ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

48 / 140
47話

「ヴァーリ、マジで共闘する気か? うーん……今はオムライスの気分だな」

 

 

 手元にあるメニュー、そこに張られている実物の写真を見てみたがかなり美味そうだ。他にも美味そうなものが有るがやっぱり家庭の味であるオムライス一択しかねぇな! うんそうしよう!

 

 

「当然だ。不服かい?」

 

「んなわけあるか。悪神とフェンリルを相手にする上、夜空の乱入を考えねぇとダメなんだぞ? 天才のルシファー様の力をお借りしたいですよーだ。そんで注文なにすんだよ? なんでもアザゼルが奢ってくれるらしいから好きなもん食っていいみたいだぞ」

 

「そうだな。ふむ、ラーメンは無いか……ならばチャーハンを頼もうか」

 

「相変わらず麺好きだねぇ。んじゃおじさんはナポリタンにでもしようかねぇ。お前達は何にする? 安心しろ、ここは俺のおごりだ」

 

「……先生、ちょっとだけ言わせてください――なんで飯食おうとしてんの!?」

 

 

 赤龍帝のツッコミが周囲に響き渡る。おいおい、いくら貸し切りとはいえ店の中で大声はダメだろ? そもそも此処に来る前にアザゼルから北欧の悪神とフェンリルの対処について話し合うって言われたはずだが……? まぁ、もし聞き逃してたんなら普通に話し合うより飯を食いながらの方が案とかその辺が思い浮かぶもんだから別に良いだろ。

 

 現在、俺達が居る場所はセラフォルー様が経営しているそこそこ人気のレストラン。なんと俺達のためだけの本日は貸し切り状態で仲良くご飯を食べながら対策を練ってほしいとの事だ……なんというかもっと別の所で力を貸してくれませんかねぇ? タダ飯を食えるから文句は言えないがいきなりアザゼルに連れられた来た時はマジかと思ったぞ。けどまぁ、内装とかスタッフのレベルが高くてもう満足です! 文句は無いです! いやぁ……ミニスカで見える太ももとか素晴らしいと思います! ちなみにこの場所には俺達キマリス眷属全員、グレモリー眷属全員、シトリー眷属全員、アザゼルとバラキエル、転生天使、そしてヴァーリ達が集まっている……なんだこの集団? 大抵の奴なら軽く殺しに行ける戦力じゃねぇか。そんな奴らが各テーブルに分かれて仲良く食事とは凄い状況だ――若干一人(平家)は人口密度の高さに死にかけてるけど。

 

 

「クソ真面目に集まって話し合うより飯食いながらの方が楽だろ? 俺は兎も角、先輩や生徒会長はヴァーリの協力には地味に反対っぽいですしここで仲良くしといた方が当日、変な事にならなくて済むと思うぞ」

 

「いや……だって禍の団だぞ!? それがいきなり協力とか言われて信じられるわけないだろ!」

 

「俺は別に断ってくれても構わない。その時は強引にでも介入させてもらうだけさ」

 

 

 つまり断ったら第三勢力として俺達と神を相手にするぞって意味だな? 知ってた!

 

 

「――まっ、そういうわけで仲良く共闘した方がかなり楽だぜ。そもそも悪神はどうでも良いとしてフェンリルを相手にするんだ、敵だろうが手伝ってくれるんなら受け入れるべきだろ? そう思いませんか、生徒会長?」

 

 

 隣のテーブルでグレモリー先輩と姫島先輩、副会長と一緒に座っている生徒会長へと視線を向けながら訪ねてみる。この状況にやや困惑している様子だが何とか冷静を保とうとしているのが凄く可愛い。写メ撮りたい。ちなみに俺達のテーブルには俺、ヴァーリ、アザゼル、赤龍帝、匙君な! 天龍に双龍に龍王に堕天使の総督という素晴らしい集団です! そしてイケメン揃い――死ねばいいのに! 特に銀髪イケメンの尻龍皇!

