ~ん! ヒャッハー!!!」」」」」

 

 

 禁手状態の橘が悪魔の羽を広げ、戦場に響き渡るほどの声で歌って踊ると妖怪達から歓声が上がる。鬼、天狗、犬月という男集団が狐耳を生やして腋出し巫女服状態の橘の歌を聞いてはテンションを上げてミニ怪物を駆逐していく……どういうことなの? うちのアイドルはいつの間に妖怪達のアイドルになったわけ? てか本当にすげぇなおい!! あれか!? 腋か! 腋だな!! よっしゃ腋は偉大だって証明できたわ!! てか犬月! お前は何やってんだよ!? 働けぇ!! いやいやそんな事よりも別の事でも驚いている事があるんだけどさ! なんと我らが橘様ったら歌いながら破魔の霊力込みの雷をミニ怪物目掛けてぶっ放してるんですよ!! おかしいな……? アザゼルの情報じゃ目の前の怪物や生まれ出てくるミニ怪物は悪魔のアンチモンスターだからグラムとか妖怪達以外からはダメージを殆ど受けないはずなのにね! てかマジで神滅具ってすげぇわ!! こんなもんを作れるなんて反則だろ!!

 

 

「悪魔さん♪ 志保! いっぱい頑張るからご褒美! 待ってます♪」

 

「んなもん好きなだけくれてやるっての!! 俺のために歌え!!」

 

「はい!」

 

 

 黒に恋した(エレクトロ・アイドル)偶像雷狐が歌う舞台(・フォックス・オン・ザ・ステージ)。雷電の狐の亜種禁手で独立具現型神器として使役していた狐と一心同体になった状態が今の橘だ。身体能力は動物並みに跳ね上がるし能力の雷も自由自在に操れる……だからこそ破魔の霊力と雷を同時に放つことが出来てるってわけだ! 弱点だった橘自身も強化されてるから攻防一体な禁手だと思う。あと破魔の雷の威力はバラキエルが放つ雷光とタメ張れると思うね! 受けたくないです!!

 

 

「ほっほっほ。わらわ達も負けてはおらへんなぁ。九重、しっかりと掴まっておるようにな」

 

「うぬ! 母上!! れっつごーなのじゃ!!」

 

「皆の者!! 八坂さまと九重さまに続けぇ!! 影龍王殿に我ら京都妖怪の力を見せるのだ!!」

 

「「「「「うおおぉぉぉおおおぉぉっ!!!! 八坂さまぁぁっ!! 九重さまぁぁっ!!」」」」」

 

「かっかっか! やるねぇ九尾の姉さん! あたしらも気合入れるよぉ!! 総大将に恥かかせたら鬼の名折れさね!!」

 

「にしし!! 行くよお前達! 今こそ鬼の力をノワールに見せてやりな!!」

 

「「「「「寧音様! 伊吹様!! 俺達の力を見てください!! オラオラぁ!!! 退け退け道を開けろぉ!!」」」」」

 

 

 九尾の姿となった八坂姫が九重を背に乗せてミニ怪物を踏みつぶし、寧音と四季音姉が指揮する鬼達が剛腕にて道を作る。なんという怪獣合戦と暴力合戦! これは俺も便乗せざるを得ない!! てか鬼達と京都妖怪達のテンションやべぇなおい!! ますます気に入ったぁ!!

 

 

「ゼハハハハハハハハハ!!!! 怪獣だったら俺様も生み出せんだよぉ!! 影龍人形!!!」

 

『ShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShade!!!ShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShade!!!』

 

 

 これでもかと音声を鳴り響かせて目の前の怪物と同じぐらいの大きさを持つ影人形を生み出す。それは禍々しいほどの棘を生やした黒のドラゴン! 影龍を模したものだ!! その頭部で腕を組み、高らかに叫びだすと周囲から大歓声が上がる。最高です総大将とかこのまま一気にお願いしますとか聞こえるから大好評らしい! ゼハハハハハハ! やっぱり妖怪って最高だな! ノリが良い!! でも「あれ? なんか王様の方が敵に見える」なんて声が聞こえるが無視だ無視! というよりもパシリなんだから俺のために働け!!

