ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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12話

「いやぁ~まさか生しほりんに会う機会が訪れるなんて夢にも思わなかったっすよ。マジであざっす」

 

「お前、それ毎日言ってないか?」

 

「それぐらい嬉しいんすよ。しほりんすよしほりん? 橘志保、元気満タン超絶美少女! そして巨乳――犬妖怪としては是非ともお知り合いになりたいというのは本能なんすわ」

 

「犬妖怪全体に喧嘩売ったなおい。ほれおっさきぃ」

 

「んぁ!? やべぇ!?」

 

 

 放課後、もうすぐ行われる球技大会に向けて俺と犬月は体育館でバスケをしていた。俺としてはさっさと帰りたいところなんだが球技大会はクラス対抗、部活対抗、男女別等々結構分かれているから個人のレベルアップが大事だとクラス代表の名前も知らない女子が語っていた。そのためこうして誠に遺憾ながら貴重な放課後を使って練習――またの名を蹂躙を行っているというわけだ。

 

 数日前に現役アイドルこと橘志保本人からもらったチケットの存在があまりにも嬉しかったのか分からないがテンションが上がり、全世界の犬妖怪の方々を敵に回す発言をした犬月をドリブルで抜いた後、ゴールにダンクを決めて先制点を取る。流石に抜かれた事に苛立ったのか本気出しますよとか言って犬妖怪の速さを発揮してドリブルしてきやがった……けどはい残念でした。

 

 

「はぁ?!」

 

「いくら速くてもお前じゃ俺は抜けねぇよ」

 

 

 コート半分まで戻って反転、今度はゴールに向かってドリブル。抜かれまいとディフェンスする犬月に一気に接近、その後一瞬だけ後退した振りをして一気に抜き去ってから再びダンク。はい二点目っと。

 

 

「相変わらず黒井は身体能力が高いな」

 

「あれで心霊探索同好会なんてやってるのがもったいない。ぜひバスケ部に来てほしいものだ」

 

「しかしそうなると――」

 

「キャー! 黒井君カッコいいぃ!」

 

「凄い! ダンクってあんまりできないんじゃないの!? でもかっこいい!」

 

「犬月君頑張ってぇ!」

 

「――黒井死すべし慈悲は無い」

 

「ついでに犬月も死すべき慈悲は無い」

 

「あとついでのついでで生徒会に入った匙も死すべきだな」

 

「はぁ!?」

 

 

 何やら匙君が大声を上げたけどなんで、だっと! だからそんな単調な動きじゃ無理だっての。

 

 結局俺と犬月の1on1は俺の圧勝で終わった。一応これでもこいつの主だからな、負けるわけにはいかないだろう悪魔的に。

 

 

「マジでボール取れねぇ……どうなってんだよ」

 

「慣れだな」

 

「その慣れってどこからきたんすか……昔何かやってたりする?」

 

「んなわけねぇだろ。心霊探索同好会なんて作った俺がそんなめんどくさい事やると思うか?」

 

「知ってた。んでどうするよ? クラス対抗戦は俺とアンタ、げんちぃとかがいるから圧勝っすけど問題は部活対抗……俺等二人だけなんすよ? あの引きこもりが出れるわけねぇし」

 

「まさか同好会の俺達も強制参加とは思わなかったよ。しかも辞退も出来ねぇ上、水無瀬がサボったら晩飯が枝豆にするっていうし……幸い人数が足りない種目だったら人数補充してくれるっぽいし何とかなるだろ。バスケ程度なら俺達だけでも余裕だろうけどな」

 

「そっすね」

 

 

 比較的平和な放課後は俺と犬月、匙の悪魔三人衆の独壇場で幕を閉じた。いやぁ暴れたな……最後の方なんて俺と犬月VSクラスの男子全員だったけど如何にか一掃できて満足まんぞくぅ。何故か敵に回ってた匙君がこいつら化け物かよ的な視線を向けてたけど勿論化け物に決まってるじゃねぇか。だって俺はドラゴン宿している悪魔だぜ? 犬月も犬妖怪と悪魔の混血、見事なまでの化け物と呼んでもなにも文句は言われないな。

 

 そんな馬鹿な事を思いながら犬月と共に帰宅。深夜になるまで神器の中に意識を落として歴代影龍王の思念と向かい合っていたがそいつ等の心が死んでいたのでこれと言った成果も無かった。さっさとこの歴代思念達を如何にかして覇龍とは別のものを開発したいんだが上手くはいかないようだ。そして目的の時間になったので外出、向かう先は一カ月以上前に堕天使の一派が潜伏していた場所――教会だ。