 

 

「……えぇ。本来であれば天龍、双龍レベルと称されるフェンリル、北欧の神であるロキを相手にするこの状況で共闘を申し出ていただいた事には感謝したいと思っています。しかし……彼らは禍の団です。私達が戦っている相手でありテロリスト、もしこちらを裏切る事態になれば困ります――と言うべきでしょうがまぁ、この事態ですし生存率を上げるためにも受け入れる覚悟です。それにリアスが認めているのならば私も認めないわけにはいきませんよ」

 

「あれマジで……? どうしたんですか先輩? 何か悪いものでも食べました?」

 

「食べてないわよ! 私も色々と考えて白龍皇の協力を受け入れた方がイッセー達が死ぬ確立が低くなると判断したまでよ。これは遊びじゃなくて殺し合い……でしょ?」

 

「ほう。少し見ない間に変わったようだ。影龍王の影響かな?」

 

「知らねぇよ。というわけだ、赤龍帝や匙君も文句ねぇな?」

 

「……ま、まぁ部長が決めたんなら従うけど、でも! もし裏切ったら一発殴るからな!!」

 

「俺はほら、裏方だから最初っから文句なんてねぇって……ただ、会長に危害を加えたら兵藤と一緒に殴りに行かせてもらうけどな! あと黒井! ちょっとだけ言わせてほしい事がある!」

 

「構わない。当たればの話だがね」

 

「当たらなければどうという事は無いってか? んで匙君? どうした?」

 

「――なんで俺はこのテーブルなんだよ!? 普通に会長と一緒の席に! いやむしろシトリー眷属のテーブルに行かせてくれ!!」

 

「うん。無理」

 

 

 俺の一言に匙君は燃え尽きたようテーブルに突っ伏した。いやいやこんな面白い……うん面白い状況で一人だけ仲間外れとかダメだろドラゴン的に! 赤龍帝に白龍皇、影龍王に龍王が勢揃いだぜ? 一カ所に集めたくなるだろ!! これに関してはアザゼルも同じ事を考えていたのか他は眷属ごとに分かれているのにこのテーブルだけドラゴンを宿す者だけで構成されてるしな。

 

 てか平家の奴……生きてるか? さっきからミニスカミニスカ太もも太ももうわっパンツ見てぇとか思ってんのにツッコミが飛んでこないんだが? いや、飛んで来たらそれはそれでめんどくさいから良いんだけども。

 

 

「折角、二天龍と地双龍、そして龍王が揃ってんだ。一カ所に集めたくなるだろ? そしてお前には今回の戦いで最前線――つまりイッセーやヴァーリ、キマリスと共に戦ってもらうから今の内に仲良くしとけ」

 

「……え、ええぇっ!? いやいやいやいや!? 俺、俺って普通の転生悪魔!! 禁手にも至ってない普通の転生悪魔ですよ!? 無理! 無理ですって!!」

 

「安心しろ。戦うって言ってもイッセーとヴァーリのサポートだ。それにソーナからは許可をもらってるから断れねぇぜ。そんでキマリス……物は相談なんだがちっと手伝ってくれ」

 

「……あぁ、もしかして前に生徒会長が言ってたヴリトラ系神器の移植ですか? 別に手伝うのは良いですけど当日までに禁手に至らせれるかどうかは分かんないぞ」

 

「いや、お前に頼みたいのはヴリトラの意識を表に出す作業をしてもらいたい。イッセーやヴァーリでも構わないが同じ邪龍であり地双龍を宿すお前の方がすんなりいくかもしれん」

 

 

 なるほど……確かにドライグとアルビオンは邪龍とは違うから意識を引っ張る際に何かしらの異常があるかもしれないわけか。その点、俺はヴリトラと同じ邪龍の相棒を宿してるからその辺が楽になると……確かに相棒と似た能力を使うヴリトラが居れば俺やヴァーリ、赤龍帝以外のサポートになるし俺的にもヴリトラを見てみたい気持ちもあるから別に断る理由は無いな。よし! 同じクラスだし全力で手伝ってやるかねぇ!! しかし匙君……そんな嬉しいからって涙目にならなくても良いんだぜ!!