 

 

「水無瀬! おまえはこいつを操作して俺の道を作れ! 嫌ですとかできませんとかやってみますじゃなくてやれ!! 俺の僧侶ならそれぐらいできるだろ!!」

 

「――当然です!!」

 

 

 禁手状態の水無瀬が黒のドレス姿で影龍人形の頭部に降り立った。そして足元から影を伸ばして影龍人形に接続すると俺の意思とは別の行動を開始し始めた。腕を振るいミニ怪物達を薙ぎ払いながら前へ前へと進んでいく……その姿は本当に相棒が復活して暴れているような感じだ! 良いぞ良いぞもっとやれ! そうだ、それで良い! 俺の影響で「影」を使う能力に目覚めたんならこれぐらいはやってもらわねぇと困るんだよ! 誰の眷属になったと思ってんだ? 俺様の眷属だろ! 誰にも渡す気はねぇからドンドン戦え!!

 

 

「ゼハハハハハハハ!! 良いかテメェら!! こんなのは楽しんだもん勝ちだ!! 魔力や妖力の攻撃が効かねぇ? だったら殴れ!! 殴っても効かねぇなら効果有るまでぶん殴れ!! 好き勝手に! やりたいように!! 目の前にいるムカつく奴をぶっ殺せぇ!! 俺が許す!! それになぁ……! これが終わったら名ばかり魔王共が自費で宴会してくれるってよ!! 何が何でも金と酒と飯を出させっから張り切っていけぇ!!!」

 

「「「「「「うううおおおぉぉぉぉおおおおおぉぉぉっ!!!!!!!!」」」」」」

 

 

 鬼と妖怪達はさらに張り切ってミニ怪物を殺していく。宴会効果スゲェ!

 

 

「そんな事を言って出来ませんってなったら大変だよ?」

 

「んあ? そん時は魔王にグラムぶっぱするから良いんだよ。てか戦況は?」

 

「此処以外はちょっと拙いね。悪魔に対するアンチモンスターっぽいから魔力攻撃も転移も効かない。そもそも悪魔は魔力に頼ってるからそれを無効化されると殆ど打つ手なし。しょーじきヤバいね」

 

 

 だろうな……なんせ純血悪魔や最上級悪魔の殆どの奴が魔力を使った攻撃に頼りっきりで肉体を鍛えている奴は少ないだろう。むしろ俺やサイラオーグや一誠のような奴が珍しいを通り越して馬鹿にされてるぐらいだ。アザゼル経由で知った事だが上位神滅具の一つ、魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)によるアンチモンスター創造……相手にしている俺ですら面倒だって思える能力だ。創造系神器の最高峰と言っても良いね! まっ! 「悪魔」の攻撃には耐性があってもそれ以外の攻撃には耐性が無いっぽいからそこだけはありがたいけどね!!おかげで鬼さんや九尾やら天狗やらの攻撃が通りまくってもう笑いしか出ねぇわ!!

 

 

「最上級悪魔達の攻撃も殆ど無意味。通ってるのはノワールぐらい……と言ってもグラムのおかげだけどね。どーする? 流石に時間をかけてたら他が拙いよ?」

 

「はっ、決まってるだろ……! 冥界に現れた数はたった十数体だろ? だったら全部殺せばいい! 攻撃が通る通らねぇの問題じゃねぇ! とりあえずぶっ殺す!! それだけで良いだろ?」

 

「うん。それがノワールらしい。じゃっ、()()の攻撃が通るようにお願いしてくる。恵、ちょっとだけ頑張って。パシリ、花恋、祈里、志保、キマリス眷属の実力をみせつけよー」

 

「もうちっと感情込めて言えや!! だがそれさんせー!! パシリの速さをみせつけてやるっすよぉ!!」

 

「にしし! 良いねぇ良いねぇ!! イバラ、姉妹仲良くノワールの道を作るよ!」

 

「分かった。伊吹のお願いは絶対。主様のためにおもいっきり殴る。考えずに殴って殺す!!」

 

「はい♪ 水無瀬先生! おねがいしまーす!!」

 

「えぇ!! 私は……キマリス眷属の僧侶です! 私の不幸を相手に押し付けます!! 行って! 反転結界!!」

 

 

 影龍人形から影を伸ばして周囲全てを黒く染めた水無瀬は液体時計を反す。水無瀬が操る影に触れたミニ怪物達の耐性が一気に反転したのか平家やレイヴェル、レイチェルの攻撃が笑いが出るぐらい通る。あのぉ……双子姫様! 貴方達が操る炎なんですが強すぎじゃありませんこと? なんか一瞬で周囲が真っ赤に燃えてるんですが!! フェニックスの業火ってここまで威力あるのかよ!?

 

 

「お姉様!」

 

「えぇ! 私達フェニックスの双子姫が操る業火で散ることを誇りに思いなさい!」

 

 

 キャー! 双子姫様ー!! 素敵ー! おっぱい揉ませてぇ!! と叫びたくなるぐらい姉妹仲良く手を握ってミニ怪物達を燃やしていく。この二人……本当に戦闘未経験者か? 歴戦の戦士並みの炎なんだけどスルーした方が良い? 確かライザーが隠れて特訓してるとか言ってたなぁ……フェニックスって凄い!

