ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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影龍王と京都妖怪
52話


「もうすぐ修学旅行があるが土産は何が、何が……良い、っていい加減暑苦しいから少し離れろ!」

 

「ダメよ。もうっ、こういう時じゃないと帰ってきてくれないんだから息子成分を補充させて頂戴」

 

「その補充がどんだけ遅、おそ……あぁもう勝手にしろよぉ」

 

 

 修学旅行という一般的な学生なら胸がドキドキワクワクするイベントがもうじき行われるため、俺は珍しくキマリス領の実家へと帰ってきていた。なんでと言われたら……まぁ、折角の修学旅行だし何か土産を買ってこようと俺にしては珍しい事を思ったからこうして親父と母さんに何がいいかを聞きに来たわけだ。決して、決して! 俺の隣の席に座って腕にしがみ付いている外見年齢詐欺の母さんから「ノワール……もうすぐ修学旅行なのよね? 帰ってこないの?」と若干落ち込み気味な態度で連絡されたからじゃない。

 

 そもそも去年とか一昨年は……こんな風に帰って土産は何が良いと聞いた記憶は無いがこの分だと同じようにしたんだろうな。きっとそうに違いない。

 

 

「お土産かぁ、そういえばそろそろそんな季節だもんね。それに関してはノワールが選んだものなら何でもいいよ? 僕も沙良ちゃんも息子が選んでくれたものが一番喜ぶからね! ねっ!」

 

 

 良いこと言ったでしょとチラチラ見てくる親父はどうでも良いとして……マジで息子成分を補充とか言ってるこれ(母さん)をどうにかしてほしい。もうね……四十代とは思えないおっぱいの感触でムラムラしてるわけですよ。たとえ平家辺りからマザコンとか言われてもこればっかりは仕方がない。だって男だし。でもうざってぇと言いながら引き離せば泣くから黙って補充完了するまで黙っているしかない……早く子離れしてくれねぇかなぁ。

 

 

 

「……親父がキリッとした顔で言ってるが母さんはどうなんだよ? 折角の京都だ、もう何年も行ってないんだろ? 要望があれば写真とか撮ってくるし土産も買ってくるぞ?」

 

「私もネギ君と一緒でノワールが選んでくれたものが一番嬉しいわ。でもそうねぇ……お母さん、折角だしリクエストしちゃおうかしら」

 

「はいはい。どんなものをご所望ですがおかーさまー」

 

 

 どうせ食い物系だろうが母さんの頼みだ、親父だったら数百円の菓子で終わらせるがまぁ、うん。折角の修学旅行だしどんなものでも買ってきて――

 

 

「ノワールが友達と一緒に写っている写真がいいわねぇ。やっぱり修学旅行はそういうのがないとダメだもの」

 

 

 --今、なんて言った? 俺が、友達と、一緒に写っている写真と言ったか? ふぅ……そうきたかぁ! いやいや待て待て! それがどれだけ難易度高いかこいつは分かっているのか聞きたい! すっげぇ聞きたい! マジで聞きたくなるんだが! 言っておくがお母様! 自慢じゃないが俺は夜空と相棒と眷属以外はどうでもいいとさえ素で思ってるほどのコミュ障だぞ? 友達? 多分夜空や犬月、平家達以外にはいませんが何か? グレモリー先輩達は単なる顔見知りで友達じゃねぇしマジで詰んだ…やっべぇどうしよう? ここで犬月と橘、そして俺の三人で撮った写真を持ってきたら泣くんじゃねぇか? あまりにも友達がいない寂しさとかなんかそんな感じで。

 

 

「沙良さま。そんな高難易度な事を友達がいないノワールさまが出来るわけないでっす☆ 他のことにした方が良いでっすよ?」

 

「んだとこの蛇女! テメェよりは友達いるし! いるに決まってんだろ!! そりゃもう俺様はイケメンだからな!! もうモテモテのうっはうっはよ! まっ、外見だけ若い年増のテメェは友達なんていねぇだろうが……ドンマイ」

 

「いやでっすね☆ こう見えても週に一回はメイド仲間で旅行に行ってるんでっすよ? ノワールさま以上に友人の数はいると言って良いでっすね! コミュ障のノワールさまとは違うんでっすよぉ!」

 

 

 キマリス家メイド随一ともいえる巨乳を揺らしながら蛇女はドヤ顔をしてくる。てか週一で旅行とか疲れねぇのか? 絶対に他の奴らは嫌々付き合ってるだろ? この蛇女の勘違いっぷりには涙が出てくるな!