 

 

「ノワール、それ嬉しくて泣いてるんじゃなくて全力でお断りしたいけど出来ないから泣いてるだけだよ」

 

「マジかよ。つか平家、お前生きてたんだな? 反応がねぇから死んでるのかと思ったぞ」

 

「無理死ぬ人口密度高すぎて無理……ノワールがミニスカとか太ももとか心の中で言ってるのを聞いたせいでさらに倍。この変態」

 

 

 そんな弱った眼で変態とか言うなよ、興奮するだろうが。

 

 

「男なんだからここのスタッフの太ももぐらい見るだろ。たくっ、水無瀬、橘、そいつの世話を任せた。流石にぶっ倒れられると面倒だ」

 

「具合が悪いからベッドの上でお世話を所望する」

 

「あとでオナニーの手伝いしてやるからそれまで待ってろ。んで匙君強化計画でしたっけ? 勿論手伝いますよ。ヴリトラ見たいですし」

 

「あんがとよ。にしてもイッセーに似てお前もモテるねぇ。覚妖怪から好かれる奴は中々いねぇぞ?」

 

「個人的には心を読もうが何しようがどうでもいいんで気にしないと言ったらこれですよ。本人曰くヤンデレ属性持ちのチョロインだそうです」

 

「えっへん」

 

「無い胸で威張んじゃねぇよ」

 

「……兵藤、なんだよ、今のやり取り?」

 

「犬月から聞いたけど何時もあんな感じらしい……! う、羨ましいぜ……!!」

 

「俺としてはお前も嫉妬の対象だけどな……! だがその言葉には同意しよう……!」

 

 

 なんだろう、周りからの視線が物凄く痛い気がするが気のせいだな!! だってこれいつも通りだし!! そんな事は置いておいて橘様からの笑顔が物凄く怖いのと四季音が此処の酒を全部飲み尽くしかねないのでさっさと次の話題に入るとすっか。前者は兎も角、後者に関しては一カ所だけ物凄いレベルで酒が消費されてるからなるべく早く終わらせよう! 全額自腹で払わせると言えば止まるか……? 無理だな。

 

 

「とりあえず話が脱線したから元に戻すが……ヴァーリ、夜空は間違いなくやって来るぜ? こんな面白い事を見逃すような奴じゃねぇしな」

 

「だろうね。彼女の性格からして俺達と共闘はありえない……いや、共闘はするが途中で掌返しかな? しかし影龍王、キミが呼べば来るんじゃないか?」

 

「んな単純な性格じゃねぇだろ。そもそも呼んで来るんなら毎日呼んでるわ」

 

「なるほど。しかし困ったな」

 

「あぁ、マジで困った……どうするよ? 数が足りねぇぞ? 仮に夜空の乱入が途中からだとしてそれまでにフェンリルを倒しとかねぇとこっちの被害が尋常じゃねぇぐらい出るぞ。ちなみに赤龍帝、一応聞くが悪神相手に一人で戦える自信は?」

 

「あ、あるわけねぇだろ!? いやあの人の強さとか分かってるし頑張らないとって思うけど今の俺じゃ一人で相手は無理だ……昨日だって先生やバラキエルさんが一緒でもダメージを与えられなかったんだしさ」

 

「そりゃそうだ。なんだかんだ言っても神だしな。そんなわけでアザゼル、どうする? 最悪、俺がフェンリルと夜空を同時に相手もしても良いが……普通に死ねるぞ? 死なねぇけど死ぬぞ」

 

「そんなムリゲーをさせるわけねぇだろ。それに関してはこっちで助っ人を用意した――ほら来たぞ」

 

 

 店の扉が開き、中に入ってくる二人がいた。短髪で紫の瞳、戦闘時ですらないのに圧倒的な覇気を思わせる男――サイラオーグ・バアル、そしてそれに付き従うように歩く仮面の男だ。おいおいマジで? まさかのサイラオーグ・バアルが助っ人かよ……勝ったわ。マジで勝ったしフェンリルを任せても問題ねぇ存在だわ。

 

 周りの驚きの視線を浴びながら最強の助っ人は一歩、また一歩と俺達の傍まで歩いてくる。なんつう覇気だよ……あっ、ヴァーリが笑ってるしイケメンメガネもどこか嬉しそうだ。流石戦闘狂! てかイケメンメガネもその口かい!!