 

 

『ゼハハハハハハハッ! 俺様の影が混じってるからなぁ! 悪魔のアンチモンスターと言えども耐性に傷をつけられたら通るに決まってらぁ!! ゼハハハハハハハ! 良いなぁ! 俺様も生身で戦いてぇ!! 戦いてぇよぉ!! 笑いながらこの楽しい戦争をしてぇぜぇ!!!』

 

「だろうな! でもよ相棒!! 他の奴らのおかげで道は開いたぜ……? やるか!」

 

『そうだなぁ!! まずは目の前のくそったれを消し飛ばすとするかぁ!!!』

 

 

 鬼、九尾、天狗、双子姫、犬月達のお陰で俺の目の前には怪物の姿しかない。ミニ怪物達も生まれては殺され、殺されては生まれてを繰り返している……でもな、その無限ループはもう終わりだ。なぁ、グラム?

 

 

 ――我が王よ。我ら魔剣の力をその目に焼き付けよ!!

 

 

 知ってるよそんな事は……! お前がすげぇ剣だってのは鬼の頭領との殺し合いで分かりきってるんだ。俺の全てをお前に預けてやる……誇りに思えよ? そんな事をするのは夜空以外じゃ平家とお前ぐらいだしな。お前は俺の剣、覇王になる俺様の剣だ!! さぁ! 切り刻め!! 全てを! 何もかも好き勝手になぁ!!

 

 息を整えてグラムを強く握る。吐き気すら催すほどの龍殺しの呪いが俺の身体に流れ込んでくる……殺したい、妬ましい、苦しい、辛い、羨ましい、数々の呪い(感情)が体内で暴れ回る。たくっ、騒ぎたいなら望み通りにしてやるよ! お前らの呪いは俺が全部受け止めてやる! お前らの望みは俺が叶えてやる! だからもっと言ってこい! もっと呪ってこい!! 遠慮なんかしねぇで出せるだけ全部俺に寄こせぇ!!

 

 

「ゼハハハハハハハハハハハッ!!!」

 

 

 龍殺しの呪いを肯定し、さらに龍のオーラを高めるとグラムは歓喜の声を上げてさらに呪いを強くしてきた。そうだ……それで良い!! ドンドン寄こせぇ!! 黒く、黒く、黒く。濃厚な呪いが俺を染め上げる……視界が歪む? 命が削られる? はっ! そんなものが怖くて魔剣を使わないなんて出来るか! こいつはただ純粋に楽しみたいだけだ……殺しを! 戦いを! 自分の力を出したいだけだ! 怖いなんて使う奴の我儘みてぇなもんだ……殺し合いをしてるんだよ俺達は!! 怖いなら最初っから魔剣なんざ持つな!! 来い、来い、来い!! ドンドン寄こせ……! 俺は悪魔で邪龍だ!! お前の我儘を受け止めるぐらい造作もねぇんだよ!!

 

 そんな俺の姿が怪物の目に入ったのか今までガン無視で歩いていたのをやめた……なんだ? 今更怖くなったってか? んなことしてもおせぇんだよ!!!

 

 

「――!!!」

 

 

 声にすらならない叫びを上げて、グラムを目の前の怪物目掛けて振るう。刹那、周囲全ての空間に亀裂が入り、音が遅れるほどの衝撃が走り、無数の斬撃が怪物の体を切り刻んでいく。まずは四肢が切り落とされて細切れになる……それに続くよう首が落ちて同じように細切れになっていく。空間も、地面も、空すら標的だとばかりに切り刻まれていく。巻き込まれた奴もいるだろうがそんな事は知ったこっちゃねぇ! 死にたい奴だけついて来いと言ったから自己責任だ! まっ、放つ前に平家の指示で全員退避してたっぽいからきっと大丈夫だろう!

 

 グラムが持つ力によってありとあらゆるものが「切り刻まれて」この状況が出来上がった! 怪物が持つ再生能力も悪魔の攻撃に対する耐性もミニ怪物を生み出す能力すら切り刻まれた事だろう。 だからこそ俺の言葉は決まってる――

 

 

「――次行くぞぉ!!!」

 

 

 肉片となった怪物を影で包み込んで力を根こそぎ奪い取りながら鬼に、妖怪に、眷属達に向かって叫ぶと一斉に声が上がる。喜びの歓声と共に次なる標的へと高笑いしながら歩きだす。建物を壊すな? 戦争中に何言ってんだよ? 巻き込むな? その辺に居るのが悪い。敵も味方も殺すのが楽しいのか? うん楽しい! それが俺達なんだから誰も文句は言うなよ? これほど楽しい事なんて滅多にねぇんだからなぁ!!