 

 

『ゼハハハハハ。気になるか宿主様』

 

「まぁな。ここで取り逃がした奴が最近の神父殺しの犯人かもしれねぇし」

 

『今日まで姿を現してはいないしなぁ。片腕を失い顔半分を潰されたんだ、治療のために時間がかかったのも頷ける。して宿主様? 此処で何をする?』

 

「灯台下暗し、もしかしたら逃げた振りをして潜伏してるかもしれねぇだろ? 犬月の鼻を信じていないわけじゃないが匂いなんていくらでも誤魔化せる時代だ、念には念をだよ。俺や犬月、平家に四季音はともかく水無瀬が襲われたら神器が有っても応戦できるかどうかわかんねぇし」

 

『あれは典型的な後衛タイプだしなぁ』

 

 

 眷属達は契約取りに向かっているため俺一人でこの場所に訪れている。理由なんてここ最近発生している神父殺しの犯人を捜すため。一カ月以上前にこの場所で取り逃がしたはぐれ悪魔祓い、ソイツがどうも引っかかる。今の今まで姿を現さなかったがもしかしたら受けた傷が癒えてそいつが神父殺している可能性もある。なんせ一般人を惨殺するような奴だから今更神父の一人や二人程度は鼻歌交じりで殺すだろう。一般人が犠牲になるのは心底どうでも良いが身内に被害が出て怪我とかされると面倒だしさっさと犯人を探して殺そうとか思ってたんだが……マジでいねぇな。少なくとも周囲には人の気配は感じないから中か?

 

 疑問に思いながら壊れた教会の中に入ると教会特有の気持ち悪さが襲ってくる。相変わらず胸糞悪い場所だ、もういらないんだったら壊しても良いのに何で残してんだろうな?

 

 

『大方、聖書の神の存在を誇示するためだろう。残念ながら無駄な事だがなぁな』

 

「死んでるんだっけ?」

 

『その通りだ。宿主様の数代前の奴がその事実に気づいちまってなぁ、口封じに殺されたのは懐かしい思い出よ』

 

「宿主が殺されても怒らないお前は頭がおかしいよ」

 

『褒めるなよぉ、照れちまうぜ』

 

「誉めてねぇし――誰か来る」

 

 

 神様を崇める教会で最低最悪とも言える会話をしていると誰かが近づいてくる気配がした。数は二人、足音からして片方は重いものを持っている……長剣ほどの大きさだな。もう片方は足取りが軽すぎるから武器は無し……いやナイフかその辺りかもしれねぇな。

 

 

『はぐれ悪魔祓いかもしれんぞ。どうする?』

 

「もしそれならまずはお話してから殺す、お話しが出来なかったらならすぐ殺す。それ以外だったらその時はその時の精神だ」

 

『大正解だ』

 

 

 別に隠れてやり過ごす事も無く来訪者を待っていると入り口から二人組が入ってきた。どちらも白いローブを被っていて顔は見えないが如何にも信者ですと言わんばかりの気持ち悪さだ。この感覚的に十字架装備に……得物は聖剣か? だとするとちょっとめんどくさい事になったな。まさかこんな場所に聖剣を持ってる信者が来るなんて思わなかった――向かってくるようなら殺すけど。

 

 

「――あ、あれ? 人がいるなんて珍しいわね」

 

「いやあれは悪魔だな。まさか教会内に入り込む悪魔が居ようとは思わなかった」

 

 

 声からして女、どちらも若いな。しかも初見で悪魔と見抜くって事はそこそこの場数はこなしてるってことになる。

 

 

「――ご名答。ただの一般人じゃなくてアンタらが付けてる十字架で気分が悪い悪魔だよ」

 

「潔いな、普通は隠す場面だと思うが?」

 

「ただの一般人がこんな時間に教会、しかもこんなボロイ場所にくるわけねぇだろ」

 

「だよね。う~ん、貴方の顔ってどこかで見た事あるような、ないような……きっと無いわね! 此処で会ったのは運が悪かったわね! 何をしていたかキッチリと吐いてもらうわよ!」

 

 

 二人の女は何時でも戦闘態勢に入れるように身構えたが俺が悪魔という事でかなり余裕そうだ。やべぇ殺してぇ、マジで殺してぇんだけど……というより教会関係者で俺の事を知らないなんて珍しい、うん珍しいな。なんせあの規格外と週一か週二か週三かはたまた毎日かと言うぐらい殺し合ってるからその手の関係者に顔と名前を憶えられてると思っていたが案外そうでもなさそうだ。