 

 

「遅れてすまない。サイラオーグ・バアル、そしてバアル眷属兵士一名、今回の神と魔物との(いくさ)に参加させてもらう」

 

「……サイラオーグさんが助っ人? え、ええぇっ!?」

 

「本来ならば他の奴と同様に各拠点を護る事になっていたんだが本人の強い希望でな、王と眷属一名という条件付きで今回の戦いに参加してもらう事になった。無論、サーゼクスや大王家も了承済みだ」

 

「眷属総出で手助けをしたかったが上が五月蠅くてな……なに、不足分は俺達二人で補う所存だ。リアス、影龍王殿、白龍皇殿、今回はよろしく頼む」

 

「サイラオーグ……いえ、心強いわ。貴方の足を引っ張らないように私も頑張らないとダメね」

 

「これが大王家か。ふふっ、面白いな」

 

 

 椅子に座りながら不敵に笑いだすヴァーリだが気持ちは分かる。この人は強い、他とは比べられないぐらい強いから戦いたいとでも思ってんだろう。確かに戦いたい気持ちは凄く分かる……俺だってそうだしな。だけどフェンリル相手に防戦一方だった俺が勝てるかと言われたら微妙だなぁ……もっと強くならねぇと。

 

 

「だろ。この人は強いし最強の助っ人だよ……アザゼル、組み分けはもう終わってんだろ?」

 

「勿論だ。ロキに関する情報はこの後、詳しい奴から聞くことになってるが一応三つの班に分けて考えてる。まずイッセー、ヴァーリ、そんで匙の三人はロキの相手だ。イッセー、ヴァーリ、二天龍の宿命とかは忘れて今回だけは協力して神を倒せよ」

 

「は、はい!」

 

「了解した」

 

「……は、はいぃ……!」

 

 

 二天龍が共闘して神を倒すとか想像するだけで燃えるな。畜生……よぞらぁ! お前もこっちに来いよ! 地双龍が手を組んでフェンリル殺そうぜぇ!!

 

 

「二つ目の班はグレモリー、バアル、キマリスの三眷属連合だ。こっちはフェンリルを相手にする。基本的には再生能力を持つキマリスと同等の実力を持つサイラオーグが正面、リアスと残ったメンバーが後方から波状攻撃を仕掛ける形になるな。近接戦闘主体の奴は一撃当てたら後退するようにしろよ。奴の一撃は神やドラゴンでさえ殺せるほどのものだ、ダメージを受けたら死ぬぞ」

 

「だろうな。あの、夜空……いや光龍妃が乱入して来たら俺が相手をしないとダメなんでフェンリルをお任せする事になりますけど大丈夫ですか?」

 

「問題は無い。今の俺の拳が伝説の魔物を相手にどこまで通じるか試す良い機会だ。影龍王殿は光龍妃との戦いに集中していればいい。俺はフェンリルが相手であろうと引く気は無い。たとえこの身が傷だらけになろうともリアス、影龍王殿の眷属には指一本触れさせん――今回は全力で行かせてもらうからな」

 

 

 説得力が違いすぎる。なんというかこの人だったらフェンリルの牙ぐらいはへし折れる気がする。

 

 

「そしてシトリー眷属はリアスやキマリス達が戦っている間、オーディンの護衛だ。なに、うちの神滅具使いも一緒に警備するから安心しとけ」

 

「……アザゼル、奴をこちらに寄越せないのか?」

 

「無理だな。オーディンの傍にはサーゼクスやミカエルが居るとはいえ護衛を置いとかねぇと周りが五月蠅いんだよ。なんだ? 傍に居てほしかったか?」

 

「奴がいるならばもう少し楽になるだろうと思っただけさ」

 

「奴? てか堕天使側に神滅具使いが居たのかよ……ヴァーリ、そいつって強いのか?」

 

「あぁ。そうだな……光龍妃と同じぐらいイレギュラーな奴と言えば分かるか」

 

「了解。規格外ってわけだな」

 

 

 マジかよ……夜空並みに規格外な奴が堕天使側に居た事に驚きだわ!

