時系列は本編開始前、大体ノワール・キマリス君高校一年生辺り。
なお今回のネタを思いついたのはゴッホちゃんのバレンタインデーイベントです。
「あのさーユニア? なんでこの夜空ちゃんがさぁ! こんなめんどくせー事をしないとダメなん?」
私に宿る神滅具、光龍妃の外套に封じられている存在であり母親代わりとも言える邪龍に今のセリフを問いかける。声のトーンは自分でもビックリな程めんどーだなーやめたいなー逆に食いたいなーと言った感情がハッキリと乗せられている……が当然と言えば当然! だって普通にメンドクサイし。
『クフフフフフ! それはですね夜空……今日が二月十四日だからですよ』
「それさっき十回ぐらいノワールが言ってた事っしょ? それがどうしたのさ?」
こんな面倒な事をする事になった元凶とも言える男を思い浮かべる。出会った頃はまぁ……よわっちぃガキと思ってたけどなんだかんだで会話したり飯食わせてもらったり殺し合ったりしている内に気が付けば何とも言えない感じになってた男。ユニア基準だとイケメンだーとかなんとか言ってたけど私からすれば生意気で昔よりは強くなったっぽいけどまだ弱いからまーこの私が護ってやっても良いかなー程度に思える……そんな感じの男――それがノワール。
そのノワールに腹が減ったから飯食わせろと会いに行ってみると何度も二月十四日を連呼してきたから適当にへーへーとか言ってたら「美少女からチョコを貰える日だぜ!」だの「チョコくれ!!」だのと何度も言ってきた。ぶっちゃけさー最後のセリフが答えっぽいけど夜空ちゃんはホームレスだから知りません。しりませーん! だから飯食わせてもらった後に何も渡さず転移したのは間違ってないと思うんだよね。
あと念のため言っておくけど飯を食わせてもらうならノワールとその辺に居る男、どっちが良いと言われたら問答無用でノワールを選ぶけどね。この超絶美少女夜空ちゃんに話しかけて良い奴はノワールしか認めてねーし。誰に説明していると言われたらどーせ盗聴してるであろうあの覚にだ……今のところはまームカつく事はしてないとは言わないが殺すレベルには至って無いしまーまー……見逃しても良いっしょ。
『夜空。二月十四日とはバレンタインデーと言いまして……愛する男にチョコを送る日なのです! あぁ……チョコと言う名の私を食べてと合法的に言えるだなんてなんて素晴らしい! クフフフフフフ! 良いですか夜空、ノワール・キマリスも目に涙を浮かべながらチョコをくださいと言っていたでしょう? だから欲しいと言っている以上! 餌を与えるのがイイ女というものですよ』
「いや目に涙なんて浮かべてなかったけど?」
その代わりめっちゃ真剣な感じだったけどね。
『……クフフフフ! 違いますよ夜空。彼は心の中で泣いていたのです! あぁ……可哀想に……誰からもチョコを貰えず一日を終え、そのまま眠りについて枕を濡らしてしまうと考えてしまうと……男として立ち直れないに違いない! あぁ……私に肉体があれば身体で癒して――』
「あ゛?」
『いえ、何でもありませんよ。夜空、彼は今日を過ぎてしまうと誰からもチョコが貰えなかった哀れな男になってしまうでしょう……! ですが夜空がチョコを渡せば! きっと今以上に夜空を愛してくれるに違いありません!』
「ふーんへーほーふーん」
『あと夜空が渡さないとあの覚妖怪が横取り――』
「で? 何すれば良いん?」
ぶっちゃけた話、バレンタインデーとか全くと言って良いほど縁が無いのは言うまでもない。だって今までホームレスだったし。でも思い返してみればチョコ類が大量に捨てられる日があったような無かったような……まぁ、昔の事だし思い出してもしょーがないので今はチョコを作る事だけ考えよっと。
そんなわけで道具類とか買う金が無いのでゴミ捨て場にあった割と綺麗めな皿類を公園の水とかで洗って光ピカーとして乾かしたものを目の前に置く。そして肝心なチョコは何故か知んないけどゴミ箱に箱ごと捨てられてたからそれを使うから問題無し……仮に腹を壊してもノワールなら問題無いっしょきっと。
『……素直にチョコを渡すから道具類を買ってくれと言えば良いのでは?』
それはそれでムカつくからヤダ。
『……まぁ、ノワール・キマリスの事ですからたとえゲテモノでも喜ぶでしょう。さて! 手作りチョコの作り方を教えますよ』
「よろしくー」
まずはチョコを溶かすと……湯煎? なにそれ? へーそんなめんどくせー事すんの……? いや別に光というか熱で溶かせばよくない? よしめんどーだからそれでやろっと!