 

 

「かっかっか! いいねぇ! いいよぉ!! 体が熱くなってきた! 次はどいつを殺すんだい?」

 

「まだ十以上はおると言うしのぉ? まだまだ祭りはこれからじゃ」

 

 

 うわぁ、鬼の頭領様と九尾の狐様は殺る気満々じゃないですか! どんだけ溜まってたんだよ……俺は別に良いけどさ! どんどん殺ってください!

 

 

「ノワール。情報だとバアル眷属がシトリー領に向かってる怪物と戦ってるみたい。それ以外だとフェニックス領とグレモリー領に向かおうとしてる個体もいるっぽいね。どれも距離は変わんないけどどーする?」

 

「……その中で一番ヤバいのは?」

 

「魔王領にある首都リリスだね。他よりデカい個体が真っすぐ進んでて足止めも殆ど出来てないみたい。でもまだ大丈夫だと思うよ? 脚遅いし。そもそも首都が滅んでも私はどーでも良いから後回しでも問題なさそう」

 

「そうか。んーよし! 鬼の頭領! 八坂の姫! じゃんけんしようぜ!! どれも距離が変わらねぇなら勝った奴から獲物を選んで殺しに行くってのはどうよ? まぁ、簡単に言えば三つに別れようぜってことなんだけどな!」

 

「いいねぇ! のった!」

 

「ほっほっほ、良いのぉ、あと腐れがなくて良いわ」

 

 

 というわけで始まりました! 影龍王対鬼の頭領対八坂の姫によるじゃんけん大会! 鬼も天狗もノリノリで最初はグー! と叫ぶほどの団結力よ! 一応冥界の危機っぽいのに俺達は何してるんだろうな! 楽しいから良いけど!!

 

 まず最初に勝ったのは八坂の姫。戦っているサイラオーグが見てみたいと言う事でシトリー領へ京都妖怪と平家、橘を連れて向かって行きました! 橘が京都妖怪側に付いたことに鬼達は悲しんでいたけど……お前達って初対面だよな? なんでファンになってんの!? 馬鹿じゃねぇのお前ら!! いや腋か!? 腋の魔力だな!! よっしゃ腋は偉大だって証明になった! やっぱりこの世で最も素晴らしいのは腋だよね!

 

 そして次に勝ったのは鬼の頭領。戦っているフェニックスが見たいという事で鬼と四季音姉妹を引き連れてフェニックス領へと向かって行きました! てかフェニックスなら双子姫様が居るんですが……? というかなんでグレモリー領に行かねぇんだよ!! 絶対にイカサマしただろ!? だって二人とも変な笑みを浮かべてたもん!! ひでぇ……! こんな仕打ちはねぇだろ……!! あぁくそ!! この怒りは怪物相手に八つ当たりしてやる!! グラムぶっぱしてやらぁ!!

 

 

「あれ絶対に平家が俺の手の内教えてただろ……! おかしいもん! 帰ったら絶対に泣かす!」

 

「あの引きこもりの事ですし逆に喜ぶと思いますよ? というより水無せんせーすげぇ。なんでそれを操作できるんすか?」

 

「ノワール君の僧侶ですから! これぐらいはちょちょいのちょいです!」

 

「まぁ、手取り足取り教えたしなぁ。でもまだまだ操作が荒い、戦争が終わったら覚悟しとけ」

 

「……はいぃ」

 

「水無瀬先生が喜んでいるような悲しんでいるような微妙な表情をしていますわ……! そ、それよりもシュンさん。お、重くは無いでしょうか? い、いえ! この私が重いわけないですわよね!」

 

 

 レイチェルが当然ですわよねと言いたそうな表情で真下を見る。現在、フェニックスの双子姫は化け犬状態の犬月の背中に乗って空を飛んで……いや走っている。妖魔犬を使ってないから髪の色と同じ白い毛が異様に目立っている。それともふもふの体毛が心地良いのか双子姫様はなでなでしてるけど……これさ、羨ましいね! 俺の方は禍々しい棘のドラゴンだからカッコいいはずなのになんで二人ともそっちに乗ったんだよ! 畜生!! 相棒のカッコ良さを引き出せない俺の未熟さが原因か……!!