 

 さてどうすっかなぁ、此処で殺すのは非常に簡単だけどできれば敵意がない事をやんわりと伝えて帰りてぇ。あっちから襲い掛かってきてくれるなら喜んで殺すけど流石に面倒事になるからしないよな。非常に残念である。

 

 

「別に。ただの探し物さ」

 

「悪魔が教会に探し物かい? 罰当たりも良い所だな。教会は悪魔の玩具ではないぞ」

 

「知ってる。まっ、言っちまえば悪さする気がない善良な悪魔だよ。マジで探し物、探し人? それしてただけだしな」

 

「――あぁ、なるほどな。つまりは神父を探していたという事か」

 

「はい?」

 

「まさか堕天使と悪魔が手を組んでいたとは思わなかった。この地を治める魔王の妹とやらの眷属か、それともはぐれかは知らないが堕天使と手を組んでいるというのならここで死んでもらおう。それが神を、私たち教会を敵に回した報いだ」

 

「……あのさ、そっちの女勝手に決めてるけど人の話を聞いてたか?」

 

「ごめんなさい。ゼノヴィアって考えるよりも体が先に動くタイプだから……えっと、一応聞くけど本当に、本当に何も悪い事はしていないのね?」

 

「んな阿保みたいなことするわけねぇだろ。神父殺しをして得するのって堕天使ぐれぇだろうが」

 

「口ではいくらでも嘘は言えるだろう。何せ悪魔だ、人を惑わせ堕落させる存在の言う事を聞くとでも? それにだ――この聖剣を目の前に()()の態度を取っているお前を危険視するなと言う方が無理だ」

 

 

 ゼノヴィアと呼ばれた女が背負っている布で巻かれた何かがその正体を露わにした。俺の思った通り長剣の類だったが布が取れた途端に漏れ出した聖なるオーラのせいで吐き気が襲ってくる……この質。まさかエクスカリバーか? 前に夜空からエクスカリバー見てきたよぉとか言ってその光を再現した事があったがそれと全く同じ……でもねぇな。夜空の光の方が強い。伝説の聖剣が持つ光より強いものを出せるとかやっぱりあいつ規格外だわ。そもそもエクスカリバーとか散歩しに行く感覚で見に行くなっての。

 

 聖剣エクスカリバー、確かそれは先の大戦で折れて複数に分かれたと聞いたことがあるがまさか実物を目にすることになるとは思わなかった。という事は目の前の二人はそんなトンデモな代物を渡されるほどの使い手で信者としてはかなり高いランクに位置するって事だ。そんな奴が人の話も聞かないってのはおかしい話だな……こっちとしては殺せるからありがたいけど。

 

 ゼノヴィアと言う名の聖剣使いは得物を握りしめ刃を俺に向けてきた――あぁ、やっぱり死にたいのかこいつ。

 

 

「――んで? エクスカリバーの一端を、その刃を俺に向けてどうする気だ?」

 

「消滅させる。お前からは何か嫌な気が、オーラがするからな」

 

「ぜ、ゼノヴィア落ち着いて! 相手の悪魔は敵意を持ってないんだし此処で殺せば色々と大変な事になるのよ!」

 

「なに、斬ってから考えればいいさ」

 

「こんのお馬鹿ぁ!」

 

 

 自身と同じほどの大きさを持つ長剣を手にそいつは俺に近づいてくる。その顔は絶対の自信に満ち溢れ、聖剣を持つ自分は負けないと思っているに違いない――それじゃあ敗北を味わおうか。

 

 人間にしてはそこそこな速度で俺の前まで接近し、聖剣が持つオーラを輝かせながら大きく振りかぶる――その瞬間を狙い、一秒もかからずに影人形を生成してそのまま女の腹部に左ストレート、その後顔面に追撃の右ストレートを叩き込む。一応人間の女だからかなり加減はしたけど顔面を殴られた勢いは止まらず教会の端の方までふっ飛ばされて壁に激突……自分でやった事ながらひでぇな。でもオソッテキタノハアッチダシコレハシカタナイネー。

 

 

「ゼノヴィア!?」

 

「……ごほっ、み、えなかった、だと……!」

 

「遅い。エクスカリバーに絶対の自信を持つのは分かるけど使い手のお前が弱かったらただの道化だぞ」

 