 

 

「言ったなテメェ! ハッ! だったら俺がどれだけ友達いるか証明してやるよ! あー楽しみだなぁ! 蛇女が泣いて謝る姿が目に浮かぶぜ! ちなみに許してほしかったら全裸で奉仕な? 足は蛇状態希望だからちゃんとやれよ?」

 

「ノワールさま☆ 変態でっすね☆」

 

「いきなり褒めんなよ恥ずかしいじゃねぇか。てか蛇女が友達いないってのはどうでも良いんだよ……おい、それ(写真)以外にねぇのか? 俺はてっきり食い物とかなんかその辺を想像してたから予想の斜め上の回答でちょっと焦ってんだけど?」

 

「だって食べ物はお取り寄せとかできるでしょう? だったら修学旅行の記念で写真を撮ってきてもらった方が良いもの。楽しみにしているわね。あとノワール? ミアにセクハラはダメよ。あと他の女の子にもよ」

 

 

 そんなジト目で見ないでください興奮してしまいます。

 

 

「分かってるっての……冗談だ冗談、流石に身内にそんなことさせれるかっての」

 

「キミの場合はたとえ身内でも本気でしそうだからね。天下の影龍王がセクハラで投獄は笑えん、気を付けたまえ」

 

 

 ダイニングルームの扉が開かれ、ある男が客人と思われる人物を引き連れて入ってくる。おいおい……今日はテメェがいるのかよ? というよりあの、すいませんがなんでその人達がいるんですかねぇ?

 

 先頭を歩くのは褐色肌で三十代前半ぐらいの男、アンダーシャツにズボンという服装のせいかやたら筋肉が目立つ……そしてハゲ、マジでハゲ。もう光を当てたら反射するぐらいのスキンヘッドなこいつは親父の僧侶の一人で我らがアイドル橘様が物理に目覚める原因を作り出した張本人……マジで死なねぇかなぁこいつ。

 

 

「んなことはあり得ねぇから安心しろ。それより京極、なんでお前がその人達を出迎えてんだよ? それはセルスの仕事だろ?」

 

「なに、彼は手が離せないようでね。偶然手が空いた私が此処までお連れしたわけだ。申し訳ない、今日は珍しく我らが影龍王が帰宅していてね。やや五月蠅いだろうが気にせず放っておいてほしい」

 

「い、いえ! むしろ幸運ですわ! やはりお兄様を説得してよかったですわ!」

 

「おいおいレイチェル、喜んでいるところ悪いが影龍王が見ているぞ?」

 

 

 親父の僧侶――京極雄介が連れてきた客人というのは何を隠そう! 少し前まで家に引きこもってオナニーする毎日を送っていたライザー・フェニックスと苦労人な妹のレイチェル・フェニックスだ。いやぁ、レイチェルは相変わらずおっぱい揺れてるなぁ……平家や四季音にも見習ってほしいぐらいの巨乳っぷりだ。しかしここに訪れるためか着ているのが貴族服だから脇が見れないのが残念、非常に残念だな!

 

 あとすいません……マジで何で此処に来てるんですか?

 

 

「当たり前だろ? 冥界貴族の嫌われ者の実家にフェニックス家のお二人がやってきてるんだ。疑問に思うのが当然だと思うがな」

 

「それこそ仕方がないだろう。混血悪魔君……いや、影龍王には世話になった。たった一度の敗北で塞ぎ込んでいた俺を立ち直らせてもらったからな。その礼もかねて此処に来ている……レイヴェルは勿論、レイチェルは早く行こうと俺よりも来たがっていたがな」

 

「なななな!? ち、違いますわ!! それもこれもお兄様が引きこもっていたことが原因ですもの! お忙しい中をキマリス様は解決してくださったんですものお礼を言いに来るのは当然ですわ!」

 

「俺としてはどうでも良いんだけどな。まぁ、でも態々ありがとな」

 

「っ、い、いえ! フェニックス家としては当然です! あ、あの……こちらはお土産ですわ。お口に合えばよろしいんですけど……」

 

 

 母さんも空気を呼んだのか腕から離れたので椅子から立ち上がってレイチェルの傍まで近づいて持ってきたであろうお土産を受け取る。流石はフェニックス家の双子姫、俺とは違ってセンスが良いな……やっぱり貴族ってのはこういうところも磨かないとダメなのかねぇ?