 

 

『ゼハハハハハハ! 生前の俺様はもっと良い男、いやイケメンドラゴンだったんだぜぇ? うーん、80点!!』

 

 

 それでも100点に近い事にビックリだよ。

 

 

「あっ、花恋達が戦闘を開始したようです。鬼の集団がアンチモンスターを蹴散らしてますね……いくら何でも出鱈目すぎませんか?」

 

「普通じゃねぇか? それだったら俺はどうすんだよ……悪魔のアンチモンスターを切り刻んだりすり潰したりしてるんだぞ? 案外、他の奴らが弱いだけじゃねぇか?」

 

「それはキマリスさまがおかしいだけですわ」

 

「そうです! あれほどの……怖いものを纏って笑っている事に私はびっくりしてますもの!」

 

「王様だしなぁ、この人って大抵の事はぶち壊してますし。てか姫さん達、軽すぎませんか? もうちょっと重くなった方が健康で良いっす――てぇ!? タイムタイム! 毛は抜かないでほしいっす!! すんませんでしたぁ!!」

 

「シュンさんはもう少し女性を知るべきですわ!」

 

 

 哀れ犬月……童貞だから仕方ないとはいえ女に重いは禁句だぞ? 夜空に「お前……重くね?」って言ったらマジギレされた俺が言うんだから間違いない! あの時ほど夜空が怖いと思った事は無いね!

 

 影龍人形の頭部で腕を組みながら隣に座っている水無瀬が持つ端末に視線を落とすと色んな所で起きている戦いが中継されていた。一早く到着した鬼の集団は高笑いしながら周囲を薙ぎ払いながらミニ怪物を殺している……四季音姉妹も滅茶苦茶楽しそうに笑ってる! まぁ、鬼だしなぁ……加減しないで殴って良いとか天国だろう! にしても四季音妹の母親がスゲェ! たった一振りで四足の怪物を横転させやがった! マジであの人……頭領としてやっていけるんじゃねぇか?

 

 ちなみに我らが悪魔勢は呆然とその姿を見てるだけと言うね! マジで魔力攻撃以外の攻撃を覚えろよ……なんだかんだ言って物理が一番効果的なんだぜ? 影人形ばっかり使ってる俺が言うのもあれだけどさ!

 

 

「――見えましたわ!」

 

 

 何度か転移を繰り返して進んでいるとレイヴェルが指をさした。前を見ると腕が四本ある怪物が先ほどと同じようにミニ怪物を生み出しながら歩き続けている……これまたデカい! グレモリー領へ近づけないように上級悪魔と思われる奴らが一斉に攻撃してるけど効果はお察し……マジで雑魚だなあいつら。グラム使ってる俺が言うのもあれだけどさ!

 

 

「……グレモリー眷属は居ないようっすね」

 

「まぁ、だろうな」

 

 

 戦っているのは名前も知らない、顔も分からないような奴らばっかりで禍の団絡みで大活躍中のグレモリー眷属の姿が一人も見えない。怪物が自分の領地に近づいているというのに出てこねぇとか馬鹿じゃねぇの……たかが一誠が()()()程度で戦えなくなるとか今までの決意は何だったんだって思いたくなるね。

 

 アザゼルから個人的な連絡で冥界に現れた怪物達の情報と一誠が戦死したという事を聞いた。なんでもシャル……なんだっけ? とりあえず旧魔王派の真の魔王と名乗る奴が脱出直前に現れてオーフィスを強奪、一誠が皆の制止を振り切って追撃したらしい。そんで先輩から連絡があった理由は異空間に取り残された一誠を呼ぶためだったらしい。残念ながら断ったけどね! でも結局は何故か知らんが近くに居たらしいヴァーリと匙君達の力を借りて龍門が発動、異空間に残った一誠を呼び寄せた――と思ったら使用したはずの兵士の駒八つが転移して来たそうだ。そのためその場にいる全員が戦死したと思い込んでるようだけど……案外どっかで生きてんじゃねぇの? だって死んでたら死体が転移されてくるだろ。まぁ、ミニ怪物を切り刻んでた途中でアザゼルから通信が来たからさ! 話の殆どを聞き流してたんだよね! だから実際はどんな感じになってるのか全然分かりませんし興味すらありません!

 

 だって殺し合いしてるんだし生きるか死ぬかの二択。まぁ、俺も犬月達が死んだらうわぁって感じにはなるけど戦えないほどじゃないはずだ。きっと、多分。母さんが殺されたとかだったら世界壊すレベルで暴れるのは確実だけど戦闘に参加している以上は死ぬかもしれないなんて当然だから……多分何ともないと思いたい。

 

 

「どうしてでしょうか……まさか、皆さんはまだ異空間に……!」

 

 

 あぁ、そうか……一早く脱出してきたレイヴェルはあの後に何が起きたか知らないんだよな。流石にここで一誠が死んだらしいぞとは言えねぇよなぁ……? だって俺の様に精神図太くなさそうだし呆然として死ぬ危険性が高くなるだろう……ちっ! めんどくせぇ!