「……溶けないけど?」
『焦げるのは当然だと思いますよ? 世の女性は光の熱でチョコを溶かしてはいませんので』
「ここに居るけど?」
『夜空は別です』
なんか腑に落ちない。てかさー! そもそも――
「――ユニア、どうやって湯煎だっけ? それすんの?」
ぶっちゃけた話、目の前にあるのは皿とチョコだけでお湯沸かすとかそんな事が出来る道具なんて存在しないんだけど……? まー火に関してはその辺の枝とか使えば問題無いけどその先が問題な気がする。まー私は別にどうでも良いと言えばどうでも良いけどね。だって食えれば何でも良いじゃん。
『……』
「ユニア?」
『夜空……私の光を良い感じに使って溶かしましょう!!』
さっきの発言どこ行ったん? まーそれしか無いから別に良いけどさ。
『あれですよ夜空! 溶かすときに水、えぇそうです! 液体が有ればきっと良い感じに溶けるはずです!! 正直食えれば良いんですよ食えればぁッ!!! さぁ夜空! 水と一緒に溶かしましょう!!』
「んー水かー……なんかさー! この夜空ちゃんが作るのに普通すぎない?」
『……ほう?』
仮に、仮に水とか使って良い感じに出来たとしてそれは果たしてあのノワールに渡すに相応しいのかと言われた微妙だと思う。うん微妙っしょマジで! だってあの覚が居んだよ? アイツがもし私よりもいい感じの奴渡したらこの超絶美少女夜空ちゃんが下になんじゃん! それだけはぜってぇ……ぜってぇ阻止するためにも別な何かを考えないと……!
そして考えること数秒、この天才美少女夜空ちゃんは閃きました! さっすが私! なんかどっかで料理は愛情とか何とかって言ってたしきっとノワールなら問題無く食えるはず!!
『……夜空。えぇ、確かに
「ん? 私の血を混ぜてっけど?」
とりあえずコップ一杯程度の血を混ぜながら光を操り残ったチョコ全部を溶かす……が先ほどと同じように黒い塊になった。それ自体は別に問題無いと言えば問題無い……だって私の血が混じってると言う事が大事なんだし。ん~装飾とかなんかした方が良い気がするけどこれ以上はまぁ、初めてだしこれで良いっしょきっと! さっさと転移してノワールに渡せば良いだけの事だしさ! きっとノワールも泣いて喜ぶに違いない!
「かんせー! どうよユニア! これなら文句ないっしょ!! どっからどー見ても私オリジナルのチョコだぜ!」
『……ソウデスネ。ノワール・キマリス……いつの日か、いつの日か……夜空に料理を教えてあげてください……!』
なんかユニアが言ってるけどそれは一旦置いておいて再度ノワール元へ転移する。
そのまま出来上がった手作りチョコを渡すと……まーなんと言うか滅茶苦茶喜んで食べてくれた。ノワールが「これで死ぬまで戦える」とか言ってきたけどさ……お前って死ぬ気有るって感じで再生しまくってる気が済んだけど? まー別に良いけど。
とりあえず初めてのバレンタインデーは個人的には満足と言えば満足な気がする。
次は――何混ぜよっかなぁ。
ノワール君は血が混じってる事に気づいてますが夜空からチョコが貰えたことに心の底から喜んでいるのでその程度は全く、全く、全く気にしていません。
むしろありがとうございますと言えるレベルの変態のため皆さんは真似をしないでください。