 

 

「蛇女、後で食うから部屋まで運んでおいてくれ。あっ、つまみ食いしたらマジで下半身蛇状態で全裸奉仕させっからそのつもりでいろよ?」

 

「しませんのでご安心ください☆ あとそろそろセクハラでぶっ飛ばしますよ?」

 

「やれるもんならな」

 

「もうノワール……態々足を運んでいただきありがとうございます。パーティーなどで何度かお会いしていますが改めて……キマリス家現当主のハイネギア・キマリスです。そしてこちらが僕の妻の沙良・キマリスです」

 

「これはこれは……フェニックス家三男、ライザー・フェニックスです。こちらは妹のレイチェル・フェニックス、キマリス卿のご子息には先日お世話になりまして今日は伺わせていただいた次第です」

 

「えっ、誰お前?」

 

「こんのっ……! 全く、キマリス家次期当主ならばその場に合わせた態度は学んでおいた方が良いぞ?」

 

「残念ながら俺がそれをやっても混血悪魔ってだけで馬鹿にされるから意味ねぇんだよ」

 

 

 これでも昔は……相棒と出会う前はそれはそれは素直なノワール君だったんだぞ? ちゃんと挨拶したり貴族っぽい振る舞いとかをしたりと今では黒歴史認定をしてもいいぐらい良い子ちゃんノワール君だった。でも残念な事に他の貴族悪魔共は母さんを見てはただの人間が~とか俺を見て混血悪魔がこんなところに~とか色々と言ってきたからそんな態度をしても無駄だってのはすぐに理解できた。

 

 そんな事があったから基本的には俺は俺って感じでやらせてもらうことにしたから良い勉強になったよ……まぁ、流石にタンニーン様とかはちゃんとした態度をしないとダメだけどさ。

 

 

「……そ、そうだ! ノワール、今日は時間あったよね? キマリス領内を案内してもらってもいいかな? 折角来てもらったんだからキマリス領内の良いところを知ってもらいたいしね」

 

「はぁ? ま、まぁ……良いけど。でも良いところって言ってもキマリス領で有名なものって俺と夜空の殺し合いぐらいだろ? いい加減、あの場所を観光地もどき認定しろよ」

 

「出来ないよ!? もし巻き込まれたりしたら大変だからね!!」

 

 

 だろうな。俺と夜空、偶に四季音との殺し合いはそれはもう天変地異と言って良いレベルだし下手に観戦してたら巻き込まれて死ぬだろう。でもなぁ……それ以外にキマリス領の良いところってないんだよね。何が有名なのか俺が教えてほしいぐらいだ。

 

 そんな事を思いつつライザーとレイチェルの二人を引き連れて街まで向かう事になった。うわぁ、案内役とか本気でめんどくさいんだが……? レイチェルをおんぶできるんならやる気出るんだけどなぁ。

 

 

「――というわけで案内しろとは言われたが特に有名なものはない。どうしようか?」

 

「それを俺達に聞くか? しかし影龍王と呼ばれていても両親の前ではただの生意気なガキだな。もう少し両親が誇れるようにした方が良いぞ? 俺のように無様な姿を晒すことになるからな」

 

「生憎、無様な姿ならこれまでも何度も晒してるから一つ二つ程度が増えても問題ねぇんだよ。それよりも本気で礼を言いに来たわけ?」

 

「そうだ。あれから俺の両親もお前をべた褒めでな、レイチェルに言われなくても足を運んでいたぐらいに感謝しているらしい。時に混血悪魔君、人間界でアイドルをしている子を眷属に加えたそうだが――胸は揉んだか?」

 

「あん? あったり前だろ? 普通に一緒に風呂入っておっぱい揉んでるがなんか文句あるか?」

 

「くっ! あれほどの巨乳を毎日か……! 俺の目から見てもあれはかなりの弾力があるはずだ。あれほどの胸を持つ女は中々い、ま、待てレイチェル! 違う! これは男にとって大事な事なんだ!!」

 

「知りません!! き、キマリス様もいくら王とはいえみだりに女性のむ、胸を揉んではいけませんわ!!」

 

 

 そんな事を言われても平家と四季音に対抗してか風呂に入ってれば混ざってくるしおっぱいを押し付けてくるんだもん仕方ないと思うんだ。でもぷんぷん怒っているせいか胸が弾んでおります……これで年下とかちょっと周りにいる引きこもりと酒飲みと規格外に謝った方が良いと思う。

 

 あとライザー、妹に怒られるとかは人間界ではご褒美みたいなもんだから喜んだ方が良いぞ?