 

 

「そりゃねぇな。アザゼルから個人的に連絡が来てたし脱出は完了してるよ。ただ……まぁ、曹操ちゃんが相手だったらしいしあいつらも連戦が続いて休んでるだけだろ。タブンネ」

 

 

 適当な嘘を言うと双子姫は言葉を放つことなく静かに俯いた。あっ、普通にバレたかもしれねぇ。いや多分大丈夫! きっとグレモリー眷属の誰かが大怪我したとかそんな感じだろうきっと!! もっとも一誠が死んだとバレても俺様には関係ねぇし! てか身内が死んで戦えねぇとかだらしねぇ! 少しは帰ってくると信じて戦うとか出来ねぇのかアイツらは……! これだから魔王におんぶにだっこされてるお嬢様は困るんだよ!!

 

 全員が黙った状態で前線に降り立つと周囲から歓声が上がり始めた。なにこれ? なんだよこの掌返し……うっぜぇ! 今まで混血悪魔だなんだとか言っておいてこんな時だけ救世主扱いか!! マジで死ねよお前ら!

 

 

「どうする? 戦うなら止めはしないが後ろに下がってるなら今しかねぇぞ?」

 

「――戦いますわ。皆さんが来るまで……! 私は、フェニックス家ですもの!」

 

「そうですわ! 私達は二人で一人! フェニックスの双子姫ですわ! 必ず皆様はやってきます……ですから今は戦います! キマリス様! シュンさん! 水無瀬先生! 私達をエスコートしてもらえますかしら?」

 

「……当然っすよ!! パシリは命令されたら動く生き物っすからね!!」

 

「一緒に頑張りましょう、レイヴェル様、レイチェル様。ノワール君、反転結界の準備に入ります!」

 

「おう! 好きにしろ!! テメェらもだ!! 無能は無能らしく家に帰って引きこもってろ!! どこぞのお姫様の様にな!! てかマジで邪魔だからどっか行けっての!!」

 

 

 影の翼を広げ、グラムの刀身に呪いのオーラを集めて前方へと放つ。射線上のありとあらゆるものを切り刻んでいく影龍破は海を真っ二つに切るように道をこじ開けた。うーん、森林とか地形とか色々と見るも無残な感じになってるけど別に良いか!

 

 そのまま一番最前線で戦っていた女に近づく。動きやすさ重視の色気のかけらもない戦闘服を着ている亜麻色の髪の美女だ……ってこの人って先輩の母親じゃねぇか? なんでこんな最前線で戦ってんだよ!? すげぇなグレモリー家! 母親が隠れもせず戦うとか正気かよ! 何度か親父と一緒に出席したパーティーで顔ぐらいは見たことあるが先輩に似てるよなぁ……流石親子? ここまで美人親子だと周りが大変だね!

 

 

「というわけで聞こえたと思うけど邪魔だから下がれ。テメェらじゃロクにダメージは与えれねぇよ」

 

「……出来ません。此処で退けばグレモリーの名に傷がつきます。ノワール・キマリスさん、貴方と共に戦わせてもらいます」

 

「いらねぇ。口だけの雑魚と一緒とか死んでも無理。てかさぁ……アンタの仕事は此処で戦う事か?」

 

 

 胸倉を掴んで一気に顔を近づける。うん、美人だな!

 

 

「母親だろ? だったら塞ぎ込んでる娘をさっさと連れてこい! あいつらが居る居ないで周りの士気が違うんだよ! グレモリーの名に傷がつく? こんな状況で何言ってんだ? 娘を放っておいてこんな場所で戦ってるテメェがそれを言うんじゃねぇよ! 今……先輩の傍には誰が必要か分かってんのか? 貴族の顔色やら評判やら気にしてる暇があるなら母親の役目を果たしてこい!! それにな……巻き込まれて死なれてたら俺が困るんだよ。他から文句言われるしな」

 

 

 先輩の母親を背後に突き飛ばし、グラムを強く握りしめて影の翼を広げ空を飛ぶ。さてと……殺戮の始まりだ!! 鬼の頭領や八坂の姫も楽しんでるようだし俺も楽しまねぇとダメだろ!! なんか知らねぇが総大将とか呼ばれてるからもう数体ぐらいは殺しとかねぇとな!!