『ゼハハハハハ! 今のエクスカリバーの所有者はこんなものかぁ。一昔の所有者は宿主様に一太刀程度は喰らわせれるぐらいに強かったというのに。時と言うのは残酷だなぁ』

 

「そんなに強かったのか?」

 

『強い。エクスカリバーに並ぶ聖剣デュランダル、そいつの所有者だった男はユニアの宿主並みの化け物だ』

 

「マジかよ」

 

 

 あんな規格外が昔にも存在したってのか? 嘘だろ……ただでさえあの規格外が手を付けられねぇってのにここにきて同じような奴がいるんだったら世界が混乱するぞ。いや結構マジで。それは本気で上の方々が頭を抱えるレベルだって……はぁ? まだ生きてるならもう八十代かもしれない? んなこと言っても規格外パート2なのには変わりねぇだろうが。規格外ってのは年取るたびに規格外さが増すんだよ。

 

 

「……声、だと?」

 

「ユニア……ユニア、っ!? 思い出したぁ!! あ、貴方ってもしかして――影龍王だったり、する?」

 

「大正解。初めましてエクスカリバーの使い手さん。襲われたから殴ったけど悪いのはそっちだから文句ねぇよな? もしあるならもう一度向かってきても良いぞ――死にたいなら、な」

 

 

 ゼノヴィアと呼ばれた女に近づいていたもう一人の女が地面に膝をつき、先ほど俺に向かってきた女は素顔が露わになった事すら気にせず強い視線で俺を睨みつける。珍しいメッシュを入れた女、少なくとも可愛いと言えるレベルの容姿だ。でも睨むのは良いが少しだけ恐怖が混じってるぞって……あれ? そんなに強い殺気を出してるか? この程度の殺気を夜空に向けても「なにそれ? 殺す気あるの?」とか言われた事あるぐらい弱めの殺気なんだけど膝を折る理由が分からない。何処からかアンタ達が異常なだけだよと言われている気がする。具体的には布団に包まって契約を取っている引きこもり辺りから。

 

 にしてもこの状況、ちと拙いな……個人的には殺害安定なんだがここはグレモリー先輩の領地で俺の領地じゃない。そんな場所にエクスカリバーを持った信者二人が侵入して俺と交戦、はい見事なまでに怒られるパターンだな。つまり今取れる最善の手としてはこの信者さん達とお話しして分かってもらうしかないって事か。

 

 

「さっきも言ったが俺は探し人をしてただけだ。神父じゃねぇぞ? 一カ月前に逃がした白髪のはぐれ悪魔祓いを探してただけなんだよ。それを勘違いして襲ってきやがって……さて、俺もアンタ達もこの場は穏便に済ませてた方がお互いのためだと思うんだよ。うん。個人的には襲われたんだからぶっ殺し安定なんだが戦争を起こしたいわけでもねぇから今回は見逃してやるよ」

 

 

 俺は二人に近づいていくとゼノヴィアと言う女は再びエクスカリバーを握ろとしたので座り込んだもう一人の女、膝に当たるか当たらないかギリギリの所を影人形の拳で殴る。今回は半分くらいの威力だがそれでも喰らえば無事じゃないと、動けば仲間を殺すと思わせるには十分すぎたらしい。

 

 

「だからこの場は()()()悪魔に俺達が偶然出会って共闘した。アンタの傷はソイツから負った傷だ。そうだよな? 間違っているなら言ってくれよ?」

 

 

 殺気を放ちながら二人の目を見てお願いをすると分かってくれたのか頷いてくれた。やっぱり話し合いって最高だな! 戦うよりも話し合う、なんて無駄で意味のないやり取りなんだろうか。ぶっちゃけ殺した方が凄く早い気がする。まぁ――拒否権があったかなんて言われたらないけどね。もし首を横に振ったら殺すとバカでも分かるような態度と殺気だったからな。いやー交渉って楽しいなー。

 

 一応念のため白髪のはぐれ悪魔を近くで見た事あるかと聞いてみると二人は首を横に振った。なら用は無いので気を付けて帰れよと言ってから教会を出て適当な方角に向かって歩く……つかれたぁ。

 

 

『殺さなくても良いのかぁ?』

 

「戦争を起こしたいわけじゃねぇし今は殺さない。だが身内に手を出したんなら戦争を起こしてでも殺す」

 

『俺様的には戦争大歓迎なんだが、宿主様の今の実力じゃあ魔王以外のトップ陣営とは相打ちが妥当か。まだ弱い、まだその時ではねぇなぁ。もっと強くなってからでも問題は無いか』