 

 

「や、やはりここはき、キマリス様が間違った事をしないようできる方を眷属にするべきですわ! 前にもお伝えしたと思いますが私はお姉様とは違い、完全なフリー……い、いえ! 何でもありませんからお気になさらないでください!」

 

「……おい。お宅の妹さん、自分を売り込もうとしてるがいいのか?」

 

「さぁな。少なくとも俺の両親は反対はしないだろう。それほど影龍王、いや混血悪魔君を信用しているのさ」

 

「フェニックス家大丈夫かよ? そもそも仮にだ、仮にレイチェル様を眷属にするとしよう。俺の余ってる駒じゃ周りは納得しないぞ?」

 

 

 なんせ女王は夜空固定、残っているのが騎士と兵士だもんなぁ。もし僧侶が余ってたらワンチャンだったが残念な事に水無瀬と橘で使用済み……うん無理だな。

 

 女王を予定している奴がいるとだけ言うと何故かレイチェルは引きつった笑みをし始めた。なんで? まさかマジで眷属になりたかったの?

 

 

「んなどうでも良いことは置いておいてだ……物凄く話は変わるが俺が通ってる学校がもうすぐ修学旅行なんだよ。京都土産で何かリクエストある? 流石に親父や母さんにまで礼を言われたらお返しに買わないと拙いしな」

 

「俺たちが勝手にやったことだ。好きなものでも買ってくるがいいさ。レイチェル、いい加減戻ってこい……まだだ、まだ可能性はある」

 

「……はっ、そ、そうですわね! わ、私もキマリス様が選んだものならば何でも……いえ! この私を満足させるものでなければ駄目ですわ! 期待しております!」

 

 

 フェニックスの双子姫を満足させるほどの土産が京都にあるとは思えないんだが……? まぁ、仕方ない。ちゃんと探してこようかね。け、決して! 決してライザーを立ち直らせる際に単純娘とか言った事を今更うわぁとか思ってない! うん思うわけない!

 

 そんなこんなで二人を適当に案内した後、お帰りいただいた。にしても面白い事を言ってたな……フェニックスの涙の偽物が出回り始めてるとかなんとか。まぁ、禍の団が引き起こすテロ関連で一気に涙が高騰したから偽物もどきが出るのは予想がつくけど本物に近い性能を持っているとかちょっと意味分かんねぇ。流石に涙を作っているフェニックス家だからこそ偽物の存在をいち早く確認できたんだろうなぁ。でも本物に近い性能を出すには本物をよく知らないとダメなはず……まさかフェニックス家の中に裏切り者とかいないだろうな? なんだかんだで悪魔は欲に忠実だからあり得る話だぞ?

 

 

「おや、もう帰ってきたか。お帰り、ノワールくん」

 

 

 家に帰ってくるとムキムキハゲが出迎えてきた。うわぁ、ないわー。ここはメイドのお帰りなさいませご主人様とかだろ? なんでハゲが出迎えるんだよ!

 

 

「おうただいま。親父と母さんは?」

 

「フェニックス家にお礼の連絡をしているな。流石は影龍王、姫君すら落とすとは恐れ入るよ」

 

「はぁ? 何言ってんだよ? あー、そうだ。おい京極、ちょっと一発殴らせろ! テメェがうちのアイドルに変なことを教えるから拳系アイドルになっちまったじゃねぇか!! ありがとうございますだがとりあえず殴らせろ!」

 

「お礼を言うか、殴るか、どちらかにしたまえ。それに関してだが確かに私は僧侶は時に前に出ることも大事だ、と伝えたが拳を握ることを決めたのは彼女だ。破魔の霊力を帯びた拳ならば大抵の魔物、悪魔は倒せるだろう。王としては喜ぶべきだと思うがね」

 

「ざっけんな! 確かに戦力的にはミアとお前のおかげで対悪魔、対魔物相手なら問題無いぐらい支援能力も体術も向上した……が! アイドルが拳握って殴りに行く姿を見てみろ!? なんか泣けてくるんだよ!」

 

「うむ。それには同意しよう。偶像(アイドル)とは拳を握るものではないからね」

 