 

 ヴァーリに詳しく話を聞いてみるとどうやらこの天才イケメンが覇龍を使用する事になったほどの実力者らしい。うわぁ、マジで? 普通に夜空並みじゃねぇか……神滅具使いの人間って規格外になるってルールでもあんのか?

 

 

「そして話しに出ている光龍妃だが間違いなく乱入してくるだろう。キマリス、戦うのは良いが別の場所で頼むぞ? お前達が本気で殺し合いを始めたら他に被害が出るからな」

 

「流石の俺でも眷属が居る場所で夜空と殺し合いはしませんよ。こっちで勝手にいつも殺し合ってる場所に転移するんで安心してください」

 

「……彼女が乱入しないという事は考えられないのですか? お姉様やキマリス君から色々とお話は聞いていますし冥界のパーティーでの彼女の行動を見ましたが……キマリス君が困る事はしないのでは?」

 

「あー、うん。ありえねぇな」

 

「彼女に限ってそれは無いな」

 

「ソーナ、それはイッセーがおっぱいを嫌いになるレベルであり得ねぇことだ」

 

「先生!? いや言いたい事は分かりますけどそれと同じ扱いで良いんですか!? あとおっぱいを嫌いになるわけがありません!!」

 

「生徒会長、夜空は自分の欲望に忠実です。あれがしたいこれが欲しい、これに飽きたから今度はこっちをしようとかガキみたいな考えで動いてるんでこんな面白い事に参加しないわけがない。可能性としては悪神と共闘、第三勢力として俺達と悪神を同時に相手とかそんな感じになると思いますよ」

 

 

 そもそも昨日の一件で悪神が夜空と手を組んでいる感じには見えなかったから恐らく第三勢力で乱入だろうけどな。アイツは誰が居ようととりあえず光をぶっ放す奴だから同じ場所で戦えねぇか……先輩とかサイラオーグ・バアルとかはまぁ、どうでも良いと言えばどうでも良いけど犬月達に被害が出るからそこは別の場所に転移せざるを得ない。またうちの領地の殺し合い場の形が変わるのかぁ……! 別にどうでも良いな!!

 

 そして話し合いも終わったのでこの後は普通に全員で仲良く食事をした。今まで無口だった相棒がドライグとアルビオンをおっぱいドラゴン、ヒップドラゴンと楽しく虐めたり黒猫ちゃんが俺と赤龍帝を誘惑してきて橘と白髪ロリがキレたり水無瀬が得意の不幸体質を発揮してどういうわけか酒を頭から浴びてびしょ濡れ状態になったりと色々と愉しい事になった。凄く楽しかった! 余談だが今回の食事代の約半分以上は四季音が飲んだ酒代でかなりの額になっていたが……飲み過ぎだよ。俺の自腹だウハハハハハと会計をしに行ったアザゼルがその額を見て顔真っ青になったぐらいだし。ゴチになりましたー!

 

 まぁ、そんなどうでも良い事は置いておいて俺達ドラゴンを宿す組はアザゼルに連れられて別の場所へと来ていた。俺達が居るこの真っ白の空間、どこだと言われたら俺も分からない。別にどこに転移しようと関係ないんだが……なんか大きい生物がいる。具体的には元龍王、最上級悪魔の一体がなんか飼い主を待つ犬のように座ってる。なんでタンニーンさんが居るし……ってあぁ、そう言う事か。

 

 

「タンニーンのおっさん!」

 

「久しぶりだな。しかしまさかドライグにアルビオン、クロムにヴリトラが揃うとはな……これならば奴も反応するだろう」

 