 

 

「水無瀬! 数を減らすから生まれる奴全部に反転結界だ!」

 

「はい!」

 

「犬月! お前は二人の足だ! 動き回ってろ!」

 

「ういっす!!」

 

 

 宝玉から音声を鳴り響かせて最近便利だと思い始めた影の海を作り出す。それを前方に流してミニ怪物達を捕まえて一気に絞め殺す。よし! やっぱり周りに人が居ると邪魔だわ!! 一人で大群に挑む方が滅茶苦茶楽! さぁ、行くぜぇ!!

 

 

「影龍破ァ!!」

 

 

 一気に接近して濃厚な呪いのオーラを刀身に纏わせたグラムを振るう。龍の顔となった波動が一直線に飛んでいき、四本ある腕を一本を切り落とす。それを確認して一気に影を伸ばし、再生される前に切り落とした腕を飲み込んで力を奪い取る……同じ神滅具で作られたもの同士だ! いくら上位とか呼ばれてても相棒の力には及ばねぇ! ゼハハハハハハハ! 簡単に奪い取れたぜ!!

 

 怪物もミニ怪物を生み出し続けるが影龍人形に乗った水無瀬が先ほど俺が伸ばした影に自分の影を混ぜて射程を伸ばし、反転結界を発動。耐性全てを逆転させた事により双子姫の業火でミニ怪物達が焼き払われていく……やっぱ、こういう時の反転結界は便利だな! 流石俺の僧侶!

 

 高笑いしながらグラムを構え、影龍破を放とうとすると別の方角から波動が放たれてミニ怪物達が吹き飛んでいく。あの聖なるオーラは……デュランダルか?

 

 

「――待たせた、宣言通りに戻ってきたよ」

 

 

 若干息を切らしたデュランダル使い――ゼノヴィアが悪魔の翼を広げて俺の横に並ぶ。手に持っているデュランダルには鞘が無い……つまり素のデュランダルのままだ。おいおい、鞘を修復しに行ったんじゃねぇのかよ? てかそもそも待ってねぇんだけどなぁ。

 

 

「別に待ってねぇけど? てかなんで来たんだ? 主様と一緒に引きこもってろよ」

 

「……あぁ、そうだな。正直、イッセーが死んだと聞かされて動揺もした、崩れ落ちそうになった、泣きそうになったよ……でもね、黙ってるなんて私らしくない。グレモリー眷属一の脳筋とイリナから呼ばれた私が黙って見ているなんて出来るわけがない。悲しむぐらいなら戦う。それが私さ、影龍王」

 

「ふーん。まぁ、他よりはマシだな」

 

「そうだろうね。今も部長達はイッセーが死んで悲しみに暮れている……だが私はどうもイッセーが死んだとは思えないんだ。あの男が部長を抱かずに死ぬわけがない。そう思えるぐらい私はイッセーを信じている。だから……戦いに来た! グレモリー眷属は此処にいると! 冥界を守るために戦っているとイッセーに伝えるためにね!」

 

 

 その目は本気で生存を信じているものだ。ゼハハハハハ! 良いんじゃねぇの? そうこなくちゃ!

 

 

「んじゃ、グラムとデュランダルの共演と行くか?」

 

「良いね。この二つなら斬れないものは無い! 影龍王……どうしてグラムをそこまで使える? 私はデュランダルをそこまで使いこなせていない……私とキミでは何が違うんだ?」

 

「はっ! 馬鹿じゃねぇの? 使いこなすとか考えている時点でアウトだ! しょーがねぇなぁ! その度胸に免じて今回だけ特別に手本を見せてやるよ!」

 

 

 グラムの呪いを受け入れると体に様々な感情が流れ始める。使いこなすとかそんなもんは捨てておけ……こいつらはそんなもんを望んでない! 楽しみたいのに使い手が勝手に勘違いするから拗ねてるだけだ!! 受け入れろ……何もかも! 否定するな! これが自分だとこいつらにさらけ出せ!!

 

 

「良いか!! コイツらは俺達だ! ただ壊したくて! 殺したくて! 自分の力を吐き出して満足したいだけなんだよ!! 使いこなすなんざコイツらは望んでねぇ!! そんなもんはテメェが勝手に勘違いしてるだけだからなぁ!! そもそもコイツらを分かろうともしない奴が何言ってんだ!! 考えるんじゃねぇ、ただあるがままを受け入れろ!! それで十分だ!!」

 

「受け入れる……デュランダルを……! 考えるな……ははっ、影龍王! それなら一番得意さ! 行くぞデュランダル……! 加減なんてしなくて良い! グラムに負けるな! 私なんかに構わずお前の全てを解き放てぇっ!!」

 

 

 デュランダルが脈動し、周囲全てを照らすほどの輝きを放つ。まるで隣に並ぶグラムに張り合う様に、負けるかと叫ぶように輝きが強くなる。それを見てグラムがさらに呪いを強くする……負けてたまるか、最強の剣は我らだと俺に伝えてくる……それで良い! 特別だ!! お前の我儘全部言いやがれ!! 受け入れてやるからドンドン言ってこい!!