「だろ? ここ最近、いや破魔の霊力に目覚めてから笑顔がおっかねぇんだよ。もう笑顔で悪魔殺せるぜ? そこが可愛いが。はぁ……なんか疲れたから部屋戻って寝るわ」

 

「それが良いだろう。いや、待て。一つ、占いで出たことがある。勘違いには注意しろ、とのことだ」

 

「なんだそれ?」

 

「分からぬ。しかし占いで出た以上、気を付けておくべきだろう。ノワールくんは言動や行動で色々と反感を買っているからね」

 

「そりゃ混血悪魔だからな……あいよ、注意しとく。さっすが元僧兵、そういうのは得意だもんな。今度店だしたらどうだ?」

 

「単なる趣味にすぎんよ。店を出すほどでもないさ」

 

 

 京極と話をした後、そのまま部屋へと戻る。なんだかんだでアイツの占いって結構当たるからなぁ……この前も水無瀬が物を無くすと占ったら当てたし。う、うん? これは当たったと言って良いんかちょっと悩むがまぁ、当たったということにしておこう。

 

 

「――相棒」

 

『ゼハハハハハハ! 呼んだかぁ?』

 

 

 今日も絶好調だと言わんばかりに高笑いしているなぁ。羨ましい限りだよ。

 

 

「おう。あとどれぐらいだ?」

 

『既に歴代の半分は宿主様が染め上げている。そして昨日もまた一人、俺様達色に染まったからあと少しだぜぇ? 歴代のクソ共さえどうにかしちまえばあとは作るだけよ――覇龍の強化体を!』

 

「若手悪魔同士のレーティングゲーム、次は誰になるかはまだ分からねぇがあの魔王様の事だ……どう考えてもサイラオーグ・バアルとの対決に持っていくだろう。流石に今のままだと負けの可能性もあるからさっさと完成させたいしな……今日も頼むぜ」

 

『任せろ宿主様! あの獅子王はつえぇからな! 気をつけろよ? 奴が保有している神滅具にも覇龍と同じ存在――覇獣(ブレイクダウン・ザ・ビースト)ってのがある。発動されれば宿主様とて無事じゃ済まねぇだろう。もっともユニアの宿主並みは出ねぇだろうがな!!』

 

「当たり前だ……前の覇龍対決で俺がどれだけ死にかけたと思ってる? 大声出せば俺の体の大半が吹っ飛び、移動すれば体の半分が吹っ飛び、ろりーたすーぱーあたっくとか言われたら覇龍状態の夜空と同じ姿をした光人形が無数に飛んでくる。マジで生きてるのが不思議なぐらい規格外すぎて笑いが止まらなかったなぁ――楽しかったけど! マジで楽しかったぁ! 思い出すだけでイキそうになるぐらい興奮したわ!」

 

『俺様もよぉ! あの回復力はユニアも持ってなかったしなぁ! 歴代の光龍妃も同様よ! 最強の光龍妃として文句もつけれねぇ存在が出てきたんだ! 楽しいに決まってるじゃねぇの!! さぁ、やろうぜ宿主様!! ユニアの宿主が神器を変化させたならば今度は俺様達が覇龍を変化させる番よ! さらなる高みへ! 貪欲に、他者を圧倒できる強さの極致へを至ろうぜ!!』

 

「あぁ……もっと強く、もっともっと、夜空を倒せるぐらいもっと強く! そのためなら歴代が発する呪いなんざ飲み込んでやる……! いくらでも、何度でも!」

 

『その意気だぜ宿主様!! ゼハハハハハハハハハッ! 今代の影龍王が宿主様で本当に良かった! 面白れぇことが次から次へとやってくる! これほどワクワクドキドキしたことはねぇぜ! ドライグよりも、アルビオンよりも、ユニアよりも先へ行こうぜ! そのためならば俺様は惜しみなく力を合わせてやる!!』

 

 

 ベッドに横になりながら片腕を上へと上げ、力強く拳を握る。もっと強くならないとダメなんだ……もっと強く! 影龍に俺から近づかないとダメなんだ……! ちっぽけな混血悪魔が規格外や天才に対抗するにはそれぐらいしないとな!

 

 

「――必ず、夜空を倒す。倒して、手に入れる……!!」

 

 

 その決意を無駄にしないためには――歴代を全て染め上げないとな!




今回より「影龍王と京都妖怪」編が開始です。
観覧ありがとうございました!

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