「さ、最上級悪魔のタンニーン様……! や、やっぱり俺って場違いだろ!? かえりてぇ! かえらせろぉ!!」

 

「安心しろ匙君! 宿す存在的には同格だから!!」

 

「あっ、そうか――ってなるかあぁ!? お前! 最上級悪魔のタンニーン様が目の前にいるんだぞ!! 兵藤やお前のように凄いドラゴンを宿して強いわけじゃないのになんで俺此処に居るんだ!?」

 

「ヴリトラを宿してるからだろ」

 

「だよねー!! かいちょぉぉ!! かえってもいいですかぁ!!」

 

 

 ガチ泣きの匙君を放って置いてアザゼルに指示された場所に立つと足元の色が変わった。赤龍帝は赤、ヴァーリは白、観念したのか匙君も同じように立つと足元が黒く光る。そして俺はというと……はい、同じ黒です。ただし色合いが匙君よりもちょっと濃い感じだけどな。

 

 

「うおっ!? 何か光った!?」

 

「ドラゴンの特徴を司る色だ。さて……これで反応してくれよ?」

 

「奴は酷い怠け癖を持っているからな、簡単には行かないだろう」

 

『ゼハハハハハ! ヒッキードラゴンだしなぁ!! 俺様達が揃ったとしても奴にとっては自分の睡眠が第一優先よ! 深海まで殺しに行った方が早いんじゃねぇか?』

 

『奴が眠る場所まで行けるわけが無いだろう』

 

『分かってるよーヒップドラゴンちゃん! じょーだんだよじょーだん!! ゼハハハハハ!』

 

『くぅっ……ど、ドライグゥ!!』

 

『アルビオン!? 俺のせいではないと何度言えば分かる!!』

 

 

 ドラゴン達によるコントが繰り広げられると目の前にスクリーンが展開されてデカい生物が映し出された。体は蛇のように長く、顔はタンニーン様のようなドラゴンの生物――五大龍王の一角である終末の大龍(スリーピング・ドラゴン)のミドガルズオルム。長い体をとぐろを巻くようにしてどうやら爆睡中のようだ……名前通りというか本当に寝るのが好きなんだな。気持ちは分かる!

 

 

「起きろ! ミドガルズオルム!!」

 

『――ほえぇ? ふあぁぁっ、あれ? タンニーンだぁ? あれれぇ? ドライグやアルビオンにクロムにヴリトラも一緒だぁ。もしかしてもう終末なの?』

 

「いや違う。今回はお前に聞きたい事が――寝るな! ええいっ! 全く貴様といい玉龍といい! なぜそうも怠ける性格をしているのだ!!」

 

『ふぇ? もうやだなぁタンニーンはぁ、怒ってばっかりだと禿げちゃうよぉ?』

 

「禿げん! これでもまだふさふさだ!!」

 

『そうなの~? ふああああっ、それで聞きたい事ってなに~?』

 

 

 どうやら話を聞いてもらえるようだ。なんというか口調も鈍いからこっちも眠くなりそうだ……流石龍王、個性的な性格をしてやがる。

 

 

「ミドガルズオルム。相棒、影の龍クロムを宿してるノワール・キマリスだ。聞きたい事はロキとフェンリルについてだな。ちょっとこれから殺し合いを始めるんで情報が欲しい」

 

『ゼハハハハハ! 久しいなミドガルズオルム! いやヒッキー!! 今日も平和にお寝んねってかぁ? 羨ましいぜぇ!! ほらほらさっさと情報吐いちまえよ! 楽になるぜ!!』

 

『クロムだぁ、なになに? ダディとワンワンと戦うの? さっすがぁ~うん、良いよ~教えてあげるぅ。ダディもワンワンもどうでも良いしねぇ。だって寝てるのが幸せだしぃ。えっとねぇ、ワンワンにはグレイプニルで捕える事が出来るよぉ~でもクロムには不要だよね? だってワンワンに噛まれても死なないし再生するでしょ……あっ、今は封印されてたんだっけぇ? じゃあ、死んじゃうから使った方が良いよぉ』