 

 

「ゼハハハハハハハハハッ!!」

 

「はああぁぁぁぁああああぁぁぁっ!!!!」

 

 

 周囲を照らす光が、飲み込む呪いが負けるかと張り合い続ける。狙うは怪物、周囲がどうなろうが関係ない! そんなもんはどうでも良いからな! 逃がしはしない!! ゼハハハハハハハハ!

 

 

「グラムゥゥウゥゥッ!!!!」

 

「デュランダルゥゥゥウウゥゥッ!!!!」

 

 

 同時に剣を振るう。放たれるは二色の波動、正面の全てを「斬る」斬撃と表現できる波動と正面の全てを「切り刻む」斬撃と表現できる波動が怪物を飲み込んだ。体は真っ二つに斬られ、体の全てが細かく切り刻まれる。肉片すら残さないとばかりに斬って、斬って、切り刻んだ。それらが終わった後に残ったのは見るも無残な姿となった地形のみ……怪物の姿は無い。見えるわけねぇわな……! あんなもんを喰らったら流石の俺でも死ぬしね!

 

 

「……すっげぇ」

 

 

 犬月の感想が周囲に聞こえるほどの静けさ。それほどの光景だったんだろう……周りが一気に静まり返っている。

 

 

「はぁ……はぁ……今の、たった一発撃つだけでこれとはね……でも、なんとなく理解はしたよ……そうか、考えたらダメか……ハハッ、私でも分かりやすいね」

 

「あぁ。下手に考えるぐらいなら楽しめよ? あーだこーだ考えるよりそっちの方が楽だろ?」

 

「……そうだな。礼を言うよ、影龍王」

 

「言わなくて良いさ。水無瀬、平家と四季音姉に繋げ」

 

「は、はい!」

 

 

 連絡用の魔法陣を展開した水無瀬に近づくと平家と四季音姉の声が聞こえる。なんか察してるような感じだけど気のせいだよね? よし気のせいだって事にしておこう!!

 

 

「――ゼハハハハハハハハハ! 二体目殺したぞ! おいおいそっちはどんな感じだぁ? まさか手間取ってるなんて言わねぇよなぁ? ドンドン殺しまくって数減らしていくから急げよバーカ!」

 

『にしし! 負けてらんないねぇ~お前達! ノワールに負けたら馬鹿にされるから気合入れて殺すよ! 目指せ宴会! 酒飲み放題! 私に続けぇ!!』

 

『こっちは大火力が無いから結構厳しいね。でも流石バアル家次期当主、鬼並みの打撃力だよ。うん、しゃーないから頑張ろう。ビリは嫌だし。志保、頑張ったらノワールがえっちぃことしてくれるって。うわっ、すご』

 

 

 おいこら、片方は良いがもう片方はアウトだ! てかお前が素で驚くって何があった!? 橘様ったらお怒りのあまりにパワーアップですか!? それとも淫乱パワー全開ですか!? どっちでも良いから見せてくださいお願いします!

 

 

「……うっし! 次行くぞ! 目指せ一位!! 鬼と九尾に負けてられねぇしな!!」

 

「そ、そういう問題ですか……?」

 

「おう! ん? 犬月、どうした?」

 

 

 ツッコミ待ちだったのにいつまで経っても来ないから不思議に思って犬月を見るとスンスンと何かを匂いを嗅いでいるようだった。まさか双子姫の体臭でも嗅いでるのか? 変態だからやめた方が良いぞ?

 

 

「いや、違うっすよ」

 

 

 お前は平家かよ。

 

 

「んじゃどうした?」

 

「……この匂い、王様……悪いけどちょっと離れます」

 

「――あいよ。行ってこい」

 

「あざっす!」

 

 

 空へと向かって吠えた犬月は走り出した。その表情は殺意に溢れている……なるほどね、だったら勝ってこい。俺の兵士なんだから負けっぱなしはダメだぞ?

 

 

「さてと……次はどこに向かおうか!」

 

 

 それにな、早く戻ってこないとデカい獲物が居なくなっちまうぜ?




「影龍王と骸骨神」編の始まりです。

観覧ありがとうございました!

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