 

「戦争起こす前提で話すなよ。で? どう見るよ?」

 

『奴らがエクスカリバーを持ってやってくる理由なんぞ知るか。襲撃か暗殺か決闘か、どれかだとしたら相当の大馬鹿野郎よ。魔王の妹の領地にやってきてる事自体バカだがなぁ』

 

「……考えられるのは神父殺しか。あのゼノヴィアって奴、探し人してるって聞いた途端、真っ先に神父って言ってたしな。そしてまた堕天使か」

 

『トップがトップだしなぁ、全ての事件の元凶には堕天使ありと断言しても良いかもしれんぞ』

 

「めんどくせぇ……まっ、とりあえずは後で先輩方に報告しとこうかね――神が死んでるってのにあの信仰心っぽいのには恐れ入るよ」

 

 

 呆れながらコンビニでアイスを買ってから家に帰る。既に犬月達は帰宅していておかえりと言ってきたが平家だけは違った。流石覚妖怪、既に俺の心を読んで事態を把握したってわけね。

 

 

「お疲れ。聖剣使いを相手にした感想は?」

 

「弱い」

 

「そっ、でも面倒な事になったね」

 

「その通りだ。まさか聖剣、それもエクスカリバーの名を冠するモノを持っている信者がやってくるとは思わなかったよ……犬月、こっちから仕掛けるのはアウトな」

 

「……わーってるっす。こっちからは手を出さない、手を出されたらぶっ殺す」

 

「そういう事。神父殺しに堕天使が絡んでるのは分かったがあの信者たちの目的が分からねぇ……興味ねぇけど」

 

「これからまた忙しくなりそうだね」

 

「うむぅ、ぷはぁ~のわーるぅといっしょだとたいくつしないねぇ~にしし、だからすきぃ~」

 

「酒くせぇ!? 寄るなくっ付くな?! うわマジで吐きそう……てか鬼の酒の匂いを俺に嗅がせるな!?」

 

「いいじゃぁ~ん、のわーるものむかいぃ? おにのさけだからひとくちぃ~できぶんよくなるよぉ? ほれほれぇ、みせいちょうおっぱいのかんしょくぅはどうだい?」

 

「……壁だな」

 

「殴るよ」

 

 

 ソファーに座ってアイスを食っていると酒を持った四季音が後ろからくっ付いてきた。背中には本来ならば柔らかいと表現できるモノがあるはずなんだが残念な事に四季音は合法ロリ、夜空と同じく壁の持ち主だから俺の背中には硬い何かが当たっている。おかしい……マジでおかしい……! 四季音が今着ているのは普通のTシャツだからダイレクトで感触が来ると思うのに何故硬い……!

 

 俺の壁発言で酒を抜き素の状態になった四季音が首に手を回してきた。あっ、俺死んだわ。このまま絞殺されるわ。

 

 

「大体私はまだ鬼の中でも若い方なんだ、成長してなくて悪いのか? 胸なんて所詮駄肉、必要ないって分かってるよね? ノワール、ちょっと殺し合おうか。体が火照ってきて熱いんだ、相手してくれよ」

 

「巨乳死すべし慈悲は無い。くっ、これが巨乳……!」

 

「……早織、私の胸を揉むのはやめてほしい、かな?」

 

 

 我がキマリス眷属が誇る二大貧乳が胸の件で突然キレだしたがいつもの事だな。

 

 そんな馬鹿な事をしていながら犬月を見るとイラついているのが分かるぐらい様子が変わっていた。流石にこんな茶番で忘れられるほど天界勢力と堕天使勢力を憎んではいないか。

 

 

「――犬月」

 

「なんすか?」

 

「恨むな、復讐はやめろなんてガキみたいなことは言わねぇが自分で決めた決断だけは迷うな。殺してスッキリすると思ったらそうしろ、分かり合えると思ったらそうしろ、お前の心はお前だけの物だ」

 

「王様……く、クフフ……! ういっす!」

 

「分かればいい――さて四季音、マジでそろそろ手を離せ。死ぬ、死んじゃう」

 

「ヤダね。シテくれるまで離さない」

 

「……もうちっと色々デカかったら嬉しかった、やべっ!? 影人形ゥ!!!」

 

 

 この後、ガチでキレた四季音と共にいつもの殺し場に転移して殺し合いを始めることになった。

 

 やっぱり鬼って強いわ……勝ったけど。




観覧ありがとうございました!

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