 

「……うん? なんか今、相棒関連で重要そうな事を言わなかったか?」

 

『ゼハハハ。気のせいだ』

 

『……ドライグ』

 

『あぁ、ノワール・キマリス。ミドガルズオルムが言った事は忘れろ。今は神とフェンリルに集中すればいいさ』

 

 

 忘れろと言われたら余計に気になるんだけど? 兵藤一誠もヴァーリも匙君も気になってる様子だしさ! この場で深く考え込んでいるのはアザゼルとタンニーン様ぐらいだぞ? えっ? なに? 相棒ってもしかして死なないの? まさか――俺の亜種禁手の能力って相棒の能力とかそういうオチ? でも神滅具って基本的に二つの能力だよな……? 違うのか? もしかして邪龍だから死なないって意味かもしれないが前々から感じてたユニアの反応とかも気になるし……まぁ、今は忘れておこう。相棒や他のドラゴン達の事だ、きっと理由があって話さないだけだろうし話してくれるまで待つのが礼儀だ。

 

 

「コホン。ミドガルズオルム、その鎖だが北の報告で通用しなかったそうだ。他には何かないか?」

 

『あれれ~? ダディってばワンワンを強化でもしたのかな? うーん、じゃあダークエルフに頼んで強化してもらいなよ。魔法で鎖自体を強化してもらえば問題ないんじゃない? 場所を教えた方が良いよねぇ』

 

「出来れば白龍皇か影龍王のどちらかで頼む。残った二人は未覚醒と頭がバカだ」

 

『りょ~か~い、じゃあ二人に送るね』

 

 

 というわけでミドガルズオルムからダークエルフが住んでいるであろう場所の情報が送られてくる。それにしてもどうやって送ってんだ? お互いに封印されているならまだ分かるが相手は深海で眠ってたドラゴン、そんな奴がどうやって神器に情報を送ってこれるのか不思議なんだが……いや、龍門のお蔭か? そもそもこれ自体は知識として知ってただけで実際に行うのは初めてだからよく分からん。

 

 アザゼルが気を利かせて真下に地図を展開してくれたのでヴァーリと一緒にドワーフが住む場所を教える。しかしダークエルフ……きっと褐色肌の美人に違いない! 機会があれば伺ってお姿を拝見とか面白そうだな。

 

 

「んじゃ、次は悪神の事を教えてくれ。なんか知らんが相棒の力が効きにくかったからどうやって戦えばいいか参考までに教えてくれ」

 

『参考にって言われてもねぇ~? ダディって魔法主体の戦い方だから接近して殴るが一番効果的だと思うよぉ? そういえばさぁ、ユニアは居ないの? ドライグとアルビオンが並んでるのに居ないから気になってたんだぁ』

 

「今代のユニアの宿主は厄介者でな。こいつらのように一カ所に留まらん様だ。そして毎度、殺し合っている」

 

『へぇ~相変わらずだねぇ。結婚しちゃえばいいのに。あとさぁ~ドライグとアルビオンも喧嘩しないの? いっつも喧嘩してたじゃん?』

 

『……まぁ、今回だけ特別と言うべきか』

 

『うむ。本来であれば我らが手を取り合い、共に戦うことなどありえん。今回だけ特別だ』

 

『ふ~ん。変わらないねぇ、とりあえずダークエルフに言えば強力な武器とか貰えるかもしれないよぉ? オーディンとか色んな神様からレプリカの作成とか頼まれてたはずだしぃ』

 

「なるほどな。助かるぜ、ミドガルズオルム」

 

『気にしないでぇ。久しぶりに皆に会えて嬉しくなっただけだからさぁ。本当ならユニアにも会いたかったけど居ないなら仕方ないねぇ』

 

『クフフ、お呼びですか? ミドガルズオルム』

 

 

 声が聞こえた。この場には男しかいないはずなのに女性のような声が周囲に響く。周りを見渡してみるといつの間にかミドガルズオルムを映しているような立体映像が俺の背後に展開されていた……映っているのはどこかの部屋のようだ。うん? この家具の配置って俺の部屋じゃね? あっ、積みゲー状態のエロゲーがあるから間違いねぇわ。

 

 

「その声は……ユニアか!」

 

『お久しぶりですね。タンニーン、昔と変わらず良い男、いやドラゴンで嬉しいです。体が有ればお相手していただきたかった』

 

「断る!! 全く貴様はもう少し大人しくならんのか!! いや、それは後でも良い! それよりもだ――今回の戦いに貴様は、いや宿主は参加するのか聞きたい」

 

『クフフフフフフ、その問いにはYesと答えましょう。この私が、夜空が面白そうな事を見逃すとでも思っていましたか? クロム、そしてその宿主であるノワール。夜空からの伝言です――その顔、絶対に驚かせてやるから覚悟しろぉ! との事です。ちなみにですが貴方のお部屋で色々としておりますので遅めに帰ってきていただければ幸いですが……早めに来ても構いませんよ? きっと天国が見れるでしょうし』

 

 

 天国という名の死ですね分かります。というよりアイツ……俺の部屋で何してんだよ? 見せられませんと言わんばかりにベッドの場所を見せてないからもしかしてオナニー中か? うわっ、なんだよその天国! ちょっとユニア様? 近くにいる童貞二人を捧げるんでベッドの様子というか夜空の様子を俺だけに見せてくれません? あっ、ダメだ。封印されてるからユニア様に捧げられねぇ!? いやそんな事よりもここ最近は夜空と話してないし絡んでも居ないから色々と溜まってんだよ! だからお願いします!!

 

 

『ゼハハハハハ。おいユニア、俺様達を驚かせるだと? 何をする気だぁ?』

 

『当日をお楽しみにしていればいいですよ。それとこれは私からの忠告、いえ宣戦布告です――私達は今回の戦いで貴方達を、神とフェンリルを殺す気で行きます。止めたければ止めて見なさい。今の夜空を止められるものは誰も居ませんよ。クフフフフ、ミドガルズオルム。偶には起きて地上へと出てはいかがです? そうすれば私と会えますよ。ではさようなら』

 

 

 それを言い残してユニアの声は聞こえなくなり、立体映像も消える。ちょっと待て!! ベッドの様子! 夜空の様子を映せ!! いや教えてくださいお願いします!!

 

 

『ユニアも相変わらずだねぇ。みんな気を付けてねぇ~?』

 

「やっぱり光龍妃は乱入する気だったか……しっかし俺達を驚かすだと? まさかキマリスの影人形融合みてぇなものを開発でもしたか……くっそ! 今代の地双龍は本当に読めねぇ! キマリス! 光龍妃が来たら全力で止めろ! 良いな!」

 

「言われなくてもそうするつもりだよ……俺達を驚かせる、驚かせてくれるのかぁ! くくく、あはははははは! やっぱりそうじゃねぇと面白くねぇよな! 何を見せてくれるのか楽しみだぜ夜空ぁ!!」

 

「……なんで喜んでるのか俺には理解できない」

 

「匙、俺もその言葉には同意する……!」

 

 

 ミドガルズオルム、そしてユニアとの会話も終わったのでそのまま家へと帰る。ウキウキワクワクしながらそっと、そぉっと! 足音すら立てずに自分の部屋の前に立ち、思いっきり扉を開けると――誰もいなかった。あの野郎……! 帰りやがった!! せめて何してたかだけ教えろよ!!

 

 そんな事を思いながらベッドに近づいてみると何故か知らないが地味にシーツが濡れていた。うーん、うん! 寝よう! 飯とか風呂とかこの際どうでも良いから寝ようか! 疲れたしな!! うわーつかれたわーすっげぇつかれたわーうんうんつかれたわーこれは寝ても仕方ないねー!

 

 ベッドにもぐりこんだ俺を待っていたのは――夜空の匂いだった。やっぱり最高だなあいつ! ありがとうございました!!




サイラオーグが参戦するというだけで安心感が段違いです。
観覧ありがとうございました!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。